8 / 50
02.今の私を作る過去
08.夢見る時間
2歳の時から公爵家で育てられた私は、両親の記憶はない。
今まで会いたいと訴えた事が無かったのは、ダンベール公爵家での生活は人の情を、愛を求める環境ではなかったから。 現実なんてろくなものではないのだから、物語の中に見る理想を心に抱いていた方がいい。 まぁ、そんな感じ?
会いたいと願ったのは、ここ2年の間の経験。
私達は、大人の身勝手な感情と言う寒さを凌ぐ獣だった。
私達は、私達といる時だけが自由だった。
木陰で刺繍をしていれば、ケヴィンは気の上で本を読んでいた。 時折ボソリと言葉を交わして、そして笑う。 そうしていると、ユーグとサシャがやってきて、ユーグの傷の手入れをしている私の側で、サシャは小さなお茶会を隠れて行う。
こんな彼等との経験は、真冬を凌ぐために身を寄せ合う獣のようだと思った。 仲間意識が芽生えていたのだと思う。
まぁ、相変わらず赤い髪に因縁をつけて、ユーグを小突きまわしてはいたが、私の中では手のかかるカワイイ弟のように思えていた。
それで、ケヴィンは優しくて意地悪で頼りがいのある兄……コレは多分恋心だと思うけど、私はそっと心の中にしまいこみ鍵をしめたの。
サシャは……そうね、対等な親友? だってあの子、仲良くなったら凄く心配性だし、皆が笑えるように、幸福であるようにって、凄く気遣ってくれるの……。 ちなみに、ユーグとは従姉弟にあたるらしく、2人の関係を恋人に見立てる、ないないって必死に首を振るから面白い。
そうしているうちに、ケヴィンの『隠蔽』の加護は私達を守るために強くなった。 私もケガや毒に苦しむユーグに接するうちに力を必要だと考えるようになり、スラムで人材発掘をしているエヴラール様に、力を発揮する場を提供して貰いたいと思うようになった時には、たぶん私はもう変わっていたのだと思う。
ダンベール公爵家の者達は嫌がるだろうから、エヴラール様に会いに行くと言う体裁を整えさせてもらった。 エヴラール様は……貴族で、やはり貴族らしい腹黒さを持ってはいたが、公爵やミリヤ様とは少し違う……いえ、たぶん、私は彼を信用してもいいと甘えるようになっていたのだろう。
エヴラール様は、スラムは、花街等を紹介……と言うとおかしいのだけど……力を鍛える場を作り、ケヴィン以外の護衛もつけてくれ、公爵家とは関係のない人間関係も少しずつ広がったのだ。
私は変わって……。
人を信頼できるようになったのだと思う。 まぁ、マロリーは天然で奔放無邪気と言うには……お年を召してはいるけれど、公爵の顔色を見る必要のある貴族達と楽しそうな日々を送っていた。
ドチラかと言えば、ミリヤ様と公爵とが職務を共にする時間が増え、ソレは決してミリヤ様が望む甘いものではなかったけれど、ミリヤ様を落ち着かせるには十分だった。
ただ……ミリヤ様とマロリーとの対立は日々酷くなり、私とユーグはそれぞれの『母』から、敵対行動をとるように求められ、社交界で顔を合わせてもソッポを向きあうのだけど、……こっそりと料理を庭先に持ちより私達は、ケヴィンの『隠蔽』の力の下で私達だけの社交界を繰り広げるの。
楽しい……。
多分、公爵や、公爵の直属の部下であるサシャの父親は気づいているだろうって、ユーグやサシャは言っていたけど、ソレがいけない事だって叱られる事は無かった。
こういう日々は、きっと信頼と呼べるものだと思う。
他人である3人と築いた関係性は、それこそ家族のようで……本当の家族ならば、もっと愛おしいものなのだろうか? 私は、そう思った。
家族って?
