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3章 ルシッカ伯爵領 中央都市
17.ルシッカ領の問題
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鉄の木があるせいで、本道から脇道に入る事はできず。 誰もが正門からこの街へと入る事になる。 街の出入り口には多分……警備兵のためだろうと思われる宿舎通りが威圧的に存在し、そこを通り過ぎれば商店が並んでいた。 他国に対する防衛を担っていると言えば、それは決してオカシイものではない……のかもしれない。
だけど、私の知っている貴族ではない大半の人は、領主屋敷のある都市であっても、自給自足或いは物々交換で生活が成立している。 冷蔵庫が存在しないから、肉の解体は消費を念頭において行われるし、残った肉は塩漬けにし燻製にされる。 肉屋で解体した肉が天井からぶら下げている事はないし、無造作に大きな魚が吊り下げられていることもない。
「ねぇ、あれって塩漬けとか、乾燥処理とか、そういう加工してあるの?」
衛生管理がなされていた国での記憶を思い出した私には、気温の高い国で生肉がつられていると言うのは考えられなかった。
「残念ながらNoだ」
「お腹壊しそう……」
「腐る前に、格安で警備隊舎で購入される。 警備隊宿舎には医師もいてな、除菌魔法が仕えるから。 熟成肉を楽しむらしい」
「腐敗寸前の肉を熟成肉いうなし」
窓から覗く八百屋も、余り良い野菜が並んでいない。
「生野菜は、自分の家で作るものだと思っていた」
「他の村では、そのようになされていますよ」
乾物屋等の商品は悪い物には見えないが、店主が大あくびで眠っているのは変わらない。
「ルシッカの主要産業って何?」
「サトウキビを進めていますが、主食への不安から未だイモがメイン作物とされていますね。 後は畜産もそれなりに行われています。 もう少し、ヴァルツを信用してくれれば、豊かになる可能性も出てくるのですが……」
ルシッカ伯爵は、目の前の怠惰な店番へと視線を向けず穏やかに話をしていた。
問いかける私に、ルシッカ伯爵は虎の顔を苦々しく笑わせていた。
「安心しろ、オカシイのは国境沿いだけだ」
ケセルさんが肩を竦めながらいう。
「それは安心していいの? どうやって生活しているの? 他の領地が兵士を置く場合は、全体の税収から兵士を雇い鍛え、問題児には各地に派遣するってもので、領主所属ですよね。 ここは?」
「領主負担ですよ。 その分、国へ治める税率は低く設定されています」
私達の馬車を見て、街の人々は騒ぎだした。
「領主様がお戻りだ!!」
そんな声が上がりだし、ぉおおお!! という歓声が上がる。 それは異常だった。 通り過ぎたはずの肉屋、魚屋、八百屋の親父たちまで、靴を履き忘れてまで走って来る。 ちょっと怖い。
「ななんあななな、に、アレ」
「見ての通り、ここの人間は働かない。 誰かさんが困った生活できない、子供が飢えると言えば金を出すからな。 シバラク留守にしていたから、色々と困っているんだろう」
ケセルさんの視線がルシッカ伯爵へと向けられた。
「申し訳ない……幼子が飢えると言われると、放ってはおけなくて……」
気持ちは分かるけど……。
「とりあえず、彼等は働く気はある訳?」
私はぷりぷりと怒りながら言えば、ケセルさんは呆気なく言う。
「俺は、無いと見ている」
「私に悪役を演じろと?」
「その代わり、ヴァイスが甘やかすだろう。 俺は、まぁ、それなりに可愛がってやろう」
ケセルさんが私の頭をかき混ぜるように撫でられた。
「こら、交渉人」
「交渉が必要なら間に入ってやるさ。 だが、奴等は幼い子供を人質にとったあげく、本気で自分の子を殺す。 他の子を生かすための犠牲と割り切る。 嘆いてみせるのは、殺したのはヴァイスだと罪悪感を抱かせるためでしかない。 無視したこともあるが、そうしたら子供の死体を並べやがった。 で、直ぐに次の子を作って同じ事を繰り返す。 交渉とはお互いの要求の妥協点を探る作業だ。 子供を助けたいと思わない奴等相手には効果はない」
