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29.説明と取り調べ その3
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「そうかでは、次は質問をさせてもらおう」
クルト公爵は、熱の無い冷ややかな声色で尋ねてきました。
例え公爵の声色が業務的で、やや威圧的になっていたとしても……。 私自身は全てが受動的であり、何ら重要な返答が出来るとは思えません。 それに、クルト公爵が望まぬ相手と誓いの契約を交わしたと言う意味では、私であってもフレイであっても変わらないはず。 質問も簡単に終わると思っていました。
ですが、想像もしていなかった質問がなされたのです。
「はい」
「君は聖女の素質を持っているのか?」
「誕生時に、簡易的な検査球で調べた時は、そのような結果だったと両親から聞いております」
「なぜ、その後、正式に神殿で素質を調べる事無く、無許可で医療行為を行った?」
「素質における検査義務はないと記憶しておりますが?」
「そもそも各属性の素質は、血統を重ねて作られたものを除き滅多に発現しない。 その中でも破壊に属さない聖人・聖女の素質は、血統で作ることも出来ない稀少なものであり、平和な時代においても必要とされる素質であるため、その申告には義務が発生する」
淡々と話してはいるが、ジッと見つめてくる視線は……緊張を促します。
「それは……存じませんでした」
そう言えば、少しばかり嫌味っぽい溜息がつかれた。
「ノエルが知らずとも、家族は知っていただろう。 一応領地を預かる貴族なのだから」
一応……確かに、小さな村3つ分の貧乏領主など、一応ぐらいの貴族ですわよね……。
「私が簡易検査を受けたのは、レイバ家に売り払う際の査定としておこなわれたと聞いています。 その価値に応じた資金援助を受けるためのものでした。 神殿に申告するのは約定をたがえる。 両親はそう考えたのではないでしょうか」
「……両親に不満を持ったことはないのか」
「領民を飢えさせるわけにはいきません」
「だが、神殿に申告をしても、聖女の素質を持っているとなれば莫大な支度金が提供される」
「私の誕生以前に、レイバ辺境伯には両親が命を救われております」
「なるほど……、それで治療に関する魔術は何処で学んだ?」
「聖人に至らなかった方を、辺境伯は講師として招いてくださりました」
素質はあくまでも素質。 特に出現しにくい聖人、聖女の素質が、実際に聖人や聖女に至る場合は決して多くはなく、実行できずともその技を知るものは少なくはない。
「重大な法的違反を幾つおかしているのか分かっているのか……」
「その……法的に認められていないと言うのは、どのあたりでしょうか?」
キュッと心臓が握られるような声色だった。 乾いた喉のままで私は尋ね返しました。
「稀な素質を確認されながら神殿に報告を怠り、正式な検査を行わなかった事。 神殿の許可なく奇跡の技を学んだこと。 聖女の奇跡を独占したこと。 無許可での奇跡の使用。 例え講師から学び、失態が無かったと言っても、それは結果論だ。 もし、教えられた奇跡技が間違っていたら? もし、その技が失敗したら、どうするつもりだったんだ」
決して声を荒げる事はないが、だからこそ余計に事の重大さが伝わってくる。
「申し訳ありませんでした」
「俺に謝っても意味がない」
「私はどのような罰を受けるのでしょうか?」
「それら全ては、レイバ辺境伯が聖女の奇跡を独占するために行った事で、罰を受けるのはレイバ辺境伯となる」
私は考える。
ですが、公爵と辺境伯は御友人ですよね? と……。 結局は、私一人が責任を負う事になるだろう。 ですが『どうせ、私に罪を着せ終わらせるのですよね?』等と言う言葉は、はばかられた。
「その罪、私が背負う場合、どのような罪となり罰を与えられるのでしょうか?」
「レイバ辺境伯への罰を背負うと?」
「辺境伯の責任とするだけの材料は持ち合わせておりませんので……」
