11 / 22
11.一族固有の性癖と言うものが存在するのでしょうか? と言う質問はスルーされた。
しおりを挟む
「ケイン、友情はどうでもいいから」
そう告げるティアの背後では、ティアを送ってきた女性騎士は一礼し去って行った。
「どうでもいいんですか?」
どこか拗ねた様子のティアに、ケインはカラカウように問えばやっぱり拗ねていて横を向かれた。
「私には関係ないもの」
「それも、そうですね。 それで、そんなに急いでどうしたんですか?」
「着替えるの手伝って? あと、髪」
「着替えるんですか? せっかく可愛いのに」
「やっぱり、こういう可愛い服は交渉向きではないと思うの」
「そうですか、残念です。 ですが、ティアの保護はファース様が引き受けてくれましたので、エーリク様に余計な媚びを売る必要はないでしょう」
「そういえば、ケイン。 ファース様に騎士団まで動かすように願ったのね。 余り私のことでご迷惑をかけないで?」
戸惑いと困惑が入り混じった表情でティアはケインを見上げれば、ケインは安心させるべく微笑んでいた。
「ファース様の職務上も、都合がよろしいんですよ。 私が私欲で動かして頂いた訳ではございません」
そんなことを言いながら、ティアの服を脱がせにかかるケインの口元は、うっすらと皮肉気に笑っていた。
ケインは、ティアが無事な限り攻撃を仕掛けてくるだろう正義を掲げる無法者達を、大量検挙できるチャンスを作ってやったのだと言う意味合いで、ファースにとって『都合がよい』と言う言葉を表面上使っていた。
実際には、革命組織はカスペルの悪行を分かりやすく確定させるために、ケインが後ろから手をまわし拡大化させたもの。 そして、カスペルを処分する段取りがついた今、都合が悪いものを撒き沿いにして、盛大に潰れてくださいと言っている訳だ。
「ソレは、俺ではなくオマエに都合がいいんだろう」
ファースに言われてケインは笑う。
だが、ファースにとっては、ケインの複雑な表情や内面よりも、彼の腕の中で大人しく服を脱がされ、目の前で恥じらう様子もなく薄地のキャミ姿となり、布越しに肌の色を露出させているティアの方が気になっていた。
「何をしているんだ……」
「着替えを手伝っているんですよ。 見てわからないのですか? ファース様にお仕えしていた時も、着替え手伝っていたでしょう?」
「いや……そこまで手伝っていたか?」
「手伝ってほしかったんですか?!」
「いらんわ!!」
「まさか、風呂まで入れている訳じゃないよな……」
頭をかきながら言えば、
「一緒に風呂に入ったのは12の年までですわ!! 子供扱いしないでくださいませ」
そう言ってティアはファースに怒る。
「いや……」
ファースにしてみれば何を怒られているんだとばかりに言葉を失くした。 自分が妻に決めた相手の歪んだ甘やかされぶりに、頭をかきケインを睨んで見せるが、意に返すことなく得意げに微笑まれる。
「可愛いでしょう?」
そう告げるが、今、着替えさせられた服は無粋の極み。 可愛いとは程遠いものである。
シンプルなブラウスにリボンタイ、ファース達の母親が若かりし頃に流行っただろう。 長くストンとした地味な色のスカート。 そして豊かな美しい黄金色の髪は、後ろは頭痛がするのでは?と思うほどにギュッとまとめ結い上げ、反面前髪は表情を隠すように長くたらされていた。 そして極めつけは、老人がかけるような無粋な眼鏡である。
ファースは初めてあった時のティアを思い出し苦笑する。
2年前、ティアがカスペルの婚約者として紹介された社交の場。
身体こそ小柄だし、デカい眼鏡と不格好な前髪に隠れた顔立ち、そして凍り付いた表情、キツク結ばれた口元、何世代も前に流行った不格好なドレス。 それは、彼女を老人のようだとわざと誤解させるような代物だった。 もし、本当の老人だとしても、そんな恰好を好んでする者などいないだろうが……。
それでもダンスに誘った時に見せた、驚きと、揺れる前髪からのぞく、はにかんだ微笑みは、愛らしい少女のもので、奇妙な独占欲と、自分だけが特別なのだと言う不思議な感覚を覚えた。
その時は、ソレがケインの大切にしている少女だとは知らず、ただ守って欲しいと願われたから守っていたに過ぎなかったが、観察するごとに不自然に偽られたティアに興味を抱き、結局ティアが帰るまで一緒にいたのを思い出していた。
「見事な変装だな」
呆れたように言えば、
「私にとっての戦闘服ですわ」
「なるほど……だが、普通、女性にとっての戦闘服と言えば、こう流行のドレスなのではないのか?」
苦笑交じりにファースが問えば、ティアは何を言っているのか分からないと言う表情をする。
「そんなのを着て仕事をするの? 侮られるし、余計な時間がかかって無駄だわ」
「わかった。 仕事には口出ししないと約束しよう。 だが、俺と二人の時間は、俺の選んだ服を着てくれ」
