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終章
55.その後 02
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私兵団の者達が、死者の森で騒めく。
「戦争だ……」
「いや、闘争だろう」
「争いだ」
防具を身に着け、武器を身に着ける。
「6年ぶりだ」
「相手は素人だが油断はするな」
皇妃の楽園、そしてメイザース公爵家が制圧される事となった。 必要以上の緊張が走っているのは、生食鬼の存在や、皇妃の実家メイザース公爵家が初代皇帝から受け継ぎ、代々収集してきた竜の遺産があるため。
問題は無いが油断は出来ない。
とは言え、今回最も重要となるだろう準備は終えており、後は茶番ともいえる幕引きをきっちりとするだけらしい。
準備の一つは観測、相手の戦力を間違えず図る事。
もう一つの準備は、全てを終えた後を考えた貴族達の懐柔。
元々アドラム帝国は、2家によって派閥が分けられていた。
外交のグストリア公爵家。
竜を掲げるメイザース公爵家。
お互いが、お互いを必要としている時代は栄えるが、ここ100年近くはメイザース公爵家の力が強かった事は、誰の記憶にも残っている。
未だ、グストリア公爵家が健在なのは、カイルによって莫大な戦争賠償金が留置かれ、傭兵時代に懇意となった商人達を使うなど、事あるごとにメイザース公爵家を抑制したためもある。
とは言え、世間では社交の場に一切出る事が無かったカイルとメイザース公爵家との関係を知る者は少なく、色々と噂を流すのに優位に使わせてもらったと言えるだろう。
「長年戦争賠償金が、国に還元されなかったのはメイザース公爵家が懐に入れていたせいだ」
「彼等は、初代皇の竜の遺産も全て手にしている」
「半年前に暴れ数十人の兵士を惨殺した化け物も、メイザース公爵家による人体実験の成果だったと言うではないか」
「なんとも恐ろしい」
そんな噂を世間に上手く流れていた。
市民はそれらの噂に軽く乗ってくれたが、貴族達の腰は重かった。 理由は、メイザース公爵家が自らの派閥に所属する貴族当主に、惜しまず竜の遺産を分与していたためだ。
「では、皇妃、公爵の不老に秘密があるとするなら?」
誰もが、幾度となく竜の血を一族に混ぜて来たからだと思っていた。
皇妃ミラの誕生が50年以上前だとか、現公爵が80を超えるとか、その秘密を知りたいとは思いこそすれ、逆らうだけの理由とはなりえなかった。
「なら、なぜ、皇族を滅ぼした疫病の際に、メイザース公爵家と我がグストリア公爵家に被害が無かったか? 彼等は竜の遺品を集め、竜を共に持ち、獲物とし、研究を続けて来た。 彼等だけが持ち得る何かがあるとは考えられませんか?」
「それが事実であれば……」
こうして、ようやく貴族達は重い腰を上げ、メイザース公爵家を囲い込む準備が出来たのだ。
「ナルサスは公爵側?」
「そうよ? 何か?」
そう言いながら、見下すように笑いながらナルサスが私の鼻をつまんでくる。
「大丈夫なの? 竜に関するアイテムが色々あるんでしょう?」
「まぁ、あるわね。 見せてもらったから知っているわ。 だから、大丈夫って言えるのよ。 竜の爪も、皮も角もぜ~んぶ、本体についているから力があるのよ。 身体から離れてしまえば、ちょっと固いだけの代物」
「でも、それで生食鬼ができたりするんでしょう?」
「まぁ、そこらへんの人間をとっつかまえて、口の中に放り込みました。 はい、生食鬼の完成って言うわけにはいかないようだから、大丈夫なんじゃない?」
「そうじゃなくって、その、効果のあるアイテムもあるんじゃないかなぁ……って」
「あぁ、なるほどね。 大丈夫よ。 問題無いわ。 そこに祝福なり、呪いなり、思いが無ければ意味はないし、意味があっても生物には負けるでしょう? いえ、負けたら……恨むわよカイル」
そう言って、笑うカイルの肩をナルサスが組もうとするから、私はカイルとナルサスの間に入って邪魔をし、笑われてしまう。
「なんかむかつくんですけど!!」
