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那須隼人7
ロータリー
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複数の路線が交わる矢隈駅で電車を降り、支線に乗り換える。
そこからは、わずか二駅だ。それだけの距離なのに、車窓の景色は矢隈駅前の賑やかな様子からがらりと変わり、急に静かで新しくなる。
六守谷駅に近づくにつれ、隼人は、なんとも言えない後悔のようなものが胸を押し上げてくるのを感じていた。
何に対する後悔なのかは分からない。ただ、胸の奥がざわつくような不快感に耐えながら、座席に身を預けていた。
だが、改札を抜けたところで、その感覚が何であるのかをはっきりと自覚した。
後悔などではない。
単純に、怯えていたのだ。
駅前はよく整備されている。
ロータリーは広く、路線バスの停留所とタクシー乗り場がきれいに区切られている。舗装された歩道には点字ブロックが敷かれ、街路樹も等間隔に植えられていた。新興住宅街の駅前としては、申し分のないつくりだ。
綺麗に整えられた、怪異などとは無縁に見えるその風景を前にして、隼人の心臓は、逃げ場を探すように強く打ち始めていた。
人の姿はまばらだった。
平日の午前中ということを差し引いても、静かだ。
買い物袋を下げた年配の夫婦や、ベビーカーを押す母親がときどき通り過ぎるくらいで、足早に歩く人はいない。話し声もほとんど聞こえず、遠くでバスのエンジン音が響くだけだった。
駅前の商業施設には、前に入ったハンバーガーショップとドラッグストア、コンビニが並んでいる。どれも新しく、看板の色もまだ鮮やかだが、客の入りは少ない。
隼人はロータリーの端で立ち止まり、ポケットからスマートフォンを取り出した。
高梨からの返信がないかを確認するが、通知はなかった。
スマートフォンをポケットにしまうと、道の向こうに目を向ける。ゆるやかに下る坂道が伸びている。その先に、同じような背丈の戸建てが規則正しく並んでいるのが見えた。
深呼吸をする。胸の震えは治まらない。
ロータリーからバスも出ているが、KUUKIまでは徒歩でも十数分ほどの距離だ。
隼人はカメラバッグのストラップを肩にかけ直してから、歩き出した。
そこからは、わずか二駅だ。それだけの距離なのに、車窓の景色は矢隈駅前の賑やかな様子からがらりと変わり、急に静かで新しくなる。
六守谷駅に近づくにつれ、隼人は、なんとも言えない後悔のようなものが胸を押し上げてくるのを感じていた。
何に対する後悔なのかは分からない。ただ、胸の奥がざわつくような不快感に耐えながら、座席に身を預けていた。
だが、改札を抜けたところで、その感覚が何であるのかをはっきりと自覚した。
後悔などではない。
単純に、怯えていたのだ。
駅前はよく整備されている。
ロータリーは広く、路線バスの停留所とタクシー乗り場がきれいに区切られている。舗装された歩道には点字ブロックが敷かれ、街路樹も等間隔に植えられていた。新興住宅街の駅前としては、申し分のないつくりだ。
綺麗に整えられた、怪異などとは無縁に見えるその風景を前にして、隼人の心臓は、逃げ場を探すように強く打ち始めていた。
人の姿はまばらだった。
平日の午前中ということを差し引いても、静かだ。
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スマートフォンをポケットにしまうと、道の向こうに目を向ける。ゆるやかに下る坂道が伸びている。その先に、同じような背丈の戸建てが規則正しく並んでいるのが見えた。
深呼吸をする。胸の震えは治まらない。
ロータリーからバスも出ているが、KUUKIまでは徒歩でも十数分ほどの距離だ。
隼人はカメラバッグのストラップを肩にかけ直してから、歩き出した。
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