隣国の姫に寝取られた婚約者が婚約破棄を認めないので、罪人として幽閉されることにしました。 ココはなかなか快適ですよ?

迷い人

文字の大きさ
5 / 80
1章 幼少期

05.スパイ防止法は存在しない 01

しおりを挟む

私は天井を向いていた頭をセシル殿下へと向け、細い腰に両手を回し抱き着いた。 彼もまた風呂上りなのだろう、甘い花の香りがしている。

時間が静かに流れる中、セシル殿下のために存在する秘書クロムが紅茶用のポットに湯を注ぎ入れる音が部屋に響き、仄かに甘い香りが部屋に漂った。

やはり……贅沢品に関して、この国は抜きんでている……。 話し合うべきことは多いけれど、私達は少しだけ身を寄せ合うように時間を過ごし、カップをテーブルに置く音を合図に口を開いた。

「どうかなされたのですか?」

「それは……」

 セシル殿下が言い難そうに語った内容は、アルマの来ている侍女服よりもずっと露出の多い、ほぼ痴女服と言って良いような恰好をした侍女が5名部屋に待機しており、過剰な接待がなされたそうだ。

 14の少年と言えば……どうなのでしょう? 前世で考えれば、興味津々なお年頃? なら、この国の成人はもっと早いのだから……、やはり女性嫌いと言うのは本当なのかしら……でも、なら、私は?

 そんな事を考えている等と気付いてもいないのだろう。 言い難そうにだがセシル殿下は言葉を続けた。

「すぐにクロムが来てくれ、排除してくれたので問題はありませんでしたけどね」

 セシル殿下のクロムに対する信頼は厚い。 生まれた時から側におり、親のように、兄のように、名目上は専属秘書のような人で、殿下の母君が王宮を出る際に残した一族の人なのだそうだ。 礼儀作法や家事全般は一通り身に付けてはいるけれど、専門は戦闘なので、外交、経理、事務、交渉向きではない。

 きっと痴女たちは、比喩ではなく文字通り蹴りだされたのでしょう。

「えっと、お年頃な青少年が良く耐えましたね! 偉いですよ。 殿下」

「それってどうなのでしょうか?」

 苦笑交じりの発言だけれど、瞳と口元が笑っている。 もしゃもしゃと私の髪を撫で触れるのは、精神安定になるらしく、指で絡め遊ぶのが止まない。

「褒めているんですよ」

「では、そう言う事にしておきましょう」

 ここまでは冗談。

 そして、そこからは上体を起こし、真剣に私は話した。

 もし、セシル殿下が篭絡された場合のリスクを、そしてソレが殿下を脅すための材料に使われる可能性、万が一には子供が出来る事だってある事を。 何しろ、DNE鑑定のようなものが誕生するまで、何百年の時が必要となるか分からないような世界だ。

 本当、ハニー・トラップはヤバイ。

 そしてアルマが持って来た報告では、各部屋に美男美女が配備されていると……。

「乗り込みましょう」

 溜息交じりにセシル殿下が言う。

「そうですね……。 では、その前にアルマ着替えなさい」
「ですね、着替えてきてください。 なんか鬱陶しいです」

 私の言葉に殿下が追従し、アルマは苦渋の表情で天井を仰ぎ、大きな溜息と共に着替えに戻りだす。

「了解いたしましたよ」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結保証】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

愛人を選んだ夫を捨てたら、元婚約者の公爵に捕まりました

由香
恋愛
伯爵夫人リュシエンヌは、夫が公然と愛人を囲う結婚生活を送っていた。 尽くしても感謝されず、妻としての役割だけを求められる日々。 けれど彼女は、泣きわめくことも縋ることもなく、静かに離婚を選ぶ。 そうして“捨てられた妻”になったはずの彼女の前に現れたのは、かつて婚約していた元婚約者――冷静沈着で有能な公爵セドリックだった。 再会とともに始まるのは、彼女の価値を正しく理解し、決して手放さない男による溺愛の日々。 一方、彼女を失った元夫は、妻が担っていたすべてを失い、社会的にも転落していく。 “尽くすだけの妻”から、“選ばれ、守られる女性”へ。 静かに離婚しただけなのに、 なぜか元婚約者の公爵に捕まりました。

まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?

せいめ
恋愛
 政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。  喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。  そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。  その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。  閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。  でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。  家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。  その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。    まずは亡くなったはずの旦那様との話から。      ご都合主義です。  設定は緩いです。  誤字脱字申し訳ありません。  主人公の名前を途中から間違えていました。  アメリアです。すみません。    

婚約破棄のあと、あなたのことだけ思い出せない

柴田はつみ
恋愛
伯爵令嬢セシリアは、王宮の舞踏会で王太子レイヴンから公開の場で婚約破棄を言い渡され、その場で倒れた。 目覚めた彼女は、礼儀も常識も覚えているのに――ただ一つ、レイヴンだけを思い出せない。 「あなたは、どなたですか?」 その一言に、彼の瞳は壊れた。 けれどレイヴンは何も語らず、セシリアを遠ざける。彼女を守るために、あの日婚約を捨てたのだと告げられないまま。 セシリアは過去を断ち切り、王宮の侍女として新しい生活を始める。 優しく手を差し伸べる護衛騎士アデルと心を通わせていくほど、レイヴンの胸は嫉妬と後悔で焼けていった。 ――守るために捨てたはずなのに。忘れられたまま、他の男に笑う彼女を見ていられない。 一方、王宮では“偽聖女”の陰謀と、セシリアの血に眠る秘密が動き出す。 記憶を取り戻せば、彼女は狙われる。取り戻さなければ、二人は永遠に届かない。 これは、忘れてしまった令嬢と、忘れられてなお愛を捨てられない王太子が、もう一度“選び直す”恋の物語。

「わざわざ始まるまでまたないで、今のうちに手を打ったってよくない?」

イチイ アキラ
恋愛
アスター公爵令嬢エステルは、夢をみる。それは先を映す夢。 ある日、夢をみた。 この国の未来を。 それをアルフレッド王太子に相談する。彼女を愛して止まない婚約者に。 彼は言う。 愛する君とぼくの国のためなら、未来を変えるのも仕方なくない?

〈完結〉【書籍化&コミカライズ】悪妃は余暇を楽しむ

ごろごろみかん。
恋愛
「こちら、離縁届です。私と、離縁してくださいませ、陛下」 ある日、悪妃と名高いクレメンティーナが夫に渡したのは、離縁届だった。彼女はにっこりと笑って言う。 「先日、あなた方の真実の愛を拝見させていただきまして……有難いことに目が覚めましたわ。ですので、王妃、やめさせていただこうかと」 何せ、あれだけ見せつけてくれたのである。ショックついでに前世の記憶を取り戻して、千年の恋も瞬間冷凍された。 都合のいい女は本日で卒業。 今後は、余暇を楽しむとしましょう。 吹っ切れた悪妃は身辺整理を終えると早々に城を出て行ってしまった。

【完結】番としか子供が産まれない世界で

さくらもち
恋愛
番との間にしか子供が産まれない世界に産まれたニーナ。 何故か親から要らない子扱いされる不遇な子供時代に番と言う概念すら知らないまま育った。 そんなニーナが番に出会うまで 4話完結 出会えたところで話は終わってます。

処理中です...