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第三章 悪人たちの狂騒曲
52.公爵令嬢アマーリアは目覚める
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騒がしい物音でアマーリアが目を覚ますと、そこは見知らぬ部屋のベッドの上だった。
状況が呑み込めず、ぱちぱちと瞬きをしたアマーリアは眉をしかめた。
頭が痛くて気持ちが悪い。
(何なの……)
ふらふらと身を起こしたアマーリアは部屋のなかに充満している酷い匂いに気がついた。
「何よ、これ。何の匂い?」
ひどく甘ったるく、癖があって嗅いでいるだけで胸が悪くなる。
ぼんやりとあたりを見回したアマーリアはベッドサイドに置いてある香炉に気が付いた。
白く細い煙が立ち上っている。香りはそこから広がっていた。
アマーリアは思わず、枕元の水差しを取り上げて香炉にかけた。
ジュッという音がして火が消え、煙も消える。
けれど、部屋に充満している匂いはまだ消えていない。
みれば窓もドアも全部閉まっている。
そしてやはり知らない部屋だった。
ベッドやサイドテーブルなどの調度、カーテンや壁紙もすべて見覚えがない。
(ここはどこかしら? 私はいったい……)
アマーリアは記憶を辿ろうとしたが、なにぶんこの頭がガンガンしてくるような匂いが邪魔である。
窓を開けようとしたが、どういう具合か内鍵を開けても窓が開かない。
ドアにも外から鍵がかけられているようだ。
(ちょっと何なの? こんなひどい匂いのところにこれ以上いたら死んじゃうわ)
アマーリアは、もう一度ドアノブを思いきり引いてみた。
その時、ドアのすぐ外から人の声が聞こえた。
誰かがいる。
アマーリアはどんどんとドアを叩いた。
「すみません。どなたかいらっしゃいますか? ここを開けて下さい」
声をかけたが外からは返事がない。
「すみません、どなたか、ここを開けて下さい」
ドンドンドン、とドアを叩き続けるが、外では何か叫ぶような声と、物がぶつかり合うような音が聞こえるもののいっこうに開けてくれる気配がない。
アマーリアはドアに耳をつけた。
外からは、
「そこをどけ!」
「嫌だ。絶対にここを通すわけにはいかない……!」
と言い争う声がする。
(なんなの、いったい?)
どうやら、数人の男たちがドアを開けろと詰め寄っているのを、一人の男が止めているようだ。
(なんでもいいから、ここを開けてくれないかしら? 息がつまりそう)
アマーリアは、取り出したハンカチで口を押えながら部屋の中を見回した。
その頃、寝室の前ではアドリアンがドアを背にして立ち塞がり、必死にそこを守っていた。
あの後、アドリアンは男たちを剣で威嚇して、どうにか寝室からは追い出すことに成功した。
しかし、うまくいったのはそこまでで後ろ手にドアを閉めたとたん、石礫のようなものを手首に投げつけられて剣を取り落としてしまった。
その後は、殴られたり蹴られたりしながらも、寝室のドアの前に立ちふさがり、そこを一歩も通すまいとドアに張り付いているのが精一杯だった。
アドリアンは一通りの武芸の訓練は受けていたが、多勢に無勢のうえに媚薬入りの香で体がふらついているのでとても、まともに戦える状態ではなかった。
ただ、自分が気を失ってしまえばこの獣たちがアマーリアに何をするかと思って、意地でも意識を手放すまいと自分を奮い立たせてドアを守っていた。
部屋から出られたのは助かった。
殴られている体は痛いが、香の煙から離れたことで意識は少しずつはっきりとしてきていた。
「めんどくせえなあ。さっさとやっちまおうぜ」
「もういいから頭を殴りつけて気絶させちまえよ」
男たちの声に、物陰から
「だから、顔や頭に目立つ傷はつけないでって言ってるでしょう!」
苛立ったような女の声がする。
やはり聞き覚えのある声だ。
アドリアンがそちらに気をとられたその時、首領格の男が銀の燭台をもってこちらに近づいてくるのが見えた。
「ちょっと、そんなので殴ったら下手したら死んじゃうわ」
「うるせえな! 黙ってろよ。俺たちはさっさとあっちのお嬢ちゃんと楽しみたいんだよ。手間かけさせてんじゃねえよ」
男が燭台を振りかぶり、アドリアンの頭に打ち下ろそうとした。
もうダメかと目を閉じたその時。
ドカアアンッ!!!
