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53 眠れる英雄と動く王たち
しおりを挟む「さすがに眠い。」
ようやく解放されたミクシアが港の先端付近を確認すると、数人が海の方を眺めていた。
頭痛を感じ、ぎゅっと強く目を瞑る。
「バブ様から昔もらった腐食の藻は持ってきてるか?」
疲れた声でミクシアがつぶやく。
「ん?あるぞ。捨てようがなかったからな。」
キーンが満足そうな顔で元気に答える。
「それを使うか。」
「そうか。しかしこれは、この大陸全体に大きく関わることだ。コラン王や臨時政府への説明が必要だ。さっき話せばよかったのだが。」
「正直、迷った。いつイルエスタが戻ってくるかわからんからな。早急に進めたほうがいいと思うが、意見を集めてくれ。」
「じゃあ、ジーンに準備を進めてもらうから、ミクシアは本当に少し休んでくれ。ひどい顔だ。真っ白だぞ。大丈夫か?」
「その言葉に甘える。正直眠くて、もう半分眠ってる感じだからな。それよりも、頭痛がひどい。」
ミクシアが両目をぎゅっと瞑ると、その場で立ち止まり、両手で頭を抱えた。
「あの、もう一回、ちょっとだけ。」
後方から先ほどまで話していた声が聞こえる。
ミクシアが苦悶の顔で振り向くと、ドキッとしたコラン王が小さく頭を下げる。
「いや、あの、食事の準備ができたそうだ。皆も誘って、どうかと思って。」
「ありがとうございます。私は休ませてもらいます。キーン、他のみんなに伝えてくれ。」
「わかりました。お気遣い、感謝いたします。」
キーンがコラン王に深く礼をする。
ミクシアはこのまま宿泊所に戻ると、深い眠りについた。
カランの港の後片付けは、別途編成された疲労の少ない兵士が対応していく。
沈没したイルエスタ旗艦の引き揚げも同時に行われた。
それは四か国の合同軍による対応となり、その指揮はジーンが執ることとなった。
チャクミの作業員たちは相変わらず慌ただしく動き回っている。
ララはレンを真似た羽の改良に着手しているが、うまくいかずにイライラしていた。
その羽の改良の手伝いに指名された者たちは、嫌々ながらも疲れた体でその対応に追われていた。
翌日の昼過ぎ。
パッとミクシアが目を開く。
そこにはキーンとジーンの姿があった。
「ようやく起きたか。臨時政府の方々はもう集合済みだ。準備はできている。」
ジーンとキーンが、目を覚ましたばかりのミクシアに告げる。
ミクシアは布団の上で、ラン大陸の地図をじっと眺めていた。
「え?それさ、俺が先に待って出迎えなきゃいけない奴じゃないか?」
「もう、そんな細かいことはいいさ。」
「なんか、俺が嫌な奴っぽくないか?目上の人を敬えないような。」
「実際そうだろ。」
「あのな……まあ、いいか。もうひと頑張りだ。」
地図やよくわからない小瓶を手に持ち、ジーンとキーンの案内でカランの王宮へと足を運んだ。
「そういや、アンラはどうした?」
「まだ戻らないそうだ。」
「そっちを先に対応したいのだがな。ディアルトは?」
「レンを探してる。」
「そうか。そっちも対応したいのに……ふう。お偉いさんの相手か。」
「そう言うな。コラン王のため、俺らのためだと思ってくれ。」
「理解はしてるさ。」
明らかに不服そうな顔で急ぎ着替え、準備されていたパンをミルクで流し込み、顔を洗った。
道を少し早足で歩き、カランの王宮に近づくと、鎧をまとった荒々しい兵士が四人駆け寄り、深く礼をして王宮内へと案内した。
直感的に罠かと思ってしまうようなその無作法な態度に、警戒しながら進む。
コランの王宮と似た形状の建造物であり、同じ文化と流れを汲むことがわかるが、宮殿内はがらんとしていて、少し寂しい印象を受けた。
特に持ち物検査もなく、たどたどしく宮殿の中を通り抜けていくと、「来賓の間」と表記された大きな扉を開く。
そこには円卓に十四人が席についていた。
その恰好から、全員が身分の高い者たちであることがわかる。
その中の一人、コラン王が立ち上がり、手を振ると、少し安心する。
「さて、この度のイルエスタの侵略を防いだその功績は、大きなものである。その感謝を伝えたい。」
円卓の十四人が一斉に立ち上がり、ミクシアたちに頭を下げる。
その異様な状況に、ミクシアたちの方が深く頭を下げてそれに応えた。
「早速ですが……ゴホッ、先のイルエスタの侵略を防いだ状況を説明していただきたいのですが。」
円卓の中で最も若いコラン王が、ジーンとキーンに促す。
恐縮した様子で、ジーンがケラン王国から原石が発掘されたところから、イルエスタの軍艦を撃退するまでを身振り手振りを交えて説明していく。
セリフに強弱をつけ、まるで役者のように盛り上げると、そのたびに感嘆の声が上がった。
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