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終章
59.終わり
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月日は経過し、私達はエイマーズ領に無事移動した。
未だ、3割の大地の民が残っていたが、手に職を持つ者はそのまま利用させてもらう事とした。 ただし、私の姿を見て支配的な態度を向けなかった者に限ってだが……。
グストリア公爵は色々と力になって欲しいと言っていたが、そろそろ自分達の幸福を掴む事を許される時期だろうとカイルは断ったそうだ。
「翼ある者を、都合の良いアイテムとしか見ない連中と仲良くできる訳等ありませんからね」
と言うのが、本音らしい。
自然豊かなエイマーズ領には、皇都の豊かさは無い。 だけど、長く戦場で傭兵をしていた者達がきにするような事は無く、長く彼等を追い商売の機会を掴んでいる商人もおり、今はそんな者達と共にエイマーズ領に広がる自然をどう活用しようかと意見を寄せ合っている最中だ。
私とカイルと言えば、旅に出ようと言いながら、今までとは打って変わった呑気な日常を楽しんでいる。 例えば森に入って木の実をとったり、獣を狩ったり?
「森でとれた果実を使ってケーキを焼いて見たのですが、手を止めて試食をしていただけませんか?」
「……今度は、事前に試食したんでしょうね……」
前回、ヌルリとした味のない果実が入ったフルーツケーキを食べさせられた領主様は、最近料理に嵌りだしたカイルに冷ややかな視線を送った。
「大丈夫ですよ。 エリスに食べて貰うと思えば、そのようなひと手間なんて事はありません」
「私も味見したから大丈夫!!」
と、言うが……ナルサスを始め、その場にいた人々は顔を顰めた。 私達の背後では、手伝いをした料理人が大丈夫だとジェスチャーで伝えていて、多少引っかかりを感じるが、まぁ……気づかないふりをするのも大人の対応だろう。
時に失礼な態度にも我慢が必要と言うものだ。
いえ……正直な反応は成長に必要?
なにしろエネルギー重視の生き物であるカイルや私は、中庸の民と違って味覚の許容幅が凄く大きいらしいと言う事が、自分達で料理をし、他人に食べてもらう事で初めて知ったのだ。
「ま、まぁ、食べられ無くはないわね……」
「失礼ですね。 余り文句を言われるから、食べると元気になる副作用をつけておきましたよ。 しっかり働いて下さい」
「……薬だと思って食べろと言う事ね……」
そう言われれば言われたで、腑に落ちない私とカイルだった。
「まぁ、いいわ。 そういえば、あの子だけど」
ナルサスが思い出したかのように言いながら、流れるような動作でお茶を飲み干した。
「あの子?」
「そう、小鳥ちゃんが売られるきっかけになった子?」
「えっと、カノン?」
「そんな名前だったかしら?」
「多分、そんな名前だったと思う」
キャノだが、既に名を覚えている者もいない……。
「グストリア公爵の次期当主の妻の座についたらしいわよ」
「どうしてそうなった!!」
「それがね、双子の2人が団舎に襲い掛かってきた日、その子だけが皇妃の元に助けをもとめにいったそうなのよ。 で、半年ほど仕えている間に、皇都に憧れる大地の民を皇妃に捧げて、良い感じに扱っていてもらっていて、制裁の日? 犠牲者としてうまく保護を受けてそのまま、可哀そうな大地の民の娘は未来の公爵様の妻となるそうよ」
「……なかなか逞しい……」
私が呆れて言えばカイルだけが真面目に、だけれど面倒そうにつぶやいた。
「第二の皇妃にならないよう、注意をグストリア公爵に進言しておきましょう」
まぁ、そんな感じで私達は元気です!
終わり
未だ、3割の大地の民が残っていたが、手に職を持つ者はそのまま利用させてもらう事とした。 ただし、私の姿を見て支配的な態度を向けなかった者に限ってだが……。
グストリア公爵は色々と力になって欲しいと言っていたが、そろそろ自分達の幸福を掴む事を許される時期だろうとカイルは断ったそうだ。
「翼ある者を、都合の良いアイテムとしか見ない連中と仲良くできる訳等ありませんからね」
と言うのが、本音らしい。
自然豊かなエイマーズ領には、皇都の豊かさは無い。 だけど、長く戦場で傭兵をしていた者達がきにするような事は無く、長く彼等を追い商売の機会を掴んでいる商人もおり、今はそんな者達と共にエイマーズ領に広がる自然をどう活用しようかと意見を寄せ合っている最中だ。
私とカイルと言えば、旅に出ようと言いながら、今までとは打って変わった呑気な日常を楽しんでいる。 例えば森に入って木の実をとったり、獣を狩ったり?
「森でとれた果実を使ってケーキを焼いて見たのですが、手を止めて試食をしていただけませんか?」
「……今度は、事前に試食したんでしょうね……」
前回、ヌルリとした味のない果実が入ったフルーツケーキを食べさせられた領主様は、最近料理に嵌りだしたカイルに冷ややかな視線を送った。
「大丈夫ですよ。 エリスに食べて貰うと思えば、そのようなひと手間なんて事はありません」
「私も味見したから大丈夫!!」
と、言うが……ナルサスを始め、その場にいた人々は顔を顰めた。 私達の背後では、手伝いをした料理人が大丈夫だとジェスチャーで伝えていて、多少引っかかりを感じるが、まぁ……気づかないふりをするのも大人の対応だろう。
時に失礼な態度にも我慢が必要と言うものだ。
いえ……正直な反応は成長に必要?
なにしろエネルギー重視の生き物であるカイルや私は、中庸の民と違って味覚の許容幅が凄く大きいらしいと言う事が、自分達で料理をし、他人に食べてもらう事で初めて知ったのだ。
「ま、まぁ、食べられ無くはないわね……」
「失礼ですね。 余り文句を言われるから、食べると元気になる副作用をつけておきましたよ。 しっかり働いて下さい」
「……薬だと思って食べろと言う事ね……」
そう言われれば言われたで、腑に落ちない私とカイルだった。
「まぁ、いいわ。 そういえば、あの子だけど」
ナルサスが思い出したかのように言いながら、流れるような動作でお茶を飲み干した。
「あの子?」
「そう、小鳥ちゃんが売られるきっかけになった子?」
「えっと、カノン?」
「そんな名前だったかしら?」
「多分、そんな名前だったと思う」
キャノだが、既に名を覚えている者もいない……。
「グストリア公爵の次期当主の妻の座についたらしいわよ」
「どうしてそうなった!!」
「それがね、双子の2人が団舎に襲い掛かってきた日、その子だけが皇妃の元に助けをもとめにいったそうなのよ。 で、半年ほど仕えている間に、皇都に憧れる大地の民を皇妃に捧げて、良い感じに扱っていてもらっていて、制裁の日? 犠牲者としてうまく保護を受けてそのまま、可哀そうな大地の民の娘は未来の公爵様の妻となるそうよ」
「……なかなか逞しい……」
私が呆れて言えばカイルだけが真面目に、だけれど面倒そうにつぶやいた。
「第二の皇妃にならないよう、注意をグストリア公爵に進言しておきましょう」
まぁ、そんな感じで私達は元気です!
終わり
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