10 / 80
1章 幼少期
10.前世のしがらみ
しおりを挟む
気分が悪い。
吐き気を抑えるため、口を押さえていた。
耳に届く、淫靡な水音、肉を打つ音。
枕を噛みしめ、耳を塞いだ。
そう長く続くまいと思っていたが、ユッタリと生々しく絡みつき2人の行為は長く続いた。 時間の感覚がオカシイのか、幼い体が感じる1分1秒が長いからか、その思考が何の解決にも至らないと、枕を投げ捨てたい気持ちを落ち着けた。
正気を失えば負けだ。
いや、もう負けている。
だけど、これは私の負けであっても、国として負けではない……。 セシル殿下まで負けさせる訳にはいかない。
なぜ、こうなった?
……あぁ、そうだ。
私が思い出すのは前世の自分。
……私は、彼女のような奔放な女性が、上手く自分を使い、愛を獲得しようとする人間が苦手だった。
どうにもならなかったんだ。
そう……自分を慰めた。 前世の記憶で生きるなら、華やかで艶やかで人に愛されて当然としながらも愛されるための努力……いえ、愛されるための策略が出来る人が嫌いだった。 そう言う人達に前世多くを奪われた。 奪って当然なのだと、私のモノであれば何でも奪っていいのだと、奪って言った。
目立たず謙虚に努力をすれば、年配の人から素直で可愛らしい子だと褒めて貰えた。 肯定されたから、それでいいと思った。 だけど違った。 気づいた時には私は感情を上手く伝える手段を失くしていた。
『我慢なさい、〇〇なんだから』
(相手が尊重する)お姉ちゃんだから。
(貴方が年上で)お姉ちゃんだから。
どうせ、貴方に似合わないんだから。
大人にとって理由なんて、なんでも良くて……私は我慢を強いられた。 その時の癖は、前世の記憶を持つ事で染みついている。 醜く嫉妬交じりに悪態を心の奥底で吐きだしながら、今も言葉には出来なかった。
ならば前世を放棄すればいい。
というものではないのが難しい所。
あぁあああああああああ!! キモチワルイ!!
グルグルとそんな言葉ばかり頭の中を巡っていた。
サーシャ・ルヴィックは部屋から抜け出し、そのまま駆け足で中庭の池側に向かって走っていた。 白い素足が夜の湿気に濡れ土に汚れる。
サーシャは駆けた。
ケントがその様子を見れば、やはり庶民の娘はと鼻で笑うだろう。 何時も何時もせわしなく駆け足でいて鬱陶しいと彼は言うだろう。
だけどサーシャを駆け足にさせたのはケントなのだ。
見下す視線と、カロリーネに酔いしれ青い色香を身に纏う婚約者を思い出せば、吐き気に走る足を止めた。
ごほげほっ、
咳き込み、涙と共に嗚咽を漏らすが、吐くものは胃の中に無い。
婚約者と言っても、政略的な婚約。
金に困っている所。
三流武力しか持ちえない事。
戦略を所有していないと言う事。
地位も名誉も金銭も自力回復が出来ぬ事。
どこまでも相手を見下した上で、ルンデル伯爵家で必要とされていないだろう三男を指定した。 年齢だけのつり合いを言うなら、五男当たりが丁度良かったのに。 五人兄弟の中でケントが一番整った顔立ちをしていたのだ。 どうせならと言う思いが無かったと言えば嘘になる。
ケントが自分を愛してくれるなら、私も愛するでしょう。 臆病故の受け身な態度、他人任せの卑怯な態度とも言えなくはない。
そんな思いが、借金返済や地位の確保と言う恩恵をルンデル家に与えながらも、強気で出る事が出来ないサーシャの弱み。
酷いことをしてしまったのは私なのだ……。
前世の大人な私。
幼いケント。
吐き気を抑えるため、口を押さえていた。
耳に届く、淫靡な水音、肉を打つ音。
枕を噛みしめ、耳を塞いだ。
そう長く続くまいと思っていたが、ユッタリと生々しく絡みつき2人の行為は長く続いた。 時間の感覚がオカシイのか、幼い体が感じる1分1秒が長いからか、その思考が何の解決にも至らないと、枕を投げ捨てたい気持ちを落ち着けた。
正気を失えば負けだ。
いや、もう負けている。
だけど、これは私の負けであっても、国として負けではない……。 セシル殿下まで負けさせる訳にはいかない。
なぜ、こうなった?
……あぁ、そうだ。
私が思い出すのは前世の自分。
……私は、彼女のような奔放な女性が、上手く自分を使い、愛を獲得しようとする人間が苦手だった。
どうにもならなかったんだ。
そう……自分を慰めた。 前世の記憶で生きるなら、華やかで艶やかで人に愛されて当然としながらも愛されるための努力……いえ、愛されるための策略が出来る人が嫌いだった。 そう言う人達に前世多くを奪われた。 奪って当然なのだと、私のモノであれば何でも奪っていいのだと、奪って言った。
目立たず謙虚に努力をすれば、年配の人から素直で可愛らしい子だと褒めて貰えた。 肯定されたから、それでいいと思った。 だけど違った。 気づいた時には私は感情を上手く伝える手段を失くしていた。
『我慢なさい、〇〇なんだから』
(相手が尊重する)お姉ちゃんだから。
(貴方が年上で)お姉ちゃんだから。
どうせ、貴方に似合わないんだから。
大人にとって理由なんて、なんでも良くて……私は我慢を強いられた。 その時の癖は、前世の記憶を持つ事で染みついている。 醜く嫉妬交じりに悪態を心の奥底で吐きだしながら、今も言葉には出来なかった。
ならば前世を放棄すればいい。
というものではないのが難しい所。
あぁあああああああああ!! キモチワルイ!!