そう呆れたようにファースが言えば、老人のような恰好をした眼鏡の奥でティアは笑った。
「ファース様も、亡き公爵と同じように言うんですね。 ベンニング家の方々はそういうのが好きなの?」
そうケインに聞くから、ケインは笑っていた。
「どうでしょうね」
キッチリと着替えを終えるのを見守ってから、ファースは2人に告げた。
「少しばかり仕事をしてくる。 大人しくここで待っているように」
ソレは、ティアにと言うよりも、暴走気味に思われるケインに向けて言われる言葉だった。
そう告げるティアの背後では、ティアを送ってきた女性騎士は一礼し去って行った。
「どうでもいいんですか?」
どこか拗ねた様子のティアに、ケインはカラカウように問えばやっぱり拗ねていて横を向かれた。
「私には関係ないもの」
「それも、そうですね。 それで、そんなに急いでどうしたんですか?」
「着替えるの手伝って? あと、髪」
「着替えるんですか? せっかく可愛いのに」
「やっぱり、こういう可愛い服は交渉向きではないと思うの」
「そうですか、残念です。 ですが、ティアの保護はファース様が引き受けてくれましたので、エーリク様に余計な媚びを売る必要はないでしょう」
「そういえば、ケイン。 ファース様に騎士団まで動かすように願ったのね。 余り私のことでご迷惑をかけないで?」
戸惑いと困惑が入り混じった表情でティアはケインを見上げれば、ケインは安心させるべく微笑んでいた。
「ファース様の職務上も、都合がよろしいんですよ。 私が私欲で動かして頂いた訳ではございません」
そんなことを言いながら、ティアの服を脱がせにかかるケインの口元は、うっすらと皮肉気に笑っていた。
ケインは、ティアが無事な限り攻撃を仕掛けてくるだろう正義を掲げる無法者達を、大量検挙できるチャンスを作ってやったのだと言う意味合いで、ファースにとって『都合がよい』と言う言葉を表面上使っていた。
実際には、革命組織はカスペルの悪行を分かりやすく確定させるために、ケインが後ろから手をまわし拡大化させたもの。 そして、カスペルを処分する段取りがついた今、都合が悪いものを撒き沿いにして、盛大に潰れてくださいと言っている訳だ。
「ソレは、俺ではなくオマエに都合がいいんだろう」
ファースに言われてケインは笑う。
だが、ファースにとっては、ケインの複雑な表情や内面よりも、彼の腕の中で大人しく服を脱がされ、目の前で恥じらう様子もなく薄地のキャミ姿となり、布越しに肌の色を露出させているティアの方が気になっていた。
「何をしているんだ……」
「着替えを手伝っているんですよ。 見てわからないのですか? ファース様にお仕えしていた時も、着替え手伝っていたでしょう?」
「いや……そこまで手伝っていたか?」
「手伝ってほしかったんですか?!」
「いらんわ!!」
「まさか、風呂まで入れている訳じゃないよな……」
頭をかきながら言えば、
「一緒に風呂に入ったのは12の年までですわ!! 子供扱いしないでくださいませ」
そう言ってティアはファースに怒る。
「いや……」
ファースにしてみれば何を怒られているんだとばかりに言葉を失くした。 自分が妻に決めた相手の歪んだ甘やかされぶりに、頭をかきケインを睨んで見せるが、意に返すことなく得意げに微笑まれる。
「可愛いでしょう?」
そう告げるが、今、着替えさせられた服は無粋の極み。 可愛いとは程遠いものである。
シンプルなブラウスにリボンタイ、ファース達の母親が若かりし頃に流行っただろう。 長くストンとした地味な色のスカート。 そして豊かな美しい黄金色の髪は、後ろは頭痛がするのでは?と思うほどにギュッとまとめ結い上げ、反面前髪は表情を隠すように長くたらされていた。 そして極めつけは、老人がかけるような無粋な眼鏡である。
ファースは初めてあった時のティアを思い出し苦笑する。
2年前、ティアがカスペルの婚約者として紹介された社交の場。
身体こそ小柄だし、デカい眼鏡と不格好な前髪に隠れた顔立ち、そして凍り付いた表情、キツク結ばれた口元、何世代も前に流行った不格好なドレス。 それは、彼女を老人のようだとわざと誤解させるような代物だった。 もし、本当の老人だとしても、そんな恰好を好んでする者などいないだろうが……。
それでもダンスに誘った時に見せた、驚きと、揺れる前髪からのぞく、はにかんだ微笑みは、愛らしい少女のもので、奇妙な独占欲と、自分だけが特別なのだと言う不思議な感覚を覚えた。
その時は、ソレがケインの大切にしている少女だとは知らず、ただ守って欲しいと願われたから守っていたに過ぎなかったが、観察するごとに不自然に偽られたティアに興味を抱き、結局ティアが帰るまで一緒にいたのを思い出していた。
「見事な変装だな」
呆れたように言えば、
「私にとっての戦闘服ですわ」
「なるほど……だが、普通、女性にとっての戦闘服と言えば、こう流行のドレスなのではないのか?」
