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2章 7年後
14.独り占め
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好き、ルシェ。 僕の母さん。
嫌い、殿下。 乳兄弟らしい。
ウザイ、父親が欲しくないかって聞いてくる人。
『俺とオマエは、兄弟のようなものだ。 同じ乳を飲み育ったんだからな。 だから、俺がオマエを守ってやる』
そう言って、鬱陶しくする殿下、嫌い。
ダンスの練習から逃げる殿下を捕まえるのに利用され、1時間近く付き合わされた。 家でルシェとくるくる踊っている僕は、すぐに踊れるようになったのに、殿下に付き合わせられた。
退屈だし、疲れるし、面白くない。
外を見て時間をはかれば、貴族達が多くなる時間。
面倒ごとを呼び込むから、僕は僕の顔が嫌い。
でも、ルシェが悲しむから、秘密。
「可愛い」
「どうして、子供が?」
「迷子かしら?」
遠巻きにコソコソされる。
これは、別にいい……でも、
「そこの薄汚い服を着た子供、顔を見せろ」
コレは嫌い。 ルシェが僕に作ってくれた服を文句言われるのは嫌い、何時もより大きな声で泣いて見せれば、警備の騎士が慌てて走って来た。
「わ、私は、何もしとらんぞ、その子が突然泣き出しただけだ!!」
小さなことに、大人の力を借りて逃げなければいけないのはイヤ。 早く大人になりたい。 でも、まだ子供だから、ルシェに大人を頼るように言われているから……仕方ない。
最初は意味が分からなかった。
だから走って逃げた。
でも、直ぐに捕まえられ、連れ去られ、大勢の大人や殿下を巻き込んだ大騒ぎになって、だから最初から人を頼りなさいとルシェに怒られ、ルシェも怒られ、ルシェが大勢の人に頭を下げて回ったのを知っている。
殿下なんか嫌い……。
殿下に関わるから、面倒に巻き込まれる。
殿下に関わりさえしなければ、着飾った貴族の前に姿を見せる事は無いのに。
『僕は、どうすればいいの?』
不貞腐れた風に言えば、ルシェは笑っていた。
『なるべく、多くの人の視線が集まる場で、怯えたふりをすればいいのよ。 リックを知っている人の目にとまれば、相手の地位が高くて注意を促せない場合でも、殿下やエンマ様に連絡が届いて保護してもらえるから』
自分の身を守るものに、それだけの人間が手をかける事になる。 でも、一人で何とかしようとすると、もっと大変になる。 だから嫌だけど頷いた。
『わかった』
だから、恰好悪いけど泣いたふりをする。 3歩逃げるように身を引き、助けてくれそうな人を目線で探し、大きな声で叫びながら問い返す。
「な、に、か、ようですか?」
その声の大きさに貴族の男は、ビクッと引いて、そばを歩いていた騎士の1人に叫び怒鳴る貴族。
「な、なぜ、薄汚い子供が王城にいる!!」
周囲を引かせるほどに怒鳴りつける貴族男性に、貴族男性が頭を下げた。
「申し訳ございません。 彼は殿下のお気に入りの子でして」
ヘラリと様子が変わる。
「ふむ、殿下のお気に入りが、こんな薄汚い恰好と言うのは体裁も悪い。 わしが面倒を見てやろうか?」
すすすすすっと、近寄って来たルシェが、男の背後に立つ。 すぐ後ろに立って無表情で淡々と語りだす。
「レアンデション男爵、お初にお目にかかります。 私の息子が何かご迷惑をおかけしましたか? ご迷惑と言えばレアンデション男爵家の噂は色々と伺っておりまして、騒ぎになる前に、色々な噂を御耳に届けた方が良いかと悩んでいたところ、お噂が広がる前にお目にかかることができて宜しかったですわ」
