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3章 変革
28.そんな存在を団長に据えていいのか?
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「寒さも痛みも、余り感じてないようですから、余り心配なさらないでください」
めっちゃ、行儀よく食事を食べているフェリクス様だけど、
「そういう、話しじゃありませんよね!! 大丈夫なんですかアレ、ヤバイ薬決めていませんか? って言うか、傷……も、放っておいてはいけないものでしょう? なぜ、治そうとしないんです」
真顔で、調理場に隠れながら私はリンクに声を抑え叫んでいた。 本来なら調理場に人が踏み込む事は許さないのだけど、状況が状況だから仕方がない。
「全てが、身を守るためなんです。 ご容赦下さい」
「私が許しを乞われるようなことは……ならないでくださいよ。 ちょっと状況の説明を聞いて、いえ、やっぱり聞きたくありません」
甘い匂いに混ざる腐敗した匂い。 触れた皮膚は鍛えられた筋肉と、ぬるりとした感触。 シャツから見えた肌も切り傷、火傷、無数に傷と傷が重なり合い、皮膚が醜く歪み色も紫や赤黒く変色していた。
理性を失い、配下の声も聞こえず、力ずくで取り押さえられ、アレの何処が尊厳を捨てても王族に認められたいと思っている姿なんですか!!
リックがいなくて良かった……。
あの人を父親だとは言えない……。
怒りと安堵が交互に襲ってくる。
こんなのをどうしろと言うのよ!!
私には無理です。
「腹が満たされて、沢山寝れば正気を取り戻すから」
そんな慰めの言葉が、聞き流されていった。
説明を受けずとも、そう言う薬の存在は何処からともなく耳に入って来ると言うもの。 強い沈痛作用を持つが、精神にも害を与える薬。 決して傷を治す類のものではなく、なんか凄い飢餓感に陥るらしいが、その飢餓を満たす段階で強烈な快楽? 満足? 幸福感を得るという。 そして、その一連を終えてようやく正気を取り戻すらしい。
「薬を使う前に、腹を満腹にするか、十分な睡眠をとらせておけばどうですか?」
「……その場合は、性欲或いは暴力行為に走ります」
ランスが言い、リンクが補足説明する。
「過程の行為が重要なんですよ」
「……なんで、そんな薬使うんですか」
ジッとリンクを見れば慌てた様子で言い訳を早口で呟いてくる。
「鎮痛効果が強く、思考を停止できるのが良いのだと……。 決して、無理強いなんてさせていませんから」
何が楽しくて巨体な男3人と調理場でうずくまり話をせねばならんのか。
「ただ、目の前の餌よりも本命に行くとは想定外でした……。 今までは、肉の薄い人間ばかり標的にしていたと言うのに」
リンクが言う。
何気に失礼な人だ。 あと、
「人間扱いしてあげて……」
思わず口ずさんでしまった。
いや、そうではなくバレているのかぁ……。 茶番がものすごく恥ずかしく感じた瞬間である。 それはともかく、フェリクス様は食事を済ませた後に、カクンと気を失うように眠りについた。 次に起きた時は正気だから心配はいらないと言われましたが、どうにも、モヤモヤするのは何故でしょうか……。
あと、
フェリクス様を運ぶ黒髪の青年ロンに、敵意剥き出しで睨まれましたけど、私悪くないですよね?
「さて、問題は……今後、肉付きの良い人間も標的にされるだろうことだが……どうしようか?」
「食べ物をスタンバイさせておけばいいでしょう。 薬の塗りなおした後がヤバイだけなんですよね? なら食事の準備をして塗りなおせばどうです? スープ、肉類、パン、を基準に考えれば、そう難しくありませんよね
「はぁ……、男ばかりの騎士団で、直ぐに食べられる食糧を確保し続ける事がどれ程困難か……」
貧乏なのか? 食い意地の張った者が多いのか?
