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第四章 幻想的で恐ろしい深海
◇24 どんぶりオンパレード
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いつもと違う匂いで目が覚めた。目の前には……誰かの服。
「ようやくお目覚めですか」
「……おはようございます」
「はよ」
……鼻血が出るかと思った。目覚めでこのイケメンを拝見するのはだいぶ目が痛い。
そういえば、ヴィンスの部屋で寝たんだった。眠れなかったのがバレて。
けれど、こんなに熟睡出来てすっきりしてるのはどうしてだろうか。え、ヴィンスさんの新しい特技?
「……すごいね、ヴィンス」
「は?」
「今日の朝ご飯私作る」
「え? いいよ別に俺作るから」
「お肉がいい? お肉がいいよね? ヴィンス好きだよね。丹精込めて作るね!」
ソーセージでもいいね。いや、ベーコンにする? ん~迷うな。パンはあるし……
「……朝からやけに元気だな」
「ヴィンスのおかげです」
「……そうか」
まさかここまですっきりするとは。イケメンパワーってやつ?
よしっ! とベッドから出て自室に戻ったのだった。……ヴィンスを置いてけぼりにして。
あ、そういえばと思いキッチンに向かうと……あった。昨日作業したオリーブだ。
「よかった、ちゃんと分離してる」
「へぇ、ちゃんと上下に分かれてるな」
ヴィンスも来ていたみたいで、一緒に覗いてきた。
「上が油、下が沈殿物ね」
「確かに油っぽい色だな」
「この後掬い上げて漉します」
「おっけー。けど、その前に朝ご飯な」
「うんっ」
二人と一匹で朝ご飯を完食すると、昨日の続きでオリーブオイル作りは再開となった。
用意したのは、コーヒードリップとコーヒーフィルター。キッチンの棚を探って見つけたもの。しかもコーヒーフィルターが何枚もあるなんて思いもしなかった。
コーヒードリップに、フィルターをセットする。本来ならここには砕いたコーヒー豆を入れるのだけど、今日はオリーブオイルだ。
深めのスプーンで掬ったオリーブオイルを、ヴィンスがドリップの中に流した。
ぽた、ぽた、と一滴一滴ゆっくりと下にセットした容器に入っていく。
「……結構時間かかるな」
「オリーブオイルを作るには、こんなに時間と労力がいるとは……」
本当は液体調味料用の無限シリーズに入れたいところだけど、これは調味料に入らないらしい。ちょっと、いやだいぶ悔しいな。
「これ、とんかつ揚げたら美味そうだな」
「苦労した分ね」
「そう、それ」
もうヴィンスの頭の中はとんかつなのね。
そんな話をしていても全然たまらないオリーブオイル。早く全部漉せないかな。と思っていても、私達どちらも飽きていないのが面白い。まぁ、初めての事で興味があるってところがあるんだけれど。
そして、ようやく全部漉すことができた。
と言っても、これだけのオリーブオイルしか作れなかった。とんかつを揚げるほどの油の量はない。また永遠とこの地味な作業をしないといけないと思うが、もうヴィンスはやる気満々で自ら自分が油係になると言ってくれた。
「……とんかつ、唐揚げ、メンチカツ、コロッケ」
「めんちかつ? ころっけ?」
知らないらしい。この異世界には、日本食や日本が産地の料理がないらしい。じゃあ……食べさせてあげる一択よね!
「めっちゃ美味しいの作ってあげる」
「まじ? よっしゃあ!」
料理に一番必要な油。それがこんなに苦労しないと作れないという事を、昨日今日で十分味わった。
一人じゃだいぶ時間がかかってもっと苦労していた事だろう。けれど、ヴィンスがいてくれたおかげで難なく作れた。こんなに頑張ってくれたヴィンス様に、頑張って作ってあげなきゃね!
