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02.今の私を作る過去
08.夢見る時間
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2歳の時から公爵家で育てられた私は、両親の記憶はない。
今まで会いたいと訴えた事が無かったのは、ダンベール公爵家での生活は人の情を、愛を求める環境ではなかったから。 現実なんてろくなものではないのだから、物語の中に見る理想を心に抱いていた方がいい。 まぁ、そんな感じ?
会いたいと願ったのは、ここ2年の間の経験。
私達は、大人の身勝手な感情と言う寒さを凌ぐ獣だった。
私達は、私達といる時だけが自由だった。
木陰で刺繍をしていれば、ケヴィンは気の上で本を読んでいた。 時折ボソリと言葉を交わして、そして笑う。 そうしていると、ユーグとサシャがやってきて、ユーグの傷の手入れをしている私の側で、サシャは小さなお茶会を隠れて行う。
こんな彼等との経験は、真冬を凌ぐために身を寄せ合う獣のようだと思った。 仲間意識が芽生えていたのだと思う。
まぁ、相変わらず赤い髪に因縁をつけて、ユーグを小突きまわしてはいたが、私の中では手のかかるカワイイ弟のように思えていた。
それで、ケヴィンは優しくて意地悪で頼りがいのある兄……コレは多分恋心だと思うけど、私はそっと心の中にしまいこみ鍵をしめたの。
サシャは……そうね、対等な親友? だってあの子、仲良くなったら凄く心配性だし、皆が笑えるように、幸福であるようにって、凄く気遣ってくれるの……。 ちなみに、ユーグとは従姉弟にあたるらしく、2人の関係を恋人に見立てる、ないないって必死に首を振るから面白い。
そうしているうちに、ケヴィンの『隠蔽』の加護は私達を守るために強くなった。 私もケガや毒に苦しむユーグに接するうちに力を必要だと考えるようになり、スラムで人材発掘をしているエヴラール様に、力を発揮する場を提供して貰いたいと思うようになった時には、たぶん私はもう変わっていたのだと思う。
ダンベール公爵家の者達は嫌がるだろうから、エヴラール様に会いに行くと言う体裁を整えさせてもらった。 エヴラール様は……貴族で、やはり貴族らしい腹黒さを持ってはいたが、公爵やミリヤ様とは少し違う……いえ、たぶん、私は彼を信用してもいいと甘えるようになっていたのだろう。
エヴラール様は、スラムは、花街等を紹介……と言うとおかしいのだけど……力を鍛える場を作り、ケヴィン以外の護衛もつけてくれ、公爵家とは関係のない人間関係も少しずつ広がったのだ。
私は変わって……。
人を信頼できるようになったのだと思う。 まぁ、マロリーは天然で奔放無邪気と言うには……お年を召してはいるけれど、公爵の顔色を見る必要のある貴族達と楽しそうな日々を送っていた。
ドチラかと言えば、ミリヤ様と公爵とが職務を共にする時間が増え、ソレは決してミリヤ様が望む甘いものではなかったけれど、ミリヤ様を落ち着かせるには十分だった。
ただ……ミリヤ様とマロリーとの対立は日々酷くなり、私とユーグはそれぞれの『母』から、敵対行動をとるように求められ、社交界で顔を合わせてもソッポを向きあうのだけど、……こっそりと料理を庭先に持ちより私達は、ケヴィンの『隠蔽』の力の下で私達だけの社交界を繰り広げるの。
楽しい……。
多分、公爵や、公爵の直属の部下であるサシャの父親は気づいているだろうって、ユーグやサシャは言っていたけど、ソレがいけない事だって叱られる事は無かった。
こういう日々は、きっと信頼と呼べるものだと思う。
他人である3人と築いた関係性は、それこそ家族のようで……本当の家族ならば、もっと愛おしいものなのだろうか? 私は、そう思った。
家族って?
家族なら。
もっと素敵なものなのでは? って、欲が沸いたし……ユーグやサシャと距離を置く事で寂しいと思った心を埋めようと思ったのだ。
「両親に……あってみたいです……」
「突然、だな」
「私も、そう思います」
「どうした?」
そう優しく尋ねるケヴィンに、私は子供のふりをして甘える。 頭が撫でられ、私は笑って見せるが、そんな私にケヴィンは厳しい表情を向けた。
「公爵は、ことあるごとにお嬢が売られたんだ。 ソレを理解しろと言っているが……。 俺は合わない方が良いと思う。 向こうが合う気なら、もう社交界デビューを果たしたお嬢に会いに来れるはずだろう?」
「そっと、私の成長を見守ってくれているかもしれないじゃないか」
私が拗ねたように言えば、ケヴィンは唸った。
「少し時間をくれ……」
「うん……」
時間をと言ったまま、ケヴィンはそのまま私が両親と会うと言う事を忘れる事を狙っていたのだろうと思う。 そして、私は自然と両親への思いを無意識で言葉にするようになっていて……ミリヤ様は、毎日のようにこう語るようになっていた。
今まで会いたいと訴えた事が無かったのは、ダンベール公爵家での生活は人の情を、愛を求める環境ではなかったから。 現実なんてろくなものではないのだから、物語の中に見る理想を心に抱いていた方がいい。 まぁ、そんな感じ?
会いたいと願ったのは、ここ2年の間の経験。
私達は、大人の身勝手な感情と言う寒さを凌ぐ獣だった。
私達は、私達といる時だけが自由だった。
木陰で刺繍をしていれば、ケヴィンは気の上で本を読んでいた。 時折ボソリと言葉を交わして、そして笑う。 そうしていると、ユーグとサシャがやってきて、ユーグの傷の手入れをしている私の側で、サシャは小さなお茶会を隠れて行う。
こんな彼等との経験は、真冬を凌ぐために身を寄せ合う獣のようだと思った。 仲間意識が芽生えていたのだと思う。
まぁ、相変わらず赤い髪に因縁をつけて、ユーグを小突きまわしてはいたが、私の中では手のかかるカワイイ弟のように思えていた。
それで、ケヴィンは優しくて意地悪で頼りがいのある兄……コレは多分恋心だと思うけど、私はそっと心の中にしまいこみ鍵をしめたの。
サシャは……そうね、対等な親友? だってあの子、仲良くなったら凄く心配性だし、皆が笑えるように、幸福であるようにって、凄く気遣ってくれるの……。 ちなみに、ユーグとは従姉弟にあたるらしく、2人の関係を恋人に見立てる、ないないって必死に首を振るから面白い。
そうしているうちに、ケヴィンの『隠蔽』の加護は私達を守るために強くなった。 私もケガや毒に苦しむユーグに接するうちに力を必要だと考えるようになり、スラムで人材発掘をしているエヴラール様に、力を発揮する場を提供して貰いたいと思うようになった時には、たぶん私はもう変わっていたのだと思う。
ダンベール公爵家の者達は嫌がるだろうから、エヴラール様に会いに行くと言う体裁を整えさせてもらった。 エヴラール様は……貴族で、やはり貴族らしい腹黒さを持ってはいたが、公爵やミリヤ様とは少し違う……いえ、たぶん、私は彼を信用してもいいと甘えるようになっていたのだろう。
エヴラール様は、スラムは、花街等を紹介……と言うとおかしいのだけど……力を鍛える場を作り、ケヴィン以外の護衛もつけてくれ、公爵家とは関係のない人間関係も少しずつ広がったのだ。
私は変わって……。
人を信頼できるようになったのだと思う。 まぁ、マロリーは天然で奔放無邪気と言うには……お年を召してはいるけれど、公爵の顔色を見る必要のある貴族達と楽しそうな日々を送っていた。
ドチラかと言えば、ミリヤ様と公爵とが職務を共にする時間が増え、ソレは決してミリヤ様が望む甘いものではなかったけれど、ミリヤ様を落ち着かせるには十分だった。
ただ……ミリヤ様とマロリーとの対立は日々酷くなり、私とユーグはそれぞれの『母』から、敵対行動をとるように求められ、社交界で顔を合わせてもソッポを向きあうのだけど、……こっそりと料理を庭先に持ちより私達は、ケヴィンの『隠蔽』の力の下で私達だけの社交界を繰り広げるの。
楽しい……。
多分、公爵や、公爵の直属の部下であるサシャの父親は気づいているだろうって、ユーグやサシャは言っていたけど、ソレがいけない事だって叱られる事は無かった。
こういう日々は、きっと信頼と呼べるものだと思う。
他人である3人と築いた関係性は、それこそ家族のようで……本当の家族ならば、もっと愛おしいものなのだろうか? 私は、そう思った。
家族って?
家族なら。
もっと素敵なものなのでは? って、欲が沸いたし……ユーグやサシャと距離を置く事で寂しいと思った心を埋めようと思ったのだ。
「両親に……あってみたいです……」
「突然、だな」
「私も、そう思います」
「どうした?」
そう優しく尋ねるケヴィンに、私は子供のふりをして甘える。 頭が撫でられ、私は笑って見せるが、そんな私にケヴィンは厳しい表情を向けた。
「公爵は、ことあるごとにお嬢が売られたんだ。 ソレを理解しろと言っているが……。 俺は合わない方が良いと思う。 向こうが合う気なら、もう社交界デビューを果たしたお嬢に会いに来れるはずだろう?」
「そっと、私の成長を見守ってくれているかもしれないじゃないか」
私が拗ねたように言えば、ケヴィンは唸った。
「少し時間をくれ……」
「うん……」
時間をと言ったまま、ケヴィンはそのまま私が両親と会うと言う事を忘れる事を狙っていたのだろうと思う。 そして、私は自然と両親への思いを無意識で言葉にするようになっていて……ミリヤ様は、毎日のようにこう語るようになっていた。
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