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28.鳥、黄昏悩む
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皇妃の侍女と騎士が帰った後、私は食事をして……そして、紅茶カップに身を寄せながら(温かいから)窓の外を眺め黄昏ていた。
ここは何時だって夜と死の気配が濃い場所だけど、それでも私は黄昏る。
遠くを眺めて……。
そう私の未来を!!
エイマーズ領にいた頃は、嫌な事もあったが、漠然と自分の未来はこんな感じだろうなってのをうすぼんやりと認識していて、悩む事は無かった。
私は、ここで何をすればいいのだろう……。
「このままでは、堕落してしまうっぴ!!」
つい叫べば、今日のベッド番の侍女と、プライベートタイムを楽しんでいる侍女がビクッとしていた。 身体的な疲労が大きいため、休息は一般の侍女より多いそうだ。 まぁ、それでも縫物や、菓子作り等しているのだから、お休みとは言い難いのだけど。
「どうされたんですか? 急に、驚いてしまいましたよ?」
やんわり言われれば、驚いているとは思えない。
「ぁ、独り言です。 お気になさらないでください」
そして私は再び黄昏る。
ここにいる人に聞けば、皇帝陛下の餌とかって言うのをこう受け止めやすい言葉で、丸め込むように言われそうだなぁ……と思えば、なんか、私は何をすればいいの? なんて、聞けない。
でも、それだと、私の生きる意味って何だろうってなるじゃない?
「窓の外に何か見えますかぁ?」
私の視線に合わせて外を見る侍女。 感覚的には顔面が襲ってくる感じ、衝動的に突きそうになるのを我慢した。 意識が鳥の本能に侵食されているのでしょうか?
「あれ、畑? ジャガイモ?」
「はい、畑で、ジャガイモすねぇ~。 お嬢様は物知りですねぇ~」
いや、そりゃぁ大地の民だって、野菜や穀物は食べるし、畑はしていたからね。
「こんなところで、作物が取れるの?」
「人が生きるために必要とする栄養と、植物が必要とする栄養は違いますから。 それに、畑は、日があたるようにしてありますし」
「ふぅん? 何か? お手伝いする事ある?」
「そうですねぇ……、収穫にはまだ早いですし、虫をとってもらうとか?」
私は、ガックリした。
「虫は無理、むしろダメ、足の無い虫も苦手だし、足が多いのも嫌だし、鱗粉もなんかイヤ。あとは、ナメクジとかカエルとかも苦手だし」
「……よく、陛下が平気でしたね」
「それは、どうなのよ」
言わんとする事は分かるが、私は苦笑した。 まぁ、知的好奇心が勝り、ちょっとした興奮状態に入っていたとは言い難いから言わない。
「人の姿になったから冗談で済ませる事ができるのですよ」
「ふぅん」
「それで、どうされたのですか?」
「自分の未来が見えない……。 お胸の間で寝起きして、ご飯を食べるだけの人生、ソレを生きていると言えるのでしょうか!!」
涙ながらに訴える。
「お嬢様は小さいですから、フラフラされると危険ですし? どこかで落としそうだし、嵌って見失いそうですし、持って歩いた方が安全だから、よろしくって言われたんですよ。 ナルサス様に」
「扱いが雑!!」
「それに小鳥の仕事なんて、寝て、食べて、飛んで、歌うぐらいじゃないですか! 余り深く考えない事ですよ」
なんて言うから、人の姿に戻ろうとしたけれど、出来なかった。
「ぇ? もしかして……私、もう、人の姿に戻れないの?」
ガックリしているところに騒々しい音が玄関から響いてくる。
「らららら~~~」
なんて、ノリノリ呑気に歌うナルサスの声が腹立たしくて、私は玄関へと飛んで行き、そのまま足から顔面に向かって突進しようとすれば、両手が広げられ、きらきらした感情の流動を見せつけられ、引き返すことにしようとしたら、背後からガシッと掴まれた。
