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三章 湯けむり温泉、ぬるぬるおふろ
兄弟げんか
しおりを挟む「お兄ちゃん! いくら綾瀬さんが好きだからって、脅してなんてやりすぎ!」
「……臨がかつて凛にやったことと同じことを、やり返してみただけだよ。僕だって……ずっと、臨とこういう事をしたいからね……」
航が眼鏡を指で押し上げながら、二人の所へ近寄ってくる。窓から差し込む夕日が長く影を伸ばす。その光のまぶしさで、航の顔はよく見えなかった。
「こうなったの、全部お兄ちゃんのせいじゃん! お兄ちゃんの腹黒!」
「わがまま甘えんぼ凛に言われたくない」
兄弟が珍しくケンカをしていた。原因は臨である。しかし、どうしていいのか分からず……オロオロとしていた。とりあえずカーテンを締めて電気をつけたが、兄弟はまだ色々言い争っていた。
俺のために争うのはやめて……うっかりそう言いそうになったけれど、そんな事を言ったら兄弟に何を言われるか分からない。せっかくの旅行。どうすれば二人が元の仲良し兄弟に戻ってくれるのか……今まであったあれこれを一旦頭の外に押し出して考えるも、アイデアは浮かばない。そんなこんなしているうちに、もう夕飯の時間だった。
「ふ、二人とも! とりあえずご飯を食べよう! ほら、腹が減っては戦はできないって言うし……ねっ!」
何となくそれで強引に押し切った。よく考えたらとんでもないことを言っているけれど、とりあえず兄弟と共に食事が用意してある椿の間に向かう。もちろん、食事中の空気は最悪だったが料理はとてもおいしかった。
おいしく夕ご飯をいただいて部屋に戻るけれど……まだ兄弟はお互いにそっぽを向いている。どうすればいいのか……しかもその時綾瀬はさらに最悪な事を思い出した。
「そういえば昨日チェックインするときに、二日目の二十一時から旅館内の家族露天風呂を予約してたんだった!」
「え?」
「は?」
「ほら、ここ温泉がすごいから入ろうって言って、みんなで頼んだじゃん! あれ、どうしよう!」
時計を見るともう二十時半。もうあと少しで九十分間の露天風呂予約の時間になってしまう。
「そういう気分じゃないし、綾瀬さんだけ入って来れば……」
「あ、凛が行かないなら僕が一緒に行こうかなぁ……」
「はぁ!? 二人っきりじゃん……何考えてるの、お兄ちゃんのばか!」
「普通にお風呂に入るだけでそういう発想する方がどうかと思うよ。じゃあ、行こうか臨。凛はお留守番ね」
「やだやだやだやだ! 俺と一緒に入るの!!」
そんなこんなで二人に引っ張られるようにして、綾瀬は館内の露天風呂に連れていかれることになった。
何でこんなことに……凛と航の顔には顔に大きくそう書いてあるが、流れというものは恐ろしい。気が付けば身体を洗って、みんなで温泉に浸かっていた。
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