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4章

44. 王宮での彼 01

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 誰もがオレコウと同じ感覚を共有しているとは思って等いない。
 理解を求めようとも考えていない。

 オレにとっての性衝動は、繁殖や、快楽に対する欲求よりも、破壊欲求に近い……。





 リリアレイラが意識失ったことを確認し、オレは国軍本部の執務室で目を覚ました。

「お目覚めですか殿下」

 側近として側に置いている青年が声をかけてくる。

 善良とは言い難く、欲深い男である。 だからこそ、オレに利用価値があると考える限りは裏切ることはないと信用できる男だ。 彼は知恵が回るが、武力的には同年代の男達に劣る。 騎士の一族に生まれながら劣等感を抱き、周囲に見下げられて男は、オレへの忠誠を力に変え全てを見返した賢い男だ。

「あぁ……」

「飲み物を準備しますか?」

「水を貰おう」

 水を飲み一息つく。

 目を伏せ、つい先ほどまでの出来事を思い起こせば、自然と口元が緩んだ。

「殿下……不気味な笑いは控えてください」

 そう言われれば、ムッとして青年を睨みつけようとしたが、先んじて青年は理由を述べた。

「今、アナタが発している威圧、覇気は、人にとってキツイものです」

「あ……あぁ」

 オレは目を閉ざし、力をコントロールしようとした。
 だが、目を閉ざせば、口づけと共にオレの名をよぶリリアの声を思い出した。

 肌に甘やかな刺激を与えれば、オレに乱れさせたいと懇願し、愛らしく切なく鳴く。 リリアの中で夢うつつとされる現実は、日ごろの彼女よりもズイブンと素直にオレを求めてきた。

 削り落とすように周囲との関係性が失われ、孤独へと堕ち、その先にオレだけがいるならば、リリアは自然とオレの元に堕ちてくるだろう。 それを想像すればとても満ち足りた気分となる。



 だが、現実的な肉体の欲求は何一つ満ちることは無く、肉体による欲求ばかりが高まる。



「殿下!!」

「仕方ないだろう! 自然現象だ」

「なら、王宮でアナタを待つ者達の元へといってきてください」

「だがなぁ……」

 それは、リリアが嫌がっていた行為だと考えれば、どうにも乗り気にならない。

「では、見目の宜しい兵士を数名集めてまいりましょうか?」

 やけになったような声で責められれば、コウは引いた。

「生憎とそういう趣味はない! ……仕方ない、行ってくるか……」

 自分の欲求が、時間と共に収まるものではないのはなんとなく分かっていた。

「仕方がない……」

 もう一度呟きながら、執務室のソファーから身体を起こした。
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