とりあえず、私は身の安全も考え、常にストックするための食糧を作り置くことにする。
その日の夕食時、フェリクス様は眠ったままで、特に仕事もないのでユックリと眠らせておくことにしたそうだ。
大人の靴程ある肉を、大きいままでコトコトと煮込んだビーフシチュー、パン、雪の下で冷やされ甘味を蓄えた大根をサラダとしてつけた。
黒髪青年ロンだけは、食事が気に入らないのか筋肉ヨハンに、食事の半分を渡そうとしている。
「団長は、今後極端に痩せた子ばかりに欲求を向ける事は無いだろう。 シッカリ飯を食っておけ、体力切れでどれだけ道中迷惑をかけたか考えろ」
「たまたま、偶然! その淫売の元に向かっただけかもしれない。 もしかしたら、強い空腹から、食堂に来たのかもしれない。 僕は、僕はいままで精一杯仕えてきた……」
だから、睨まれても……というより。 そんなにそばにいるなら、常にパンの1つや2つストックしておきなよと言いたい。
「そんな事を言っても、意識が、理性がないんだから、仕方ねぇだろうが」
ヨハンが宥め続ける。
結局パンもシチューも、数口食べてロンは残し、ヨハンが食べていた。
「行儀悪い」
私が言えば、私の身体を眺めて吐き出すように言う。
「浅ましい」
そういいながら、桃のタルトはしっかりと食べるんだ!!
食事を終えて、片づけを終えれば、使用人としての私の仕事は終了。 彼等の部屋には暖炉用の薪はくべてあるし、追加用の薪の場所は伝えてある。 必要なら補充してくれるはずだ。 万が一、急激な寒さに襲われることもあるから、魔力暖房の使い方も別の部屋で説明はした。 水入りのピッチャー、水入りのヤカン、お茶用のセットも渡したし……まぁ、十分でしょう。
そんなことを指折り確認し部屋に戻ろうとすれば、呼び止められる事になる。
「おぃ!! オマエ」
ロンだ。
「何かしら?」
「明日からは、甘い菓子を作るな」
「お口にあいませんでしたか?」
「クソ不味かった」
「……分かりました。 明日から作る時は、食べる方を先にお伺いするようにします。 お食事の量も、他の方の半分程度が宜しいですか?」
「……そうしてくれ」
そう言って腹立たしそうに去っていくロンの背を見送った。
「気分を害されたでしょう。 申し訳ありません」
どこから出てくるのか謎なリンク……。
「私は、仕舞ってあったタルトを手にしているアナタの方が気になりますが? お茶淹れましょうか?」
「あははっはは、甘いものに目が無くて」
「魔術師寄りの方は、甘い物が好きですものね。 ランメルト様もそうでした」
「そうですね。 でも、桃の砂糖漬けが格別に美味しかったと言うのもありますよ」
「ありがとうございます」
残り物のタルトを食べつくされ、その日は終わった。
めっちゃ、行儀よく食事を食べているフェリクス様だけど、
「そういう、話しじゃありませんよね!! 大丈夫なんですかアレ、ヤバイ薬決めていませんか? って言うか、傷……も、放っておいてはいけないものでしょう? なぜ、治そうとしないんです」
真顔で、調理場に隠れながら私はリンクに声を抑え叫んでいた。 本来なら調理場に人が踏み込む事は許さないのだけど、状況が状況だから仕方がない。
「全てが、身を守るためなんです。 ご容赦下さい」
「私が許しを乞われるようなことは……ならないでくださいよ。 ちょっと状況の説明を聞いて、いえ、やっぱり聞きたくありません」
甘い匂いに混ざる腐敗した匂い。 触れた皮膚は鍛えられた筋肉と、ぬるりとした感触。 シャツから見えた肌も切り傷、火傷、無数に傷と傷が重なり合い、皮膚が醜く歪み色も紫や赤黒く変色していた。
理性を失い、配下の声も聞こえず、力ずくで取り押さえられ、アレの何処が尊厳を捨てても王族に認められたいと思っている姿なんですか!!
リックがいなくて良かった……。
あの人を父親だとは言えない……。
怒りと安堵が交互に襲ってくる。
こんなのをどうしろと言うのよ!!
