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51.それはお互いが張った罠
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カイルは、戸惑いと理性……そして欲情を測りにかけ、小さな深呼吸を幾度となく繰り返す。
宥め、賺し、身体をひきは無そうとすれば、嫌だと抱き着いてくる。
エリスがコントロールを覚える事無く成体となった事で、抑えの効かない発情が誘うように甘い香りをまき散らしていた。
苦々しく笑うのは、不完全な癖に逃がす気が無い自分への自嘲。
「陛下!!」
必死に呼びかける声は、泣きそうで、多分……それがどれほど欲情を誘っているのかエリス自身は分かっていないだろう。
「なんですか?」
手を伸ばし、頭を撫で、子供扱いする事で、なんとか耐えようとした……。 まだ、ダメだ……呼吸が重く苦しいとカイルは思った。
「陛下は、その……、私の他にも翼ある者の知り合いがいるんですか?」
何が言いたいのか分からないではない……。
翼ある者の数は減り、そのうえ擬態し身を隠している。 今、この世界で同種を探す事は限りなく難しく、だからこそ見つければ、物にしようと本能が叫ぶ。
幾度となく……カイルはその不完全さに拒否された。 思いだせば、目の前のエリスを抱いていいのかと決意が揺らぐ。
「ぇ、まぁ、それは、色々と旅もしましたからね」
じりじりと背後へとずり逃げれば、エリスが追い立てる。
「その方と、卵を作ったんですか!?」
悪気の無い言葉は、カイルの自尊心を傷つけるものだとエリスは知らない。
冷静に、冷静に……。
「私の場合、卵を作るだけの余裕はありませんし、出来るようになれるかも分かりません。 中途半端なんですよ。 とりあえず落ち着きましょう。 成体となって、身体に心が追い付かないよくある事です」
「触って……よ」
泣きそうなエリスの甘い声が耳をくすぐった。 そっと滑らかな皮膚と皮膚が触れ合ってくる。
甘い……交わり……。
カイルはその力が交わらぬように、それでも優しく拒絶し、そして優しく抱き寄せその背を撫でれば、涙に潤んだ瞳が切なさを訴える。
「違う……もっと欲しいのは、違うものなの」
溜息に混じる熱い吐息が、エリスの発する熱と混ざれば、エリスの涙が流れ甘い声が漏れ出ていた。
「仕方のない子ですね」
闇を溶かしカイルは形を変えた。
理性を放棄する覚悟をした。
「どうして、姿を変えるの?」
エリスに問われたカイルは、やっぱり静かに笑って見せる。
「都合が良いのと……気分の問題でしょうか?」
さわさわと、大きな手でエリスの腰に触れ、抱き寄せ、そっと啄むような口づけを幾度か交わす。 ようやく安堵した様子のエリスが、カイルに身を任せる。
何を、そんなに不安がっているのだろう?
カイルには、全く理解できず、理解できないまま腰から臀部、太腿へと手のひらを撫でおろす。 少年のようだった腰から尻にかけてのラインが女性らしいものになっていた。
「あぁ、大人に、なったのですねぇ……」
しみじみとした声に、エリスの頬が一気に赤くなり、それが可愛らしくてカイルは笑う。 この程度で、恥ずかしがっていてどうするのですか? と、問いたいが、ユックリと撫でる肌は種としての性質上、お互いの生命エネルギーで触れ混ぜながら撫でており、カイルの方も今更止めると言われても、困る状態へと落ちていた。
落ちる覚悟をしたからこそ、男姿へと戻った。
だから、エリスが逃げないように……慎重に口づけの数を増やしていく。 離さぬように腰を抱き、太腿を撫でていた手で頬を撫でた。
エリスが押し倒すようになっていた体格差も、今はカイルの方がエリスを包みこむように抱き締めている。 頬を撫で、髪を撫で、カイルの両足をまたぐように膝立ちになっているエリスを抱き寄せる。
顎から頬のラインを撫でながら、少し上向かせ口づけた。 唇を開くようにと幾度となく舌で撫で、その意図が伝わらない事にカイルは小さく笑う。
「口を開けて」
甘く優しくエリスの耳元に囁いた。
「溶け合うように、混ざり合いましょう。 中庸の者のように、獣達のように……そして、私達らしく」
エリスの身体が震え、彼女自身の光の生命エネルギーが美しく火の粉のように舞い、そして、儚く、飢えた獣である私の中に消えていく。
