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2章 新しい生活の始まり
06.モフモフはさわり心地以外も優しい
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もふもふもふもふもふ。
毛皮がゆる~くなった首回り、そこをマッサージするように撫で続ける。 動物園の虎というとゴワゴワした毛並みに見えるが、この子は違った滑らかで柔らかくて極上!!
頬を摺り寄せる感触も滑らかでいい。
あぁ~~~し・ふ・く。
そんな猫らしくもダラシナイ顔が可愛くて仕方がない。
可愛い可愛い可愛い!!
もふりっ、思い切り抱き着けば、白虎は正気を取り戻した。
「ちょ、待て待て待ってくれ。 ちょ、君。 その、こういう好意はそのまだ早くはないかなぁ?」
私の顔面と同じぐらいの前足にある肉球の1つが私の額に当てられ、そっと押しのけようとしてくる。 ただ、強引に力づくと言う様子はなく、あくまで「離れなさい」という言葉の代わりに。
「問題ないわ。 だって私達は添い寝をするような関係ですもの」
「それは、君が寒がるからで……」
もっふんと、その毛皮に埋もれた。
「さむい」
コホコホ
「もう……」
咳き込む私に、仕方がないなぁ~というような様子を見せる白虎。 とはいえ、正直熱っぽくて体調が良くないし、お猫様に嫌われたくないから引き時かなというのもある。
大人しくすれば体の上に薄いが、肌触りの良い上掛けがかけられた。
静かにヌクヌクとした時間が流れる。
「寝た?」
コホコホ
返事替わりではないが、咳が続き。
私は視線をチラリ白虎に向けた。
「名前を聞いて良いかな? なんて呼べばいい?」
静かな声。
「舞衣」
「変わった名前だね。 この国では聞かない」
コホコホ
「明らかに東方系の偽名だろ」
開かれたままの扉の外、一応声掛けのつもりかノックだけをして立っている男の声には呆れた音が含まれていた。
「名前を名乗りたくない事情はあるだろうからね。 それに、私はただ、彼女をどう呼べば良いか知りたかっただけなんだから。 いいんだよ」
白虎の声は何処までも穏やかだ。
それに重なる溜息1つ。
ツカツカと歩いてくる男の背は高く細身、海の底のような紺色の瞳と黒髪、凛々しい口元、睫毛は長く繊細で華やかな顔立ちはナターナエル様に負けていないが、色味のせいかズイブンと落ち着いた印象に思えた。
「嘘じゃないもの」
言えば、ツカツカと姿勢良く歩いてきた男は額に手が置く。
「あ~~~、まだ熱が結構あるな。 錯乱しているなら俺が、教えてやる。 アンタは、セラーナ・レーム。 ステニウス子爵家の女執事だ」
私は首をかしげキョトンとして見せれば、目の前に卵粥の入った土鍋を置いたトレイが差し出され、私は布団の中から上半身を起こす。
「食べられるなら、食べておけ」
「ありがとうございます」
別に記憶を失くした訳ではないけれど、別人として生きる機会を手離す気に等慣れなかった。 私は多くのものを背負わされる環境から逃げたかったのだから。
「OK、まぁ食べながら聞いてくれ」
「ヴァルツ、コレはまだ少し熱いんじゃないかな?」
スンスンと土鍋の中の粥の湯気を見て、爪先で土鍋に触れながら白虎は言っていた。
「冷まして食えばいいだろうが」
「う~ん、気を付けて、ユックリ食べて下さいね。 味が薄いようなら、塩、唐辛子、味噌、醤油、何でも言ってください」
塩はともかく他は、この国で出てくる調味料の名ではない。
「人を味音痴のように言うな。 病人には薄味で丁度いいんだよ」
ぶっきらぼうに言うが、そのいい口から彼が余り味付けを得意としないのが分かる。
コホコホ
とりあえず私は恩人であろう2人に、追い出されないよう気をつけながら対応をしなければいけないと腹をくくった瞬間、きゅるるるるるうと腹がなり、私は項垂れながらを礼を言う。
「……お気遣いありがとうございます」
毛皮がゆる~くなった首回り、そこをマッサージするように撫で続ける。 動物園の虎というとゴワゴワした毛並みに見えるが、この子は違った滑らかで柔らかくて極上!!