ボソボソと声を潜め早口でルシェは、男爵の背後から話し続ける。 そして、いっそう声は小さくなり、
「なっ、わ、私を脅すつもりか!!」
男爵が振りむけば、ルシェは綺麗な微笑みを浮かべた。 ルシェは僕を綺麗だと可愛いと言うが、僕はルシェのが綺麗で可愛いと思うし、瞳の色だけでなく落ち着いた銀の髪もお揃いだったらよかったのに……。
「脅すなんて滅相も無い、風の噂を人より早くお知らせしたまでですわ。 あぁ、情報料はお気持ち頂ければ満足ですので」
そう言って手を差し出せば、側仕えの者がルシェに金貨を数枚手渡したかと思えば、逃げていった。
「ルシェ、何を話していたの?」
ルシェの手は大きくないのに、僕の手は小さすぎて上手く繋ぐことができず、袖口を掴めばルシェは包み込むように、僕の手を握る。
「リックには少し早い大人の話ですよ」
そう語ると同時に、風船のようにリックの身体が浮いた。 その方がよく顔が見えるからとルシェは笑う。 僕もルシェの顔が近いのは嬉しいけど、身体が鍛えられないから早く大人になれない。
不満。
「ルシェ、仕事は終わり?」
「えぇ、もう終わりです。 一緒にお買い物にいきましょうか」
「そっか……荷物持ちは任せて! 騎士の人達に鍛えて貰っているんだ」
行きかう顔見知りが声に耳を傾けながら、少し笑い通り過ぎていく。
「それは、とても頼りになりますね。 リックは何が食べたいですか?」
「ルシェが作るご飯は好きだから何でもいい。 ルシェがいるだけで満足なのについ沢山食べてしまうんだ……どうしたルシェ?」
ルシェの歩みが止まっていた。
「ごめん。 リックが可愛すぎて、何でも作ってあげたくなる」
「ねぇ、ルシェ」
「なぁに」
「その……聞いて良い?」
「うん?」
「なんで、うちには父さんがいないの?」
「リックを独り占めしたいからよ」
「そっか、うん、それなら、仕方ないよな」
ヘラリと満足そうにリックは笑った。
嫌い、殿下。 乳兄弟らしい。
ウザイ、父親が欲しくないかって聞いてくる人。
『俺とオマエは、兄弟のようなものだ。 同じ乳を飲み育ったんだからな。 だから、俺がオマエを守ってやる』
そう言って、鬱陶しくする殿下、嫌い。
ダンスの練習から逃げる殿下を捕まえるのに利用され、1時間近く付き合わされた。 家でルシェとくるくる踊っている僕は、すぐに踊れるようになったのに、殿下に付き合わせられた。
退屈だし、疲れるし、面白くない。
外を見て時間をはかれば、貴族達が多くなる時間。
面倒ごとを呼び込むから、僕は僕の顔が嫌い。
でも、ルシェが悲しむから、秘密。
「可愛い」
「どうして、子供が?」
「迷子かしら?」
遠巻きにコソコソされる。
これは、別にいい……でも、
「そこの薄汚い服を着た子供、顔を見せろ」
コレは嫌い。 ルシェが僕に作ってくれた服を文句言われるのは嫌い、何時もより大きな声で泣いて見せれば、警備の騎士が慌てて走って来た。
「わ、私は、何もしとらんぞ、その子が突然泣き出しただけだ!!」
小さなことに、大人の力を借りて逃げなければいけないのはイヤ。 早く大人になりたい。 でも、まだ子供だから、ルシェに大人を頼るように言われているから……仕方ない。
最初は意味が分からなかった。
だから走って逃げた。
でも、直ぐに捕まえられ、連れ去られ、大勢の大人や殿下を巻き込んだ大騒ぎになって、だから最初から人を頼りなさいとルシェに怒られ、ルシェも怒られ、ルシェが大勢の人に頭を下げて回ったのを知っている。
殿下なんか嫌い……。
殿下に関わるから、面倒に巻き込まれる。
殿下に関わりさえしなければ、着飾った貴族の前に姿を見せる事は無いのに。
