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05.終章
50.完結
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国王が受け継ぐ血統加護は、複数あると言われている。 複数のうちのいくつかは、ダンベール公爵家の加護のように忠誠により捧げられるものだろう。 だからこそ国王の力は謎とされている。
見なかった事にしよう。
全てを忘れてしまおう。
ユーグもラシェルもそう思った。
だが、広間での騒動の後、2人はバルゲリー現公爵と共に国王陛下の元に招かれた。
「紹介しよう。 彼は、バルゲリー公爵家の血統加護を受け継いだケヴィンだ。 不幸にも赤ん坊の頃に攫われ、そしてスラムに捨てられた。 彼の血統加護を欲した悪人に、スラムの仲間は殺され、そして彼だけが生き残った。 だが、残酷な運命を受け入れる事ができなかったのか、彼は多くの記憶を失っている。 どうか、彼を支えてやって欲しい」
私達はためらう事は許されたとしても、拒絶までは許されていない。
「陛下の命令のままに……」
そう口にしたのはユーグだった。
「バルゲリー公爵、彼に公爵家の者として必要な作法を教える教師を、そうだねぇ……優しく思慮深い女性がいいな。 数人手配して欲しいかな」
「は、い……」
「さぁ、君は疲れているだろうケヴィン。 後の事は私に任せ、ユックリと休むといいよ」
「ありがとうございます」
ケヴィンはエヴラールに教え込まれた貴族の礼をし、侍女と共に部屋を後にした。
残された私達はただ黙る。
「君たちも大変だったね。 甘い物でも食べて疲れを癒すといい」
何事も無かったかのような国王陛下の態度に、私やユーグだけでなく、バルゲリー現公爵も頬を引きつらせた。
全てを無かった事にして、彼をバルゲリー公爵家の真の当主として立てようと国王陛下は言うのだから当然だ。
私達は、バルゲリー領の惨状を見てきているのだから。
もし、彼が記憶を取り戻したら。
私がそう考えた時、陛下は微笑みながらこう告げた。
「彼は、記憶を取り戻すよ」
私は小さく息をのみ、そして尋ねた。
「……より、危険な存在となるのではありませんか?」
ユーグは震える私の肩を抱く。
「僕を気にせずとも、もっとイチャイチャしてくれていいんだよ?」
なんて言われ、私を膝の上に置き抱きしめるユーグの神経も分からないが、何より理解できないのは国王陛下その人だった。
「危険な存在に、なるだろうね……。 恨みを募らせながらね」
国王陛下は笑い、そして言葉を続けた。
「何しろ、僕はバルゲリー公爵には、彼を血統加護の所有者として敬意をもって接するようにと命じるのだから。 より公爵位に執着するだろうね」
「陛下!!」
バルゲリー公爵が声を荒げた。
国王陛下はお茶を一口のみ、穏やかに制する。
「反論は許さない。 バルゲリー公爵、貴方のやった事は大きな罪だ。 公爵としての資格がないにもかかわらず爵位につき、馬鹿げた事を行った。 もっと、早くに報告するべきだったのではないかな?」
「……」
「とは言え、僕も彼を許す気はない。 だけれど、彼の血は失う訳にはいかないんだよ。 だって、直系の子は彼しかいないんだからね。 だから、彼には妻と愛人を与え、幾人ものを子を作ってもらおうと思う。 平和で幸福な日々の中で、彼は、どこまでも美しい夢を記憶を取り戻すその時まで見続けるだろう」
私達は黙り込む。 真実を思い出した時、彼は以前のケヴィンなのか? それともコレから幸福な日々を送るケヴィンなのか?
国王陛下は続ける。
「彼は全ての罪を思い出した時、死んでもらうよ……。 美しく、幸福だった家族を目の前に、無念に残酷に散ってくれるはずさ」
国王陛下は、幼く見える顔立ちに、穏やかで優しい微笑みを浮かべた。
そして、私達は、新しい日常を始めた。
ユーグに反意を持つ者は既におらず。
私を無下にした者も、もういない。
平和で穏やかな日々が繰り返される。
本当に?
