【R18】アナタとの結婚なんてありえません

迷い人

文字の大きさ
8 / 14

08.アナタとの結婚はありえません 勘違い男の現実(★ 後半部分)

しおりを挟む
 全く手入れのなされていない鬱蒼とした敷地。 アッペル伯爵家の経済は困窮し、今ではフレッグとその運命の恋人アマンダとその家族以外の人は住んでいない。

 元は愛人たちが集い、先を争いながら人材、物資、金品を愛人たちが貢ぎに来て、賑やかで華々しかったアッペル伯爵家の屋敷は見る影もなく荒れ果てていた。

「これでいいのです」

 前当主であるヨハンは呟き、華やかな屋敷の面影を失った廃屋のような建物の玄関を打ち鳴らした。

「久しぶりです。 今日は話があってよらせていただきました」

 ヨハンの言葉に、フレッグは沈黙を通したもののその顔には分かりやすく、不愉快と書かれていた。



 ヨハンは、明かりも満足に灯さない埃っぽい部屋で、フレッグとシャルの間には何の関係も結ばれていないことを説明した。 同じ内容をフレッグが理解できるまで、ヨハンは言葉を選び、伝え方を選び説明し続けた。 それはとても気の長い作業で、身内だからできる事と言えるだろう。

「ですが!! 陛下がおっしゃったのですよ! 妻に迎えよと」

「だからソレは、オマエが頭を下げ、彼女に奉仕し、妻として迎え入れ、王国に富をもたらすように支えるようにと、お命じになられたのですよ」

 これも何度目でしょうね……ヨハンは薄暗い光に苦笑を隠した。

「でも!! 陛下は迎えよと言われたきり、何も言われなかった!! むしろアマンダとの生活を幸せか? 不自由はさせていないか? そう問われていたぐらいだ」

「それは、本当にアマンダに対する問いかけなのですか?」

「ぇ? ですが、結婚式をあげていないことを、陛下は何もおっしゃらなかった」

「それこそ、平民に挙式費用を払わせ、平民の生まれである娘を貴族に晒さない事は、彼女のためだと思われたのではありませんか? それに……陛下も平民の結婚式に出席なさると言うのは、なさりたいとは思われないでしょうから……」

 綺麗ごと大好きな言葉の裏などそういうもの。

「では、顔を合わせるたびに聞いていた、彼女の安否、幸福とは……」

「アマンダではなく、我が主であるシャル様との関係性を問われていたのでしょう。 陛下はそういう方ですよ。 言葉と身体を尽くして女性を魅了し、王家に優位をもたらせと考えられていても、決してソレをそのまま言葉になさいません。 王としての品位を大切になさり、遠まわしにこうしてはどうだろうか? と分かりにくい言葉で伝えられてくるのです」

「陛下は下賤の者を私に押し付けた事を、申し訳なく思われ、私とアマンダに気を使い優しい言葉をかけてくださっていたのではないのですか?」

 幾度かのかみ合わない会話を交わし、ヨハンは溜息と共にフレッグに問う。

「オマエの妻となるように話をつけてきた、下賤の者ではあるが才覚ある人材、正妻として迎え入れ、貴族としての名声をえれば、あの薄汚い錬金術師達も働きやすいだろう。 運命の恋人を持つオマエには苦労をかけるが、これも国のため耐え忍んでくれ。 そう言われていると思ったのですか?!」

 フレッグがコクリと大きく頷けば、ヨハンは再び大きな溜息をついた。

「王自らが、そのようなことに尽力するわけなどないでしょう? あの方は綺麗な言葉で自らの品位を保ち、人格を保ち、尊敬を獲得しながら、周囲が配慮し希望通り動いてくれることを待つだけですよ」

「そんなバカな……」

「陛下は……この国で一番偉い方です。 フレッグ、オマエのために労力を払うと言う方ではありませんよ」

「では、では、陛下の言葉を取り違えていた僕は……どうなるのですか……」

「陛下の義兄として、陛下を裏切ってしまった私は全てを奪われました」

 静かにヨハンはソレだけを告げた。

 フレッグは元から悪い顔色を一層悪くしながら、バタバタと着替えはじめた。

「何をするつもりですか」

「誤解を告げ、謝罪し、結婚を求める!!」

「お辞めなさい、見苦しい」

「ですが、このままでは僕はすべてを失うのでしょう。 父様が全てを失った日、母様は別の男の妻となった。 僕も、このままではアマンダを奪われてしまうと言うことでしょう!! アマンダを失わないためにも、あの下賤の者を組み敷かなければ……」

 ブツブツとフレッグは呟き目を充血させながら、身支度をする。

 ヨハンは心の中で深く謝罪した。

 我が息子は、状況を理解してはくれないようです。 お手数をおかけしますが、身の程を知らしめてやってください。



 フレッグは彼の持つ中で、一番高価で美しい服を着た。 食べるモノに困っても、アマンダが王子様の愛馬だからと言って手離すことを嫌がった白馬にまたがった。 プロポーズを行う時は、贈り物をするものだが……そんなものを準備する時間も金もない。

 僕自身が美しくて最も高価な贈り物になるだろう。 なんて、素敵な考えだ、彼女も喜んでくれるはずだ。 そう思った……。



 だけど……。



 シャルが住まいとする屋敷に辿り着き、彼を待ち受けていたのは、体躯の良い獣人男との情事。

 僕と言うものがありながら!! そんな腹立たしさを覚える余地など無かった。
 
 肉の塊とフレッグが野次った身体は、母性そのものだった。 まるで生母のような懐の深さをもって男を抱き抱き、その乳房を男に揉みしだかれ、甘くネットリと舐められ、乳首を美味しそうに吸われていた。

 甘い声が慈悲深く獣人男に愛を囁いていた。

「愛しい人、大好きよ」

 甘い甘い女の声にこたえるように、獣人男はうすら笑いを浮かべ、執拗に舐め吸い上げている。 固くなった乳首が赤い果実のように見え欲情した。

 フレッグが肉の塊と罵った身体は、エロスそのものだった。 与えられる快楽に反応し、熱を蓄え甘い朱色に肌を染め、汗をかく。  滲む汗、両足の間から太ももを流れる蜜を、獣人男は美味しそうになめ、両足の間に顔を埋め、ピチャピチャと音を立て舐めていた。 彼女の身体は嬉しそうに震え男に訴える。

「お願い、私の中にあなたのそそり立ったものを入れて」

「入れるだけでいいのか?」

 顔を上げた獣人男は女の耳もとに囁けば、少し拗ねた様子で女は耳にささやき返していた。

 フレッグは2人の行為に息を飲む。

 激しく体の奥深くを突かれ、規則正しい喘ぎと、甘い嬌声を繰り返し、愛を語り、愛を求め、甘い甘い声で2人は囁き求め合っていた。

 どこまでもフレッグの存在を無視して……。
 そこにいるのに、存在を許されなかった。
 フレッグは、その様子に射精していた。

 それは、何度も何度も抱いたアマンダとの行為よりも、見ているだけで欲情にたけり、そして絶望に震えたのだ。



 その日を境にフレッグは消えた。 彼と共に絶望の表情を浮かべ、情事を見つめていたネコ科の女獣人と共に……。



 時はシャルとヴィーゲルトがヨハンと別れて少したった頃に戻る。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

義弟の婚約者が私の婚約者の番でした

五珠 izumi
ファンタジー
「ー…姉さん…ごめん…」 金の髪に碧瞳の美しい私の義弟が、一筋の涙を流しながら言った。 自分も辛いだろうに、この優しい義弟は、こんな時にも私を気遣ってくれているのだ。 視界の先には 私の婚約者と義弟の婚約者が見つめ合っている姿があった。

私に告白してきたはずの先輩が、私の友人とキスをしてました。黙って退散して食事をしていたら、ハイスペックなイケメン彼氏ができちゃったのですが。

石河 翠
恋愛
飲み会の最中に席を立った主人公。化粧室に向かった彼女は、自分に告白してきた先輩と自分の友人がキスをしている現場を目撃する。 自分への告白は、何だったのか。あまりの出来事に衝撃を受けた彼女は、そのまま行きつけの喫茶店に退散する。 そこでやけ食いをする予定が、美味しいものに満足してご機嫌に。ちょっとしてネタとして先ほどのできごとを話したところ、ずっと片想いをしていた相手に押し倒されて……。 好きなひとは高嶺の花だからと諦めつつそばにいたい主人公と、アピールし過ぎているせいで冗談だと思われている愛が重たいヒーローの恋物語。 この作品は、小説家になろう及びエブリスタでも投稿しております。 扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。

義妹の嫌がらせで、子持ち男性と結婚する羽目になりました。義理の娘に嫌われることも覚悟していましたが、本当の家族を手に入れることができました。

石河 翠
ファンタジー
義母と義妹の嫌がらせにより、子持ち男性の元に嫁ぐことになった主人公。夫になる男性は、前妻が残した一人娘を可愛がっており、新しい子どもはいらないのだという。 実家を出ても、自分は家族を持つことなどできない。そう思っていた主人公だが、娘思いの男性と素直になれないわがままな義理の娘に好感を持ち、少しずつ距離を縮めていく。 そんなある日、死んだはずの前妻が屋敷に現れ、主人公を追い出そうとしてきた。前妻いわく、血の繋がった母親の方が、継母よりも価値があるのだという。主人公が言葉に詰まったその時……。 血の繋がらない母と娘が家族になるまでのお話。 この作品は、小説家になろうおよびエブリスタにも投稿しております。 扉絵は、管澤捻さまに描いていただきました。

お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。

下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。 またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。 あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。 ご都合主義の多分ハッピーエンド? 小説家になろう様でも投稿しています。

娼館で元夫と再会しました

無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。 しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。 連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。 「シーク様…」 どうして貴方がここに? 元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!

ずっと好きだった獣人のあなたに別れを告げて

木佐木りの
恋愛
女性騎士イヴリンは、騎士団団長で黒豹の獣人アーサーに密かに想いを寄せてきた。しかし獣人には番という運命の相手がいることを知る彼女は想いを伝えることなく、自身の除隊と実家から届いた縁談の話をきっかけに、アーサーとの別れを決意する。 前半は回想多めです。恋愛っぽい話が出てくるのは後半の方です。よくある話&書きたいことだけ詰まっているので設定も話もゆるゆるです(-人-)

婚約者の番

毛蟹
恋愛
私の婚約者は、獅子の獣人だ。 大切にされる日々を過ごして、私はある日1番恐れていた事が起こってしまった。 「彼を譲ってくれない?」 とうとう彼の番が現れてしまった。

強面夫の裏の顔は妻以外には見せられません!

ましろ
恋愛
「誰がこんなことをしろと言った?」 それは夫のいる騎士団へ差し入れを届けに行った私への彼からの冷たい言葉。 挙げ句の果てに、 「用が済んだなら早く帰れっ!」 と追い返されてしまいました。 そして夜、屋敷に戻って来た夫は─── ✻ゆるふわ設定です。 気を付けていますが、誤字脱字などがある為、あとからこっそり修正することがあります。

処理中です...