女神から貰えるはずのチート能力をクラスメートに奪われ、原生林みたいなところに飛ばされたけどゲームキャラの能力が使えるので問題ありません

青山 有

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第23話 長剣と短剣(2)

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「この世界では武器を持っているのが当たり前なのですね」

 寂しそうな表情を浮かべた紗良が自分の腰の長剣にそっと触れた。その様子を見ていた図南が言う。

「紗良は戦わなくてもいいよ」

「そういう訳にはいかないでしょ」

「紗良のことは俺が守る。戦う必要があるなら俺が紗良の代わりに戦う」

 頬を染めた紗良が図南を真っすぐに見た。
 何も言えずにいる紗良に図南が言う。

「勘違いするなよ。戦うのは男の役目だからだ! この世界がどうとかは関係ない。俺の中の価値観の問題だ」

「図南ったらー」

 紗良が嬉しそうに寄り添うと、今度は図南が頬を染めて明後日の方向に視線をさまよわせた。
 そんな図南に紗良が嬉しそうにまとわりつく。

「うふふふふ。となーん」

「だから、やめろって!」

「なあ、そろそろ俺の存在を思いだしてくれてもいいかな?」

 いつものように拓光が話しかけた。

「そうだよな、情報交換だった」

「不知火さんは、もう少し空気を読むことを覚えた方がいいと思うんです」

 二人がそう口にした瞬間、拓光の表情が険しくなる。

「静かに! 何かが索敵に引っ掛かった」

「森か」

 図南と紗良が拓光の視線の先を見る。

「あたしの千里眼では暗くて分かりません」

 暗視が出来るわけではないので、彼女に夜の森の様子を視認することは難しかった。

「いるな。これって、人間みたいだ。百人以上いるぞ!」

 身体強化と感覚強化を使った図南が森の中で動く何者かを知覚した。そして、図南は無意識に長剣を抜き放っていた。
 同じように抜剣した拓光が、真っすぐに森の方へ視線を向けたまま二人に聞く。

「どうする? 騎士団と護衛に知らせるか? それとも――」

「それとも、はなしだ。騎士団と護衛に知らせよう。まだ敵と決まったわけじゃない。仮に敵だったとして、戦いに不慣れな俺たちが勝手に戦闘を始めたら、周囲にどんな被害が出るか分からない」

「OK、俺たちは降りかかる火の粉を払うことに専念しよう」

 図南と拓光が互いにうなずく。
 それを合図にしたように、踵を返すと互いに元来た道を走りだした。

 図南と紗良が身体強化された運動能力を駆使して、夜の闇を疾走する。

「いた!」

 図南の隣を走っていた紗良が天幕に戻ろうとしていた騎士を見つけた。
 ミュラー隊長だ。

「ミュラー隊長!」

 図南が呼び止めると、足を止めて二人を迎える。

「どうしたのですか、お二人とも」

「森の中に誰かいます。正確な人数は分かりませんが、五十人以上です」

 四十人の盗賊の襲撃から二日と経たずに、今度は百人以上の盗賊の出現である。盗賊にも縄張りがあるだろうから、まともに取り合ってもらえないかもしれない、と図南は考えていた。
 だが、現実は違った。

「森の中ですね。どの辺りですか?」

「左側はあの大木の辺りから、右側はあの大岩の辺りまでです。四つのグループに分かれて十人程度ずつで固まっています」

 図南が指さす。

「ありがとうございます。お二人はこのことを大司教に知らせてください。我々は襲撃に備えます」

 ミュラー隊長の言葉に従って図南と紗良は再び走りだした。

「紗良、爺さんが天幕にいるか確認してくれ!」

 紗良は即座に千里眼を発動させる。

「灯りが点いてる。ルードヴィッヒのお爺ちゃん、天幕にいた!」

 千里眼でフューラー大司教の天幕を視界に捉えた紗良が声を上げ、図南の強化された知覚が連射される弓弦《ゆんづる》の音を感知する。
 幾つもの火矢が夜空を赤く染めた。
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