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32.聖人・聖女とは? その3

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「俺は、ファローグ・レイバ辺境伯との付き合いは長いが、友人だと思ったことはないよ。 ただ、拒絶し敵にするには厄介な男で、味方にしておけば便利な男だとは思っている。 アレも俺の限界を理解していて、今までは強くは踏み込んで来ようとはしなかった。 だから、その関係が維持されてきただけだ」

 私は話を聞きながら、なぜ鱗が失った今も仮面をかぶっているのだろう? 等とよそ事を考えて居れば、話しは勝手に続けられていた。

「アレの娘の件も、俺に引き受けさせるのは難しいだろうと。 国王陛下を説得の材料につれてきた。 いわゆる……陛下の命令もあったのだ」

 だからどうした? と言うか何を言いたいか分からなかった。
 えっと、敵対関係を作りたくないと言う事……?

「お茶をお持ちしました」

 チラリと向けられる侍女頭が強い視線で私を睨みつけ、そして微笑んで見せる。

 うん!!

 過去の人間関係が希薄過ぎて、人の思惑が上手く理解できませんわ!!

「すみません、お伺いしてもよろしいでしょうか?」

「なんだ?」

「それはレイバ辺境伯と敵対関係を築きたくないからと、配慮を求めると言う意味合いで、正しいのでしょうか?」

 もし侍女頭さんの笑みが無ければ、ソレで間違いがないと思っただろうと思う。 でも、それだけではないようで、だからと言って自分の都合の良い解釈をして『馬鹿じゃね?』とか言われたら辛すぎます。

 はぁ……と、大きな溜息と共にクルト公爵は言う。

「命をくれてやっても構わないと言っているだろう? なぜ、そうなる。 もう一つ話をしよう。 ファローグ・レイバは、なぜ神殿にノエル、アナタの聖女の申告をしなかったと思う?」

「もしかして……私を守るためですか?」

「800年前、集められた各国の聖人・聖女は自らを呪い血筋を耐えさせた。 それから、聖人・聖女の素質を持つ者は稀少性が高く、神殿で教育と管理が行われ、その力の恩恵を受ける事が出来るのは、王族だけだ。 それも一般的な治療師としてだがな」

「……」

「王族だけにもたらされる力だ」

「他の領地より優位な状況を築くため? ですか?」

「あぁ、その通りだ。 聖女がいれば、当主が弱くともソレを補って余りある力となる。 まず魔物の発生が押さえられ、狂暴化が押さえられる。 退治に向かう狩人がケガをしても回復の見込みが高くなる。 挙句、薬草の群生地が自然発生するなら、領地はかなり豊かな状態となったことだろう」

「ですが、フランはそこまで不能では……」

「辺境伯は、そうは考えて居なかったらしいぞ……。 だからこそ、神殿に密告する可能性のある講師を殺させた。 領主としての使命感が強く、そして地位も名誉も力も欲する欲深い男だからな。 フレイと言う女は直接あったことはないが、本質的には似ているのではないか?」



 クルト公爵の赤い瞳は私に問いかけているように見えた。

 俺とアイツどっちを選ぶ?

 そんな風に……。



 そして、彼は私に囁く。

「アレが、聖女の本来の力を知ったらどうするだろうな?」
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