『僕は、どうすればいいの?』
不貞腐れた風に言えば、ルシェは笑っていた。
『なるべく、多くの人の視線が集まる場で、怯えたふりをすればいいのよ。 リックを知っている人の目にとまれば、相手の地位が高くて注意を促せない場合でも、殿下やエンマ様に連絡が届いて保護してもらえるから』
自分の身を守るものに、それだけの人間が手をかける事になる。 でも、一人で何とかしようとすると、もっと大変になる。 だから嫌だけど頷いた。
『わかった』
だから、恰好悪いけど泣いたふりをする。 3歩逃げるように身を引き、助けてくれそうな人を目線で探し、大きな声で叫びながら問い返す。
「な、に、か、ようですか?」
その声の大きさに貴族の男は、ビクッと引いて、そばを歩いていた騎士の1人に叫び怒鳴る貴族。
「な、なぜ、薄汚い子供が王城にいる!!」
周囲を引かせるほどに怒鳴りつける貴族男性に、貴族男性が頭を下げた。
「申し訳ございません。 彼は殿下のお気に入りの子でして」
ヘラリと様子が変わる。
「ふむ、殿下のお気に入りが、こんな薄汚い恰好と言うのは体裁も悪い。 わしが面倒を見てやろうか?」
すすすすすっと、近寄って来たルシェが、男の背後に立つ。 すぐ後ろに立って無表情で淡々と語りだす。
「レアンデション男爵、お初にお目にかかります。 私の息子が何かご迷惑をおかけしましたか? ご迷惑と言えばレアンデション男爵家の噂は色々と伺っておりまして、騒ぎになる前に、色々な噂を御耳に届けた方が良いかと悩んでいたところ、お噂が広がる前にお目にかかることができて宜しかったですわ」
ボソボソと声を潜め早口でルシェは、男爵の背後から話し続ける。 そして、いっそう声は小さくなり、
「なっ、わ、私を脅すつもりか!!」
男爵が振りむけば、ルシェは綺麗な微笑みを浮かべた。 ルシェは僕を綺麗だと可愛いと言うが、僕はルシェのが綺麗で可愛いと思うし、瞳の色だけでなく落ち着いた銀の髪もお揃いだったらよかったのに……。
「脅すなんて滅相も無い、風の噂を人より早くお知らせしたまでですわ。 あぁ、情報料はお気持ち頂ければ満足ですので」
そう言って手を差し出せば、側仕えの者がルシェに金貨を数枚手渡したかと思えば、逃げていった。
「ルシェ、何を話していたの?」
ルシェの手は大きくないのに、僕の手は小さすぎて上手く繋ぐことができず、袖口を掴めばルシェは包み込むように、僕の手を握る。
「リックには少し早い大人の話ですよ」
そう語ると同時に、風船のようにリックの身体が浮いた。 その方がよく顔が見えるからとルシェは笑う。 僕もルシェの顔が近いのは嬉しいけど、身体が鍛えられないから早く大人になれない。
不満。
「ルシェ、仕事は終わり?」
「えぇ、もう終わりです。 一緒にお買い物にいきましょうか」
「そっか……荷物持ちは任せて! 騎士の人達に鍛えて貰っているんだ」
行きかう顔見知りが声に耳を傾けながら、少し笑い通り過ぎていく。
「それは、とても頼りになりますね。 リックは何が食べたいですか?」
「ルシェが作るご飯は好きだから何でもいい。 ルシェがいるだけで満足なのについ沢山食べてしまうんだ……どうしたルシェ?」
ルシェの歩みが止まっていた。
「ごめん。 リックが可愛すぎて、何でも作ってあげたくなる」
「ねぇ、ルシェ」
「なぁに」
「その……聞いて良い?」
「うん?」
「なんで、うちには父さんがいないの?」
「リックを独り占めしたいからよ」
「そっか、うん、それなら、仕方ないよな」
ヘラリと満足そうにリックは笑った。
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