あの時の答えあわせを

江藤 香琳

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4章

ラースのアトリエ①

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次の日、郁はコペンハーゲン近郊フレゼレクスベアにある、ラースのアトリエを訪ねていた。

ラースのアトリエは、中央駅からバスに乗って、10分程離れた場所にある。

中央駅からバスに乗り、10分ほど揺られながらアトリエ周辺までやってきたが、道すがら初めて見る景色に目を奪われていた。

旧市街の賑わい、活気のある広場、古めかしい教会たち。

(散歩している犬さえ、凛としてかっこよく見えるから不思議だ……)

大学院生のときに行ったイギリスが、海外旅行の最後だったため、今回仕事で来ているはずが少し心が浮足立ってしまう。

バス停を降り、アトリエまで歩いているときも、周りの景色のすべてが真新しく見えた。

アトリエのあるエリアには、緑豊かなフレデリクスベア公園や動物園があり、散策するのも楽しそうだ。

(ラースとゆっくりお散歩してみたいな…)

深く深呼吸をすると、緑の香りが胸いっぱいに広がった。

そして、太陽にむかって顔を上げてこっそり、のびをした。

何とも気持ちいい、 いい一日になりそうだ。

あたりを散策しながら歩いている間に目的地に到着したようで、郁はクリーム色の6階建てのビルを見上げた。

(ここがラースのアトリエか…
えーと、この1階と2階が仕事場なんだよね?)

ここで間違いないはずと思いながらも、きょろきょろとあたりを見渡し、足早にビルの中に入っていく。

外からの冷たい空気が入りこむロビーを抜け、
アトリエのインターフォンを押そうとするが、
心の準備ができておらず、握った右手を開いたり閉じたりしてしまう。

(あー、緊張する!昨日も会ったのに。これから、ラースと俺の企画がはじまるんだと思うと…)

郁は大きく深呼吸をして、えい!とボタンを押す。

ピーという電子音とともに、ラースの声が聞こえてきた。

「 ようこそ、待ってたよ。どうぞお入りください。」

なんだか、くすくす笑っているような、微笑んでいるような声だった。

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