「あら~~、小鳥ちゃん。 まだ、その姿なのぉ?」
顔を見合わせニコニコと言うナルサスの手を突く。
「不愉快だわ!! その姿なんじゃなくて、人の姿に戻れないのよ!! どうしてくれる」
「どうしてって……。 そもそも、その姿になった原因を取り払えばいいんじゃないかしら?」
「原因?」
「そう、思い出して、小鳥ちゃんがその姿になったのはエネルギー切れではなくて、もともとは陛下から逃げるためだったでしょう?」
「……まぁ、その後、尾羽をあげたら意識を失くしてしまったけど。 って、何しているのよエッチ!! 尾羽を触るなんて」
「あら、尾羽を触るとエッチなの?」
「……そういう事はないけど……気分?」
「あらやだ、私に発情しちゃった?」
「しないから!!」
「じゃぁ、話を戻すわぁ~」
いや、私の繊細な心を適当に流さないで貰いたいのだが……。 ぷりぷり怒って見せるが、尻尾が人為的に広げられている状態で、恰好がつかない。
「ふむ、尾羽の数は戻っているから心理的な問題じゃないかしら? なら、答えは簡単!!」
「そうなの?」
「そうよ!! 陛下の側にいて、陛下に慣れればいいのよ!!」
私は遠慮なく、ウヘッなんて顔をした。
「報告があるから、一緒にいきましょう!!」
「それは兎も角、放しなさいよ!! 手汗でジンワリしちゃうでしょう!!」
「あら、失礼な子ねぇ~。 可愛いお菓子をお土産に買ってきてあげたのに」
「可愛いお菓子があれば、懐柔できるおもう……な、よ?」
「ヒューゴ、お出しなさい!!」
いたんだ……誰かさんの存在感に気づかなかった……ごめんよ。 等と思いつつ、きらきらカワイイ彩りで、フルーツタップリのケーキに私は、息を飲んだ。 質より量だったのは、昨日の飢餓状態での出来事。 今は普通に女の子だし?(鳥だけど)カワイイ菓子に目がないのだ。
「仕方がないわね」
「じゃぁ、行きましょう!!」
ズボッ、って……胸筋の間に埋められた。 いや、埋まり切らないんだけど、こう、なんかうまい事鎖骨? 胸筋? そんな場所に乗せられた感じ?
「……や、柔らかいお肉がいい……」
大きなお胸のベッドに抗議をしようと考えていた私だが、新たな衝撃に大きなお胸が楽園に思えた瞬間だった。
シクシクシクシク
そして、数時間後には、私とは違う楽園から逃亡者が訪れる。
ここは何時だって夜と死の気配が濃い場所だけど、それでも私は黄昏る。
遠くを眺めて……。
そう私の未来を!!
エイマーズ領にいた頃は、嫌な事もあったが、漠然と自分の未来はこんな感じだろうなってのをうすぼんやりと認識していて、悩む事は無かった。
私は、ここで何をすればいいのだろう……。
「このままでは、堕落してしまうっぴ!!」
つい叫べば、今日のベッド番の侍女と、プライベートタイムを楽しんでいる侍女がビクッとしていた。 身体的な疲労が大きいため、休息は一般の侍女より多いそうだ。 まぁ、それでも縫物や、菓子作り等しているのだから、お休みとは言い難いのだけど。
「どうされたんですか? 急に、驚いてしまいましたよ?」
やんわり言われれば、驚いているとは思えない。
「ぁ、独り言です。 お気になさらないでください」
そして私は再び黄昏る。
ここにいる人に聞けば、皇帝陛下の餌とかって言うのをこう受け止めやすい言葉で、丸め込むように言われそうだなぁ……と思えば、なんか、私は何をすればいいの? なんて、聞けない。
でも、それだと、私の生きる意味って何だろうってなるじゃない?
「窓の外に何か見えますかぁ?」
私の視線に合わせて外を見る侍女。 感覚的には顔面が襲ってくる感じ、衝動的に突きそうになるのを我慢した。 意識が鳥の本能に侵食されているのでしょうか?