家族なら。
もっと素敵なものなのでは? って、欲が沸いたし……ユーグやサシャと距離を置く事で寂しいと思った心を埋めようと思ったのだ。
「両親に……あってみたいです……」
「突然、だな」
「私も、そう思います」
「どうした?」
そう優しく尋ねるケヴィンに、私は子供のふりをして甘える。 頭が撫でられ、私は笑って見せるが、そんな私にケヴィンは厳しい表情を向けた。
「公爵は、ことあるごとにお嬢が売られたんだ。 ソレを理解しろと言っているが……。 俺は合わない方が良いと思う。 向こうが合う気なら、もう社交界デビューを果たしたお嬢に会いに来れるはずだろう?」
「そっと、私の成長を見守ってくれているかもしれないじゃないか」
私が拗ねたように言えば、ケヴィンは唸った。
「少し時間をくれ……」
「うん……」
時間をと言ったまま、ケヴィンはそのまま私が両親と会うと言う事を忘れる事を狙っていたのだろうと思う。 そして、私は自然と両親への思いを無意識で言葉にするようになっていて……ミリヤ様は、毎日のようにこう語るようになっていた。
今まで会いたいと訴えた事が無かったのは、ダンベール公爵家での生活は人の情を、愛を求める環境ではなかったから。 現実なんてろくなものではないのだから、物語の中に見る理想を心に抱いていた方がいい。 まぁ、そんな感じ?
会いたいと願ったのは、ここ2年の間の経験。
私達は、大人の身勝手な感情と言う寒さを凌ぐ獣だった。
私達は、私達といる時だけが自由だった。
木陰で刺繍をしていれば、ケヴィンは気の上で本を読んでいた。 時折ボソリと言葉を交わして、そして笑う。 そうしていると、ユーグとサシャがやってきて、ユーグの傷の手入れをしている私の側で、サシャは小さなお茶会を隠れて行う。
こんな彼等との経験は、真冬を凌ぐために身を寄せ合う獣のようだと思った。 仲間意識が芽生えていたのだと思う。
まぁ、相変わらず赤い髪に因縁をつけて、ユーグを小突きまわしてはいたが、私の中では手のかかるカワイイ弟のように思えていた。
それで、ケヴィンは優しくて意地悪で頼りがいのある兄……コレは多分恋心だと思うけど、私はそっと心の中にしまいこみ鍵をしめたの。
サシャは……そうね、対等な親友? だってあの子、仲良くなったら凄く心配性だし、皆が笑えるように、幸福であるようにって、凄く気遣ってくれるの……。 ちなみに、ユーグとは従姉弟にあたるらしく、2人の関係を恋人に見立てる、ないないって必死に首を振るから面白い。
そうしているうちに、ケヴィンの『隠蔽』の加護は私達を守るために強くなった。 私もケガや毒に苦しむユーグに接するうちに力を必要だと考えるようになり、スラムで人材発掘をしているエヴラール様に、力を発揮する場を提供して貰いたいと思うようになった時には、たぶん私はもう変わっていたのだと思う。
ダンベール公爵家の者達は嫌がるだろうから、エヴラール様に会いに行くと言う体裁を整えさせてもらった。 エヴラール様は……貴族で、やはり貴族らしい腹黒さを持ってはいたが、公爵やミリヤ様とは少し違う……いえ、たぶん、私は彼を信用してもいいと甘えるようになっていたのだろう。
エヴラール様は、スラムは、花街等を紹介……と言うとおかしいのだけど……力を鍛える場を作り、ケヴィン以外の護衛もつけてくれ、公爵家とは関係のない人間関係も少しずつ広がったのだ。
私は変わって……。
人を信頼できるようになったのだと思う。 まぁ、マロリーは天然で奔放無邪気と言うには……お年を召してはいるけれど、公爵の顔色を見る必要のある貴族達と楽しそうな日々を送っていた。
ドチラかと言えば、ミリヤ様と公爵とが職務を共にする時間が増え、ソレは決してミリヤ様が望む甘いものではなかったけれど、ミリヤ様を落ち着かせるには十分だった。
ただ……ミリヤ様とマロリーとの対立は日々酷くなり、私とユーグはそれぞれの『母』から、敵対行動をとるように求められ、社交界で顔を合わせてもソッポを向きあうのだけど、……こっそりと料理を庭先に持ちより私達は、ケヴィンの『隠蔽』の力の下で私達だけの社交界を繰り広げるの。
楽しい……。
多分、公爵や、公爵の直属の部下であるサシャの父親は気づいているだろうって、ユーグやサシャは言っていたけど、ソレがいけない事だって叱られる事は無かった。
こういう日々は、きっと信頼と呼べるものだと思う。
他人である3人と築いた関係性は、それこそ家族のようで……本当の家族ならば、もっと愛おしいものなのだろうか? 私は、そう思った。
家族って?