背後で音がするのと同時に、背中にもの凄い衝撃がぶつかってきてアドリアンは「ぶへっ」と前のめりに倒れた。
アドリアンを殴りつけようとしていた首領はその姿勢のまま固まった。
ドアが開き、というか内側から突き破られて、そこに淡いピンクのドレスを着たアマーリアが立っていた。
「ふう~。窒息するかと思った。何なの、あのひどい匂い」
言いながら、寝室内にあったティーワゴンと、チェストをシーツを裂いた紐でくくりつけた、即席の破壊槌のようなものをゴロゴロと押しながら部屋を出てくる。
一時期、ラルフに会いにいくために屋敷を抜け出そうと色々と研究していたのが役に立ったようだ。
呆気にとられている男たちをよそに、突進して打ち破ったドアを踏みながら外へ出ると、足元で「グギュ……ッ」と奇妙な音がした。
「あら?」
見ると、打ち倒したドアの下に誰かが倒れている。
アマーリアは慌ててドアをどかしてみた。
「うう……」
呻きながら俯せに倒れているのはなんとアドリアンだった。
「まあ、殿下!」
アマーリアは目をみはった。
「なぜ、このようなところに? いったいどうなさったのです」
(どうなさったも何も、たった今君に背中から突撃されて下敷きにされたんだが……)
まさか、命懸けで守っていたはずの相手から、背中から打ち倒されるとは思わなかった。
そう思いながらもアドリアンはそんな状況ではないと思い、懸命に言った。
「僕のことはいいから……逃げるんだ、リア……」
「逃げるっていったい、どうなさったんですか?」
アドリアンを抱き起そうとしながら記憶を辿り、アマーリアは自分がカタリーナに呼び出されて碧玉通りにある屋敷を訪れたことを思い出した。
(そうだわ。カタリーナさまを客間でお待ちしていたのに、どうして私眠ったりなんか……)
「おう。そっちからわざわざ出てきてくれたのか、お嬢ちゃん」
下卑た声がしてアマーリアは顔を上げた。
数人の男たちが、ニヤニヤしながらこちらを見ている。
「随分と派手なご登場だな。おしとやかなお嬢さんかと思ったが」
「それぐらいのが楽しめるだろう。寝ている女をやったところでつまらねえ」
「あなたたちは誰? ここのお屋敷の方?」
アマーリアは尋ねた。
「誰だっていいじゃねえか。ここでこうして会えたのも縁だ。せっかくだから俺たちと楽しもうぜ」
「そうそう。そんな優男放っておいてさ」
ようやくアマーリアは男たちの発する異様な雰囲気に気がついた。
「リア、逃げるんだ!」
アドリアンが掠れた声で叫んだ。
「おまえは黙って寝てればいいんだよ、色男!」
男の一人がアドリアンを蹴りつける。
アマーリアの顔色が変わった。
「何てことを! この方を誰だと思ってるの!」
「さあな。俺たちは男には興味がないんだ。そんなことよりあんたとお近づきになりた……ギャアア!」
アマーリアに手を伸ばしかけた男が悲鳴をあげて顔を押さえた。
アマーリアが近づいてくる男の顔の真ん中に思いっきりこぶしをめり込ませたのだ。
「寝そべってる相手をいきなり蹴るなんて卑怯よ。恥を知りなさい!」
「てめえ! このアマ!」
色めきたって押し寄せてこようとする男たちの方に向かって、ファイティングポーズをとりかけたアマーリアが突然悲鳴をあげた。
「きゃああああああ!!」
「リア! くそっ、貴様ら令嬢に何を……」
「いや、俺たちは何も……」
ぽかんとする男たちの前でアマーリアはものすごい勢いで、今出てきた寝室に飛び込んでいった。
立ち上がろうとしていたアドリアンが背中を踏みつけられて「ふぎゃっ」と尾を踏まれた猫のような悲鳴をあげる。