「あれ、畑? ジャガイモ?」
「はい、畑で、ジャガイモすねぇ~。 お嬢様は物知りですねぇ~」
いや、そりゃぁ大地の民だって、野菜や穀物は食べるし、畑はしていたからね。
「こんなところで、作物が取れるの?」
「人が生きるために必要とする栄養と、植物が必要とする栄養は違いますから。 それに、畑は、日があたるようにしてありますし」
「ふぅん? 何か? お手伝いする事ある?」
「そうですねぇ……、収穫にはまだ早いですし、虫をとってもらうとか?」
私は、ガックリした。
「虫は無理、むしろダメ、足の無い虫も苦手だし、足が多いのも嫌だし、鱗粉もなんかイヤ。あとは、ナメクジとかカエルとかも苦手だし」
「……よく、陛下が平気でしたね」
「それは、どうなのよ」
言わんとする事は分かるが、私は苦笑した。 まぁ、知的好奇心が勝り、ちょっとした興奮状態に入っていたとは言い難いから言わない。
「人の姿になったから冗談で済ませる事ができるのですよ」
「ふぅん」
「それで、どうされたのですか?」
「自分の未来が見えない……。 お胸の間で寝起きして、ご飯を食べるだけの人生、ソレを生きていると言えるのでしょうか!!」
涙ながらに訴える。
「お嬢様は小さいですから、フラフラされると危険ですし? どこかで落としそうだし、嵌って見失いそうですし、持って歩いた方が安全だから、よろしくって言われたんですよ。 ナルサス様に」
「扱いが雑!!」
「それに小鳥の仕事なんて、寝て、食べて、飛んで、歌うぐらいじゃないですか! 余り深く考えない事ですよ」
なんて言うから、人の姿に戻ろうとしたけれど、出来なかった。
「ぇ? もしかして……私、もう、人の姿に戻れないの?」
ガックリしているところに騒々しい音が玄関から響いてくる。
「らららら~~~」
なんて、ノリノリ呑気に歌うナルサスの声が腹立たしくて、私は玄関へと飛んで行き、そのまま足から顔面に向かって突進しようとすれば、両手が広げられ、きらきらした感情の流動を見せつけられ、引き返すことにしようとしたら、背後からガシッと掴まれた。
「あら~~、小鳥ちゃん。 まだ、その姿なのぉ?」
顔を見合わせニコニコと言うナルサスの手を突く。
「不愉快だわ!! その姿なんじゃなくて、人の姿に戻れないのよ!! どうしてくれる」
「どうしてって……。 そもそも、その姿になった原因を取り払えばいいんじゃないかしら?」
「原因?」
「そう、思い出して、小鳥ちゃんがその姿になったのはエネルギー切れではなくて、もともとは陛下から逃げるためだったでしょう?」
「……まぁ、その後、尾羽をあげたら意識を失くしてしまったけど。 って、何しているのよエッチ!! 尾羽を触るなんて」
「あら、尾羽を触るとエッチなの?」
「……そういう事はないけど……気分?」
「あらやだ、私に発情しちゃった?」
「しないから!!」
「じゃぁ、話を戻すわぁ~」
いや、私の繊細な心を適当に流さないで貰いたいのだが……。 ぷりぷり怒って見せるが、尻尾が人為的に広げられている状態で、恰好がつかない。
「ふむ、尾羽の数は戻っているから心理的な問題じゃないかしら? なら、答えは簡単!!」
「そうなの?」
「そうよ!! 陛下の側にいて、陛下に慣れればいいのよ!!」
私は遠慮なく、ウヘッなんて顔をした。
「報告があるから、一緒にいきましょう!!」
「それは兎も角、放しなさいよ!! 手汗でジンワリしちゃうでしょう!!」
「あら、失礼な子ねぇ~。 可愛いお菓子をお土産に買ってきてあげたのに」
「可愛いお菓子があれば、懐柔できるおもう……な、よ?」
「ヒューゴ、お出しなさい!!」
いたんだ……誰かさんの存在感に気づかなかった……ごめんよ。 等と思いつつ、きらきらカワイイ彩りで、フルーツタップリのケーキに私は、息を飲んだ。 質より量だったのは、昨日の飢餓状態での出来事。 今は普通に女の子だし?(鳥だけど)カワイイ菓子に目がないのだ。
「仕方がないわね」
「じゃぁ、行きましょう!!」
ズボッ、って……胸筋の間に埋められた。 いや、埋まり切らないんだけど、こう、なんかうまい事鎖骨? 胸筋? そんな場所に乗せられた感じ?
「……や、柔らかいお肉がいい……」
大きなお胸のベッドに抗議をしようと考えていた私だが、新たな衝撃に大きなお胸が楽園に思えた瞬間だった。
シクシクシクシク
そして、数時間後には、私とは違う楽園から逃亡者が訪れる。
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