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強制移動
2.脱出
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<今、ゲームを中断する訳にはいかない>
何しろ、ヨッシーの軍事裁判はあと4時間くらいで、最終審の判決がでてしまう。急速な拡大に道筋をつけたと言っても、「シティ・ジャニス」はまだ人口20万人を超えたばかりだ。先は長いのに時間はないのだ。1時間で10年が経過する最高スピードにしてあるので、貴重な時を無駄にはしたくない。
<だが、おばさんに目をつけられた以上、夜までここで粘るのは無理だ>
リョウは思った。ジャニスも同じような結論に達しているようだ。
「それじゃ、お願いします」
そう言って、リョウは自分の名前を告げ、パソコンをスタンバイにした。
「吉田君、早く帰ってくるといいね」
ジャニスはリョウに微笑みかけた、迫真の演技だ。張り付いたような笑顔のまま、ヨッシーのパソコンをスタンバイにして、ごく自然な感じで自分のショルダーバッグに入れた。リョウは心の中で「ナイス」と叫んだ。
2人はおばさんに怪しまれないように、平静を装いながら、ヨッシーのアパートをでた。このおばさんは、恐らくお節介な性分なのだろう。「最近の学生の生活は乱れている」とか「親から随分仕送りもらっているのに、こんな生活していたらバチが当たる」など、いろいろなことを話しながら、2人を玄関まで見送ってくれた。玄関を出た後も、小路の角を曲がるまで、時折手を振りながら見送った。その都度、2人は何度もおじきをしなければならない羽目になった。おばさんから見えなくなった途端、リョウとジャニスは顔見合わせて吹き出した。
「本当にどうしようかと思った」
ジャニスは胸の辺りを押さえながら、息を弾ませた。
「最初はかなり疑ってたね。警察に通報しかねない顔つきだったよ」
「ホント、ホント。でも、何とか抜け出せて良かったね」
「ヨッシーのパソコンも持ち出せたし」
「これがなけりゃ救出作戦はできないでしょう」
ジャニスは得意げな顔をした。
「さあ、急ごう。続きは俺の部屋で」
「分かったわ。急ぎましょう」
2人は自然と小走りになった。しかし、駆け出してものの数百メートルで、リョウは急に息が切れて、足がもつれだした。
「どうしたの、急いで」
ジャニスは急かしたが、リョウはペースを上げられなかった。
「ごめん、朝から何も食べてないんだ。何か食いたい」
「えー。そんな時間ないわよ」
ジャニスは立ち止まった。
「そういえば、あの先の喫茶店、Wi-fi設備があったわよね。リョウのパソコンもヨッシーのも、無線機能あるんでしょう」
「ああ、大丈夫だ」
「それじゃ、食べながら進めましょう。ちょっと格好悪いけど」
「そうしてくれると、ありがたい。ケリがつくまで食べられないだろうから、しっかり食べておくよ。でも、一つお願いがあるんだけど…」
「何?」
「今、財布持ってない」
ジャニスは微笑んだ。「いいわよ、おごってあげる」
何しろ、ヨッシーの軍事裁判はあと4時間くらいで、最終審の判決がでてしまう。急速な拡大に道筋をつけたと言っても、「シティ・ジャニス」はまだ人口20万人を超えたばかりだ。先は長いのに時間はないのだ。1時間で10年が経過する最高スピードにしてあるので、貴重な時を無駄にはしたくない。
<だが、おばさんに目をつけられた以上、夜までここで粘るのは無理だ>
リョウは思った。ジャニスも同じような結論に達しているようだ。
「それじゃ、お願いします」
そう言って、リョウは自分の名前を告げ、パソコンをスタンバイにした。
「吉田君、早く帰ってくるといいね」
ジャニスはリョウに微笑みかけた、迫真の演技だ。張り付いたような笑顔のまま、ヨッシーのパソコンをスタンバイにして、ごく自然な感じで自分のショルダーバッグに入れた。リョウは心の中で「ナイス」と叫んだ。
2人はおばさんに怪しまれないように、平静を装いながら、ヨッシーのアパートをでた。このおばさんは、恐らくお節介な性分なのだろう。「最近の学生の生活は乱れている」とか「親から随分仕送りもらっているのに、こんな生活していたらバチが当たる」など、いろいろなことを話しながら、2人を玄関まで見送ってくれた。玄関を出た後も、小路の角を曲がるまで、時折手を振りながら見送った。その都度、2人は何度もおじきをしなければならない羽目になった。おばさんから見えなくなった途端、リョウとジャニスは顔見合わせて吹き出した。
「本当にどうしようかと思った」
ジャニスは胸の辺りを押さえながら、息を弾ませた。
「最初はかなり疑ってたね。警察に通報しかねない顔つきだったよ」
「ホント、ホント。でも、何とか抜け出せて良かったね」
「ヨッシーのパソコンも持ち出せたし」
「これがなけりゃ救出作戦はできないでしょう」
ジャニスは得意げな顔をした。
「さあ、急ごう。続きは俺の部屋で」
「分かったわ。急ぎましょう」
2人は自然と小走りになった。しかし、駆け出してものの数百メートルで、リョウは急に息が切れて、足がもつれだした。
「どうしたの、急いで」
ジャニスは急かしたが、リョウはペースを上げられなかった。
「ごめん、朝から何も食べてないんだ。何か食いたい」
「えー。そんな時間ないわよ」
ジャニスは立ち止まった。
「そういえば、あの先の喫茶店、Wi-fi設備があったわよね。リョウのパソコンもヨッシーのも、無線機能あるんでしょう」
「ああ、大丈夫だ」
「それじゃ、食べながら進めましょう。ちょっと格好悪いけど」
「そうしてくれると、ありがたい。ケリがつくまで食べられないだろうから、しっかり食べておくよ。でも、一つお願いがあるんだけど…」
「何?」
「今、財布持ってない」
ジャニスは微笑んだ。「いいわよ、おごってあげる」
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