しばらくして、アマーリアが部屋から飛び出してきた。
「ない……」
「あ?」
「何がないって?」
「腕輪よ! 」
アマーリアが左の手を掲げて叫んだ。
「珊瑚の腕輪。ずっと嵌めていて外したことなんてなかったのに。どこへやったの?」
「ああ? 知らねえよ」
アマーリアのペースに呑まれがちになっていた男たちの首領は、主導権を取り戻そうと大声で怒鳴った。
「知らないで済まないわ。さっきまで確かにしてたんだから!」
アマーリアは今にも泣き出しそうな顔であたりを見回した。
「だから俺たちが知るわけねえだろうが。おい、お嬢ちゃん。少々計画がずれたみたいだが、正直俺たちにとってはどっちでもいい。怪我したくなければおとなしく……」
「お話中すみません。ちょっとどいて下さる?」
アマーリアは首領を押し退けて床の上を懸命に探し始めた。
「おい!」
「なくなったじゃすまないのよ。ラルフさまから初めていただいたものなのに」
「おい、てめえ!」
「しかも、ラルフさまのお母様の形見の品なのに……ああ、見つからなかったらどうしましょう」
「めんどくせえアマだな。いいからこっちへ来い! ごちゃごちゃ言うと痛い目に遭わせるぞ!」
アマーリアの腕をつかみ、凄んだ首領は顔を上げた彼女の顔を見て、うっと怯んだ。
目が完全に据わっている。
「それはこっちの台詞です。もし腕輪が見つからなかったら痛い目に遭わせるくらいじゃすみませんよ……!」
「なにい?」
「とりあえず勝手に触らないで下さいね」
「うぎゃあああ!」
そう言って、腕をつかんだ手をギリギリっとつねりあげられて首領は悲鳴をあげてのけぞった。
状況が呑み込めず、ぱちぱちと瞬きをしたアマーリアは眉をしかめた。
頭が痛くて気持ちが悪い。
(何なの……)
ふらふらと身を起こしたアマーリアは部屋のなかに充満している酷い匂いに気がついた。
「何よ、これ。何の匂い?」
ひどく甘ったるく、癖があって嗅いでいるだけで胸が悪くなる。
ぼんやりとあたりを見回したアマーリアはベッドサイドに置いてある香炉に気が付いた。
白く細い煙が立ち上っている。香りはそこから広がっていた。
アマーリアは思わず、枕元の水差しを取り上げて香炉にかけた。
ジュッという音がして火が消え、煙も消える。
けれど、部屋に充満している匂いはまだ消えていない。
みれば窓もドアも全部閉まっている。
そしてやはり知らない部屋だった。
ベッドやサイドテーブルなどの調度、カーテンや壁紙もすべて見覚えがない。
(ここはどこかしら? 私はいったい……)
アマーリアは記憶を辿ろうとしたが、なにぶんこの頭がガンガンしてくるような匂いが邪魔である。
窓を開けようとしたが、どういう具合か内鍵を開けても窓が開かない。
ドアにも外から鍵がかけられているようだ。
(ちょっと何なの? こんなひどい匂いのところにこれ以上いたら死んじゃうわ)
アマーリアは、もう一度ドアノブを思いきり引いてみた。
その時、ドアのすぐ外から人の声が聞こえた。
誰かがいる。
アマーリアはどんどんとドアを叩いた。
「すみません。どなたかいらっしゃいますか? ここを開けて下さい」
声をかけたが外からは返事がない。
「すみません、どなたか、ここを開けて下さい」
ドンドンドン、とドアを叩き続けるが、外では何か叫ぶような声と、物がぶつかり合うような音が聞こえるもののいっこうに開けてくれる気配がない。
アマーリアはドアに耳をつけた。
外からは、
「そこをどけ!」
「嫌だ。絶対にここを通すわけにはいかない……!」
と言い争う声がする。
(なんなの、いったい?)
