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第30話
しおりを挟む「なぜ、うなじを隠すんだ」
拒絶されたのが何だか妙に腹が立つ。しかし、問いかけに反応はない。
「おいっ、答えろ」
土方は乱暴に慧の髪の毛を掴み顔を上げさせた。
脈打つ鼓動を、乱れた息遣いを、身近に感じる。引っ張られて痛いはずの髪の毛をかばうより、何故か断固としてうなじから手を離さない。
「いいぜっ、その気なら。ずっとそうやってうなじだけ守ってな」
髪の毛を離すと、慧の体は力が抜けたように地面にへたる。
その体を見れば、肩、背中、腰、至る場所に赤い花が咲いている。
腕に拘束の跡があることからしても、よほど沖田に手ひどく抱かれていたのだろう。
あの沖田に好かれるとは、運のない奴だ。
沖田は、はた目から見れば冷静沈着。しかし、誰よりも冷徹で独占欲が強い。
自分が手に入れたいと願うものは、時に手段を問わず手に入れることもある。案外恐ろしい男なのだ。
できれば、沖田のモノにちょっかいは出したくない。しかし、今更自分を止められるわけでもない。
着物から己の欲望を取り出せば、今にも破裂しそうなほどに脈が浮き上がり膨れ上がっている。
土方は目の前にある、穴へと一気に押し込んだ。
(っ……、すごい締め付けだな、もっていかれる)
己を奮い立たせなければ、意識を手放してしまいそうなほどの強い快楽。
下から聞こえるすすり泣く声も、拒絶する声も今はまったく気にならない。ただ、腰を進めて、己の欲望を吐き出したい。こいつを、泣かせてやりたい。
頭にあるのはただそれだけ。
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