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3章 変革
27.甘い匂い
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うふふと笑って見せる。
「いや、そういうんじゃなくて本当に、ね」
本気で困られてもソレはソレでショックなのだが、後で聞いた話によるとランスは妻子持ちだと言う。 ごめんなさい、からかってしまって。
「古い名は捨ててしまったの。 勘弁していただけませんか?」
「ランメルト殿が古い名で呼んでいないなら、それに従う事にしましょう。 あの人は優しそうに見えて、頑固で思い込みが激しく、怒らせると、なかなか大変なんですよ」
そう言って笑うから、私も笑った。
「それより優先して聞くとするなら、なぜランメルト殿がいなくて、アンタがいるか……でしょうか?」
「ランメルト様は、主に休養を取って頂き、心を癒して欲しいと願われておりました。 ですが、ランメルト様がいらっしゃれば、きっと、直ぐに仕事に戻ってしまうだろう。 そう、考えられたのです。 私は……その、ちょっとした願いがありまして、ココでのお世話を無事勤めれば願いを叶えて頂けると、お約束いただいたのです」
「……そうですか……。 そう言われても、何故、今なのか? 何故、そんな希望を持ったのか? ソレが分からない」
「希望ですか?」
言われている意味が分からず問い返す。
「まぁ、いいです。 確かに団長には休暇が必要です。 ランメルト殿は何よりも団長を優先している。 悪い事は考えてないでしょう」
ランスの溜息交じりの声に、リンクの声が混ざる。
「むしろ、甘いからねぇ……。 だけど甘さ故に、状況判断を見誤りかねないと言う欠点があります……。 私達で状況を検討しなければなりません。 お話を色々お聞かせいただく事になります。 その際にはよろしくおねがいしますね」
「いつまでたっても子供扱いをしているというか、団長が全てを背負われている立場だと言う事を、いつまでも理解されない」
会話に加わってきたヨハン。
私はそのヨハンの『当たり前』のように与えられる責務と言うものに違和感を覚えた。 それに対して何かを誤解したらしい3人は何故か謝罪をする。
「「「ランメルト殿が、迷惑をかけて悪いな(すみません)」」」
ランメルト先輩……。
私、色々と心配になってきました。
大丈夫なんですよね?
「ところで、こうやってお話していても手持無沙汰なので、夕飯の下準備をしていいですか? お疲れでしょうから甘い物。 そうですね……砂糖漬けにしておいた桃をチーズタルトにしてお出しいたしますね」
向こうも様子伺いと言うが、こちらも同様だ。
「それは美味しそうです。 何か手伝うことはありますか?」
そう尋ねるのは、やはりランスだった。
「いえ、調理場は私のテリトリーなので、むしろ入らないでください」
「……はい」
その後3人は食堂の片隅で、お茶を飲みながらランメルト先輩の失敗談を楽しそうに話している。 ソレを聞けば益々心配になってくる。 もしや先輩っていじめられっ子でした? 良くて弄られっ子でした? 3人の会話に悪意は感じ取れないけれど……私は、ただ混乱が増すだけだった。
「どうしたんですか? 難しそうな顔をして」
「ぁ、いえ……」
少し考えこみ、やっぱり話す事にした。
「その、ランメルト様は、騎士団では余り良く思われていないのですか?」
「そう……ですね。 心配させたなら、ごめんね」
苦笑交じりに言うのは、親戚であるだろうリンクで、そしてヨハンが言葉を引き継いだ。
「少しばかり毛色が違うし、仕事が出来ない。 割に団長の寵愛が熱い、まぁ、よく思われていないと言うのは間違いではないだろうな」
なんかなんか引っかかる。
「そうですか……安心しました。 私には息子がいるのですが、ランメルト様を父親のように慕っていて、今も彼について歩いているのですが……お帰りになられるときは寂しがるだるだろうなぁと、息子が悲しい思いをするだろうと悩んでいたのです。 これで、お引止めすることもできますわ」
ここまで言えば、私が怒っていると気づいたらしい。
「ぇ、いや、彼は俺達に気づかない所に良く気付いてくれるし、よくやってくれていますよ」
ランスの顔に不思議な焦りが見られ、リンクへのフォローを視線で求めている。
「それより、お子様がいらっしゃるのですか?」
「えぇ」
「お幾つですか?」
「パンが焼けたので失礼しますね」