どうやら、数人の男たちがドアを開けろと詰め寄っているのを、一人の男が止めているようだ。
(なんでもいいから、ここを開けてくれないかしら? 息がつまりそう)
アマーリアは、取り出したハンカチで口を押えながら部屋の中を見回した。
その頃、寝室の前ではアドリアンがドアを背にして立ち塞がり、必死にそこを守っていた。
あの後、アドリアンは男たちを剣で威嚇して、どうにか寝室からは追い出すことに成功した。
しかし、うまくいったのはそこまでで後ろ手にドアを閉めたとたん、石礫のようなものを手首に投げつけられて剣を取り落としてしまった。
その後は、殴られたり蹴られたりしながらも、寝室のドアの前に立ちふさがり、そこを一歩も通すまいとドアに張り付いているのが精一杯だった。
アドリアンは一通りの武芸の訓練は受けていたが、多勢に無勢のうえに媚薬入りの香で体がふらついているのでとても、まともに戦える状態ではなかった。
ただ、自分が気を失ってしまえばこの獣たちがアマーリアに何をするかと思って、意地でも意識を手放すまいと自分を奮い立たせてドアを守っていた。
部屋から出られたのは助かった。
殴られている体は痛いが、香の煙から離れたことで意識は少しずつはっきりとしてきていた。
「めんどくせえなあ。さっさとやっちまおうぜ」
「もういいから頭を殴りつけて気絶させちまえよ」
男たちの声に、物陰から
「だから、顔や頭に目立つ傷はつけないでって言ってるでしょう!」
苛立ったような女の声がする。
やはり聞き覚えのある声だ。
アドリアンがそちらに気をとられたその時、首領格の男が銀の燭台をもってこちらに近づいてくるのが見えた。
「ちょっと、そんなので殴ったら下手したら死んじゃうわ」
「うるせえな! 黙ってろよ。俺たちはさっさとあっちのお嬢ちゃんと楽しみたいんだよ。手間かけさせてんじゃねえよ」
男が燭台を振りかぶり、アドリアンの頭に打ち下ろそうとした。
もうダメかと目を閉じたその時。
ドカアアンッ!!!
背後で音がするのと同時に、背中にもの凄い衝撃がぶつかってきてアドリアンは「ぶへっ」と前のめりに倒れた。
アドリアンを殴りつけようとしていた首領はその姿勢のまま固まった。
ドアが開き、というか内側から突き破られて、そこに淡いピンクのドレスを着たアマーリアが立っていた。
「ふう~。窒息するかと思った。何なの、あのひどい匂い」
言いながら、寝室内にあったティーワゴンと、チェストをシーツを裂いた紐でくくりつけた、即席の破壊槌のようなものをゴロゴロと押しながら部屋を出てくる。
一時期、ラルフに会いにいくために屋敷を抜け出そうと色々と研究していたのが役に立ったようだ。
呆気にとられている男たちをよそに、突進して打ち破ったドアを踏みながら外へ出ると、足元で「グギュ……ッ」と奇妙な音がした。
「あら?」
見ると、打ち倒したドアの下に誰かが倒れている。
アマーリアは慌ててドアをどかしてみた。
「うう……」
呻きながら俯せに倒れているのはなんとアドリアンだった。
「まあ、殿下!」
アマーリアは目をみはった。
「なぜ、このようなところに? いったいどうなさったのです」
(どうなさったも何も、たった今君に背中から突撃されて下敷きにされたんだが……)
まさか、命懸けで守っていたはずの相手から、背中から打ち倒されるとは思わなかった。
そう思いながらもアドリアンはそんな状況ではないと思い、懸命に言った。
「僕のことはいいから……逃げるんだ、リア……」
「逃げるっていったい、どうなさったんですか?」
アドリアンを抱き起そうとしながら記憶を辿り、アマーリアは自分がカタリーナに呼び出されて碧玉通りにある屋敷を訪れたことを思い出した。
