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第29話

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土方は訳も分からず、慧を押し倒していた。

またこれか、と制御が利かなくなる感覚に驚いている暇もなく、己の手が勝手に慧の衣服をはぎ取ろうとしている。

「お前一体何をしたっ」


「何もしてません!」


頬を赤く染め、息を切らしている慧を土方は上にまたがりながら見つめる。
 
どうも嘘を言っているようには見えないが、得体のしれない奴だ、何を隠しているか分からない。

警戒しながらも、土方は本能の赴くまま慧の服をはぎ取った。





総司が昼夜問わず、訓練もそこそこに、この男の所に通い詰めている。

人に対して、それほど強い執着を見せたことがない総司の変わりようには驚かされたものだ。

この男のどこに、総司を惚れさせるほどの魅力があるのかと。

確かに、顔は綺麗だ。肌も透き通っていて美しい。

けれど、所詮は男だろう……?

そう思っていたのに、何故だろう。今は猛烈にこの男を抱いてしまいたいと思ってしまう。

抱いて、抱きつぶして、めちゃくちゃにしてやりたい。

他のどんな女にも抱いたことのない感情を、なぜよりにもよってこいつに……。




慧の体を反転させ、うなじを押さえるとより一層オメガの香りが強く放出される。


その香りに誘われた土方が、慧のうなじへと唇を這わせた瞬間、慧が慌ててうなじを手のひらで覆う。


「やめてくださいっ!」


この反応、以前も見たことがある。


初めて会ったあの時、この男は確か総司に迫られたときもうなじを抑えていた。


癖なのか?


いやしかし、こんな体を無理やり開かされている時に何故うなじを守る必要があるのか?


うなじに近づくにつれて、強くなってくる魅惑の香り。


一体この男は何者なんだ?






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