……って言っても、そろそろ醤油が無くなっちゃいそうなんだよなぁ……
日本食に一番必要な調味料である醤油。これを作るとなるとだいぶ時間がかかるし、ちゃんと作れるかも分からない。けれど……食べたい。醤油がなくなるのは、日本人である私にはちょっときつい。
この前調べたら、醤油を作るには醤油麹と水と塩が必要らしい。でも、醤油麹とは? と調べてみると米麹と醤油で作れるらしい。じゃあ米麹は? と調べてみると種麹が必要らしい。種麹は何だか色々と作るのが大変みたいだし……もうきりがない。
「お昼ご飯、どうしよっかな……」
ん~、と考えつつも大きな冷蔵庫がある倉庫に向かった時。
私は見つけてしまった。
「なに、これ」
______________
アイテム:調味料セット(液体用)
少量の液体調味料を入れて1日保存すると量が増える。
量は無限大、賞味期限なし。
雑菌や湿気などの心配なし。
常温で高温多湿や直射日光を避けて保存をしましょう。
カウンター上ラック付き。
______________
木製の、カウンター上ラックだった。これ、結構大きくない?
引き戸になってるらしく、ゆっくり開けると……あった。液体を入れられる瓶が。ちっちゃい口が付いているから、傾けてここから出すらしい。ふたもちゃんとある。
けれど、さ……
「おしゃれは要らないんだけど……」
まぁ別にいいんだけどさ、変な趣味なんだよね。もうちょっとシンプルにいこうよ。何よ、この装飾。アラビアン系? 金色好きだよね。
けど、無限シリーズに変わりはないからありがたく使わせていただきます。
「……よし、今日はカツ丼だ」
醤油、みりん、酢、料理酒で決まり。少量を瓶に入れても量は残るし、今までのことを考えれば失敗することはないだろう。
「カツ丼食べたい人ー!!」
と、甲板に大きな声で響かせると、バッとコチラを見た人が一人。そして素早く手を上げていた。丼って初めてだけど、ヴィンス知ってるのかな。かつ、に反応した感じ?
今までは冷凍食品だったから、今日は本格的に作るつもり。だから、頑張ります。
「どん、ってなんだ?」
「ん? 出来てからのお楽しみ~!」
「材料は?」
おぉ、もう本気だな。
でも、やっぱり丼知らなかった。となると、腕がなるな。ヴィンスは甘いものは好きらしいけど、今日は江口家流の甘さ控えめかつ丼といきましょう。
……とはいえ、こんなに大きな塊肉なんて生まれてこの方テレビとかでしか見たことがない。一応切り方はスマホで見たけれど……いける?
「こんなもん?」
「……」
「そこの君、分厚くなんてしませんからね。そんな難しい事を私に要求するな」
「……はい」
分厚くするなんて事したら、ちゃんと中まで火が入るか分からないじゃん。やめてくれ。それに分厚くなる分だけ揚げ油が多くなるんだから。節約よ節約。作るの大変だって身をもって知ったでしょさっき。
でも、揚げ油は漉して再利用するからいいんだけどさ。
そうして、作業をしている最中ヴィンスは凝視していた。作りづらいけれど、今回はヴィンスにお礼もかねているから、強く言えない。それにかつにだいぶ興味津々だから、言っても聞かない気がする。
「すげぇ、めっちゃいい匂い。サクサクしてそう」
「まだですからね」
「まだ?」
「そう」
綺麗に揚がったカツの油を切り、食べやすい大きさにカット。うん、いい音が鳴ってる。食べたそうにしているヴィンスは無視をしよう。
フライパンに、調味料と玉ねぎを入れて熱する。そして、さっきのカツを投入。
「え、卵……?」
「そう、卵。せ~のっ」
カツと玉ねぎと調味料が入ったフライパンに溶き卵を3分の2入れる。半熟になったら残りの溶き卵を。
炊いていたご飯を、この前見つけた丼二つに敷き詰め、出来上がったかつを上に乗せた。
「はい出来上がりっ」
「……美味そう」
お昼ご飯のカツ丼完成です。
さて、お味のほどは……と思ったけれど、聞くまでもなかった。一口食べたヴィンスは、目を光らせてどんどん食べる食べる。私が三分の一くらい食べ終わっていた時には、ヴィンスの方はもう丼がすっからかんとなっていた。
「やばいな、どんぶり。めっちゃ美味かった……」
「それはよかった。けど、ゆっくり食べようよ」
「いや無理」
あ、はい、そうですか……おかわりはありませんけどね。
後日、次は親子丼を作ってあげた。そっちも大絶賛となり、次には牛丼と丼ブームとなってしまったのだった。
「ようやくお目覚めですか」
「……おはようございます」
「はよ」
……鼻血が出るかと思った。目覚めでこのイケメンを拝見するのはだいぶ目が痛い。
そういえば、ヴィンスの部屋で寝たんだった。眠れなかったのがバレて。
けれど、こんなに熟睡出来てすっきりしてるのはどうしてだろうか。え、ヴィンスさんの新しい特技?
