43 / 53
第42話 「敵将討ち取り。決着の一撃」
しおりを挟む
【王都中央広場:最終決戦の地】
燃え盛る王都の中心。
かつて美しい噴水があった広場は、直径百メートルを超える巨大なクレーターと化していた。
その中央に、帝国の移動要塞型司令部が、我が物顔で鎮座している。
許さない。
私たちの庭を、こんな風に踏み荒らして。
私の大切なご主人様が愛した街を、よくも。
「よくぞここまで来た、王国の勇士よ」
要塞の頂上から、帝国の将軍が見下ろしていた。
全身を魔導鎧で固めた巨漢。
その顔には、余裕の笑みが浮かんでいる。
「貴様らの抵抗は想定外だったが、所詮は個人の武勇。……我が帝国の『科学力』の前には無力だ!」
将軍が手をかざすと、地面が悲鳴を上げ、地下から異形の怪物が這い出してきた。
グォォォォォォォォッ!!
全長三十メートル超。
ライオンの体に、ドラゴンの翼、蛇の尾を持つ、伝説の合成魔獣「ベヒモス」。
だが、ただの生物ではない。
その体表は黒光りする特殊な魔導金属で覆われ、全身から吐き気を催すような魔力の波動を放っている。
醜悪だ。
美学の欠片もない、継ぎ接ぎの化け物。
「紹介しよう。対魔導士用最終兵器『超重キメラ・ベヒモス』だ!」
「ふん。ただのデカブツですね。……アリア、細切れにしなさい」
「ラジャー!」
背中のローズマリーさんの指示で、私は跳躍した。
迷いはない。
ご主人様が切れと言えば、世界だって切ってみせる。
銀色の流星となり、ベヒモスの頭上から踵落としを放つ。
戦車の装甲すら紙のように引き裂く、私の必殺の一撃。
ガィィィンッ!!
鈍い金属音が響き、私の足が弾かれた。
嘘でしょ?
傷一つついていない。
「硬っ!? なにこれ、殴った衝撃が逃げてる……!」
私が体勢を立て直そうとした瞬間、ベヒモスの口が開き、赤黒い魔力の渦が発生した。
「まずい、退避ッ!」
ローズマリーさんが防御結界を展開するが、ベヒモスが放ったのは攻撃魔法ではなかった。
超重力による「吸引」だ。
空間ごと飲み込むような力。
「きゃぁぁぁッ!?」
私の身体が空中で静止し、キメラの口へと引き寄せられる。
それだけではない。
背中のローズマリーさんが展開した結界の魔力そのものが、キメラに吸い取られていくのが分かる。
「ハハハ! 無駄だ! このベヒモスの装甲は物理衝撃を99%拡散し、魔力吸収炉が魔法を喰らう! あらゆる攻撃は無効化されるのだ!」
将軍の高笑い。
私は何とか吸引圏外へと脱出したが、スーツの魔力が大幅に削られていた。
背中のローズマリーさんの呼吸が乱れている。
魔力を持っていかれたんだ。
彼女の苦しそうな吐息が、私の首筋にかかる。
悔しい。
私の力が足りないせいで、ご主人様が!
「くそっ、手が出せない……! どうしますご主人様!?」
物理もダメ。
魔法もダメ。
殴っても効かず、魔法を撃てば餌になる。
そんなの、どうやって倒せばいい?
ローズマリーさんは眉をひそめ、即座に計算を終えた。
「物理無効、魔法吸収。……通常の手段では、ダメージを与えるどころか、こちらの魔力が尽きるのが先ですね。 詰み」
淡々とした声。
諦めたの?
