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3章 変革
25.腹の探り合い 01
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気候の乱れの合間を見計らって、私はランメルト先輩から渡されていた一つの術式を開放する。
緊急救援術式。
なんらかの被害があり、一人で脱出不可能な時に助けを求めるために持たされていた者だと言う。 術式発動から10日ほどした雪の日、隠れ家の扉が乱暴に叩かれた。
「この雪の酷さに、遭難してしまいました。 お願いします少しの間休ませてください!」
必死に扉を打ち鳴らす背の高い青年。
この時期に、雪山に入ろうとする事自体、普通の人間であればあり得ない訳で、大抵はアヤシイ人だし、この時期に雪山で過ごす人間もまたアヤシイものである。
突っ込みは無しの方向で……。
玄関先に一人。
森の中に三人。
魔力で探れるのはそれだけ。
直ぐに玄関に出たかったのだけど、取れ過ぎたヤギの乳でチーズを作っている最中、私は窓を開けて大きな声で叫んだ。
「すみませ~ん。 手を離せないのでコチラの勝手口からお願いします!!」
私が叫べば、森の中の気配が玄関先の人間よりも早く動き、そして止まり、わちゃわちゃしている。
先輩曰く、急に襲い掛かって来ることは無いだろうと言う話だが、その速度に正直慌ててしまったけれど、その魔力の1つは先輩の物と近かったため、一応冷静さを保てた。
だけど、さ、普通、複数人の大柄な男性に家にやってこられるとビックリしますよね?
先輩……1人留守番恨みますよ……。
怯える私に、扉を叩いていた赤髪の青年が勝手口の側で扉を閉ざさぬように固定し、私に言い訳を始める。 妙に凛々しい顔立ちの整った青年だった。
「すみません。 こんな所にある建物です。 用心をしてしまって、実は一人じゃないんですよ」
苦笑と言うか愛想笑いを浮かべていた。
灰色の髪を三つ編みに結び、農村の娘が着るシャツ、スカート。 先輩や魔術師達に、立派な田舎娘だと褒められるような姿をしており。 これで警戒を高め攻撃してくるようなチキンなら騎士を辞めた方が良いだろう。 と、思う。
物心ついた時から王城にいたリックは、可愛いらしさの欠片も無い姿に不満そうだったが、これが一般的なのだと旅から戻ってきた頃には知る事だろう。 王城はね下働きでも特別だったんだよリック。 彼のショックな顔を思い出し、私は黒い雲を眺めた。
「そうですか、これから嵐が来るようですし、この建物まで無事に辿りつく事が出来て良かったですよ。 中にどうぞ、温かな飲み物と食事を提供いたします」
深い雪だ、大きな荷物を背負っての行軍で、馬車等はない。
「た、すかります」
赤髪の男は、戸惑い? 混乱? どこか気の抜けた様子で私の顔をジッと見ながらそう言った。
「どうかなさいましたか?」
「何処かでお会いしましたか?」
私には、赤髪の青年に覚えはなかったけれど、青年には覚えがあったのでしょう。 大抵の貴族の子息・令嬢は学園に通いますからね。 とはいえ……胸をじっと見られるのは余り気分の良いものではありません、がっ!!
どうせ、当時は性別不祥の体格でしたともさ!! ひきつりそうになる顔を必死に微笑ませ私は言う。
「私の髪色は、この山を抜けた北方に多い色合いですからね」
バウスコール王国は、金、茶、赤髪が多い。 私のような薄く青みがかったグレー……人によって銀と呼んでくれる色の者は稀である。
男は溜息をつき、私に問うた。
青年は直ぐに、私が誰であって、ランメルト先輩が誰の元に、誰を連れてきたくて救難信号を出したのかに気づいたのだろう。
「人を探しています。 救難連絡はこの辺りから来たのですが、助けを求めるような人は見ませんでしたか?」
「私は、私を助けてくれると言い、私に助けて欲しいと言ったものと出会いました」
「その者は?」
「アナタ達は、山賊とは違いますよね?」
無遠慮な視線に私は少し咎めるような音を含ませて聞いた。 190センチを超えていそうな赤髪の大男は、私から見れば壁である。 もし、私が魔術を遣えなければ、それだけで恐怖となっただろう。
「そういう者では決してちが、……騎士団に所属しています」
「ということは、貴族の方々と言う事ですか?」
「うるせぇ、メス豚、騎士と聞けばハイエナのように、機嫌を取りやがる」
なぜか森の中から、雪を泳ぐように一人の私と背丈の変わらないぐらいの黒髪の青年が現れた。 どこまで肉を落としたその姿は、かつての自分を彷彿とさせる。 きっと寒くてイライラしているのだろう。
「グダグダと御託はいい、早く休ませろ!!」
「言葉遣い」
私がニッコリと微笑めば、静かに赤髪の青年は頭を下げ、黒髪の青年の襟首をつまみあげ、軽々と数メートル先の雪の中に放り投げた。 1m以上は積もっている雪だ、決してケガになるようなことはない……が、凍傷になる可能性はある。
「どうも、ご迷惑をおかけしました。 よろしければ、ランメルト殿が戻るまで、コチラで待たせてもらえないでしょうか?」
「はい、ランメルト様からはそのように、指示を受けており、お部屋の方も準備しております。 この施設には、天然温泉もありますの。 旅の疲れをユックリと癒してくださいませ」
森の中にも人がいるのは分かってはいるが、気付かない振りを通した。 ランメルト先輩からは自分が戻るまでの間フェリクス様が留まる事となるだろう。 その間に友好関係を築いて、国を治めるための最善策と言うものを提示し、納得させて欲しいと頼まれていた。
緊急救援術式。
なんらかの被害があり、一人で脱出不可能な時に助けを求めるために持たされていた者だと言う。 術式発動から10日ほどした雪の日、隠れ家の扉が乱暴に叩かれた。
「この雪の酷さに、遭難してしまいました。 お願いします少しの間休ませてください!」
必死に扉を打ち鳴らす背の高い青年。
この時期に、雪山に入ろうとする事自体、普通の人間であればあり得ない訳で、大抵はアヤシイ人だし、この時期に雪山で過ごす人間もまたアヤシイものである。
突っ込みは無しの方向で……。
玄関先に一人。
森の中に三人。
魔力で探れるのはそれだけ。
直ぐに玄関に出たかったのだけど、取れ過ぎたヤギの乳でチーズを作っている最中、私は窓を開けて大きな声で叫んだ。
「すみませ~ん。 手を離せないのでコチラの勝手口からお願いします!!」
私が叫べば、森の中の気配が玄関先の人間よりも早く動き、そして止まり、わちゃわちゃしている。
先輩曰く、急に襲い掛かって来ることは無いだろうと言う話だが、その速度に正直慌ててしまったけれど、その魔力の1つは先輩の物と近かったため、一応冷静さを保てた。
だけど、さ、普通、複数人の大柄な男性に家にやってこられるとビックリしますよね?