私には無理です。
「腹が満たされて、沢山寝れば正気を取り戻すから」
そんな慰めの言葉が、聞き流されていった。
説明を受けずとも、そう言う薬の存在は何処からともなく耳に入って来ると言うもの。 強い沈痛作用を持つが、精神にも害を与える薬。 決して傷を治す類のものではなく、なんか凄い飢餓感に陥るらしいが、その飢餓を満たす段階で強烈な快楽? 満足? 幸福感を得るという。 そして、その一連を終えてようやく正気を取り戻すらしい。
「薬を使う前に、腹を満腹にするか、十分な睡眠をとらせておけばどうですか?」
「……その場合は、性欲或いは暴力行為に走ります」
ランスが言い、リンクが補足説明する。
「過程の行為が重要なんですよ」
「……なんで、そんな薬使うんですか」
ジッとリンクを見れば慌てた様子で言い訳を早口で呟いてくる。
「鎮痛効果が強く、思考を停止できるのが良いのだと……。 決して、無理強いなんてさせていませんから」
何が楽しくて巨体な男3人と調理場でうずくまり話をせねばならんのか。
「ただ、目の前の餌よりも本命に行くとは想定外でした……。 今までは、肉の薄い人間ばかり標的にしていたと言うのに」
リンクが言う。
何気に失礼な人だ。 あと、
「人間扱いしてあげて……」
思わず口ずさんでしまった。
いや、そうではなくバレているのかぁ……。 茶番がものすごく恥ずかしく感じた瞬間である。 それはともかく、フェリクス様は食事を済ませた後に、カクンと気を失うように眠りについた。 次に起きた時は正気だから心配はいらないと言われましたが、どうにも、モヤモヤするのは何故でしょうか……。
あと、
フェリクス様を運ぶ黒髪の青年ロンに、敵意剥き出しで睨まれましたけど、私悪くないですよね?
「さて、問題は……今後、肉付きの良い人間も標的にされるだろうことだが……どうしようか?」
「食べ物をスタンバイさせておけばいいでしょう。 薬の塗りなおした後がヤバイだけなんですよね? なら食事の準備をして塗りなおせばどうです? スープ、肉類、パン、を基準に考えれば、そう難しくありませんよね
「はぁ……、男ばかりの騎士団で、直ぐに食べられる食糧を確保し続ける事がどれ程困難か……」
貧乏なのか? 食い意地の張った者が多いのか?
とりあえず、私は身の安全も考え、常にストックするための食糧を作り置くことにする。
その日の夕食時、フェリクス様は眠ったままで、特に仕事もないのでユックリと眠らせておくことにしたそうだ。
大人の靴程ある肉を、大きいままでコトコトと煮込んだビーフシチュー、パン、雪の下で冷やされ甘味を蓄えた大根をサラダとしてつけた。
黒髪青年ロンだけは、食事が気に入らないのか筋肉ヨハンに、食事の半分を渡そうとしている。
「団長は、今後極端に痩せた子ばかりに欲求を向ける事は無いだろう。 シッカリ飯を食っておけ、体力切れでどれだけ道中迷惑をかけたか考えろ」
「たまたま、偶然! その淫売の元に向かっただけかもしれない。 もしかしたら、強い空腹から、食堂に来たのかもしれない。 僕は、僕はいままで精一杯仕えてきた……」
だから、睨まれても……というより。 そんなにそばにいるなら、常にパンの1つや2つストックしておきなよと言いたい。
「そんな事を言っても、意識が、理性がないんだから、仕方ねぇだろうが」
ヨハンが宥め続ける。
結局パンもシチューも、数口食べてロンは残し、ヨハンが食べていた。
「行儀悪い」
私が言えば、私の身体を眺めて吐き出すように言う。
「浅ましい」
そういいながら、桃のタルトはしっかりと食べるんだ!!
食事を終えて、片づけを終えれば、使用人としての私の仕事は終了。 彼等の部屋には暖炉用の薪はくべてあるし、追加用の薪の場所は伝えてある。 必要なら補充してくれるはずだ。 万が一、急激な寒さに襲われることもあるから、魔力暖房の使い方も別の部屋で説明はした。 水入りのピッチャー、水入りのヤカン、お茶用のセットも渡したし……まぁ、十分でしょう。
そんなことを指折り確認し部屋に戻ろうとすれば、呼び止められる事になる。
「おぃ!! オマエ」
ロンだ。
「何かしら?」
「明日からは、甘い菓子を作るな」
「お口にあいませんでしたか?」
「クソ不味かった」
「……分かりました。 明日から作る時は、食べる方を先にお伺いするようにします。 お食事の量も、他の方の半分程度が宜しいですか?」
「……そうしてくれ」
そう言って腹立たしそうに去っていくロンの背を見送った。
「気分を害されたでしょう。 申し訳ありません」
どこから出てくるのか謎なリンク……。
「私は、仕舞ってあったタルトを手にしているアナタの方が気になりますが? お茶淹れましょうか?」
「あははっはは、甘いものに目が無くて」
「魔術師寄りの方は、甘い物が好きですものね。 ランメルト様もそうでした」
「そうですね。 でも、桃の砂糖漬けが格別に美味しかったと言うのもありますよ」
「ありがとうございます」
残り物のタルトを食べつくされ、その日は終わった。
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