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16.妄想と終わり
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初めて招かれた舞踏会で見た王子達の姿を思い出せば、ヨハンが冴えない男に思い始めていた。 そんなにも瞬間的に色あせるなんて想像もしていなかった。
そもそも地下に籠ってやり過ごそうっていうのが恰好悪いのよ。 掃除や洗濯、食事の支度を手伝うのも恰好悪しし、何も手伝わなければ腹立たしい。
あぁ、もっと早く王子達に会えていたなら、王子達に愛されるなら……。
ヴィヴィアンは夢を見る。
美しいドレスを身にまとい。
宝石を身に着ける。
料理人に作らせた美味しい食事にデザート。
そう言えば、折角舞踏会に出たのに一口も料理を口にする事は無かった。
トリッド国の命令なんて私には意味がない。
私にどんな利益があると言うの?
自問自答で返される答えと言えば、魔導国家であるトリッド国での自分の扱いへの不満だった。
父の地位の低さからヴィヴィアンは常に見下されていた。 母方の爵位も決して低い訳ではないが、有能な魔術師を出していない事から見下された。
父がアクロマティリ国の外交官となった時も、役立たずだから外交と言う役目につけられたのだと笑われ続けた。
せめて商売を行っている母の実家のために、魔石を流通させれば、状況は変わったかもしれないが、父はそのように機転を利かす事は無かった。
『ゴミを漁って笑い者になれというのか?!』
アクロマティリでの生活だって、外交官として認められていると言う訳ではなく、どこまでも侮られていた。
私が惨めな思いをするのは……家族が悪いのよ。
今、父とヨハンが行った悪だくみを訴えたなら……私は嫌だったのだと、捕まっていたのだと、強制させられたのだと、ヨハンから強姦され私には何の自由も無かったのだと言えばどうなる?
ヴィヴィアンは薄く笑っていた。
「ねぇ、ヨハン。 私、不安で仕方がないの。 考えれば考えるほど辛くて不安で息苦しさを感じて……だから、新しい日々の出発。 今日を私達の誕生日にしましょう。 とても良い考えだと思わない?」
言っている事がオカシイと思った。
だけど、ヴィヴィアンの機嫌が直っただけでヨハンは安堵した。
「あぁ、そうだな!!」
「料理が出来るまで待っていて、あぁ、そうだわ……とっておきの料理を作るから、ヨハンはワインを選んで先に飲んでいてくれるかしら?」
「分かったよ」
ほろ酔い加減になる頃。
ヨハンはヴィヴィアンの悲鳴を聞いた。
「どうしたんだ!!」
「出口が……出口が塞がっているの……」
「なんだ、そんな事か」
「ねぇ、こんなのオカシイわ、出口が、出口が、ねぇ、貴方、お父様の弟子でしょう……ここを開けて!!」
「今、外に出るのは危険だ」
「開けて!! って言っているでしょう!!」
「ヴィヴィアン……それは止めた方がいい。 ここは魔石のような自然マナ以外は拡散するように作られている攻撃を避けるためにね。 なぁに、食料はあるし、魔石を使った術は今も起動している。 そのうちお師匠様が来てくれる。 それを待つのが一番良いのですよ」
「馬鹿なの!! こんなところに何時までもいたら狂ってしまうわ!!」
そう言ってヴィヴィアンは騒ぎ立てた。
何十分も……数時間経っても騒いでいた。
やがて……。
ヴィヴィアンは黙った。
「ねぇ、なんだか息苦しくない?」
「騒ぎ過ぎたんだろう?」
「違うわよ!! ねぇ、ここの空気はどうなっているの!!」
「幾つも空気穴を取っている」
「はぁ、魔石を使って管理をしてない訳?!」
「アレもコレも魔石だよりに出来る訳ないだろう? 幾らゴミ同然で捨てられていると言っても、優先すべきことがあるんだ。 それに空気なんてのは空気穴を作れば済むのですから」
「それが塞がれたら……」
「入口を見つける事も出来ない奴等が? もっと小さな穴を幾つも発見できるとでも?」
そう言いあっている間も、ヴィヴィアンは息苦しさを感じていた。
「ねぇ、ヨハン……ツライのよ!! ツライの!! なんとかしてよ!!」
「興奮するからでしょう、落ち着きなさい」
「そうね……」
ヴィヴィアンはヨハンの頭をワインの瓶で殴りつけた。
「シーラ……シーラ……。 助けてくれ……どうして応じない。 どうして反応しない……。 君は私のモノだろう? どうして……私と君は繋がっていると言うのに、どうして答えない……シーラ、シーラ、愛しているよ……お願いだ……私をたす……けて……あい……して……いる。 どう、して……ど、うし、て、そばに、いてくれない……」
ヨハンは息絶えた。
そして、ヴィヴィアンは可哀そうな自分を助けてくれる王子様を求め叫び続けた。 意識が薄まる中、ヴィヴィアンは夢見た。
世界樹とシーラがつながったあの日、王子に求められる自分の姿を……。
そもそも地下に籠ってやり過ごそうっていうのが恰好悪いのよ。 掃除や洗濯、食事の支度を手伝うのも恰好悪しし、何も手伝わなければ腹立たしい。
あぁ、もっと早く王子達に会えていたなら、王子達に愛されるなら……。
ヴィヴィアンは夢を見る。
美しいドレスを身にまとい。
宝石を身に着ける。
料理人に作らせた美味しい食事にデザート。
そう言えば、折角舞踏会に出たのに一口も料理を口にする事は無かった。
トリッド国の命令なんて私には意味がない。
私にどんな利益があると言うの?