先輩……1人留守番恨みますよ……。
怯える私に、扉を叩いていた赤髪の青年が勝手口の側で扉を閉ざさぬように固定し、私に言い訳を始める。 妙に凛々しい顔立ちの整った青年だった。
「すみません。 こんな所にある建物です。 用心をしてしまって、実は一人じゃないんですよ」
苦笑と言うか愛想笑いを浮かべていた。
灰色の髪を三つ編みに結び、農村の娘が着るシャツ、スカート。 先輩や魔術師達に、立派な田舎娘だと褒められるような姿をしており。 これで警戒を高め攻撃してくるようなチキンなら騎士を辞めた方が良いだろう。 と、思う。
物心ついた時から王城にいたリックは、可愛いらしさの欠片も無い姿に不満そうだったが、これが一般的なのだと旅から戻ってきた頃には知る事だろう。 王城はね下働きでも特別だったんだよリック。 彼のショックな顔を思い出し、私は黒い雲を眺めた。
「そうですか、これから嵐が来るようですし、この建物まで無事に辿りつく事が出来て良かったですよ。 中にどうぞ、温かな飲み物と食事を提供いたします」
深い雪だ、大きな荷物を背負っての行軍で、馬車等はない。
「た、すかります」
赤髪の男は、戸惑い? 混乱? どこか気の抜けた様子で私の顔をジッと見ながらそう言った。
「どうかなさいましたか?」
「何処かでお会いしましたか?」
私には、赤髪の青年に覚えはなかったけれど、青年には覚えがあったのでしょう。 大抵の貴族の子息・令嬢は学園に通いますからね。 とはいえ……胸をじっと見られるのは余り気分の良いものではありません、がっ!!
どうせ、当時は性別不祥の体格でしたともさ!! ひきつりそうになる顔を必死に微笑ませ私は言う。
「私の髪色は、この山を抜けた北方に多い色合いですからね」
バウスコール王国は、金、茶、赤髪が多い。 私のような薄く青みがかったグレー……人によって銀と呼んでくれる色の者は稀である。
男は溜息をつき、私に問うた。
青年は直ぐに、私が誰であって、ランメルト先輩が誰の元に、誰を連れてきたくて救難信号を出したのかに気づいたのだろう。
「人を探しています。 救難連絡はこの辺りから来たのですが、助けを求めるような人は見ませんでしたか?」
「私は、私を助けてくれると言い、私に助けて欲しいと言ったものと出会いました」
「その者は?」
「アナタ達は、山賊とは違いますよね?」
無遠慮な視線に私は少し咎めるような音を含ませて聞いた。 190センチを超えていそうな赤髪の大男は、私から見れば壁である。 もし、私が魔術を遣えなければ、それだけで恐怖となっただろう。
「そういう者では決してちが、……騎士団に所属しています」
「ということは、貴族の方々と言う事ですか?」
「うるせぇ、メス豚、騎士と聞けばハイエナのように、機嫌を取りやがる」
なぜか森の中から、雪を泳ぐように一人の私と背丈の変わらないぐらいの黒髪の青年が現れた。 どこまで肉を落としたその姿は、かつての自分を彷彿とさせる。 きっと寒くてイライラしているのだろう。
「グダグダと御託はいい、早く休ませろ!!」
「言葉遣い」
私がニッコリと微笑めば、静かに赤髪の青年は頭を下げ、黒髪の青年の襟首をつまみあげ、軽々と数メートル先の雪の中に放り投げた。 1m以上は積もっている雪だ、決してケガになるようなことはない……が、凍傷になる可能性はある。
「どうも、ご迷惑をおかけしました。 よろしければ、ランメルト殿が戻るまで、コチラで待たせてもらえないでしょうか?」
「はい、ランメルト様からはそのように、指示を受けており、お部屋の方も準備しております。 この施設には、天然温泉もありますの。 旅の疲れをユックリと癒してくださいませ」
森の中にも人がいるのは分かってはいるが、気付かない振りを通した。 ランメルト先輩からは自分が戻るまでの間フェリクス様が留まる事となるだろう。 その間に友好関係を築いて、国を治めるための最善策と言うものを提示し、納得させて欲しいと頼まれていた。
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