そんなわけがない。
この人が諦めるはずがない。
ローズマリーさんは、冷徹な魔導師の仮面を脱ぎ捨て、狂気を帯びた笑みを浮かべた。
あぁ、その顔。
私の大好きな、世界に喧嘩を売る時の、最強の笑顔。
「……物理無効? 魔法吸収? ……ええ、素晴らしい性能ですね」
「何がおかしい!?」
「ただの『容量オーバー』させていないだけでしょう? アリア。……覚悟はいいですか?」
ローズマリーさんが、私の耳元で囁いた。
その声は、これまでにないほど真剣で、そして熱を帯びていた。
心臓がドクリと跳ねる。
嫌な予感がする。
背筋が凍るような、でも焼き尽くされるような予感。
「覚悟って……何をする気ですか?」
「私の『命』を、全部貴女にあげます」
「えっ……!?」
時が止まった。
何を言ってるの?
命をあげる?
やめて。
そんなのいらない。
私の返事を待たず、ローズマリーさんは私の首に回した腕に、残存する全魔力――いや、魔力に変換できる「生命力」そのものを注ぎ込み始めた。
カァァァァッ!!
私の銀色のスーツが、眩い金色へと変色していく。
熱い。
焼けるように熱い。
背中から流れ込んでくるのは、ただの魔力じゃない。
ローズマリーさんの鼓動、体温、吐息、そして「生きる意志」。
彼女の魂そのものが、私の血管に直接流し込まれてくる。
振り返ると、ローズマリーさんの真っ白な髪が、さらに燐光のような輝きを増し、彼女の肌から血の気が引いていくのが見えた。
透き通るように白く、儚くなっていく。
「ちょっ、待って! ご主人様、身体が消えそうですよ!? これじゃご主人様が死んじゃう!」
やめて。
そんな力いらない!
ご主人様がいなくなるくらいなら、私は負けたっていい!
世界なんてどうでもいい!
ご主人様が生きていてくれなきゃ、私の世界は終わりなんだ!
「死にません。……駄犬がいる限り、私は死ねないと言ったでしょう」
ローズマリーさんの声が震える。
嘘だ。
強がりだ。
命を燃料にして燃やしているんだ。
ロウソクの最後の輝きみたいに。
でも、ご主人様の腕は私を離さない。
その強い意志が、流れ込んでくる熱と共に私を縛る。
「私の全てを、駄犬の拳に乗せます。……星ごと砕くつもりで撃ちなさい!」
私は、背中から流れ込んでくる膨大な熱量と、彼女の「魂」の重みを感じた。
重い。
星そのものより重い。
私の背中には今、この人の人生の全てが乗っている。
拒絶してはいけない。
受け止めなきゃいけない。
それが、ご主人様の「犬」である私の役目だ。
ご主人様が命を賭けたなら、私はそれに応えて勝つしかないんだ!
私は涙を拭い、ニカッと笑った。
泣くな。
笑え。
ご主人様は、私の泣き顔なんて見たくないはずだ。
「……イエス、マム! 全部、受け取りました!」
「ば、馬鹿な! 自滅する気か! ベヒモス、喰らい尽くせ!」
将軍が叫ぶ。
ベヒモスが再び口を開き、超重力吸引を開始する。
「遅いッ!!」
私は地を蹴った。
その速度は、もはや視認できない。
金色の閃光となり、ベヒモスの懐へと潜り込む。
私の身体が悲鳴を上げている。
力が溢れすぎて、筋肉が千切れ飛びそうだ。
でも、構わない。
ローズマリーさんが命を削っているのに、私が五体満足で終わるわけにはいかない!
「うぉぉぉぉぉぉぉッ!!」
私は右拳に、ローズマリーさんから受け取った全ての命と、自身の全筋肉、全神経を集中させた。
スーツの右腕が、エネルギー負荷に耐えきれず、装甲が弾け飛ぶ。
私の骨が軋む。
血が噴き出す。
くれてやる。
右腕だろうが命だろうが、全部持っていけ!
これが、二人の絆の結晶。
誰にも邪魔させない、私たちだけの「愛」の形!
「必殺!! 必殺!! 私たちの……全力パンチだあッ!!!!」
ズガァァァァァァァァァァァンッ!!!!
拳が、ベヒモスの胸部に突き刺さった。
瞬間、世界の色が反転した。
物理衝撃吸収?
魔力吸収?
知ったことか!