私の不機嫌をなんとかしようと焦っているらしいが、適当に避ける事にした。 まぁ、世の中、調理場を預かる人間とは強いものですからね。
「あはっははは、あいつは子供好きだから、喜んでいるだろう」
「えぇ、ずいぶんと可愛がっていただいておりますわ」
今度はどのように子供達に逃げられ、嘆き悲しんでいたかの話で盛り上がりだす。 これは、きっと先輩への愛なのだと、私は深く考える事を諦めた。
「そうぞうしい……」
ユラリ、不安定な様子で現れる様は昼日中の幽霊のようだがフェリクス様だった。
「何か食べるものを貰えるか?」
だらしなく薄いシャツ1枚を羽織った状態のままの状態で、焦点があっておらず、足取りもなんだかアヤシク壁にもたれ、眩暈がするのか片手で顔を覆っている。 細身の黒髪青年は側におらず、3人は一斉に立ち上がり手を貸そうとして撥ね退けられていた。 私は空いたシャツから見える傷だらけの体に驚き停止していれば、ランスが声を大きく話しかけてきた。
「俺達が食べたものと同じで構いませんから、準備していただけますか?」
「ですが……アレ!! 寒くないんですか!!」
思わず指をさしてしまい、返事をもらうまでもなく直ぐそばの私の部屋に戻り、毛布をとってきて頭からかける。 側にいけば甘ったるい匂いがして思わず動きをと止めてしまう。 懐かしい鋼色の瞳と視線が交わり、気付けば捕獲され抱きしめられていた。
不快な甘い匂いが、脳を痺れさせる。
唇が、硬く傷の多い指先で撫でられ、乾いた唇が寄せられ触れる。 ギュッと口を閉ざせば、唇は甘く噛みつかれ、舐められ、舌先が割入ってこようとした……。 フェリクス様を私から離そうと、両サイドからランスとヨハンがフェリクス様の腕を腕で組み絡め取り、両手で1本ずつ、フェリクス様の手を開かせる。
甘く不快な香りに思考がボンヤリと緩んできた私は、唇を開こうとしてしまう。
「やっぱり団長を狙っていたんだな。 このメス豚が!!」
黒髪の痩せた青年ロンが、私の腕を痛い程に強引に引っ張りフェリクス様の腕の中から引きだそうとした瞬間、ランスとヨハンもまた、フェリクス様を固定した。
ロンから私を奪うように引き寄せたリンクが、叫ぶように言う。
「何か食べるものを!」
「ぇ、あ、はい」
とりあえず、パンを渡せばフェリクス様の口の中に放り込まれた。
乱暴な……。
「いや、そういうんじゃなくて本当に、ね」
本気で困られてもソレはソレでショックなのだが、後で聞いた話によるとランスは妻子持ちだと言う。 ごめんなさい、からかってしまって。
「古い名は捨ててしまったの。 勘弁していただけませんか?」
「ランメルト殿が古い名で呼んでいないなら、それに従う事にしましょう。 あの人は優しそうに見えて、頑固で思い込みが激しく、怒らせると、なかなか大変なんですよ」
そう言って笑うから、私も笑った。
「それより優先して聞くとするなら、なぜランメルト殿がいなくて、アンタがいるか……でしょうか?」
「ランメルト様は、主に休養を取って頂き、心を癒して欲しいと願われておりました。 ですが、ランメルト様がいらっしゃれば、きっと、直ぐに仕事に戻ってしまうだろう。 そう、考えられたのです。 私は……その、ちょっとした願いがありまして、ココでのお世話を無事勤めれば願いを叶えて頂けると、お約束いただいたのです」
「……そうですか……。 そう言われても、何故、今なのか? 何故、そんな希望を持ったのか? ソレが分からない」
「希望ですか?」
言われている意味が分からず問い返す。
「まぁ、いいです。 確かに団長には休暇が必要です。 ランメルト殿は何よりも団長を優先している。 悪い事は考えてないでしょう」
ランスの溜息交じりの声に、リンクの声が混ざる。
「むしろ、甘いからねぇ……。 だけど甘さ故に、状況判断を見誤りかねないと言う欠点があります……。 私達で状況を検討しなければなりません。 お話を色々お聞かせいただく事になります。 その際にはよろしくおねがいしますね」
「いつまでたっても子供扱いをしているというか、団長が全てを背負われている立場だと言う事を、いつまでも理解されない」
会話に加わってきたヨハン。
私はそのヨハンの『当たり前』のように与えられる責務と言うものに違和感を覚えた。 それに対して何かを誤解したらしい3人は何故か謝罪をする。
「「「ランメルト殿が、迷惑をかけて悪いな(すみません)」」」
ランメルト先輩……。
私、色々と心配になってきました。
大丈夫なんですよね?
「ところで、こうやってお話していても手持無沙汰なので、夕飯の下準備をしていいですか? お疲れでしょうから甘い物。 そうですね……砂糖漬けにしておいた桃をチーズタルトにしてお出しいたしますね」
向こうも様子伺いと言うが、こちらも同様だ。
「それは美味しそうです。 何か手伝うことはありますか?」
そう尋ねるのは、やはりランスだった。
「いえ、調理場は私のテリトリーなので、むしろ入らないでください」
「……はい」
その後3人は食堂の片隅で、お茶を飲みながらランメルト先輩の失敗談を楽しそうに話している。 ソレを聞けば益々心配になってくる。 もしや先輩っていじめられっ子でした? 良くて弄られっ子でした? 3人の会話に悪意は感じ取れないけれど……私は、ただ混乱が増すだけだった。
「どうしたんですか? 難しそうな顔をして」
「ぁ、いえ……」
少し考えこみ、やっぱり話す事にした。
「その、ランメルト様は、騎士団では余り良く思われていないのですか?」
「そう……ですね。 心配させたなら、ごめんね」
苦笑交じりに言うのは、親戚であるだろうリンクで、そしてヨハンが言葉を引き継いだ。
「少しばかり毛色が違うし、仕事が出来ない。 割に団長の寵愛が熱い、まぁ、よく思われていないと言うのは間違いではないだろうな」
なんかなんか引っかかる。
「そうですか……安心しました。 私には息子がいるのですが、ランメルト様を父親のように慕っていて、今も彼について歩いているのですが……お帰りになられるときは寂しがるだるだろうなぁと、息子が悲しい思いをするだろうと悩んでいたのです。 これで、お引止めすることもできますわ」
ここまで言えば、私が怒っていると気づいたらしい。
「ぇ、いや、彼は俺達に気づかない所に良く気付いてくれるし、よくやってくれていますよ」
ランスの顔に不思議な焦りが見られ、リンクへのフォローを視線で求めている。
「それより、お子様がいらっしゃるのですか?」
「えぇ」
「お幾つですか?」
「パンが焼けたので失礼しますね」
私の不機嫌をなんとかしようと焦っているらしいが、適当に避ける事にした。 まぁ、世の中、調理場を預かる人間とは強いものですからね。
「あはっははは、あいつは子供好きだから、喜んでいるだろう」
「えぇ、ずいぶんと可愛がっていただいておりますわ」
今度はどのように子供達に逃げられ、嘆き悲しんでいたかの話で盛り上がりだす。 これは、きっと先輩への愛なのだと、私は深く考える事を諦めた。
「そうぞうしい……」
ユラリ、不安定な様子で現れる様は昼日中の幽霊のようだがフェリクス様だった。
「何か食べるものを貰えるか?」
だらしなく薄いシャツ1枚を羽織った状態のままの状態で、焦点があっておらず、足取りもなんだかアヤシク壁にもたれ、眩暈がするのか片手で顔を覆っている。 細身の黒髪青年は側におらず、3人は一斉に立ち上がり手を貸そうとして撥ね退けられていた。 私は空いたシャツから見える傷だらけの体に驚き停止していれば、ランスが声を大きく話しかけてきた。
「俺達が食べたものと同じで構いませんから、準備していただけますか?」
「ですが……アレ!! 寒くないんですか!!」
思わず指をさしてしまい、返事をもらうまでもなく直ぐそばの私の部屋に戻り、毛布をとってきて頭からかける。 側にいけば甘ったるい匂いがして思わず動きをと止めてしまう。 懐かしい鋼色の瞳と視線が交わり、気付けば捕獲され抱きしめられていた。
不快な甘い匂いが、脳を痺れさせる。
唇が、硬く傷の多い指先で撫でられ、乾いた唇が寄せられ触れる。 ギュッと口を閉ざせば、唇は甘く噛みつかれ、舐められ、舌先が割入ってこようとした……。 フェリクス様を私から離そうと、両サイドからランスとヨハンがフェリクス様の腕を腕で組み絡め取り、両手で1本ずつ、フェリクス様の手を開かせる。
甘く不快な香りに思考がボンヤリと緩んできた私は、唇を開こうとしてしまう。
「やっぱり団長を狙っていたんだな。 このメス豚が!!」
黒髪の痩せた青年ロンが、私の腕を痛い程に強引に引っ張りフェリクス様の腕の中から引きだそうとした瞬間、ランスとヨハンもまた、フェリクス様を固定した。
ロンから私を奪うように引き寄せたリンクが、叫ぶように言う。
「何か食べるものを!」
「ぇ、あ、はい」
とりあえず、パンを渡せばフェリクス様の口の中に放り込まれた。
乱暴な……。
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