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52 夜明けは海より
しおりを挟む海面が再び揺れる。
一部の海面が円形に盛り上がるように膨れ上がり、破裂すると、近海全体が大きく揺れた。
波が不規則にうねり、盛り上がり、白いしぶきを高く吐き出す。
旗艦である黒い旗を掲げた最も大きい一隻が小刻みに震えると、ゆっくりと海の中へと沈んでいった。
全く状況が把握できない急な沈没に、旗艦に乗っていた兵士たちと、指揮官と思われる身なりの高貴な男が慌てて残り二隻に飛び移る。
激しくうねる波の中では避難は困難であったが、どうにか救助が進んでいる。
大きな混乱が生まれていた。
港を破壊した爆発の影響と、離れた位置で旗艦が渦を巻いて沈没していく衝撃に挟まれ、残る二隻も操縦ができず、その場で流されるままに動きを止めた。
カランの港では、沈んでいく旗艦を見て大喝采が起こる。
ミクシアが発明品の拡声器を使う。
「こっちの声は聞こえるか!!」
ミクシアは二隻に最も近い距離まで移動すると、上空に長く滞空する照明弾を発射し、わずかではあるが昼間に近い明るさを作り出す。
それでもお互いの姿がはっきりとは見えない距離だった。
船上では、何か身振り手振りを交えて口をパクパクさせている指揮官らしき男が見えるが、波音にかき消されて声は届かない。
「あーあー。聞こえてるか?この大陸は海の怪獣リヴァイアサンの保護下にある!先ほど貴国の船を沈めたのは、怪獣リヴァイアサンが怒り、船底に穴をあけたためである!このまま撤退すれば無事に戻れるだろうが、これ以上この大陸を刺激すれば、貴君たちはリヴァイアサンの腹の中に吸い込まれるであろう!さあ、どうするか!!」
指揮官と思われる男が両手を挙げ、怒ったような仕草をするが、何を言っているのかさっぱりわからない。
同乗している兵士たちに抑えられているのが見えた。
やがて海面が穏やかになると、二隻はこの大陸を離れていった。
黒い旗を掲げた旗艦は、海の中で、ところどころ小さな泡をブクブクと発しながら沈んでいく。
無事に他の船へ全員が乗り移れたのだろうか。
「よし、ディアルト! イルエスタの船が本当にこの大陸を離れていくか、見張ってくれ!」
「でもさ、なんか少し飛びにくくなってるんだよね。疲れるというか、力がたくさん必要になってきた感じがする。」
ディアルトがララの発明品である原石入りの羽を大きく羽ばたかせ、少し浮いてみせる。
「それさ、たぶん原石のエネルギー切れだね。いつ使い物にならなくなるかわからないから、もう返して。危険だよ。」
ララがディアルトの腕に固定していた手製の羽をブチブチと取り外すと、その中から微かに透明な光を放つ小さな石を取り出した。
「そっか。原石でも永久機関じゃないのか。そもそも原石のそっくりさんだとか?」
ララがブツブツと呟きながら離れていく。
ミクシアとディアルトが顔を見合わせ、お互いにうなずいた。
「よし、しばらく警戒を続けよう。イルエスタの船が戻ってこないことを祈る。」
兵士たちをカランの港の要所に分担して配置し、朝までその体勢で待機を続けた。
ララやキーン、他のチャクミの作業員たちは港の先端付近で海面をじっと眺めている。
ディアルトも走り出し、港から海面を食い入るように探していた。
「どうした?」
「あの船、戻ってくる気配がないね。合図もない。」
やがて日が昇る。
誰も一睡もせずにじっと状況を見守っていた。
「よし、イルエスタの軍艦は去っただろう。念のため偵察隊だけ残して、もう終わろう。」
ミクシアが警戒を解くと、兵士たちから歓声が上がった。
「わかった。後は俺たちに任せて、休んでくれ。本当によくやってくれた。」
ジーンとキーンがミクシアに深く頭を下げる。
「本当に疲れた。じゃあ、俺はチャクミのみんなとやることがあるから、後は頼む。」
ミクシアがジーンとキーンに手を挙げ、疲れた表情で笑う。
そこに一人の男が近づいてきた。
「今、大丈夫ですか? コホコホ……」
ミクシアが瞬間的にため息を漏らす。
「はい、大丈夫です。コラン王。」
「本当に……ゴホッ。ありがとうございました。」
「こちらこそありがとうございます。チャクミの作業員とコラン、そしてカランの兵士たち。最後の方は他国の兵士も混ざっていたと思いますが、皆さまの協力があったおかげです。それではこれで。」
「ゴホッ……ちょっと、もう少し話せますか?」
「ええ、まあ。」
ミクシアは港の先端付近に集まるチャクミの作業員たちを気にしながらも、コラン王とジーンに導かれるまま近くの建屋へと入っていった。
そこで今までの経緯を根掘り葉掘りと質問攻めにされる。
どうやら、この後コラン王が臨時政府に報告を行うにあたり、そのための詳細な情報を求めていたらしい。
疲労で答えが少し適当になっているのは自覚しつつも、最後まで付き合い、無事に終えた。
今回のことは、キーンやジーンをはじめとするラン大陸の者たちの協力なしには成し遂げられなかった。
さらに、臨時政府の中にも運搬作業や部品の収集を手伝った者がいたと聞いていたため、その思いに応えたいという気持ちがあった。
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