銀河をカケル逃避行 ~5億の借金持ち宇宙海賊、うっかり禁忌を破り愛で詰む~

山本条太郎

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幕間 稲妻と狂気、玉座の独白 アルベルト王子

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【コンドル王宮・玉座の間】 

ドオォォン……! 

窓の外で、下品な雷鳴が轟いている。 

まるで、私の焦燥をあざ笑うかのように。

陰鬱な空気が漂う玉座の間。 

重臣たちの怯えた視線。

湿った沈黙。 

すべてが不愉快だ。

すべてが、私の神経を逆撫でする。

「なんたる失態か! ガルム司令官! 一体、どういうことだ!? 説明しろ!!」

私は玉座から身を乗り出し、激しい怒りと共に問い詰めた。 

顔が熱い。

血が逆流しているのが分かる。 

玉座の肘掛けを握る指に力が入りすぎて、爪が食い込み、ギシリと悲鳴を上げた。

「申し訳ございません、アルベルト王子殿下」

眼下に控えるコンドル王国軍総司令、ガルムは深々と頭を垂れた。

「お預かりした『積み荷』を搭載した本命の輸送艦隊が、コンドル星系離脱直後、反体制派の艦隊の奇襲を受けました。……積み荷は、奪取されたものと」

淡々とした報告。 

その顔には、悔恨の色など微塵もない。 

まるで、他人事のように。

……貴様、笑っているのか?

疑念が脳裏をよぎる。

こいつは、私の失敗を楽しんでいるのではないか?

「反体制派は、だと!?」

私は獣のような咆哮を上げた。

「はっ。クラウス卿の報告によれば、敵は未知の高性能スペースロボットと、強力なフォワード能力者を使用。さらに……コスモノイド解放戦線も関与している可能性が」

「コスモノイドだと!? あの下等な寄生虫どもがか!?」

吐き気がした。 

あの薄汚い、遺伝子を弄くり回された紛い物どもが、この私の崇高な計画を邪魔したというのか?

「いや、奴らごときに何ができる! ならば、アンドロメダ正教会か!? あの偽善者どもめ! 神の愛を説きながら、この『選ばれし私』に歯向かうというのか!?」

視界が歪む。 

どいつもこいつも、私を陥れようとしている。 

私の破滅を望み、私の王冠を狙うハイエナどもめ。

「アルベルト王子殿下! どうか、お気を確かに!」

側近の老将が震える声で諌めてくる。 

うるさい、うるさい、うるさい!

「分かっておるわ!!」

私は老将の言葉を遮り、金切り声で叫んだ。

「私の計画を……リリーナ姉さんとの『約束』を邪魔する者は、誰であろうと絶対に許さん! 八つ裂きにしてくれるわ!!」

私は再び玉座に深く身を沈めた。 

呼吸が荒い。

心臓が早鐘を打っている。

知らず知らずのうちに、右手の親指の爪を噛んでいた。 

ガリッ、という硬質な音。

口の中に広がる鉄錆の味。

ああ、姉さん……リリーナ姉さん……

思考の海に、最愛の姉の笑顔が浮かぶ。 

彼女だけだ。

この世界で、私を本当に理解してくれるのは。

必ず、取り戻してみせます。貴女は私のものだ。誰にも渡さない

爪を噛み砕く。 

痛みなど感じない。 

あるのは、邪魔者たちへのどす黒い殺意と、姉への狂おしいほどの愛だけ。

「見ていろ……必ず、この屈辱は晴らす。銀河を血の海に変えてでもな……!」

雷光が、私の歪んだ笑顔を一瞬だけ照らし出した。
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