自問自答で返される答えと言えば、魔導国家であるトリッド国での自分の扱いへの不満だった。
父の地位の低さからヴィヴィアンは常に見下されていた。 母方の爵位も決して低い訳ではないが、有能な魔術師を出していない事から見下された。
父がアクロマティリ国の外交官となった時も、役立たずだから外交と言う役目につけられたのだと笑われ続けた。
せめて商売を行っている母の実家のために、魔石を流通させれば、状況は変わったかもしれないが、父はそのように機転を利かす事は無かった。
『ゴミを漁って笑い者になれというのか?!』
アクロマティリでの生活だって、外交官として認められていると言う訳ではなく、どこまでも侮られていた。
私が惨めな思いをするのは……家族が悪いのよ。
今、父とヨハンが行った悪だくみを訴えたなら……私は嫌だったのだと、捕まっていたのだと、強制させられたのだと、ヨハンから強姦され私には何の自由も無かったのだと言えばどうなる?
ヴィヴィアンは薄く笑っていた。
「ねぇ、ヨハン。 私、不安で仕方がないの。 考えれば考えるほど辛くて不安で息苦しさを感じて……だから、新しい日々の出発。 今日を私達の誕生日にしましょう。 とても良い考えだと思わない?」
言っている事がオカシイと思った。
だけど、ヴィヴィアンの機嫌が直っただけでヨハンは安堵した。
「あぁ、そうだな!!」
「料理が出来るまで待っていて、あぁ、そうだわ……とっておきの料理を作るから、ヨハンはワインを選んで先に飲んでいてくれるかしら?」
「分かったよ」
ほろ酔い加減になる頃。
ヨハンはヴィヴィアンの悲鳴を聞いた。
「どうしたんだ!!」
「出口が……出口が塞がっているの……」
「なんだ、そんな事か」
「ねぇ、こんなのオカシイわ、出口が、出口が、ねぇ、貴方、お父様の弟子でしょう……ここを開けて!!」
「今、外に出るのは危険だ」
「開けて!! って言っているでしょう!!」
「ヴィヴィアン……それは止めた方がいい。 ここは魔石のような自然マナ以外は拡散するように作られている攻撃を避けるためにね。 なぁに、食料はあるし、魔石を使った術は今も起動している。 そのうちお師匠様が来てくれる。 それを待つのが一番良いのですよ」
「馬鹿なの!! こんなところに何時までもいたら狂ってしまうわ!!」
そう言ってヴィヴィアンは騒ぎ立てた。
何十分も……数時間経っても騒いでいた。
やがて……。
ヴィヴィアンは黙った。
「ねぇ、なんだか息苦しくない?」
「騒ぎ過ぎたんだろう?」
「違うわよ!! ねぇ、ここの空気はどうなっているの!!」
「幾つも空気穴を取っている」
「はぁ、魔石を使って管理をしてない訳?!」
「アレもコレも魔石だよりに出来る訳ないだろう? 幾らゴミ同然で捨てられていると言っても、優先すべきことがあるんだ。 それに空気なんてのは空気穴を作れば済むのですから」
「それが塞がれたら……」
「入口を見つける事も出来ない奴等が? もっと小さな穴を幾つも発見できるとでも?」
そう言いあっている間も、ヴィヴィアンは息苦しさを感じていた。
「ねぇ、ヨハン……ツライのよ!! ツライの!! なんとかしてよ!!」
「興奮するからでしょう、落ち着きなさい」
「そうね……」
ヴィヴィアンはヨハンの頭をワインの瓶で殴りつけた。
「シーラ……シーラ……。 助けてくれ……どうして応じない。 どうして反応しない……。 君は私のモノだろう? どうして……私と君は繋がっていると言うのに、どうして答えない……シーラ、シーラ、愛しているよ……お願いだ……私をたす……けて……あい……して……いる。 どう、して……ど、うし、て、そばに、いてくれない……」
ヨハンは息絶えた。
そして、ヴィヴィアンは可哀そうな自分を助けてくれる王子様を求め叫び続けた。 意識が薄まる中、ヴィヴィアンは夢見た。
世界樹とシーラがつながったあの日、王子に求められる自分の姿を……。
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