そんな理屈を超えた、圧倒的な「想い」と「質量」の暴力だ!
飲み込めるものなら飲み込んでみろ、この熱さを!
ベヒモスの装甲が、吸収しきれずに飴細工のように歪み、砕け散る。
内部の魔導核が、臨界点を超えて暴走する。
「グォォォォォ……ガァァァァァァッ!?」
ベヒモスの断末魔が、王都中に響き渡る。
巨体は内側から光り輝き、そして――大爆発を起こして消滅した。
その爆風は、後方の移動要塞をも飲み込み、帝国の将軍の絶叫ごと吹き飛ばした。
すべてが消し飛ぶ。
爆風が収まると、広場には静寂が戻っていた。
ベヒモスも、要塞も、跡形もない。
あるのは巨大なクレーターだけ。
その中心に、私は立っていた。
金色のスーツは光を失い、元の銀色に戻っている。
右腕の装甲は砕け、素肌が露出していた。
痛みはない。
アドレナリンが出すぎているせいだ。
「……はぁ、はぁ……。やりましたよ、ご主人様」
私が背中に声をかける。
勝った。
私たちは勝ったんですよ。
褒めてください。
いつものように、「コントロールが甘い」って、憎まれ口を叩いてください。
馬鹿な駄犬だって、笑ってください。
だが、返事はない。
背中の重みが、ずしりと増した気がした。
嫌な重み。
命の熱さが消えた、ただの物質としての重み。
心臓が凍りつく。
「……ローズマリーさん?」
恐る恐る、背中のロープを解き、ローズマリーさんを腕の中に抱きとめる。
彼女は目を閉じ、糸の切れた人形のように動かない。
顔色は紙のように白く、唇からは色が消えている。
呼吸は……分からない。
羽毛のように浅すぎて、私の震える手では感じ取れない。
「……嘘、でしょ? ねえ、起きてよ……」
私の声が震える。
涙が溢れて止まらない。
勝利の歓喜なんて、一瞬で消し飛んだ。
世界を救ったって、ご主人様がいなきゃ、何の意味もないんだよ!
「ご主人様……ローズマリーさんッ!!」
私の悲痛な叫びが、白み始めた夜明けの空に木霊した。
お願い。
神様でも悪魔でもいい。
私の命を全部あげるから、この人を返して。
置いていかないで、ご主人様……!
燃え盛る王都の中心。
かつて美しい噴水があった広場は、直径百メートルを超える巨大なクレーターと化していた。
その中央に、帝国の移動要塞型司令部が、我が物顔で鎮座している。
許さない。
私たちの庭を、こんな風に踏み荒らして。
私の大切なご主人様が愛した街を、よくも。
「よくぞここまで来た、王国の勇士よ」
要塞の頂上から、帝国の将軍が見下ろしていた。
全身を魔導鎧で固めた巨漢。
その顔には、余裕の笑みが浮かんでいる。
「貴様らの抵抗は想定外だったが、所詮は個人の武勇。……我が帝国の『科学力』の前には無力だ!」
将軍が手をかざすと、地面が悲鳴を上げ、地下から異形の怪物が這い出してきた。
グォォォォォォォォッ!!
全長三十メートル超。
ライオンの体に、ドラゴンの翼、蛇の尾を持つ、伝説の合成魔獣「ベヒモス」。
だが、ただの生物ではない。
その体表は黒光りする特殊な魔導金属で覆われ、全身から吐き気を催すような魔力の波動を放っている。
醜悪だ。
美学の欠片もない、継ぎ接ぎの化け物。
「紹介しよう。対魔導士用最終兵器『超重キメラ・ベヒモス』だ!」
「ふん。ただのデカブツですね。……アリア、細切れにしなさい」
「ラジャー!」
背中のローズマリーさんの指示で、私は跳躍した。
迷いはない。
ご主人様が切れと言えば、世界だって切ってみせる。
銀色の流星となり、ベヒモスの頭上から踵落としを放つ。
戦車の装甲すら紙のように引き裂く、私の必殺の一撃。
ガィィィンッ!!
鈍い金属音が響き、私の足が弾かれた。
嘘でしょ?
傷一つついていない。
「硬っ!? なにこれ、殴った衝撃が逃げてる……!」
私が体勢を立て直そうとした瞬間、ベヒモスの口が開き、赤黒い魔力の渦が発生した。
「まずい、退避ッ!」
ローズマリーさんが防御結界を展開するが、ベヒモスが放ったのは攻撃魔法ではなかった。
超重力による「吸引」だ。
空間ごと飲み込むような力。
「きゃぁぁぁッ!?」
私の身体が空中で静止し、キメラの口へと引き寄せられる。
それだけではない。
背中のローズマリーさんが展開した結界の魔力そのものが、キメラに吸い取られていくのが分かる。
「ハハハ! 無駄だ! このベヒモスの装甲は物理衝撃を99%拡散し、魔力吸収炉が魔法を喰らう! あらゆる攻撃は無効化されるのだ!」
将軍の高笑い。
私は何とか吸引圏外へと脱出したが、スーツの魔力が大幅に削られていた。
背中のローズマリーさんの呼吸が乱れている。
魔力を持っていかれたんだ。
彼女の苦しそうな吐息が、私の首筋にかかる。
悔しい。
私の力が足りないせいで、ご主人様が!
「くそっ、手が出せない……! どうしますご主人様!?」
物理もダメ。
魔法もダメ。
殴っても効かず、魔法を撃てば餌になる。
そんなの、どうやって倒せばいい?
ローズマリーさんは眉をひそめ、即座に計算を終えた。
「物理無効、魔法吸収。……通常の手段では、ダメージを与えるどころか、こちらの魔力が尽きるのが先ですね。 詰み」
淡々とした声。
諦めたの?
そんなわけがない。
この人が諦めるはずがない。
ローズマリーさんは、冷徹な魔導師の仮面を脱ぎ捨て、狂気を帯びた笑みを浮かべた。
あぁ、その顔。
私の大好きな、世界に喧嘩を売る時の、最強の笑顔。
「……物理無効? 魔法吸収? ……ええ、素晴らしい性能ですね」
「何がおかしい!?」
「ただの『容量オーバー』させていないだけでしょう? アリア。……覚悟はいいですか?」
ローズマリーさんが、私の耳元で囁いた。
その声は、これまでにないほど真剣で、そして熱を帯びていた。
心臓がドクリと跳ねる。
嫌な予感がする。
背筋が凍るような、でも焼き尽くされるような予感。
「覚悟って……何をする気ですか?」
「私の『命』を、全部貴女にあげます」
「えっ……!?」
時が止まった。
何を言ってるの?
命をあげる?
やめて。
そんなのいらない。
私の返事を待たず、ローズマリーさんは私の首に回した腕に、残存する全魔力――いや、魔力に変換できる「生命力」そのものを注ぎ込み始めた。
カァァァァッ!!
私の銀色のスーツが、眩い金色へと変色していく。
熱い。
焼けるように熱い。
背中から流れ込んでくるのは、ただの魔力じゃない。
ローズマリーさんの鼓動、体温、吐息、そして「生きる意志」。
彼女の魂そのものが、私の血管に直接流し込まれてくる。
振り返ると、ローズマリーさんの真っ白な髪が、さらに燐光のような輝きを増し、彼女の肌から血の気が引いていくのが見えた。
透き通るように白く、儚くなっていく。
「ちょっ、待って! ご主人様、身体が消えそうですよ!? これじゃご主人様が死んじゃう!」
やめて。
そんな力いらない!
ご主人様がいなくなるくらいなら、私は負けたっていい!
世界なんてどうでもいい!
ご主人様が生きていてくれなきゃ、私の世界は終わりなんだ!