ドンっと、激しくテーブルが叩かれ、私は驚きクルト公爵へと視線を向けた。
「俺に助けを求めはしないのか?」
クルト公爵は、熱の無い冷ややかな声色で尋ねてきました。
例え公爵の声色が業務的で、やや威圧的になっていたとしても……。 私自身は全てが受動的であり、何ら重要な返答が出来るとは思えません。 それに、クルト公爵が望まぬ相手と誓いの契約を交わしたと言う意味では、私であってもフレイであっても変わらないはず。 質問も簡単に終わると思っていました。
ですが、想像もしていなかった質問がなされたのです。
「はい」
「君は聖女の素質を持っているのか?」
「誕生時に、簡易的な検査球で調べた時は、そのような結果だったと両親から聞いております」
「なぜ、その後、正式に神殿で素質を調べる事無く、無許可で医療行為を行った?」
「素質における検査義務はないと記憶しておりますが?」
「そもそも各属性の素質は、血統を重ねて作られたものを除き滅多に発現しない。 その中でも破壊に属さない聖人・聖女の素質は、血統で作ることも出来ない稀少なものであり、平和な時代においても必要とされる素質であるため、その申告には義務が発生する」
淡々と話してはいるが、ジッと見つめてくる視線は……緊張を促します。
「それは……存じませんでした」
そう言えば、少しばかり嫌味っぽい溜息がつかれた。
「ノエルが知らずとも、家族は知っていただろう。 一応領地を預かる貴族なのだから」
一応……確かに、小さな村3つ分の貧乏領主など、一応ぐらいの貴族ですわよね……。
「私が簡易検査を受けたのは、レイバ家に売り払う際の査定としておこなわれたと聞いています。 その価値に応じた資金援助を受けるためのものでした。 神殿に申告するのは約定をたがえる。 両親はそう考えたのではないでしょうか」
「……両親に不満を持ったことはないのか」
「領民を飢えさせるわけにはいきません」
「だが、神殿に申告をしても、聖女の素質を持っているとなれば莫大な支度金が提供される」
「私の誕生以前に、レイバ辺境伯には両親が命を救われております」
「なるほど……、それで治療に関する魔術は何処で学んだ?」
「聖人に至らなかった方を、辺境伯は講師として招いてくださりました」
素質はあくまでも素質。 特に出現しにくい聖人、聖女の素質が、実際に聖人や聖女に至る場合は決して多くはなく、実行できずともその技を知るものは少なくはない。
「重大な法的違反を幾つおかしているのか分かっているのか……」
「その……法的に認められていないと言うのは、どのあたりでしょうか?」
キュッと心臓が握られるような声色だった。 乾いた喉のままで私は尋ね返しました。
「稀な素質を確認されながら神殿に報告を怠り、正式な検査を行わなかった事。 神殿の許可なく奇跡の技を学んだこと。 聖女の奇跡を独占したこと。 無許可での奇跡の使用。 例え講師から学び、失態が無かったと言っても、それは結果論だ。 もし、教えられた奇跡技が間違っていたら? もし、その技が失敗したら、どうするつもりだったんだ」
決して声を荒げる事はないが、だからこそ余計に事の重大さが伝わってくる。
「申し訳ありませんでした」
「俺に謝っても意味がない」
「私はどのような罰を受けるのでしょうか?」
「それら全ては、レイバ辺境伯が聖女の奇跡を独占するために行った事で、罰を受けるのはレイバ辺境伯となる」
私は考える。
ですが、公爵と辺境伯は御友人ですよね? と……。 結局は、私一人が責任を負う事になるだろう。 ですが『どうせ、私に罪を着せ終わらせるのですよね?』等と言う言葉は、はばかられた。
「その罪、私が背負う場合、どのような罪となり罰を与えられるのでしょうか?」
「レイバ辺境伯への罰を背負うと?」
「辺境伯の責任とするだけの材料は持ち合わせておりませんので……」
ドンっと、激しくテーブルが叩かれ、私は驚きクルト公爵へと視線を向けた。
「俺に助けを求めはしないのか?」
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