(そうだわ。カタリーナさまを客間でお待ちしていたのに、どうして私眠ったりなんか……)
「おう。そっちからわざわざ出てきてくれたのか、お嬢ちゃん」
下卑た声がしてアマーリアは顔を上げた。
数人の男たちが、ニヤニヤしながらこちらを見ている。
「随分と派手なご登場だな。おしとやかなお嬢さんかと思ったが」
「それぐらいのが楽しめるだろう。寝ている女をやったところでつまらねえ」
「あなたたちは誰? ここのお屋敷の方?」
アマーリアは尋ねた。
「誰だっていいじゃねえか。ここでこうして会えたのも縁だ。せっかくだから俺たちと楽しもうぜ」
「そうそう。そんな優男放っておいてさ」
ようやくアマーリアは男たちの発する異様な雰囲気に気がついた。
「リア、逃げるんだ!」
アドリアンが掠れた声で叫んだ。
「おまえは黙って寝てればいいんだよ、色男!」
男の一人がアドリアンを蹴りつける。
アマーリアの顔色が変わった。
「何てことを! この方を誰だと思ってるの!」
「さあな。俺たちは男には興味がないんだ。そんなことよりあんたとお近づきになりた……ギャアア!」
アマーリアに手を伸ばしかけた男が悲鳴をあげて顔を押さえた。
アマーリアが近づいてくる男の顔の真ん中に思いっきりこぶしをめり込ませたのだ。
「寝そべってる相手をいきなり蹴るなんて卑怯よ。恥を知りなさい!」
「てめえ! このアマ!」
色めきたって押し寄せてこようとする男たちの方に向かって、ファイティングポーズをとりかけたアマーリアが突然悲鳴をあげた。
「きゃああああああ!!」
「リア! くそっ、貴様ら令嬢に何を……」
「いや、俺たちは何も……」
ぽかんとする男たちの前でアマーリアはものすごい勢いで、今出てきた寝室に飛び込んでいった。
立ち上がろうとしていたアドリアンが背中を踏みつけられて「ふぎゃっ」と尾を踏まれた猫のような悲鳴をあげる。
しばらくして、アマーリアが部屋から飛び出してきた。
「ない……」
「あ?」
「何がないって?」
「腕輪よ! 」
アマーリアが左の手を掲げて叫んだ。
「珊瑚の腕輪。ずっと嵌めていて外したことなんてなかったのに。どこへやったの?」
「ああ? 知らねえよ」
アマーリアのペースに呑まれがちになっていた男たちの首領は、主導権を取り戻そうと大声で怒鳴った。
「知らないで済まないわ。さっきまで確かにしてたんだから!」
アマーリアは今にも泣き出しそうな顔であたりを見回した。
「だから俺たちが知るわけねえだろうが。おい、お嬢ちゃん。少々計画がずれたみたいだが、正直俺たちにとってはどっちでもいい。怪我したくなければおとなしく……」
「お話中すみません。ちょっとどいて下さる?」
アマーリアは首領を押し退けて床の上を懸命に探し始めた。
「おい!」
「なくなったじゃすまないのよ。ラルフさまから初めていただいたものなのに」
「おい、てめえ!」
「しかも、ラルフさまのお母様の形見の品なのに……ああ、見つからなかったらどうしましょう」
「めんどくせえアマだな。いいからこっちへ来い! ごちゃごちゃ言うと痛い目に遭わせるぞ!」
アマーリアの腕をつかみ、凄んだ首領は顔を上げた彼女の顔を見て、うっと怯んだ。
目が完全に据わっている。
「それはこっちの台詞です。もし腕輪が見つからなかったら痛い目に遭わせるくらいじゃすみませんよ……!」
「なにい?」
「とりあえず勝手に触らないで下さいね」
「うぎゃあああ!」
そう言って、腕をつかんだ手をギリギリっとつねりあげられて首領は悲鳴をあげてのけぞった。
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