クスッとカイルの目元が笑う。
「怒らないで下さい」
カイルがそっと口づける。
そんな事で、丸め込まれないんだから……って、人前で舌を入れんな!! 顔を真っ赤にしながらじたばたすれば、両頬を大きな手で包まれ、チュッと軽く触れた口づけで終わられた。
「人前で止めてよね」
「今更でしょう。 周知の事実と言う奴なのですから。 さて、ナルサス」
「はっ」
急に仰々しいなと思えば、膝をつき頭を下げた。
「我が友人であり、第一の騎士であるナルサスに祝福を」
闇色の力がナルサスを包み込んだ。
「まぁ、魔導師の使うバフの強化版のようなものですね。 長期間は持ちませんが、竜の抜け殻に負けるような事はありません。 ヒューゴ、ヘイシオ、モイラ」
「モイラも行くんだ!!」
「行きますよ。 お嬢様」
なんだか何時もより生き生きとしているような気がする。
「モイラを始めとする侍女達への祝福は、エリスにお願いしましょうか?」
「やった事ないんだけど?」
「無事帰ってきてくださいと願えば良いのですよ」
「あら~。 コレで貴方達のお世話がどう思われていたかわかるわよぉ~」
なんて、ナルサスが笑いながら意地悪を言うから、ゲシゲシと蹴りを入れる。
一応カイルを真似してやっては見たけれど、どうなんだろう?? 侍女達を見れば、笑顔で親指たてられたから大丈夫なのだろう。 ちなみに、翼ある者のバフは思いに比例するから、縁の薄い下位兵士に関しては魔導師のバフの方がよく乗るらしい。
そんなこんなで、決して多いとは言えない私兵団を2派に分けられた。
「皇妃に会うんですよね? 情とかないんですか?」
気になるから、聞いて見れば……結構真剣に聞いたのに笑われた。
「まさか、そんなもの欠片もありませんよ」
何時もと変わらぬカイル。
でも知っている。 あえて、カイルが皇妃側を選んだと言う事を。
「私、大人しくしているから、ついて行っていい?」
「まぁ……楽園側はほぼ戦闘は無いでしょうしから、構いませんよ」
以外にも軽かった。
半年に渡って見張り続けたゆえの余裕と言うものだろうか? ソレはソレで心配な気がする。
落ち着かない……。
「戦争だ……」
「いや、闘争だろう」
「争いだ」
防具を身に着け、武器を身に着ける。
「6年ぶりだ」
「相手は素人だが油断はするな」
皇妃の楽園、そしてメイザース公爵家が制圧される事となった。 必要以上の緊張が走っているのは、生食鬼の存在や、皇妃の実家メイザース公爵家が初代皇帝から受け継ぎ、代々収集してきた竜の遺産があるため。
問題は無いが油断は出来ない。
とは言え、今回最も重要となるだろう準備は終えており、後は茶番ともいえる幕引きをきっちりとするだけらしい。
準備の一つは観測、相手の戦力を間違えず図る事。
もう一つの準備は、全てを終えた後を考えた貴族達の懐柔。
元々アドラム帝国は、2家によって派閥が分けられていた。
外交のグストリア公爵家。
竜を掲げるメイザース公爵家。
お互いが、お互いを必要としている時代は栄えるが、ここ100年近くはメイザース公爵家の力が強かった事は、誰の記憶にも残っている。
未だ、グストリア公爵家が健在なのは、カイルによって莫大な戦争賠償金が留置かれ、傭兵時代に懇意となった商人達を使うなど、事あるごとにメイザース公爵家を抑制したためもある。
とは言え、世間では社交の場に一切出る事が無かったカイルとメイザース公爵家との関係を知る者は少なく、色々と噂を流すのに優位に使わせてもらったと言えるだろう。
「長年戦争賠償金が、国に還元されなかったのはメイザース公爵家が懐に入れていたせいだ」
「彼等は、初代皇の竜の遺産も全て手にしている」
「半年前に暴れ数十人の兵士を惨殺した化け物も、メイザース公爵家による人体実験の成果だったと言うではないか」
「なんとも恐ろしい」
そんな噂を世間に上手く流れていた。
市民はそれらの噂に軽く乗ってくれたが、貴族達の腰は重かった。 理由は、メイザース公爵家が自らの派閥に所属する貴族当主に、惜しまず竜の遺産を分与していたためだ。
「では、皇妃、公爵の不老に秘密があるとするなら?」
誰もが、幾度となく竜の血を一族に混ぜて来たからだと思っていた。
皇妃ミラの誕生が50年以上前だとか、現公爵が80を超えるとか、その秘密を知りたいとは思いこそすれ、逆らうだけの理由とはなりえなかった。
「なら、なぜ、皇族を滅ぼした疫病の際に、メイザース公爵家と我がグストリア公爵家に被害が無かったか? 彼等は竜の遺品を集め、竜を共に持ち、獲物とし、研究を続けて来た。 彼等だけが持ち得る何かがあるとは考えられませんか?」
「それが事実であれば……」
こうして、ようやく貴族達は重い腰を上げ、メイザース公爵家を囲い込む準備が出来たのだ。
「ナルサスは公爵側?」
「そうよ? 何か?」
そう言いながら、見下すように笑いながらナルサスが私の鼻をつまんでくる。
「大丈夫なの? 竜に関するアイテムが色々あるんでしょう?」
「まぁ、あるわね。 見せてもらったから知っているわ。 だから、大丈夫って言えるのよ。 竜の爪も、皮も角もぜ~んぶ、本体についているから力があるのよ。 身体から離れてしまえば、ちょっと固いだけの代物」
「でも、それで生食鬼ができたりするんでしょう?」
「まぁ、そこらへんの人間をとっつかまえて、口の中に放り込みました。 はい、生食鬼の完成って言うわけにはいかないようだから、大丈夫なんじゃない?」
「そうじゃなくって、その、効果のあるアイテムもあるんじゃないかなぁ……って」
「あぁ、なるほどね。 大丈夫よ。 問題無いわ。 そこに祝福なり、呪いなり、思いが無ければ意味はないし、意味があっても生物には負けるでしょう? いえ、負けたら……恨むわよカイル」
そう言って、笑うカイルの肩をナルサスが組もうとするから、私はカイルとナルサスの間に入って邪魔をし、笑われてしまう。
「なんかむかつくんですけど!!」
クスッとカイルの目元が笑う。
「怒らないで下さい」
カイルがそっと口づける。
そんな事で、丸め込まれないんだから……って、人前で舌を入れんな!! 顔を真っ赤にしながらじたばたすれば、両頬を大きな手で包まれ、チュッと軽く触れた口づけで終わられた。
「人前で止めてよね」
「今更でしょう。 周知の事実と言う奴なのですから。 さて、ナルサス」
「はっ」
急に仰々しいなと思えば、膝をつき頭を下げた。
「我が友人であり、第一の騎士であるナルサスに祝福を」
闇色の力がナルサスを包み込んだ。
「まぁ、魔導師の使うバフの強化版のようなものですね。 長期間は持ちませんが、竜の抜け殻に負けるような事はありません。 ヒューゴ、ヘイシオ、モイラ」
「モイラも行くんだ!!」
「行きますよ。 お嬢様」
なんだか何時もより生き生きとしているような気がする。
「モイラを始めとする侍女達への祝福は、エリスにお願いしましょうか?」
「やった事ないんだけど?」
「無事帰ってきてくださいと願えば良いのですよ」
「あら~。 コレで貴方達のお世話がどう思われていたかわかるわよぉ~」
なんて、ナルサスが笑いながら意地悪を言うから、ゲシゲシと蹴りを入れる。
一応カイルを真似してやっては見たけれど、どうなんだろう?? 侍女達を見れば、笑顔で親指たてられたから大丈夫なのだろう。 ちなみに、翼ある者のバフは思いに比例するから、縁の薄い下位兵士に関しては魔導師のバフの方がよく乗るらしい。
そんなこんなで、決して多いとは言えない私兵団を2派に分けられた。
「皇妃に会うんですよね? 情とかないんですか?」
気になるから、聞いて見れば……結構真剣に聞いたのに笑われた。
「まさか、そんなもの欠片もありませんよ」
何時もと変わらぬカイル。
でも知っている。 あえて、カイルが皇妃側を選んだと言う事を。
「私、大人しくしているから、ついて行っていい?」
「まぁ……楽園側はほぼ戦闘は無いでしょうしから、構いませんよ」
以外にも軽かった。
半年に渡って見張り続けたゆえの余裕と言うものだろうか? ソレはソレで心配な気がする。
落ち着かない……。
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