73 / 147
烈風という名の冒険者パーティ
9
しおりを挟む
「……物々交換」
「物々交換?」
「……私たち、いっぱい魔物狩った。……その素材と交換」
「あ、それは嬉しいかも! 私はこの家から出ないからそういうの欲しいと思ってたのよ!」
彼女たちが無事に出られるならと思って準備したものだったが、柵の外の素材が手に入ると思ったらつい声を上げてしまった。
新しい魔法薬の素材になるかもしれないと奏は思い、ガルマの意見に同調し他のだが、その意見に三人ともが頷くと、収納袋に入っている魔物の素材を隣に並べていく。その中には解体した魔物の皮だったり牙だったりしたものも混ざっている。
「……これだとちょっと足りないかもだけど、これらと交換ってことでどうだ?」
「じゅ、十分ですよ! むしろいいんですか? こんなに頂いて……」
「いいのよ。これからのことを考えたら、頂いた魔法薬だけでも十分もらいすぎてるくらい何だから」
並べられた素材は数だけ言えば奏が渡したアイテムよりも多い。これだけ出してもらっているのに、価値が足りないなんてことがあるとは奏は思いもしなかった。
プレゼントするはずだったのだが、結局は交換という形でなった。豊富な素材を収納袋に詰めていくと、彼女たちの支度もちょうど終わったようだった。
「あの、最後にもう一度お庭を見せてもらえませんか?」
別に断ることもないので、最後に全員で庭にいくことになった。ガルマはお花には興味がないのか、昨日食べた野菜をじっと見ていてリータはその味を思い出しているようだった。
「お花好きなんですね」
「えぇ……。ここの植物たちは生命力に溢れていますから、心が癒されます……」
それならと、奏は一度家に戻ると万能鉢を持ってエルレインの元へと戻った。
「これ……昨日みんなが飲んだゆずのジュースがあるでしょ? ここにも成長した木はあるんだけど、これもゆずがなる木なの。これもよかったら持っていって?」
奏の手には、収穫をしていない状態のゆずの木が植えてある万能鉢があった。ミニチュアサイズなので実は少ししかないし、こうやって比べても小さいけど、元気に育っている。
「このままだといつかこの鉢は壊れちゃうんだけど、地面に鉢ごと埋めれば同じくらいに成長すると思うの」
「いいんですか?」
「はい。ゆずの花には「健康美」っていう意味の花言葉があるから、お守りだと思って持っていってほしい。みんなの無事をここで祈ってるわ」
庭に咲いているゆずの花は白くて可愛い。ゆずなら実ができればリータやガルマも気に入っているジュースが飲めるのがわかると、何度もお礼を言ってくれた。
エルレインは大事に抱え、収納袋の中にしまった。
それから少しの間、名残惜しさから話していたのだが、そろそろ出発の時間になったようだった。
「……それじゃあ、これでお別れだな」
リータたちが荷物を抱えて立ち上がる。
先頭を歩くガルマは、奏の渡した鈴を腰に結び、リーンと綺麗な音がなる。これだけで魔物に襲われないのならすごいアイテムだと思う……。
彼女たちは柵の方へと歩き出す。相変わらず柵の向こうはよく見えないままだ。
「元気でな」
「……また来る」
「お元気で」
「ありがとうございました」
四人ともに別れを告げて、柵の向こう側へと行ってしまった。霧ですぐに姿が見えなくなり、昨日まで騒がしかったのが嘘のように奏の周りが静かになった。
「行っちゃったな……。さて! 私もできることをしないとね!」
こうして長かったような短かったような、烈風のみんなとの交流が終わったのだった。
「物々交換?」
「……私たち、いっぱい魔物狩った。……その素材と交換」
「あ、それは嬉しいかも! 私はこの家から出ないからそういうの欲しいと思ってたのよ!」
彼女たちが無事に出られるならと思って準備したものだったが、柵の外の素材が手に入ると思ったらつい声を上げてしまった。
新しい魔法薬の素材になるかもしれないと奏は思い、ガルマの意見に同調し他のだが、その意見に三人ともが頷くと、収納袋に入っている魔物の素材を隣に並べていく。その中には解体した魔物の皮だったり牙だったりしたものも混ざっている。
「……これだとちょっと足りないかもだけど、これらと交換ってことでどうだ?」
「じゅ、十分ですよ! むしろいいんですか? こんなに頂いて……」
「いいのよ。これからのことを考えたら、頂いた魔法薬だけでも十分もらいすぎてるくらい何だから」
並べられた素材は数だけ言えば奏が渡したアイテムよりも多い。これだけ出してもらっているのに、価値が足りないなんてことがあるとは奏は思いもしなかった。
プレゼントするはずだったのだが、結局は交換という形でなった。豊富な素材を収納袋に詰めていくと、彼女たちの支度もちょうど終わったようだった。
「あの、最後にもう一度お庭を見せてもらえませんか?」
別に断ることもないので、最後に全員で庭にいくことになった。ガルマはお花には興味がないのか、昨日食べた野菜をじっと見ていてリータはその味を思い出しているようだった。
「お花好きなんですね」
「えぇ……。ここの植物たちは生命力に溢れていますから、心が癒されます……」
それならと、奏は一度家に戻ると万能鉢を持ってエルレインの元へと戻った。
「これ……昨日みんなが飲んだゆずのジュースがあるでしょ? ここにも成長した木はあるんだけど、これもゆずがなる木なの。これもよかったら持っていって?」
奏の手には、収穫をしていない状態のゆずの木が植えてある万能鉢があった。ミニチュアサイズなので実は少ししかないし、こうやって比べても小さいけど、元気に育っている。
「このままだといつかこの鉢は壊れちゃうんだけど、地面に鉢ごと埋めれば同じくらいに成長すると思うの」
「いいんですか?」
「はい。ゆずの花には「健康美」っていう意味の花言葉があるから、お守りだと思って持っていってほしい。みんなの無事をここで祈ってるわ」
庭に咲いているゆずの花は白くて可愛い。ゆずなら実ができればリータやガルマも気に入っているジュースが飲めるのがわかると、何度もお礼を言ってくれた。
エルレインは大事に抱え、収納袋の中にしまった。
それから少しの間、名残惜しさから話していたのだが、そろそろ出発の時間になったようだった。
「……それじゃあ、これでお別れだな」
リータたちが荷物を抱えて立ち上がる。
先頭を歩くガルマは、奏の渡した鈴を腰に結び、リーンと綺麗な音がなる。これだけで魔物に襲われないのならすごいアイテムだと思う……。
彼女たちは柵の方へと歩き出す。相変わらず柵の向こうはよく見えないままだ。
「元気でな」
「……また来る」
「お元気で」
「ありがとうございました」
四人ともに別れを告げて、柵の向こう側へと行ってしまった。霧ですぐに姿が見えなくなり、昨日まで騒がしかったのが嘘のように奏の周りが静かになった。
「行っちゃったな……。さて! 私もできることをしないとね!」
こうして長かったような短かったような、烈風のみんなとの交流が終わったのだった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
271
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる