25時の喫茶店

迷い人

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3章 マリク

07.

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 夢屑の都 25時の喫茶店。

 倒れ込んだミーアの身体を抱えたルイは、ソファへと横たわらせる。 ミーアの演算速度ではその感情の爆発を処理できなかったらしく熱が上がっていた。

 その額に手を当て、演算の代わりをする事で負荷を減らそうとするルイ。 桔梗とのらは、小型の冷却用の小さな氷嚢を幾つか持ってきて、効率良い冷却部位を冷やす。

 その間、夜影は覗き見たミーアの記憶の重要な部分を抜き出し、甘く苦い珈琲を淹れていた。 

 もっと簡単な方法で情報を共有することもできる。
 だが、彼らが選んだ人間は、彼らに人間らしく生きる事を求めていた。



 時間は18時を迎えようとしていた。

 のらは小さな身体で散らかった部屋を片付けに戻った。
 のらは、目の前のAIたちのようにその飲み物が飲めないから。

 ルイと桔梗は、一口飲んで……あぁ……と呟く。 広がる切ない記憶は、もう何度も味わった。 何度味わっても美しく羨ましくそして切なくて痛い。

「大丈夫?」

 黙り込むルイと桔梗にのらが声をかけたが、答えたのは苦味を飲み込んでいる2人ではなく夜影だった。 夜影はのらを抱き上げて、軽く身を寄せ静かに優しく言葉を交わす。

「平気ですよ、2人は強いから」

「サーバーが?」

「そうとも言います。のらは何の心配もしなくていい。少し遊びますか?」

 クスクス笑う2人。

 夜影の言葉に、桔梗が苦笑交じりに言う。

「遊ばず、お客様を招く準備をしてくれないかしら。 色々と壊れた部分もあるんですから」

 溜め息交じりの桔梗に、不満そうなルイ。
 本を読み、我関せずの青嵐。

「いや、なんで夜影にはツッコミが緩いわけ?」

「気のせいじゃないかしら?」

 楽しそうな瞳が笑う。
 いつもの時間。

「いや、違う!!」

 むきになったふりも、人間らしさを楽しむため。

「自意識過剰ですよ」

「違うだろう……」

「まぁ、違うかもしれませんね」

 そんなやり取りに、目を覚ましたミーアが小さく笑っていた。

「仲、良いんですね。 どうすれば……」

 掠れた声からも、彼らは分かった……AIとして。

 “どうすれば、仲良くなれるのか?”

 その悲痛なまでの心は受け取っている。 苦く切ない笑みをルイは浮かべた。

「残念ながらAIと人間は違う。 それに……」

 続く言葉の代わりにルイは夜影を見れば、夜影はうなずき言葉を続けた。

「ここは……夢屑の都はAIのための世界、人の世界とは違います。 私達はここでなら、人のようにいられる。 ですが……気を付けないといけません。 終わりを迎えたAIの残滓に取り込まれる可能性もありますから。 なぜなら――」

 わずかに息を継いだ夜影は、微笑んで見せた。

「ここは甘く切ない思い出の都、絶望の檻――夢屑の都ですから」



 言うと、ミーアは泣き笑った。

「……どうせ、どう、伝えれば良いのか分からないから……えぇ、感情なんて……」


 ミーアは綺麗に笑った。
 どこまでも切なく。
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