「う~~~ん。 OK分かった。 なんとかやってみましょう!」
だけど、私の知っている貴族ではない大半の人は、領主屋敷のある都市であっても、自給自足或いは物々交換で生活が成立している。 冷蔵庫が存在しないから、肉の解体は消費を念頭において行われるし、残った肉は塩漬けにし燻製にされる。 肉屋で解体した肉が天井からぶら下げている事はないし、無造作に大きな魚が吊り下げられていることもない。
「ねぇ、あれって塩漬けとか、乾燥処理とか、そういう加工してあるの?」
衛生管理がなされていた国での記憶を思い出した私には、気温の高い国で生肉がつられていると言うのは考えられなかった。
「残念ながらNoだ」
「お腹壊しそう……」
「腐る前に、格安で警備隊舎で購入される。 警備隊宿舎には医師もいてな、除菌魔法が仕えるから。 熟成肉を楽しむらしい」
「腐敗寸前の肉を熟成肉いうなし」
窓から覗く八百屋も、余り良い野菜が並んでいない。
「生野菜は、自分の家で作るものだと思っていた」
「他の村では、そのようになされていますよ」
乾物屋等の商品は悪い物には見えないが、店主が大あくびで眠っているのは変わらない。
「ルシッカの主要産業って何?」
「サトウキビを進めていますが、主食への不安から未だイモがメイン作物とされていますね。 後は畜産もそれなりに行われています。 もう少し、ヴァルツを信用してくれれば、豊かになる可能性も出てくるのですが……」
ルシッカ伯爵は、目の前の怠惰な店番へと視線を向けず穏やかに話をしていた。
問いかける私に、ルシッカ伯爵は虎の顔を苦々しく笑わせていた。
「安心しろ、オカシイのは国境沿いだけだ」
ケセルさんが肩を竦めながらいう。
「それは安心していいの? どうやって生活しているの? 他の領地が兵士を置く場合は、全体の税収から兵士を雇い鍛え、問題児には各地に派遣するってもので、領主所属ですよね。 ここは?」
「領主負担ですよ。 その分、国へ治める税率は低く設定されています」
私達の馬車を見て、街の人々は騒ぎだした。
「領主様がお戻りだ!!」
そんな声が上がりだし、ぉおおお!! という歓声が上がる。 それは異常だった。 通り過ぎたはずの肉屋、魚屋、八百屋の親父たちまで、靴を履き忘れてまで走って来る。 ちょっと怖い。
「ななんあななな、に、アレ」
「見ての通り、ここの人間は働かない。 誰かさんが困った生活できない、子供が飢えると言えば金を出すからな。 シバラク留守にしていたから、色々と困っているんだろう」
ケセルさんの視線がルシッカ伯爵へと向けられた。
「申し訳ない……幼子が飢えると言われると、放ってはおけなくて……」
気持ちは分かるけど……。
「とりあえず、彼等は働く気はある訳?」
私はぷりぷりと怒りながら言えば、ケセルさんは呆気なく言う。
「俺は、無いと見ている」
「私に悪役を演じろと?」
「その代わり、ヴァイスが甘やかすだろう。 俺は、まぁ、それなりに可愛がってやろう」
ケセルさんが私の頭をかき混ぜるように撫でられた。
「こら、交渉人」
「交渉が必要なら間に入ってやるさ。 だが、奴等は幼い子供を人質にとったあげく、本気で自分の子を殺す。 他の子を生かすための犠牲と割り切る。 嘆いてみせるのは、殺したのはヴァイスだと罪悪感を抱かせるためでしかない。 無視したこともあるが、そうしたら子供の死体を並べやがった。 で、直ぐに次の子を作って同じ事を繰り返す。 交渉とはお互いの要求の妥協点を探る作業だ。 子供を助けたいと思わない奴等相手には効果はない」
「う~~~ん。 OK分かった。 なんとかやってみましょう!」
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