頬を摺り寄せる感触も滑らかでいい。
あぁ~~~し・ふ・く。
そんな猫らしくもダラシナイ顔が可愛くて仕方がない。
可愛い可愛い可愛い!!
もふりっ、思い切り抱き着けば、白虎は正気を取り戻した。
「ちょ、待て待て待ってくれ。 ちょ、君。 その、こういう好意はそのまだ早くはないかなぁ?」
私の顔面と同じぐらいの前足にある肉球の1つが私の額に当てられ、そっと押しのけようとしてくる。 ただ、強引に力づくと言う様子はなく、あくまで「離れなさい」という言葉の代わりに。
「問題ないわ。 だって私達は添い寝をするような関係ですもの」
「それは、君が寒がるからで……」
もっふんと、その毛皮に埋もれた。
「さむい」
コホコホ
「もう……」
咳き込む私に、仕方がないなぁ~というような様子を見せる白虎。 とはいえ、正直熱っぽくて体調が良くないし、お猫様に嫌われたくないから引き時かなというのもある。
大人しくすれば体の上に薄いが、肌触りの良い上掛けがかけられた。
静かにヌクヌクとした時間が流れる。
「寝た?」
コホコホ
返事替わりではないが、咳が続き。
私は視線をチラリ白虎に向けた。
「名前を聞いて良いかな? なんて呼べばいい?」
静かな声。
「舞衣」
「変わった名前だね。 この国では聞かない」
コホコホ
「明らかに東方系の偽名だろ」
開かれたままの扉の外、一応声掛けのつもりかノックだけをして立っている男の声には呆れた音が含まれていた。
「名前を名乗りたくない事情はあるだろうからね。 それに、私はただ、彼女をどう呼べば良いか知りたかっただけなんだから。 いいんだよ」
白虎の声は何処までも穏やかだ。
それに重なる溜息1つ。
ツカツカと歩いてくる男の背は高く細身、海の底のような紺色の瞳と黒髪、凛々しい口元、睫毛は長く繊細で華やかな顔立ちはナターナエル様に負けていないが、色味のせいかズイブンと落ち着いた印象に思えた。
「嘘じゃないもの」
言えば、ツカツカと姿勢良く歩いてきた男は額に手が置く。
「あ~~~、まだ熱が結構あるな。 錯乱しているなら俺が、教えてやる。 アンタは、セラーナ・レーム。 ステニウス子爵家の女執事だ」
私は首をかしげキョトンとして見せれば、目の前に卵粥の入った土鍋を置いたトレイが差し出され、私は布団の中から上半身を起こす。
「食べられるなら、食べておけ」
「ありがとうございます」
別に記憶を失くした訳ではないけれど、別人として生きる機会を手離す気に等慣れなかった。 私は多くのものを背負わされる環境から逃げたかったのだから。
「OK、まぁ食べながら聞いてくれ」
「ヴァルツ、コレはまだ少し熱いんじゃないかな?」
スンスンと土鍋の中の粥の湯気を見て、爪先で土鍋に触れながら白虎は言っていた。
「冷まして食えばいいだろうが」
「う~ん、気を付けて、ユックリ食べて下さいね。 味が薄いようなら、塩、唐辛子、味噌、醤油、何でも言ってください」
塩はともかく他は、この国で出てくる調味料の名ではない。
「人を味音痴のように言うな。 病人には薄味で丁度いいんだよ」
ぶっきらぼうに言うが、そのいい口から彼が余り味付けを得意としないのが分かる。
コホコホ
とりあえず私は恩人であろう2人に、追い出されないよう気をつけながら対応をしなければいけないと腹をくくった瞬間、きゅるるるるるうと腹がなり、私は項垂れながらを礼を言う。
「……お気遣いありがとうございます」
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