「死にません。……駄犬がいる限り、私は死ねないと言ったでしょう」
ローズマリーさんの声が震える。
嘘だ。
強がりだ。
命を燃料にして燃やしているんだ。
ロウソクの最後の輝きみたいに。
でも、ご主人様の腕は私を離さない。
その強い意志が、流れ込んでくる熱と共に私を縛る。
「私の全てを、駄犬の拳に乗せます。……星ごと砕くつもりで撃ちなさい!」
私は、背中から流れ込んでくる膨大な熱量と、彼女の「魂」の重みを感じた。
重い。
星そのものより重い。
私の背中には今、この人の人生の全てが乗っている。
拒絶してはいけない。
受け止めなきゃいけない。
それが、ご主人様の「犬」である私の役目だ。
ご主人様が命を賭けたなら、私はそれに応えて勝つしかないんだ!
私は涙を拭い、ニカッと笑った。
泣くな。
笑え。
ご主人様は、私の泣き顔なんて見たくないはずだ。
「……イエス、マム! 全部、受け取りました!」
「ば、馬鹿な! 自滅する気か! ベヒモス、喰らい尽くせ!」
将軍が叫ぶ。
ベヒモスが再び口を開き、超重力吸引を開始する。
「遅いッ!!」
私は地を蹴った。
その速度は、もはや視認できない。
金色の閃光となり、ベヒモスの懐へと潜り込む。
私の身体が悲鳴を上げている。
力が溢れすぎて、筋肉が千切れ飛びそうだ。
でも、構わない。
ローズマリーさんが命を削っているのに、私が五体満足で終わるわけにはいかない!
「うぉぉぉぉぉぉぉッ!!」
私は右拳に、ローズマリーさんから受け取った全ての命と、自身の全筋肉、全神経を集中させた。
スーツの右腕が、エネルギー負荷に耐えきれず、装甲が弾け飛ぶ。
私の骨が軋む。
血が噴き出す。
くれてやる。
右腕だろうが命だろうが、全部持っていけ!
これが、二人の絆の結晶。
誰にも邪魔させない、私たちだけの「愛」の形!
「必殺!! 必殺!! 私たちの……全力パンチだあッ!!!!」
ズガァァァァァァァァァァァンッ!!!!
拳が、ベヒモスの胸部に突き刺さった。
瞬間、世界の色が反転した。
物理衝撃吸収?
魔力吸収?
知ったことか!
そんな理屈を超えた、圧倒的な「想い」と「質量」の暴力だ!
飲み込めるものなら飲み込んでみろ、この熱さを!
ベヒモスの装甲が、吸収しきれずに飴細工のように歪み、砕け散る。
内部の魔導核が、臨界点を超えて暴走する。
「グォォォォォ……ガァァァァァァッ!?」
ベヒモスの断末魔が、王都中に響き渡る。
巨体は内側から光り輝き、そして――大爆発を起こして消滅した。
その爆風は、後方の移動要塞をも飲み込み、帝国の将軍の絶叫ごと吹き飛ばした。
すべてが消し飛ぶ。
爆風が収まると、広場には静寂が戻っていた。
ベヒモスも、要塞も、跡形もない。
あるのは巨大なクレーターだけ。
その中心に、私は立っていた。
金色のスーツは光を失い、元の銀色に戻っている。
右腕の装甲は砕け、素肌が露出していた。
痛みはない。
アドレナリンが出すぎているせいだ。
「……はぁ、はぁ……。やりましたよ、ご主人様」
私が背中に声をかける。
勝った。
私たちは勝ったんですよ。
褒めてください。
いつものように、「コントロールが甘い」って、憎まれ口を叩いてください。
馬鹿な駄犬だって、笑ってください。
だが、返事はない。
背中の重みが、ずしりと増した気がした。
嫌な重み。
命の熱さが消えた、ただの物質としての重み。
心臓が凍りつく。
「……ローズマリーさん?」
恐る恐る、背中のロープを解き、ローズマリーさんを腕の中に抱きとめる。
彼女は目を閉じ、糸の切れた人形のように動かない。
顔色は紙のように白く、唇からは色が消えている。
呼吸は……分からない。
羽毛のように浅すぎて、私の震える手では感じ取れない。
「……嘘、でしょ? ねえ、起きてよ……」
私の声が震える。
涙が溢れて止まらない。
勝利の歓喜なんて、一瞬で消し飛んだ。
世界を救ったって、ご主人様がいなきゃ、何の意味もないんだよ!
「ご主人様……ローズマリーさんッ!!」
私の悲痛な叫びが、白み始めた夜明けの空に木霊した。
お願い。
神様でも悪魔でもいい。
私の命を全部あげるから、この人を返して。
置いていかないで、ご主人様……!
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
お兄ちゃんはお兄ちゃんだけど、お兄ちゃんなのにお兄ちゃんじゃない!?
すずなり。
恋愛
幼いころ、母に施設に預けられた鈴(すず)。
お母さん「病気を治して迎えにくるから待ってて?」
その母は・・迎えにくることは無かった。
代わりに迎えに来た『父』と『兄』。
私の引き取り先は『本当の家』だった。
お父さん「鈴の家だよ?」
鈴「私・・一緒に暮らしていいんでしょうか・・。」
新しい家で始まる生活。
でも私は・・・お母さんの病気の遺伝子を受け継いでる・・・。
鈴「うぁ・・・・。」
兄「鈴!?」
倒れることが多くなっていく日々・・・。
そんな中でも『恋』は私の都合なんて考えてくれない。
『もう・・妹にみれない・・・。』
『お兄ちゃん・・・。』
「お前のこと、施設にいたころから好きだった・・・!」
「ーーーーっ!」
※本編には病名や治療法、薬などいろいろ出てきますが、全て想像の世界のお話です。現実世界とは一切関係ありません。
※コメントや感想などは受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
※孤児、脱字などチェックはしてますが漏れもあります。ご容赦ください。
※表現不足なども重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけたら幸いです。(それはもう『へぇー・・』ぐらいに。)
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
クラスのマドンナがなぜか俺のメイドになっていた件について
沢田美
恋愛
名家の御曹司として何不自由ない生活を送りながらも、内気で陰気な性格のせいで孤独に生きてきた裕貴真一郎(ゆうき しんいちろう)。
かつてのいじめが原因で、彼は1年間も学校から遠ざかっていた。
しかし、久しぶりに登校したその日――彼は運命の出会いを果たす。
現れたのは、まるで絵から飛び出してきたかのような美少女。
その瞳にはどこかミステリアスな輝きが宿り、真一郎の心をかき乱していく。
「今日から私、あなたのメイドになります!」
なんと彼女は、突然メイドとして彼の家で働くことに!?
謎めいた美少女と陰キャ御曹司の、予測不能な主従ラブコメが幕を開ける!
カクヨム、小説家になろうの方でも連載しています!
人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている
井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。
それはもう深く愛していた。
変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。
これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。
全3章、1日1章更新、完結済
※特に物語と言う物語はありません
※オチもありません
※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。
※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。
英雄の番が名乗るまで
長野 雪
恋愛
突然発生した魔物の大侵攻。西の果てから始まったそれは、いくつもの集落どころか国すら飲みこみ、世界中の国々が人種・宗教を越えて協力し、とうとう終息を迎えた。魔物の駆逐・殲滅に目覚ましい活躍を見せた5人は吟遊詩人によって「五英傑」と謳われ、これから彼らの活躍は英雄譚として広く知られていくのであろう。
大侵攻の終息を祝う宴の最中、己の番《つがい》の気配を感じた五英傑の一人、竜人フィルは見つけ出した途端、気を失ってしまった彼女に対し、番の誓約を行おうとするが失敗に終わる。番と己の寿命を等しくするため、何より番を手元に置き続けるためにフィルにとっては重要な誓約がどうして失敗したのか分からないものの、とにかく庇護したいフィルと、ぐいぐい溺愛モードに入ろうとする彼に一歩距離を置いてしまう番の女性との一進一退のおはなし。
※小説家になろうにも投稿
男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)
大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。
この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人)
そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ!
この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。
前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。
顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。
どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね!
そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる!
主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。
外はその限りではありません。
カクヨムでも投稿しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる