バトル・オブ・シティ

如月久

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プレミアム・シティの総攻撃

6.国境防衛線

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 ドアをノックする音は叩いた人の不機嫌ぶりをそのまま反映していた。橋の攻防に集中していたリョウは、最初無視しようとしたが、ノックが止まないので、仕方なく立ち上がった。新聞の勧誘か電気代の集金か。友達には、こんなドアの叩き方をする奴はいない。
「はい、はい」
 リョウが言いながらドアを開けると、そこには隣室のシモヤマが、不機嫌な表情で立っていた。リョウは「しまった」と思った。
「困りますよ。僕も大事な作業をしてるんだから…。1時間で返すって言ったじゃないですか? もう2時間近く経ってますよ。もうバッテリーが上がってしまいます」
「ああ、そうだったな。すまない。すぐに返すよ」
 部屋の奥からジャニスが、電源コードを持ってきた。
「はい」
 ジャニスが借りていた電源コードを差し出すと、シモヤマは少し照れたような表情で受け取った。振り上げた拳の下ろし方が分からないといった顔つきだった。予想もせず、女の子が現れたので戸惑ったのだろう。
「それじゃ」
 電源コードを手にしたシモヤマは、リョウと目を合わせずにドアを閉めた。

「随分焦った感じだったね、シモヤマ君。やっぱり『シティ』やってるんじゃない?」
「きっと締め切り間際のレポートでも抱えているんだよ」
 ジャニスは小さく首をひねった。
「でも、シモヤマ君、シアトル・マリナーズのTシャツ着てたわよね」
 リョウははっとした。確かにそうだ。シモヤマはいつもマリナーズのグッズを身に着けている。確か中学では野球部の外野手だったけど、肩を痛めてしまったので選手の道は断念したと言っていたような気がする。
「まさか…、彼が『イチロー』なのか…」
 リョウの頭の中は混乱した。だが、今はそれを突き止めている場合ではない。戦況を決める大事な攻防戦の真っ最中なのだ。気を取り直して、パソコンに向かおうとした。
「リョウ…」
 ゲームを監視していたジャニスが放心したような顔つきでリョウを見た。リョウはどきっとしたが、パソコンの画面を見て、その理由が理解できた。
 戦況は、シモヤマに応対していたわずか数分の間に、劇的に変化していた。「プレミアム」の戦車部隊のうち、落ちた橋の間で前にも後ろにも進めないでいた前線の部隊は、兵糧が尽きたのか、あっさりと降伏していた。国境の橋付近で攻防戦を繰り広げていた部隊も、規模が半分以下に減っていた。国境線防衛のために一部を残し、あとは撤退したのだった。
「勝ったのね」
 ジャニスは小さな声でつぶやいた。本当にほっとした口ぶりだった。リョウも胸をなでおろした。ここで負けたら、「シティ・ジャニス」は一気に占領されてしまうところだった。もし負けていたら、と思うと、ぞっとした。リョウは「プレミアム」軍が放棄した戦車数十両と大砲十数門を押収し、守りのため国境線に再配置した。これでかなり守備は堅くなった。戦闘機も含めて、軍備の再配置を進めていたところに、メールが届いた。「ポーラスターズ」からだった。
<国境防衛戦の勝利おめでとう! 思った以上にうまくいきましたね。こちらも順調に作戦を進行中です。7つ目の企業買収にもうすぐ目処が立ちそうです。今度のは大きな会社で、これが成功すれば、「プレミアム」のトラックヤードは壊滅的打撃を受けるでしょう。買収に成功したら、すぐに「レールウエイズ」さんの国に本社を移転します。そろそろ次の作戦の準備を本格的に進めたほうがいいですね。時間も余り残されていないでしょうし…>
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