植え付けられた恐怖は、簡単にはぬぐえず……私は恐怖を誤魔化すようにユーグを求め、ユーグはソレに応じる。 甘く優しい言葉が毎夜囁かれ、熱が身体の奥に注がれる。
甘い日々……。
戦後の褒賞により潤う領地。
恩恵を受けようとする貴族はウルサイが……まぁ、おおむね平和だ。
私の心の中以外は。
「ラシェル。 あの方は、敵対しなければ寛容な方だし、味方には随分甘い方だ。 そう怯えなくてもいい。 でないと、国王陛下がラシェルに恋慕していると言う噂が立ち始めている」
呆れたようにユーグが言う。 なにしろ花や菓子、ドレスに宝石が日を置かずに届けられるのだ。 素直に喜べるはずもない。
「僕は、僕のやり方で、思いで、君がこの世に生まれた時から愛し見守っているんだよ。 そう冷たくされると、悲しいなぁ~~」
なんて言われても、本能が拒絶する。
それでも仕方がない。
ユーグの妻である事を選んだのだから。
「陛下をお茶にお招きしましょう。 私が……平気だと知れば、こんな贈り物も必要はありませんよね?」
「出来るなら、好意は受け取っておいてくれると助かるんだが……とても面倒くさい」
苦笑交じりにユーグは言う。
「あら、そこは自分以外の男からのプレゼントはイヤだと言って下さい!!」
フザケタ様子で言えば、ユーグは笑い、私に手を差し伸べる。
「分かった、そうしよう。 だから、拗ねてないでおいで」
「拗ねてません!!」
そう言いながら、今日も私はその胸の中で眠りにつく。
ユーグは……、
自分の未熟をサポートしてくれるから。
自分達に裏切りと言うものがないから。
私に隠してはいるが、今も時々残酷な行為を強いられている事を知っている。 それでもユーグは、まるで仲の良い兄弟のように国王陛下と語り合う。
恐ろしい人だけど、信頼できるよ。
私とユーグの中にある大きな差。
これは、生まれてくる子を守りたいと言う母としての本能だろう。
国王陛下の言動一つで、残酷な因果は生まれ子に巡る……。
私は、未だ存在しない我が子と、ケヴィンの子を憂う……。
親の因果が子の幸福を奪わぬようにと……。
終わり
見なかった事にしよう。
全てを忘れてしまおう。
ユーグもラシェルもそう思った。
だが、広間での騒動の後、2人はバルゲリー現公爵と共に国王陛下の元に招かれた。
「紹介しよう。 彼は、バルゲリー公爵家の血統加護を受け継いだケヴィンだ。 不幸にも赤ん坊の頃に攫われ、そしてスラムに捨てられた。 彼の血統加護を欲した悪人に、スラムの仲間は殺され、そして彼だけが生き残った。 だが、残酷な運命を受け入れる事ができなかったのか、彼は多くの記憶を失っている。 どうか、彼を支えてやって欲しい」
私達はためらう事は許されたとしても、拒絶までは許されていない。
「陛下の命令のままに……」
そう口にしたのはユーグだった。
「バルゲリー公爵、彼に公爵家の者として必要な作法を教える教師を、そうだねぇ……優しく思慮深い女性がいいな。 数人手配して欲しいかな」
「は、い……」
「さぁ、君は疲れているだろうケヴィン。 後の事は私に任せ、ユックリと休むといいよ」
「ありがとうございます」
ケヴィンはエヴラールに教え込まれた貴族の礼をし、侍女と共に部屋を後にした。
残された私達はただ黙る。
「君たちも大変だったね。 甘い物でも食べて疲れを癒すといい」
何事も無かったかのような国王陛下の態度に、私やユーグだけでなく、バルゲリー現公爵も頬を引きつらせた。
全てを無かった事にして、彼をバルゲリー公爵家の真の当主として立てようと国王陛下は言うのだから当然だ。
私達は、バルゲリー領の惨状を見てきているのだから。
もし、彼が記憶を取り戻したら。
私がそう考えた時、陛下は微笑みながらこう告げた。
「彼は、記憶を取り戻すよ」
私は小さく息をのみ、そして尋ねた。
「……より、危険な存在となるのではありませんか?」
ユーグは震える私の肩を抱く。
「僕を気にせずとも、もっとイチャイチャしてくれていいんだよ?」
なんて言われ、私を膝の上に置き抱きしめるユーグの神経も分からないが、何より理解できないのは国王陛下その人だった。
「危険な存在に、なるだろうね……。 恨みを募らせながらね」
国王陛下は笑い、そして言葉を続けた。
「何しろ、僕はバルゲリー公爵には、彼を血統加護の所有者として敬意をもって接するようにと命じるのだから。 より公爵位に執着するだろうね」
「陛下!!」
バルゲリー公爵が声を荒げた。
国王陛下はお茶を一口のみ、穏やかに制する。
「反論は許さない。 バルゲリー公爵、貴方のやった事は大きな罪だ。 公爵としての資格がないにもかかわらず爵位につき、馬鹿げた事を行った。 もっと、早くに報告するべきだったのではないかな?」
「……」
「とは言え、僕も彼を許す気はない。 だけれど、彼の血は失う訳にはいかないんだよ。 だって、直系の子は彼しかいないんだからね。 だから、彼には妻と愛人を与え、幾人ものを子を作ってもらおうと思う。 平和で幸福な日々の中で、彼は、どこまでも美しい夢を記憶を取り戻すその時まで見続けるだろう」
私達は黙り込む。 真実を思い出した時、彼は以前のケヴィンなのか? それともコレから幸福な日々を送るケヴィンなのか?
国王陛下は続ける。
「彼は全ての罪を思い出した時、死んでもらうよ……。 美しく、幸福だった家族を目の前に、無念に残酷に散ってくれるはずさ」
国王陛下は、幼く見える顔立ちに、穏やかで優しい微笑みを浮かべた。
そして、私達は、新しい日常を始めた。
ユーグに反意を持つ者は既におらず。
私を無下にした者も、もういない。
平和で穏やかな日々が繰り返される。
本当に?
植え付けられた恐怖は、簡単にはぬぐえず……私は恐怖を誤魔化すようにユーグを求め、ユーグはソレに応じる。 甘く優しい言葉が毎夜囁かれ、熱が身体の奥に注がれる。
甘い日々……。
戦後の褒賞により潤う領地。
恩恵を受けようとする貴族はウルサイが……まぁ、おおむね平和だ。
私の心の中以外は。
「ラシェル。 あの方は、敵対しなければ寛容な方だし、味方には随分甘い方だ。 そう怯えなくてもいい。 でないと、国王陛下がラシェルに恋慕していると言う噂が立ち始めている」
呆れたようにユーグが言う。 なにしろ花や菓子、ドレスに宝石が日を置かずに届けられるのだ。 素直に喜べるはずもない。
「僕は、僕のやり方で、思いで、君がこの世に生まれた時から愛し見守っているんだよ。 そう冷たくされると、悲しいなぁ~~」
なんて言われても、本能が拒絶する。
それでも仕方がない。
ユーグの妻である事を選んだのだから。
「陛下をお茶にお招きしましょう。 私が……平気だと知れば、こんな贈り物も必要はありませんよね?」
「出来るなら、好意は受け取っておいてくれると助かるんだが……とても面倒くさい」
苦笑交じりにユーグは言う。
「あら、そこは自分以外の男からのプレゼントはイヤだと言って下さい!!」
フザケタ様子で言えば、ユーグは笑い、私に手を差し伸べる。
「分かった、そうしよう。 だから、拗ねてないでおいで」
「拗ねてません!!」
そう言いながら、今日も私はその胸の中で眠りにつく。
ユーグは……、
自分の未熟をサポートしてくれるから。
自分達に裏切りと言うものがないから。
私に隠してはいるが、今も時々残酷な行為を強いられている事を知っている。 それでもユーグは、まるで仲の良い兄弟のように国王陛下と語り合う。
恐ろしい人だけど、信頼できるよ。
私とユーグの中にある大きな差。
これは、生まれてくる子を守りたいと言う母としての本能だろう。
国王陛下の言動一つで、残酷な因果は生まれ子に巡る……。
私は、未だ存在しない我が子と、ケヴィンの子を憂う……。
親の因果が子の幸福を奪わぬようにと……。
終わり
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