グルグルとそんな言葉ばかり頭の中を巡っていた。
サーシャ・ルヴィックは部屋から抜け出し、そのまま駆け足で中庭の池側に向かって走っていた。 白い素足が夜の湿気に濡れ土に汚れる。
サーシャは駆けた。
ケントがその様子を見れば、やはり庶民の娘はと鼻で笑うだろう。 何時も何時もせわしなく駆け足でいて鬱陶しいと彼は言うだろう。
だけどサーシャを駆け足にさせたのはケントなのだ。
見下す視線と、カロリーネに酔いしれ青い色香を身に纏う婚約者を思い出せば、吐き気に走る足を止めた。
ごほげほっ、
咳き込み、涙と共に嗚咽を漏らすが、吐くものは胃の中に無い。
婚約者と言っても、政略的な婚約。
金に困っている所。
三流武力しか持ちえない事。
戦略を所有していないと言う事。
地位も名誉も金銭も自力回復が出来ぬ事。
どこまでも相手を見下した上で、ルンデル伯爵家で必要とされていないだろう三男を指定した。 年齢だけのつり合いを言うなら、五男当たりが丁度良かったのに。 五人兄弟の中でケントが一番整った顔立ちをしていたのだ。 どうせならと言う思いが無かったと言えば嘘になる。
ケントが自分を愛してくれるなら、私も愛するでしょう。 臆病故の受け身な態度、他人任せの卑怯な態度とも言えなくはない。
そんな思いが、借金返済や地位の確保と言う恩恵をルンデル家に与えながらも、強気で出る事が出来ないサーシャの弱み。
酷いことをしてしまったのは私なのだ……。
前世の大人な私。
幼いケント。
1
あなたにおすすめの小説
まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?
せいめ
恋愛
政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。
喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。
そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。
その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。
閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。
でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。
家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。
その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。
まずは亡くなったはずの旦那様との話から。
ご都合主義です。
設定は緩いです。
誤字脱字申し訳ありません。
主人公の名前を途中から間違えていました。
アメリアです。すみません。
初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結保証】
星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。
だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。
しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。
王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。
そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。
地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。
⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。
愛人を選んだ夫を捨てたら、元婚約者の公爵に捕まりました
由香
恋愛
伯爵夫人リュシエンヌは、夫が公然と愛人を囲う結婚生活を送っていた。
尽くしても感謝されず、妻としての役割だけを求められる日々。
けれど彼女は、泣きわめくことも縋ることもなく、静かに離婚を選ぶ。
そうして“捨てられた妻”になったはずの彼女の前に現れたのは、かつて婚約していた元婚約者――冷静沈着で有能な公爵セドリックだった。
再会とともに始まるのは、彼女の価値を正しく理解し、決して手放さない男による溺愛の日々。
一方、彼女を失った元夫は、妻が担っていたすべてを失い、社会的にも転落していく。
“尽くすだけの妻”から、“選ばれ、守られる女性”へ。
静かに離婚しただけなのに、
なぜか元婚約者の公爵に捕まりました。
五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~
放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」
大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。
生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。
しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。
「すまない。私は父としての責任を果たす」
かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。
だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。
これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。
婚約破棄のあと、あなたのことだけ思い出せない
柴田はつみ
恋愛
伯爵令嬢セシリアは、王宮の舞踏会で王太子レイヴンから公開の場で婚約破棄を言い渡され、その場で倒れた。
目覚めた彼女は、礼儀も常識も覚えているのに――ただ一つ、レイヴンだけを思い出せない。
「あなたは、どなたですか?」
その一言に、彼の瞳は壊れた。
けれどレイヴンは何も語らず、セシリアを遠ざける。彼女を守るために、あの日婚約を捨てたのだと告げられないまま。
セシリアは過去を断ち切り、王宮の侍女として新しい生活を始める。
優しく手を差し伸べる護衛騎士アデルと心を通わせていくほど、レイヴンの胸は嫉妬と後悔で焼けていった。
――守るために捨てたはずなのに。忘れられたまま、他の男に笑う彼女を見ていられない。
一方、王宮では“偽聖女”の陰謀と、セシリアの血に眠る秘密が動き出す。
記憶を取り戻せば、彼女は狙われる。取り戻さなければ、二人は永遠に届かない。
これは、忘れてしまった令嬢と、忘れられてなお愛を捨てられない王太子が、もう一度“選び直す”恋の物語。
「わざわざ始まるまでまたないで、今のうちに手を打ったってよくない?」
イチイ アキラ
恋愛
アスター公爵令嬢エステルは、夢をみる。それは先を映す夢。
ある日、夢をみた。
この国の未来を。
それをアルフレッド王太子に相談する。彼女を愛して止まない婚約者に。
彼は言う。
愛する君とぼくの国のためなら、未来を変えるのも仕方なくない?
〈完結〉【書籍化&コミカライズ】悪妃は余暇を楽しむ
ごろごろみかん。
恋愛
「こちら、離縁届です。私と、離縁してくださいませ、陛下」
ある日、悪妃と名高いクレメンティーナが夫に渡したのは、離縁届だった。彼女はにっこりと笑って言う。
「先日、あなた方の真実の愛を拝見させていただきまして……有難いことに目が覚めましたわ。ですので、王妃、やめさせていただこうかと」
何せ、あれだけ見せつけてくれたのである。ショックついでに前世の記憶を取り戻して、千年の恋も瞬間冷凍された。
都合のいい女は本日で卒業。
今後は、余暇を楽しむとしましょう。
吹っ切れた悪妃は身辺整理を終えると早々に城を出て行ってしまった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる