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後編
おわり
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ソフィラの利用価値を考えれば、安易に協力を頼む事は出来なかった。
カールは、ソフィラの逃亡先に自らの実家を選び、故郷に戻る弟の馬車に同行させる事を決めて準備を進めた。
ウィルは、自身の荷物を魔法の鞄に詰め込みまくっていた。
窓の縁にペリカンが止まり、それが人型をとった。
「本当、魔法って便利だな」
「魔法ではなくて、魔術だけどね。 僕、思ったんだけど……術式を売ったらソフィラへの返済金は直ぐに終わるんじゃないかな?」
「終わるだろうけど、ソフィラに大金を持たせているのも危ないだろう? 小奇麗で可愛くて、そう言う子を悪人が見ればどう思う? この国は悪人に甘いからな。 いざと言う時に出してやればよいだろう。 それより、本当にずっと子猫でいるつもりか?」
「だって、僕が一緒だと嫌でしょう?」
「どうだろう……。 だが、不毛じゃないか?」
「王様に仕え続ける方が不毛だよ。 それに……いろんなものを見て、楽しいって思う方が価値があるって思うんだ。 カールは一緒にいかないの?」
「俺は醜悪なこの国が、結構好きなんだ」
「悪趣味」
「……寂しいよ」
カールの言葉に驚いた。
「……僕も、ずっと守ってくれてありがとう」
「おぅ、今度からは、オマエが守る側だ。 頑張れ」
三角帽子を奪われ、頭がワシワシと撫でられた。
僕とカールは、子猫と鳥になって、架空の魔導士からの手紙を届けに行く。
**********
今まで、国を豊かにしてくれたあなたにお礼をしましょう。
子猫はあなたに差し上げます。
だけど鳥は返してくださいね。
私が出来る手助けは、子猫に全て伝え預けてあります。
良い旅になる事、祈っております。
**********
「本当について来てくれるの?」
ソフィラは子猫に尋ねた。
「うにゃ」
「そういえば、何時までも猫ちゃんだと変ね。 あなた、お名前は?」
「にゃ?! うにゃ……」
子猫は首を傾げた、ペリカンモドキを振り返った。
「ぐわ」
「ないのかな? 無いなら私がつけるわ。 紫苑なんてどうかしら? アナタの瞳の色をそう呼ぶらしいの」
「うにゃ♪」
「これから、よろしく紫苑」
「うにゃにゃにゃ」
そう言葉を残し、小さな猫リュックの中から、一枚の紙を取り出し広げ、その上にソフィラを誘った。 ピカッと紙に書かれた魔法陣が光れば……ソフィアがネズミサイズになった。
「凄い、凄いわ!! こんなに小さくなれるなんて……あら、でも気を付けないと食虫植物に食べられちゃ、きゃぁああ」
ペリカンモドキが子猫と小人となったソフィアを口に入れ、かっかかかっかと変な笑い声をあげる。 憮然とする子猫とハシャグソフィア。
屋敷の中には、ソフィア性の特別植物の罠が増えていた。
刃の雑草、
食虫植物、
蠢く茨、
時間稼ぎ的な置き土産だ。
そしてモドキは、2人の旅の同行者となる馬車へと飛び立った。
「ありがとう鳥さん」
「ぐあっ」
モドキは、人の大きさに戻ったソフィラと、ソフィラの肩に器用に乗っている子猫の頭を羽根で撫でた。
「さぁ、旅立ちだよ。 お嬢さんと子猫さん」
「はい!!」
そして1人と1匹は馬車に乗った。
ソフィラには、とうとう一人ぼっとだと言う寂しさがあった……。
ずっと一人だったけど……。
それでも時々思い出すのはウィル様の姿。
決して仲良くはなれなかったけれど、それでも彼だけが唯一の家族だった。
「お別れ……したかった、かも」
「うにゃ?」
「紫苑は、私とずっと一緒にいてね」
「にゃん♪」
旅は楽しい。
ソフィラは初めて料理を手伝い。
上手く出来ない皮むきに、目を寄せ真剣にかかる。
「むぅ……」
分厚い皮を生産し続ける横で、子猫は器用に風の魔法で皮むきをする。
「なんで、猫なのに器用なのよ!! 紫苑!!」
「うにゃにゃん」
ソフィラが子猫を追えば、子猫は宙に浮きながら逃げていく。
旅を通して、得意不得意が分かった。
ソフィラは裁縫が得意だったらしく、一緒に旅をする女性に裁縫を習った。
「紫苑!! 紫苑!! マントと帽子を作ったの!!」
ソフィラが紫苑に着せるソレは、ウィルのものを思い出す。
「うん、とても良く似合っているわ」
食事をして、
歌を歌って、
寄り添い眠る。
馬車での移動中は、ソフィラは刺繍や編み物も覚えた。
子猫は魔術の勉強を繰り返す。
そうやって日々は過ぎる。
旅を通し、新しい生活が始まって、
いつか1人と1匹は家族になるだろう。
それは……2人の見た未来とは違うけど、約束された未来だった。
だけど……2人は愛を語れない。
それでも……いつか……
いつか、ウィル様に感謝を告げて、これからも一緒に居て欲しいと伝えましょう。