苦笑交じりにファースが問えば、ティアは何を言っているのか分からないと言う表情をする。
「そんなのを着て仕事をするの? 侮られるし、余計な時間がかかって無駄だわ」
「わかった。 仕事には口出ししないと約束しよう。 だが、俺と二人の時間は、俺の選んだ服を着てくれ」
そう呆れたようにファースが言えば、老人のような恰好をした眼鏡の奥でティアは笑った。
「ファース様も、亡き公爵と同じように言うんですね。 ベンニング家の方々はそういうのが好きなの?」
そうケインに聞くから、ケインは笑っていた。
「どうでしょうね」
キッチリと着替えを終えるのを見守ってから、ファースは2人に告げた。
「少しばかり仕事をしてくる。 大人しくここで待っているように」
ソレは、ティアにと言うよりも、暴走気味に思われるケインに向けて言われる言葉だった。
22
あなたにおすすめの小説
側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、孤独な陛下を癒したら、執着されて離してくれません!
花瀬ゆらぎ
恋愛
「おまえには、国王陛下の側妃になってもらう」
婚約者と親友に裏切られ、傷心の伯爵令嬢イリア。
追い打ちをかけるように父から命じられたのは、若き国王フェイランの側妃になることだった。
しかし、王宮で待っていたのは、「世継ぎを産んだら離縁」という非情な条件。
夫となったフェイランは冷たく、侍女からは蔑まれ、王妃からは「用が済んだら去れ」と突き放される。
けれど、イリアは知ってしまう。 彼が兄の死と誤解に苦しみ、誰よりも孤独の中にいることを──。
「私は、陛下の幸せを願っております。だから……離縁してください」
フェイランを想い、身を引こうとしたイリア。
しかし、無関心だったはずの陛下が、イリアを強く抱きしめて……!?
「離縁する気か? 許さない。私の心を乱しておいて、逃げられると思うな」
凍てついた王の心を溶かしたのは、売られた側妃の純真な愛。
孤独な陛下に執着され、正妃へと昇り詰める逆転ラブロマンス!
※ 以下のタイトルにて、ベリーズカフェでも公開中。
【側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、陛下は私を離してくれません】
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
公爵夫人は愛されている事に気が付かない
山葵
恋愛
「あら?侯爵夫人ご覧になって…」
「あれはクライマス公爵…いつ見ても惚れ惚れしてしまいますわねぇ~♡」
「本当に女性が見ても羨ましいくらいの美形ですわねぇ~♡…それなのに…」
「本当にクライマス公爵が可哀想でならないわ…いくら王命だからと言ってもねぇ…」
社交パーティーに参加すれば、いつも聞こえてくる私への陰口…。
貴女達が言わなくても、私が1番、分かっている。
夫の隣に私は相応しくないのだと…。
お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。
下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。
またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。
あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。
ご都合主義の多分ハッピーエンド?
小説家になろう様でも投稿しています。
殿下、側妃とお幸せに! 正妃をやめたら溺愛されました
まるねこ
恋愛
旧題:お飾り妃になってしまいました
第15回アルファポリス恋愛大賞で奨励賞を頂きました⭐︎読者の皆様お読み頂きありがとうございます!
結婚式1月前に突然告白される。相手は男爵令嬢ですか、婚約破棄ですね。分かりました。えっ?違うの?嫌です。お飾り妃なんてなりたくありません。
悪役令嬢と誤解され冷遇されていたのに、目覚めたら夫が豹変して求愛してくるのですが?
いりん
恋愛
初恋の人と結婚できたーー
これから幸せに2人で暮らしていける…そう思ったのに。
「私は夫としての務めを果たすつもりはない。」
「君を好きになることはない。必要以上に話し掛けないでくれ」
冷たく拒絶され、離婚届けを取り寄せた。
あと2週間で届くーーそうしたら、解放してあげよう。
ショックで熱をだし寝込むこと1週間。
目覚めると夫がなぜか豹変していて…!?
「君から話し掛けてくれないのか?」
「もう君が隣にいないのは考えられない」
無口不器用夫×優しい鈍感妻
すれ違いから始まる両片思いストーリー
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる