【R18】親の因果が子に報い【完結】

迷い人

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04.裏切者たちの叫び

32.いびつな関係

 勝手に商品とされているのは、怒る以前に驚きでしかない。

「この国、人身売買は禁止でしたよね?」

 とは言っても法的にはとか、表面上はと言う事は知っている。 食べる物にも困り、親がスラムに子を捨てるならまだいい。 見栄えの良い幼い子は、性別にかかわらず娼館で良い値段で買われる。

 人身売買も奴隷も認められていないから、買われた子は、良い服を与えられ、美味しい食事や、菓子も与えられる。 商品価値が認められる限り、贅沢で華やかで……親元にいた頃よりも良い生活で、私は逃げたい帰りたい助けて等と言う言葉を聞いた事は無かった。

 競売なんて最悪だ……。

「法的に決められている」

「私を金銭的に取引するってどういう事なのでしょう?」

 淡々と感情を殺し聞く私に応えるのはサージュの方で、ユベールは不機嫌なままで私を抱きしめていた。

「……ようするに、ユーグ様との婚約が解消されたことで、ラシェルは公爵家の庇護下を離れ、ただの子爵令嬢となった。 そして、子爵が新しい嫁ぎ先を探し、より良い相手を出す相手に嫁がせると約束した……。 より良い相手の判断がつかないから、競売と言う方法をとるが、人身売買などではありませんよ。 と言う事らしいです」

「あぁ、そういう事……。 会いに来たこともない癖に」

 私は、自分を抱きしめるユベールの手をポンポンと軽く叩く。

「抱きつぶさないで下さいよ」

「するわけないだろ」

 私は小さく笑って見せる心を隠しながら。

 どうして、凶悪な獣のような気配を纏わせた青年この子が、泣きそうになっているのだろうかと……。

 熱を確かめるように、熱を与えるように、私に触れる手が服の下へと入って来て肌に触れる。 止めるように言えば止めるだろうけど、私は自分の弱さを理解していて、その手を頼る様に自分を任せてしまう。

 私は弱い……。

 自分の知らないところで自分がやり取りされていると言う事実には恐怖を覚えた。 娼館で平気だったのは、ケヴィンが今も私を探していると思っていたから……。 でも、よくよく考えれば、ユーグとの婚約と言う縛りをなくした私をなぜ、ケヴィンが探すだろうか? エヴラール様が探せと命じるだろうか?

 胸の奥がヒヤリとし、身体を凍り付かせるような……そんな感じ。 だから、私は私に触れる熱を拒絶できずにいる。 私を必要として!! そう泣きついて媚びて訴えたい。 そんな衝動と、衝動的感情を嫌う私。

 今、少しだけ身体をずらし、煽るようにユベールに口づければどうなるのだろう? 私を求めてくれるだろう……。

 それは卑怯だ。
 そんな卑怯な自分に胸が痛む。

 そんな弱い私を必死に隠し、私は少しだけいつもより饒舌に語ってしまう。

「あぁ、そうか……。 公爵家の経営権を得た時、毎月支払われた実家への支払いを止めたのが原因ね……」

 ケヴィンに反対されても両親を見に行ってきて良かった。 下手な情など生まれない状況で良かった。 雨に濡れ、泥に汚れた私を、馬車の中から笑っていた家族……。 あの人達のために、自分を犠牲にしようとは欠片も思わないから。

「ユベール」

 身体に触れる手が優しい男の名を私は呼ぶ。 その身に包み込むような熱に身体を任せる。

「んっ?」

 何かを抑えた声。 チラリとサージュを見るが、馬を操作している彼は振り返る様子はない。 私は、身体を少しずらし、視線をユベールに向けた。 金の瞳がやっぱり泣きそうで泣けない私の心が救われた気になる。

 耳元に私は甘く囁く。

「ユベールは、強い?」

 ユベールの唇が、顎のあたりに触れ、肌を撫で滑るように唇に触れる。

「ラシェルが側にいてくれるなら、強くいられるよ」

 呼吸が触れ、唇が触れる距離の会話。

「私は、物として扱われたくない。 誰かの利益のためにやり取りをされたくない」

「俺も嫌だよ」

 柔らかなスカートをめくりあげた手は、太腿に触れ撫でてくる。

「守ってくれる対価に抱く?」

「抱かなくても守るよ……でも、今のラシェルは可哀そうで……可愛くて……、なんか、ムズムズする」

 顔を仄かに赤くして言われれば、私はビックリすると言うか……。

「ユベールは可愛いね」

 チュッと私の方から軽く口づける。

 媚びるための行為ではなく、嫌ではないから求められればする。 そんな気分へと変わって行った。 ユベールの両頬を両手で挟み口づける私。 そしてバランス悪く膝たちをする私の腰を支え、太腿に触れ支えるユベール。

 軽く触れるだけの口づけの音が、甘く響いていた。

「このスピードでいけば合流地点まで30分ほどでつきますよ」

「空気読めよ。 せっかく弱っているラシェルを落とすチャンスなのに」

 全てを冗談にするようにユベールは笑いながら言い、私を膝の上から退かした。 だけど、私はそんなユベールをカラカウように挑発する。

「コレどうするの?」

 指先で軽く弄ぶように触れれば、ユベールは小さく呻き眉間を寄せる。 手のひらで包み込むように撫でれば、小さな溜息が零れ落ちた。

「ラシェル……」

 熱っぽい視線が怒ったように向けられ、少しだけ乱暴に唇が触れ、舌先が唇を舐める。 対価を返済しすぎると獣性が弱まるからと、最初の日以来、口づけすらしていなかったのに、唾液を交えるように深く甘く口づけが交わされた。

「私の事、好き?」

「愛している」

 唇の動きが、私の唇をくすぐる。 チュッと甘く口づけて舌先を絡めるように舌を差し出せば、ユベールも舌を絡めてくる。 左手で身体を支えながら、右手は胸に触れて来た。

 ずるいだろうか?
 ずるいよね?

「……弱みに付け入って、ごめんな」

 謝るから私は首を横に振り、サージュは馬車の速度を落としていた。

「私こそ……ゴメン」

 歪な関係に私は縋りつく。

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