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おわり
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その後、私は色んな酒造りを研究するために旅に出た。
ブラッドもまた自然の中にある魔法を研究するためにと旅に出た。
私達は、広い世界で、私達の世界を生きていた。
狭くて幸せな世界。
それでも、一応研究な訳で、卒業前には学園に戻らなければいけなかったから。
学園には、エドウィンもジェシカも居なかった。
エドウィンの方は、私が学園を旅立った頃に、退学したらしい。
「何か、問題があったのですか?」
聞いたのは私ではなくブラッド。
「学園を退学し実家の自室に長く籠られていたそうです。 何があったのかと公爵が暴れ込んできましたが、調べた所何も出てきませんでした。 ただ……学園を止める直前、随分と落ち込んでいたと言うだけ」
「そうですか……では、彼は教皇候補からは?」
「いえ、教皇は確定しました」
聞いたところによると、ジェシカの実家の商売を神殿が真似て奪い取った事で、信徒の生活が安定したと言う事だった。
ジェシカの実家は神殿の攻撃を受け衰退。 庶民を虐げる事で得ていた利益分を取り戻そうと貴族相手に金を貸した際の金利を増額し、取り立てを強めた事から、金貸し業における新法が作られ事業は閉ざしたらしい。
「ジェシカは、学園に残った方が良かったのでは? 経理関係が得意なら、国の経理関係に勤める事も出来るだろうし」
問わない方が良いと思いながらも、私は聞いた。
「プライドが許さなかったのでしょうね。 それに、国家機関に居れば彼女達が借金の取り立てに追い立てた貴族達と顔を合わせますし、新法の成立と、高すぎる金利の返還手続きを行ったのが国の経理部でしたからね」
チラリとブラッドを気にかけ見たのはジェシカと仲が良かった経理関係の先生。 チラチラと少しばかり鬱陶しい視線がブラッドに向けられている。
「何か?」
その視線は人がいない場所で特別扱いを求めてくる人達と似ていて、だからだろうブラッドは、少し離れた場所にいる教師に声をかけた。
「いえ、何も」
「そうですか。 そうなのですね。 良かったです。 何も無くて」
ブラッドはシツコイほどに繰り返していた。
「ニーニャさん」
お茶も空になり、卒業の手続きも終わった頃、先生の1人が声をかけてきた。
「猊下が、謝罪したいとおっしゃっておいででした」
「何を?」
私は首を傾げる。
「必要ありませんよ。 気分を害するだろう状況しか予測できないと言うのに、わざわざ会う必要等ないですから」
オマエに何の関係がある。
そう私達の知らない若い教師がいい、教員室から連れ出された。
「そのうち、偶然会う事もあるでしょう」
「そうでしょうね。 猊下も会いたがらない事は想定されていたようで、それでも……困った事があったら、力にならせて欲しいとおっしゃっておいででした」
「大丈夫ですよ。 私がいるんですから。 それとも婚姻の届けにでも行きますか?」
しれっというブラッド。
学園に顔を出した5日後。
私は、教師から書類を受け取り王宮にと出向いた。
知っている人の顔がちらほらとある。
挨拶をしてくる者、ばつの悪そうな表情。
私達は、幼い経験を乗り越えて、大人になる。
過去は拘らず、過去はただ教訓とする……。
苦々しい思い出を私はそう飲み込んだ。
遠く……私はエドウィンを見る。
こういう時にブラッドはいないのだと、溜息をつき……だけど私は避ける事はしない。 避ける理由がない。 私は悪くないのだから。
彼は、ブラッドと同じくらいに背が高く年相応になっていた。 穏やかな微笑みで人の話を聞いている。 彼の周りには若い司祭が数人囲んでいた。
視線が合う……。
気まずいのは、多分両方とも。
避けてくれればいいのに。
そう思ったけれど、エドウィンは寄って来た。
こういう時にブラッドは居ない……。
「ご無沙汰しております猊下」
「久しぶりだね」
向けられる笑みは穏やかなものだった。
「立派になられたと伺っています」
「君のおかげですよ。 君が……私から去って行った時……私は、初めて本当に君の事が好きだった事に気付いたんだ。 なのに……君を利用していた……申し訳なかった……。 どう、謝ればいいのか……許される事すら傲慢に思えて……ならいっそ関わらない方が良いとも思ったけれど……。 私は……その日から……私は……僕は……愛されようとあがく事を止めた」
「猊下は、あれで、私に愛されようとしていたのですか?」
これは、嫌味……。
「痛いところをつくね。 君は……何をしても愛してくれると思っていたんだ」
私は苦笑いを浮かべ、彼もまた困ったように笑う。
「今は分かります。 僕は誰にも相応しく無かった……君は僕には勿体ない女性だったのだと……」
彼は、晴れ晴れしく笑った。
私は、静かに他人行儀に笑う。
そして、通り過ぎた。
行きかう無関係な人達のように。
おわり
ブラッドもまた自然の中にある魔法を研究するためにと旅に出た。
私達は、広い世界で、私達の世界を生きていた。
狭くて幸せな世界。
それでも、一応研究な訳で、卒業前には学園に戻らなければいけなかったから。
学園には、エドウィンもジェシカも居なかった。
エドウィンの方は、私が学園を旅立った頃に、退学したらしい。
「何か、問題があったのですか?」
聞いたのは私ではなくブラッド。
「学園を退学し実家の自室に長く籠られていたそうです。 何があったのかと公爵が暴れ込んできましたが、調べた所何も出てきませんでした。 ただ……学園を止める直前、随分と落ち込んでいたと言うだけ」
「そうですか……では、彼は教皇候補からは?」
「いえ、教皇は確定しました」
聞いたところによると、ジェシカの実家の商売を神殿が真似て奪い取った事で、信徒の生活が安定したと言う事だった。
ジェシカの実家は神殿の攻撃を受け衰退。 庶民を虐げる事で得ていた利益分を取り戻そうと貴族相手に金を貸した際の金利を増額し、取り立てを強めた事から、金貸し業における新法が作られ事業は閉ざしたらしい。
「ジェシカは、学園に残った方が良かったのでは? 経理関係が得意なら、国の経理関係に勤める事も出来るだろうし」
問わない方が良いと思いながらも、私は聞いた。
「プライドが許さなかったのでしょうね。 それに、国家機関に居れば彼女達が借金の取り立てに追い立てた貴族達と顔を合わせますし、新法の成立と、高すぎる金利の返還手続きを行ったのが国の経理部でしたからね」
チラリとブラッドを気にかけ見たのはジェシカと仲が良かった経理関係の先生。 チラチラと少しばかり鬱陶しい視線がブラッドに向けられている。
「何か?」
その視線は人がいない場所で特別扱いを求めてくる人達と似ていて、だからだろうブラッドは、少し離れた場所にいる教師に声をかけた。
「いえ、何も」
「そうですか。 そうなのですね。 良かったです。 何も無くて」
ブラッドはシツコイほどに繰り返していた。
「ニーニャさん」
お茶も空になり、卒業の手続きも終わった頃、先生の1人が声をかけてきた。
「猊下が、謝罪したいとおっしゃっておいででした」
「何を?」
私は首を傾げる。
「必要ありませんよ。 気分を害するだろう状況しか予測できないと言うのに、わざわざ会う必要等ないですから」
オマエに何の関係がある。
そう私達の知らない若い教師がいい、教員室から連れ出された。
「そのうち、偶然会う事もあるでしょう」
「そうでしょうね。 猊下も会いたがらない事は想定されていたようで、それでも……困った事があったら、力にならせて欲しいとおっしゃっておいででした」
「大丈夫ですよ。 私がいるんですから。 それとも婚姻の届けにでも行きますか?」
しれっというブラッド。
学園に顔を出した5日後。
私は、教師から書類を受け取り王宮にと出向いた。
知っている人の顔がちらほらとある。
挨拶をしてくる者、ばつの悪そうな表情。
私達は、幼い経験を乗り越えて、大人になる。
過去は拘らず、過去はただ教訓とする……。
苦々しい思い出を私はそう飲み込んだ。
遠く……私はエドウィンを見る。
こういう時にブラッドはいないのだと、溜息をつき……だけど私は避ける事はしない。 避ける理由がない。 私は悪くないのだから。
彼は、ブラッドと同じくらいに背が高く年相応になっていた。 穏やかな微笑みで人の話を聞いている。 彼の周りには若い司祭が数人囲んでいた。
視線が合う……。
気まずいのは、多分両方とも。
避けてくれればいいのに。
そう思ったけれど、エドウィンは寄って来た。
こういう時にブラッドは居ない……。
「ご無沙汰しております猊下」
「久しぶりだね」
向けられる笑みは穏やかなものだった。
「立派になられたと伺っています」
「君のおかげですよ。 君が……私から去って行った時……私は、初めて本当に君の事が好きだった事に気付いたんだ。 なのに……君を利用していた……申し訳なかった……。 どう、謝ればいいのか……許される事すら傲慢に思えて……ならいっそ関わらない方が良いとも思ったけれど……。 私は……その日から……私は……僕は……愛されようとあがく事を止めた」
「猊下は、あれで、私に愛されようとしていたのですか?」
これは、嫌味……。
「痛いところをつくね。 君は……何をしても愛してくれると思っていたんだ」
私は苦笑いを浮かべ、彼もまた困ったように笑う。
「今は分かります。 僕は誰にも相応しく無かった……君は僕には勿体ない女性だったのだと……」
彼は、晴れ晴れしく笑った。
私は、静かに他人行儀に笑う。
そして、通り過ぎた。
行きかう無関係な人達のように。
おわり
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