【R18】アナタとの結婚なんてありえません

迷い人

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09.色気の欠片も感じないのは同性だからでしょうか?

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 ヨハンと別れた後、かつてのバイト先で食事をすませた私とヴィーゲルトが、住まい兼研究室へと戻れば、扉の前に大きな△耳と、フワリと長い尾を持つ青年が立っていた。

 私も何度か顔を合わせ、言葉を交わしたことのある狼獣人の青年。 狼と言うには精悍さに欠けて見えるのは、ヴィとの対比ですかね?

 私がチラリとヴィを見れば、視線に気づいてすぐに視線を向けてくれる。 つないだ手がニギニギとされ、そんな些細なことが嬉しくて口元がにやけそうになる。

 ヴィが耳元に顔を寄せてくるから、何か内緒話でもあるのかと思えば、なんてことない耳元にチュッとキスをされた。 本当に油断も隙も無いのだから。

「仲良し、ですね」

 頭を下げ、苦笑と共に寄ってくる狼青年。

「羨ましいだろう」

 ヴィが目元をほころばせながら言えば、狼青年は苦笑し俯いた。

「自慢は結構です」

 いつも大人しい人だけれど、今日はまた何時もと違って獣人らしさがない。 いえ、私の思い込みで獣人と言う種を判断していいのかと言われれば、ダメなのでしょうけど……私はそう思ったわけですよ。

「何かあったんですか?」

 私が聞けば、彼は困った表情を露わにした。

「その、申し訳ないのですが、王子をお借りしても良いでしょうか?」

「ダメだ」

「いえ、王子には伺ってません」

 予想していた反応なのか、少しかぶせ気味に反応する。 狼青年は幼い頃からヴィと共に育ったのだと言う。 人間社会でいえば、ご学友とかいう奴なのかな?

「良いお茶を分けてもらったのだけど、ご一緒にどうですか?」

「いえ……こちらの都合で申し訳ないのですが、シャル様にはお聞かせ出来ない話でして」

「シャルに聞かせられない話など、俺にはない!」

 宣言するヴィに私は苦笑する。 当たり前のように私を優先してくれるが、一応彼は一国の王子で……まぁ12番目の王子と言われると、どれぐらい重要な地位なのかはわかりかねますが、とりあえず庶民の常識としては、譲るべきでしょう。

「寂しいけど、お仕事なら仕方ありませんね」

「こちらの都合で……本当に申し訳ありませんが。 王子をお借りします!!」

 そう告げた狼青年の表情、ヴィは気付いていたかしら? 困ったような泣きたそうな、そんな表情……何があったのか心配になるけれど、聞かれたくないと言うのだから、立ち入らない方が良いと言うことでしょう。

 私は一人屋敷の玄関の鍵をあけて扉を潜った。

 家の中には灯りが灯っている。

「アレ?」

 消し忘れたなんてことはない。 何しろこの家は一定の体温を持つ者が通過することで、明かりがつき、しばらくすると消えると言う仕組みになっている。

 嫌な予感がした。
 狼青年の表情の理由、狙いは私ということ?

 どうしましょう。

 今からヴィを追うことは無理。
 自分で対処しろと言うことですわね。

 まぁ、どんな種の獣人と言っても、私がこの家にいる限り負ける事はないのですけどね……ヴィ以外には……。 そんなことを考えて少しだけ恥ずかしくなる。

 ヴィの愛情が恋しい。
 熱い胸の中で甘えたい。

 中途半端に乱された身体の熱は引いたけれど、自分に敵意を持った人間との邂逅は精神的な負担が大きくて、愛されていると、必要されていると、そんな実感が欲しくなる。

「お風呂に入ろう。 そうだ、せっかくヴィがいないから」

 私は日頃は控えているバラの香りの入浴剤を、棚から取り出した。 香抽出の際に作った品の1つで、ホルモンバランスが整い、お肌つるつる効果がある。 綺麗って言ってほしくて使おうとしたら、ヴィが私の匂いが消えるから嫌いと却下したんですよね。

 湯船に湯を張り、タップリの入浴剤を入れれば、浴室中に匂いが充満した。 ホッと一息して、脱衣室に待機させておいた少し凍らせた果汁を風呂場に持ち込む。 流石に本は湿気をもつから我慢するけれど、私は湯船につかって鼻歌を歌う。

「ずいぶんとノンキですにゃ」

 気の抜けた声がかけられた。 実は、ずっと天井に大柄なネコ科の獣人女が張り付いていたのを、私は気付いていた。 日頃、一定のリズムを奏でるように水滴が落ちてくる天井から、落ちてこなければ流石に気づくと言うものです。 それに、なにより影がうつってますし、鏡にうつってます。

 もう一ついうなら、廊下の明かりは浴室に向かっていましたし?

「人間にとっては当たり前の行動ですよ。 それより1つ気になるのですが質問してもいいですか?」

「……やっぱり人間はノンキだにゃぁ、獣人ならココで戦闘開始にゃ」

 私は彼女の声を無視した。 人間と獣人と戦闘方法が違うだけ、彼女は私が私なりの戦闘態勢にある事に気づいていない。 私は質問の答えがもらえないと、泡立ちの良い石鹸を選んで、シャボンをつくり遊びだす。

「何を黙っているにゃ、聞きたいなら勝手に聞けばいいにゃ!」

 獣人の人って、なんでかせっかちな印象があるのですよねぇ……だから、やりやすいのですけど。

「そんな所に張り付いて、ヴィの入浴を覗き、あわよくば襲おうとか考えていた訳?!」

「その通りにゃ!! それが獣人のあるべき姿。 今日私がお前に伝えたかったことなのにゃぁあ!!! なんにゃぁコレは、動けないにゃぁああああああ!!」

「シャボンでホイホイ」

「な、ななんにゃ?!」

「獣人の人の、そういう欲望に正直なところは、嫌いではないのですけど、ヴィは私のものだから奪わないでくださいね」

 私は天井を見上げてそう言った。

「いやにゃぁあああ、ヴィーゲルト様はうちのもんにゃ!! 人間ごときが、獣人同士の深く熱い愛を満たすことなど不可能にゃ、うちがヴィーゲルト様をこの身体で救うのにゃ!!」

 猫獣人の女は、天井に張り付いたままじたばたしている。 ガッツリシャボンで固めたので、剥がそうとすればするほどに張り付くソレは、服をビリビリしていく。

「いやねぇ、そんないかにも襲ってくださいと言う姿になるなんて、姑息でどうにも工夫がたりませんよ。 そうそう、知っているかしら?」

「なんにゃぁあ!!」

 イライラしているらしい。

「姑息って、間に合わせとかいう意味で、多くの人が思っている卑怯っていう意味はないらしいのですよ」

「そんな事知らないにゃぁああああ!!」

 べりべりべりと、服を全て犠牲にして全裸で落下してきた。

「本当なら、ヴィーゲルト様を襲う予定だったけど、嫌がらせにオマエを襲うにゃ。 獣人の愛情の欲情の満たし方を身をもって、いや違うにゃ、その命をもって知るがいいのにゃぁああああああああ!!」
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