ぞわぞわとする魂を、抑え込む事がどれ程大変なのかを知らぬ小鳥が、少しだけ恨めしい。
遠慮がちに開かれた唇に、舌を入れた。 歯列を撫で、舌先で舌を突き撫でる。 ユックリとユックリとした動作で口内を甘く撫でていく。 欲情を伴った唾液はぐらぐらとカイルの理性を挑発してくる。
「んっ、っぐ、ぁ…んっふ」
舌先を吸い、撫で、絡め、徐々に追い込むたびに漏れる甘い声に、痺れそうになる。 あぁ、ズルイ……なんてズルイ……。
ズルイ大人に騙されないようにと、気遣ってきたのに……落ちて来たのは小鳥の方。
はぁ……。
溜息交じりのウットリとした呼吸を漏らし唇を離せば、蕩けるような視線がもう終わりなのかと言うように見つめてきていた。
「少し、力を頂いていいですか? 大人の身体を維持するには髪だけでは少し辛いもので」
「ぇ、ぁ、うん。 いいよ。 どうすればいい? どこか、切る?」
「力を抜いて下さい。 痛みはありません……そういうものですから」
白く柔らかな首筋を舐め、そっと牙を立てた……。 甘い黄金の血に眩暈がする……けれど、目的はソレではなくて……。
「ぁっんっ」
エリスは吸血の衝動から軽い絶頂を迎え、身体から力が抜け崩れ落ちていく。 カイルはエリスの身体を支え抱きしめた。
「ありがとうございます」
チュッと甘く触れるだけの口づけで、その身体はがくがくと細かく震える。
「カワイイ……」
甘い言葉、そして差し入れられる舌は、もっと、もっとと味わうように、口内をねっとりと撫で舐める。 重なりあう舌が撫で合い、絡み、お互いの熱を分け合い、力を分け合い、混ざり合う。
2人の欲情は、お互いの発情を促し、甘い香りをその身から発しあっていた。
絡み、絡まる香りと身体。
「あっ、あっ、ぁっ」
エリスはヒクヒクと身体をひくつかせ、小さな喘ぎを小刻みに零し、カイルの身体に手折り込んできた。
「いい子ですねぇ」
優しく背中を撫でるカイルの欲を、エリスが気づくはずはない。
宥め、賺し、身体をひきは無そうとすれば、嫌だと抱き着いてくる。
エリスがコントロールを覚える事無く成体となった事で、抑えの効かない発情が誘うように甘い香りをまき散らしていた。
苦々しく笑うのは、不完全な癖に逃がす気が無い自分への自嘲。
「陛下!!」
必死に呼びかける声は、泣きそうで、多分……それがどれほど欲情を誘っているのかエリス自身は分かっていないだろう。
「なんですか?」
手を伸ばし、頭を撫で、子供扱いする事で、なんとか耐えようとした……。 まだ、ダメだ……呼吸が重く苦しいとカイルは思った。
「陛下は、その……、私の他にも翼ある者の知り合いがいるんですか?」
何が言いたいのか分からないではない……。
翼ある者の数は減り、そのうえ擬態し身を隠している。 今、この世界で同種を探す事は限りなく難しく、だからこそ見つければ、物にしようと本能が叫ぶ。
幾度となく……カイルはその不完全さに拒否された。 思いだせば、目の前のエリスを抱いていいのかと決意が揺らぐ。
「ぇ、まぁ、それは、色々と旅もしましたからね」
じりじりと背後へとずり逃げれば、エリスが追い立てる。
「その方と、卵を作ったんですか!?」
悪気の無い言葉は、カイルの自尊心を傷つけるものだとエリスは知らない。
冷静に、冷静に……。
「私の場合、卵を作るだけの余裕はありませんし、出来るようになれるかも分かりません。 中途半端なんですよ。 とりあえず落ち着きましょう。 成体となって、身体に心が追い付かないよくある事です」
「触って……よ」
泣きそうなエリスの甘い声が耳をくすぐった。 そっと滑らかな皮膚と皮膚が触れ合ってくる。
甘い……交わり……。
カイルはその力が交わらぬように、それでも優しく拒絶し、そして優しく抱き寄せその背を撫でれば、涙に潤んだ瞳が切なさを訴える。
「違う……もっと欲しいのは、違うものなの」
溜息に混じる熱い吐息が、エリスの発する熱と混ざれば、エリスの涙が流れ甘い声が漏れ出ていた。
「仕方のない子ですね」
闇を溶かしカイルは形を変えた。
理性を放棄する覚悟をした。
「どうして、姿を変えるの?」
エリスに問われたカイルは、やっぱり静かに笑って見せる。
「都合が良いのと……気分の問題でしょうか?」
さわさわと、大きな手でエリスの腰に触れ、抱き寄せ、そっと啄むような口づけを幾度か交わす。 ようやく安堵した様子のエリスが、カイルに身を任せる。
何を、そんなに不安がっているのだろう?