いつか、ソフィラが愛する人が出来たなら……僕は愛を伝え彼女の元を去ろう……。
もう私にとって、アナタは大切な人だから。
おわり。
カールは、ソフィラの逃亡先に自らの実家を選び、故郷に戻る弟の馬車に同行させる事を決めて準備を進めた。
ウィルは、自身の荷物を魔法の鞄に詰め込みまくっていた。
窓の縁にペリカンが止まり、それが人型をとった。
「本当、魔法って便利だな」
「魔法ではなくて、魔術だけどね。 僕、思ったんだけど……術式を売ったらソフィラへの返済金は直ぐに終わるんじゃないかな?」
「終わるだろうけど、ソフィラに大金を持たせているのも危ないだろう? 小奇麗で可愛くて、そう言う子を悪人が見ればどう思う? この国は悪人に甘いからな。 いざと言う時に出してやればよいだろう。 それより、本当にずっと子猫でいるつもりか?」
「だって、僕が一緒だと嫌でしょう?」
「どうだろう……。 だが、不毛じゃないか?」
「王様に仕え続ける方が不毛だよ。 それに……いろんなものを見て、楽しいって思う方が価値があるって思うんだ。 カールは一緒にいかないの?」
「俺は醜悪なこの国が、結構好きなんだ」
「悪趣味」
「……寂しいよ」
カールの言葉に驚いた。
「……僕も、ずっと守ってくれてありがとう」
「おぅ、今度からは、オマエが守る側だ。 頑張れ」
三角帽子を奪われ、頭がワシワシと撫でられた。
僕とカールは、子猫と鳥になって、架空の魔導士からの手紙を届けに行く。
**********
今まで、国を豊かにしてくれたあなたにお礼をしましょう。
子猫はあなたに差し上げます。
だけど鳥は返してくださいね。
私が出来る手助けは、子猫に全て伝え預けてあります。
良い旅になる事、祈っております。
**********
「本当について来てくれるの?」
ソフィラは子猫に尋ねた。
「うにゃ」
「そういえば、何時までも猫ちゃんだと変ね。 あなた、お名前は?」
「にゃ?! うにゃ……」
子猫は首を傾げた、ペリカンモドキを振り返った。
「ぐわ」
「ないのかな? 無いなら私がつけるわ。 紫苑なんてどうかしら? アナタの瞳の色をそう呼ぶらしいの」
「うにゃ♪」
「これから、よろしく紫苑」
「うにゃにゃにゃ」
そう言葉を残し、小さな猫リュックの中から、一枚の紙を取り出し広げ、その上にソフィラを誘った。 ピカッと紙に書かれた魔法陣が光れば……ソフィアがネズミサイズになった。
「凄い、凄いわ!! こんなに小さくなれるなんて……あら、でも気を付けないと食虫植物に食べられちゃ、きゃぁああ」
ペリカンモドキが子猫と小人となったソフィアを口に入れ、かっかかかっかと変な笑い声をあげる。 憮然とする子猫とハシャグソフィア。
屋敷の中には、ソフィア性の特別植物の罠が増えていた。
刃の雑草、
食虫植物、
蠢く茨、
時間稼ぎ的な置き土産だ。
そしてモドキは、2人の旅の同行者となる馬車へと飛び立った。
「ありがとう鳥さん」
「ぐあっ」
モドキは、人の大きさに戻ったソフィラと、ソフィラの肩に器用に乗っている子猫の頭を羽根で撫でた。
「さぁ、旅立ちだよ。 お嬢さんと子猫さん」
「はい!!」
そして1人と1匹は馬車に乗った。
ソフィラには、とうとう一人ぼっとだと言う寂しさがあった……。
ずっと一人だったけど……。
それでも時々思い出すのはウィル様の姿。
決して仲良くはなれなかったけれど、それでも彼だけが唯一の家族だった。
「お別れ……したかった、かも」
「うにゃ?」
「紫苑は、私とずっと一緒にいてね」
「にゃん♪」
旅は楽しい。
ソフィラは初めて料理を手伝い。
上手く出来ない皮むきに、目を寄せ真剣にかかる。
「むぅ……」
分厚い皮を生産し続ける横で、子猫は器用に風の魔法で皮むきをする。
「なんで、猫なのに器用なのよ!! 紫苑!!」
「うにゃにゃん」
ソフィラが子猫を追えば、子猫は宙に浮きながら逃げていく。
旅を通して、得意不得意が分かった。
ソフィラは裁縫が得意だったらしく、一緒に旅をする女性に裁縫を習った。
「紫苑!! 紫苑!! マントと帽子を作ったの!!」
ソフィラが紫苑に着せるソレは、ウィルのものを思い出す。
「うん、とても良く似合っているわ」
食事をして、
歌を歌って、
寄り添い眠る。
馬車での移動中は、ソフィラは刺繍や編み物も覚えた。
子猫は魔術の勉強を繰り返す。
そうやって日々は過ぎる。
旅を通し、新しい生活が始まって、
いつか1人と1匹は家族になるだろう。
それは……2人の見た未来とは違うけど、約束された未来だった。
だけど……2人は愛を語れない。
それでも……いつか……
いつか、ウィル様に感謝を告げて、これからも一緒に居て欲しいと伝えましょう。
いつか、ソフィラが愛する人が出来たなら……僕は愛を伝え彼女の元を去ろう……。
もう私にとって、アナタは大切な人だから。
おわり。
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