「……すごいね、ヴィンス」
「は?」
「今日の朝ご飯私作る」
「え? いいよ別に俺作るから」
「お肉がいい? お肉がいいよね? ヴィンス好きだよね。丹精込めて作るね!」
ソーセージでもいいね。いや、ベーコンにする? ん~迷うな。パンはあるし……
「……朝からやけに元気だな」
「ヴィンスのおかげです」
「……そうか」
まさかここまですっきりするとは。イケメンパワーってやつ?
よしっ! とベッドから出て自室に戻ったのだった。……ヴィンスを置いてけぼりにして。
あ、そういえばと思いキッチンに向かうと……あった。昨日作業したオリーブだ。
「よかった、ちゃんと分離してる」
「へぇ、ちゃんと上下に分かれてるな」
ヴィンスも来ていたみたいで、一緒に覗いてきた。
「上が油、下が沈殿物ね」
「確かに油っぽい色だな」
「この後掬い上げて漉します」
「おっけー。けど、その前に朝ご飯な」
「うんっ」
二人と一匹で朝ご飯を完食すると、昨日の続きでオリーブオイル作りは再開となった。
用意したのは、コーヒードリップとコーヒーフィルター。キッチンの棚を探って見つけたもの。しかもコーヒーフィルターが何枚もあるなんて思いもしなかった。
コーヒードリップに、フィルターをセットする。本来ならここには砕いたコーヒー豆を入れるのだけど、今日はオリーブオイルだ。
深めのスプーンで掬ったオリーブオイルを、ヴィンスがドリップの中に流した。
ぽた、ぽた、と一滴一滴ゆっくりと下にセットした容器に入っていく。
「……結構時間かかるな」
「オリーブオイルを作るには、こんなに時間と労力がいるとは……」
本当は液体調味料用の無限シリーズに入れたいところだけど、これは調味料に入らないらしい。ちょっと、いやだいぶ悔しいな。
「これ、とんかつ揚げたら美味そうだな」
「苦労した分ね」
「そう、それ」
もうヴィンスの頭の中はとんかつなのね。
そんな話をしていても全然たまらないオリーブオイル。早く全部漉せないかな。と思っていても、私達どちらも飽きていないのが面白い。まぁ、初めての事で興味があるってところがあるんだけれど。
そして、ようやく全部漉すことができた。
と言っても、これだけのオリーブオイルしか作れなかった。とんかつを揚げるほどの油の量はない。また永遠とこの地味な作業をしないといけないと思うが、もうヴィンスはやる気満々で自ら自分が油係になると言ってくれた。
「……とんかつ、唐揚げ、メンチカツ、コロッケ」
「めんちかつ? ころっけ?」
知らないらしい。この異世界には、日本食や日本が産地の料理がないらしい。じゃあ……食べさせてあげる一択よね!
「めっちゃ美味しいの作ってあげる」
「まじ? よっしゃあ!」
料理に一番必要な油。それがこんなに苦労しないと作れないという事を、昨日今日で十分味わった。
一人じゃだいぶ時間がかかってもっと苦労していた事だろう。けれど、ヴィンスがいてくれたおかげで難なく作れた。こんなに頑張ってくれたヴィンス様に、頑張って作ってあげなきゃね!
……って言っても、そろそろ醤油が無くなっちゃいそうなんだよなぁ……
日本食に一番必要な調味料である醤油。これを作るとなるとだいぶ時間がかかるし、ちゃんと作れるかも分からない。けれど……食べたい。醤油がなくなるのは、日本人である私にはちょっときつい。
この前調べたら、醤油を作るには醤油麹と水と塩が必要らしい。でも、醤油麹とは? と調べてみると米麹と醤油で作れるらしい。じゃあ米麹は? と調べてみると種麹が必要らしい。種麹は何だか色々と作るのが大変みたいだし……もうきりがない。
「お昼ご飯、どうしよっかな……」
ん~、と考えつつも大きな冷蔵庫がある倉庫に向かった時。
私は見つけてしまった。
「なに、これ」
______________
アイテム:調味料セット(液体用)
少量の液体調味料を入れて1日保存すると量が増える。
量は無限大、賞味期限なし。
雑菌や湿気などの心配なし。
常温で高温多湿や直射日光を避けて保存をしましょう。
カウンター上ラック付き。
______________
木製の、カウンター上ラックだった。これ、結構大きくない?
引き戸になってるらしく、ゆっくり開けると……あった。液体を入れられる瓶が。ちっちゃい口が付いているから、傾けてここから出すらしい。ふたもちゃんとある。
けれど、さ……
「おしゃれは要らないんだけど……」
まぁ別にいいんだけどさ、変な趣味なんだよね。もうちょっとシンプルにいこうよ。何よ、この装飾。アラビアン系? 金色好きだよね。
けど、無限シリーズに変わりはないからありがたく使わせていただきます。
「……よし、今日はカツ丼だ」
醤油、みりん、酢、料理酒で決まり。少量を瓶に入れても量は残るし、今までのことを考えれば失敗することはないだろう。
「カツ丼食べたい人ー!!」
と、甲板に大きな声で響かせると、バッとコチラを見た人が一人。そして素早く手を上げていた。丼って初めてだけど、ヴィンス知ってるのかな。かつ、に反応した感じ?
今までは冷凍食品だったから、今日は本格的に作るつもり。だから、頑張ります。
「どん、ってなんだ?」
「ん? 出来てからのお楽しみ~!」
「材料は?」
おぉ、もう本気だな。
でも、やっぱり丼知らなかった。となると、腕がなるな。ヴィンスは甘いものは好きらしいけど、今日は江口家流の甘さ控えめかつ丼といきましょう。
……とはいえ、こんなに大きな塊肉なんて生まれてこの方テレビとかでしか見たことがない。一応切り方はスマホで見たけれど……いける?
「こんなもん?」
「……」
「そこの君、分厚くなんてしませんからね。そんな難しい事を私に要求するな」
「……はい」
分厚くするなんて事したら、ちゃんと中まで火が入るか分からないじゃん。やめてくれ。それに分厚くなる分だけ揚げ油が多くなるんだから。節約よ節約。作るの大変だって身をもって知ったでしょさっき。
でも、揚げ油は漉して再利用するからいいんだけどさ。
そうして、作業をしている最中ヴィンスは凝視していた。作りづらいけれど、今回はヴィンスにお礼もかねているから、強く言えない。それにかつにだいぶ興味津々だから、言っても聞かない気がする。
「すげぇ、めっちゃいい匂い。サクサクしてそう」
「まだですからね」
「まだ?」
「そう」
綺麗に揚がったカツの油を切り、食べやすい大きさにカット。うん、いい音が鳴ってる。食べたそうにしているヴィンスは無視をしよう。
フライパンに、調味料と玉ねぎを入れて熱する。そして、さっきのカツを投入。
「え、卵……?」
「そう、卵。せ~のっ」
カツと玉ねぎと調味料が入ったフライパンに溶き卵を3分の2入れる。半熟になったら残りの溶き卵を。
炊いていたご飯を、この前見つけた丼二つに敷き詰め、出来上がったかつを上に乗せた。
「はい出来上がりっ」
「……美味そう」
お昼ご飯のカツ丼完成です。
さて、お味のほどは……と思ったけれど、聞くまでもなかった。一口食べたヴィンスは、目を光らせてどんどん食べる食べる。私が三分の一くらい食べ終わっていた時には、ヴィンスの方はもう丼がすっからかんとなっていた。
「やばいな、どんぶり。めっちゃ美味かった……」
「それはよかった。けど、ゆっくり食べようよ」
「いや無理」
あ、はい、そうですか……おかわりはありませんけどね。
後日、次は親子丼を作ってあげた。そっちも大絶賛となり、次には牛丼と丼ブームとなってしまったのだった。
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