【R18】婚約者は私に興味がない【完結】

迷い人

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02.

12.身勝手で狂暴な婚約者殿 01

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 王立貴族学園。

 貴族としての基本礼節、四則計算、文字の読み書き、王国の歴史、自領地の理解を入学の基準としている。

 そして学べる専攻科目は、貴族としての在り方を細分化したもの。

【お茶会】に関するものであれば、招待状の書き方・デザイン、TPOに合わせた飲食類の選び方、装飾による雰囲気の作り出し、季節の気遣い、客人を招く時・招かれた時のマナー。

【身だしなみ】衣類の色、形、装飾品の選び方。 髪型、香り、

 基本的な事は学園に入る以前に身に着けておく必要がありますが、より高度な学習を求め、招待状デザイナー、茶葉や酒の理解度を高める、インテリア、場の進行等さまざまなプロ的なレベルに到達する者達が稀に存在する。

 プロ級とお墨付きを貰えば、王族からの依頼を受ける事も可能となり、将来的に優位な立場を獲得できる。

 そう言う意味において、バウマン様は早い段階で様々なチャンスを獲得していると言えるのでしょう。



 嫉妬されるほどに……。



 校舎内にある食堂。

「これ見よがしに、王族との関わりを見せつけて下品な奴」
「没落貴族の癖に取り入る事が上手い事だ」
「生徒会の時と同じように、最後には恥をかかされるのでは?」
「やれやれ、王族の方々は意地が悪い」

 等と言うのは、食堂でブラーム様用の衣装の細部に施す刺繍のデッサンをしているバウマン様に対する声。

 保護者達と切り離され、社交界・経済界・政界に影響を及ぼす事は出来ないが、1人1人の言動は人の心に影響を及ぼすもの。

 バウマン様に愛情と呼べるものはない。 それでもバウマン様の婚約者と言う立場にある私は、バウマン様への言葉は不快に思えてしまう訳です。

 私はムッと不機嫌を露わに、アスパラとサーモン、キャベツのパスタをつつく。

 刺繍のパターンを描きながら試行錯誤を繰り返す事に集中し、食事すら忘れているバウマン様を眺める。 もし、私の方へと彼が視線を向けたならば、きっと行儀の悪い食べ方は止めなさい!! 品性が疑われます!! 等と言われる事でしょう。

 ですが、彼は食堂の席についてから1度たりとも、私に視線を向ける事はなく、存在自体わすれているのでは? と、疑いたくなるほどです。

『ランチを一緒にしましょう』

 バウマン様は、毎日のようにそう言って誘ってくるのですが、昨日も、一昨日も、一昨昨日も、私の方を見る事はありません。 結局、私はバウマン様への悪態をBGMに食事をし、食べ終えればお先に失礼させていただきますねと席を立つ日々を繰り返すだけ。

 別に見て欲しい訳ではないけれど……私はぽつりと声に出す。

「毎日誘わないで。 そう言って良いのかしら?」

「何か言いましたか?」

 コチラを気に掛ける事はないのに、声には反応するのよね。

「いいえ……」

 零れるのは無意識の溜息。 そして、パスタへと行儀悪くフォークを突っ込む。

「マティルは、貴族を嫌っているように見えます」

「違う、とは、言い切れませんわ」

「私自身は、マティルのそういうところを好ましく思ってはいますが、貴族である事には変わりがないと言う事を理解してください。 嫌うからこそ、貴族らしく振舞って頂かないと上げ足を取られてしまいますよ」

 貴方に言われたくありませんわ……と思えば、開いた口が塞がらなくなりそうになると言うものです。

「えっと……貴族らしくと言うのは、派閥を作り、他者を引きずり降ろすために、聞えよがしに悪態をつき、レッテルを張り、無意味な評価を確定させることに尽力することでしょうか?」

 庶民出身の父には貴族のプライドと言うものは備わっておらず、地位や権力を無視し利益につながると判断すれば実行へと邁進する。

 薄汚い。

 そう陰ながら嫌悪しつつも、見下しながら貴族達は父が治めている商会と取引する。 時に金を貸せと偉そうに命令する者もいるくらいだ。

 だから私は貴族が嫌い。

 食堂で食事をするようになってから数日、バウマン様への嫉妬にまみれた誹謗中傷が耳に届き鬱憤が溜まっていたのもあって、抑える事が出来ずに私は口にした。

「何を言っているのですか? 私が言っているのは所作の事ですよ。 馬鹿にされない所作をとるようにと言っているのですよ。 ほら、見て下さい。 あの方は食事を口に含む量が多くて下品だ。 あの方は、フォークを銜え噛みついている。 テーブルに顔を近づけている者も、見ていて気分の良いものではありません。 あのような方と日々食事をすると考えてみてください」

 周辺から、苦笑交じりの声が漏れた。
 指摘されたものは羞恥に顔が真っ赤。

 険悪な空気が周囲に広がっていく様子に……私は逃げたくなる気持ちを抑え込むのに必死でした。
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