カイルには、全く理解できず、理解できないまま腰から臀部、太腿へと手のひらを撫でおろす。 少年のようだった腰から尻にかけてのラインが女性らしいものになっていた。
「あぁ、大人に、なったのですねぇ……」
しみじみとした声に、エリスの頬が一気に赤くなり、それが可愛らしくてカイルは笑う。 この程度で、恥ずかしがっていてどうするのですか? と、問いたいが、ユックリと撫でる肌は種としての性質上、お互いの生命エネルギーで触れ混ぜながら撫でており、カイルの方も今更止めると言われても、困る状態へと落ちていた。
落ちる覚悟をしたからこそ、男姿へと戻った。
だから、エリスが逃げないように……慎重に口づけの数を増やしていく。 離さぬように腰を抱き、太腿を撫でていた手で頬を撫でた。
エリスが押し倒すようになっていた体格差も、今はカイルの方がエリスを包みこむように抱き締めている。 頬を撫で、髪を撫で、カイルの両足をまたぐように膝立ちになっているエリスを抱き寄せる。
顎から頬のラインを撫でながら、少し上向かせ口づけた。 唇を開くようにと幾度となく舌で撫で、その意図が伝わらない事にカイルは小さく笑う。
「口を開けて」
甘く優しくエリスの耳元に囁いた。
「溶け合うように、混ざり合いましょう。 中庸の者のように、獣達のように……そして、私達らしく」
エリスの身体が震え、彼女自身の光の生命エネルギーが美しく火の粉のように舞い、そして、儚く、飢えた獣である私の中に消えていく。
ぞわぞわとする魂を、抑え込む事がどれ程大変なのかを知らぬ小鳥が、少しだけ恨めしい。
遠慮がちに開かれた唇に、舌を入れた。 歯列を撫で、舌先で舌を突き撫でる。 ユックリとユックリとした動作で口内を甘く撫でていく。 欲情を伴った唾液はぐらぐらとカイルの理性を挑発してくる。
「んっ、っぐ、ぁ…んっふ」
舌先を吸い、撫で、絡め、徐々に追い込むたびに漏れる甘い声に、痺れそうになる。 あぁ、ズルイ……なんてズルイ……。
ズルイ大人に騙されないようにと、気遣ってきたのに……落ちて来たのは小鳥の方。
はぁ……。
溜息交じりのウットリとした呼吸を漏らし唇を離せば、蕩けるような視線がもう終わりなのかと言うように見つめてきていた。
「少し、力を頂いていいですか? 大人の身体を維持するには髪だけでは少し辛いもので」
「ぇ、ぁ、うん。 いいよ。 どうすればいい? どこか、切る?」
「力を抜いて下さい。 痛みはありません……そういうものですから」
白く柔らかな首筋を舐め、そっと牙を立てた……。 甘い黄金の血に眩暈がする……けれど、目的はソレではなくて……。
「ぁっんっ」
エリスは吸血の衝動から軽い絶頂を迎え、身体から力が抜け崩れ落ちていく。 カイルはエリスの身体を支え抱きしめた。
「ありがとうございます」
チュッと甘く触れるだけの口づけで、その身体はがくがくと細かく震える。
「カワイイ……」
甘い言葉、そして差し入れられる舌は、もっと、もっとと味わうように、口内をねっとりと撫で舐める。 重なりあう舌が撫で合い、絡み、お互いの熱を分け合い、力を分け合い、混ざり合う。
2人の欲情は、お互いの発情を促し、甘い香りをその身から発しあっていた。
絡み、絡まる香りと身体。
「あっ、あっ、ぁっ」
エリスはヒクヒクと身体をひくつかせ、小さな喘ぎを小刻みに零し、カイルの身体に手折り込んできた。
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