家族なら。
もっと素敵なものなのでは? って、欲が沸いたし……ユーグやサシャと距離を置く事で寂しいと思った心を埋めようと思ったのだ。
「両親に……あってみたいです……」
「突然、だな」
「私も、そう思います」
「どうした?」
そう優しく尋ねるケヴィンに、私は子供のふりをして甘える。 頭が撫でられ、私は笑って見せるが、そんな私にケヴィンは厳しい表情を向けた。
「公爵は、ことあるごとにお嬢が売られたんだ。 ソレを理解しろと言っているが……。 俺は合わない方が良いと思う。 向こうが合う気なら、もう社交界デビューを果たしたお嬢に会いに来れるはずだろう?」
「そっと、私の成長を見守ってくれているかもしれないじゃないか」
私が拗ねたように言えば、ケヴィンは唸った。
「少し時間をくれ……」
「うん……」
時間をと言ったまま、ケヴィンはそのまま私が両親と会うと言う事を忘れる事を狙っていたのだろうと思う。 そして、私は自然と両親への思いを無意識で言葉にするようになっていて……ミリヤ様は、毎日のようにこう語るようになっていた。
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】
星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。
だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。
しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。
王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。
そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。
地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。
⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
愛を知った私は、もう二度と跪きません
阿里
恋愛
泥だらけのドレス、冷え切った食事、終わりのない書類仕事。
家族のために尽くしてきたエカテリーナに返されたのは、あまりにも残酷な追放宣告だった。
「呪われた男にでも喰われてこい」
そう笑って送り出した彼らは知らなかった。辺境伯ゼノスが、誰よりも強く、美しく、そして執着心が強い男だということを。
彼の手によって「価値ある女」へと生まれ変わったエカテリーナ。
その輝きに目が眩み、後悔して這いつくばる元家族たち。
「エカテリーナ様、どうかお助けを!」
かつて私を虐げた人たちの悲鳴を聞きながら、私は最愛の夫の腕の中で、静かに微笑む。
夫が運命の番と出会いました
重田いの
恋愛
幼馴染のいいなづけとして育ってきた銀狼族の族長エーリヒと、妻ローゼマリー。
だがエーリヒに運命の番が現れたことにより、二人は離別する。
しかし二年後、修道院に暮らすローゼマリーの元へエーリヒが現れ――!?
【完結】転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して二年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
一夜の過ちで懐妊したら、幼なじみの冷酷皇帝に溺愛されました
由香
恋愛
没落貴族の娘・柳月鈴は、宮廷で医官見習いとして働いていた。
ある夜、皇帝即位の宴で酒に酔い、幼なじみだった皇帝・李景珩と再会する。
遠い存在になったはずの彼。
けれど、その夜をきっかけに月鈴の運命は大きく動き出す。
冷酷と恐れられる皇帝が、なぜか彼女だけには甘すぎて――。
側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、陛下は私を離してくれません!
花瀬ゆらぎ
恋愛
「おまえには、国王陛下の側妃になってもらう」
婚約者と親友に裏切られ、傷心の伯爵令嬢イリア。
追い打ちをかけるように父から命じられたのは、若き国王フェイランの側妃になることだった。
しかし、王宮で待っていたのは、「世継ぎを産んだら離縁」という非情な条件。
夫となったフェイランは冷たく、侍女からは蔑まれ、王妃からは「用が済んだら去れ」と突き放される。
けれど、イリアは知ってしまう。 彼が兄の死と誤解に苦しみ、誰よりも孤独の中にいることを──。
「私は、陛下の幸せを願っております。だから……離縁してください」
フェイランを想い、身を引こうとしたイリア。
しかし、無関心だったはずの陛下が、イリアを強く抱きしめて……!?
「離縁する気か? 許さない。私の心を乱しておいて、逃げられると思うな」
凍てついた王の心を溶かしたのは、売られた側妃の純真な愛。
孤独な陛下に執着され、正妃へと昇り詰める逆転ラブロマンス!