幻想冒険譚:科学世界の魔法使い

猫フクロウ

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局と魔法と原石たち

模擬戦前日

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「こんにちわ、注文いいですか?」

「あら~いらっしゃい、トウヤ君。今日で大体制覇したかしら~?」

がたいのいいお姉さんもといジェシーさんは野太い声で歓迎してくれた。

「はい、この三つで制覇です。それとこれを追加して一つにしてもらえませんか?」

「お安い御用よ、今用意するから待っててね」

気さくでいい人だから接しやすいが、おじさんの見た目から所々出る女性らしい仕草はまだ慣れない。

せめてウインクや投げキスに対して笑顔で返せるようにしなければ。

そう思いながら食事を待ってると後ろから声をかけられた。

「やあ、トウヤ。今日は休みだったね」

振り向くとそこにはミナとルーがいた。

「ああ、前日は疲れを残さないために休めってことだろ。至れり尽くせりだな」

ミナとはいざこざがあったが、また元の仲に戻れた。

のだが・・・・・・

今度はルーに距離を置かれるようになった気がする・・・

現にルーはミナの陰に隠れて顔を合わそうともしない。

「ルー、お疲れ」

「ん」

顔を逸らしたまま返事をするルーに半ば気分だと諦めていた。

ミナも呆れたような顔をしている。

そんなやり取りをしてると、ジェシーさんからの料理が出来たという合図が届いた。

そして料理を受け取る際に変なことを言われた。

「あら~ん、あなたも隅に置けないわねぇ~」

ルーと俺を交互に見ながら意味あり気なことを言われたが、全く意味が解らなかった。

「ただ単に気分ですよ」

そう返したが、ニヤついた顔をして肘でツンツンされてしまった。



二人も料理を受け取り、自然な流れで相席となったが、まだルーを顔が合うことは無かった。

「そういえばヤバいくらい能力が上がったと聞いたぞ」

ミナにも修行の成果が報告されているようだ。

「ああ、お陰様で順調だよ」

「それと封印のことを聞いたよ」

一瞬顔が曇ってしまう。

「まあ被害が出ない方法を選んでくれたら俺はそれでいいよ」

「魔法は開封よりも封印の方が大変だからな。最悪そうなるだろう」

封印が解かれるということは自分の死を意味する。よく覚えておき、解かないように気をつけねば。

「ただし、魔道士は基本的に助けることの出来る命は助けるから即死亡とならない。だから安心しな」

「はは、魔道士って優しいんだな」

「簡単に仲間を見捨てるということを嫌うだけさ」

「俺を仲間と思ってくれるのかね?」

「少なくともポーラ達は仲間と思ってるし、私達も仲間と思ってくれていいぞ」

「そりゃあ、有り難いな」



他愛ない話をミナとしながらも、ルーの様子を伺うが、一向に顔を逸らしたまま黙々と食べていた。

それにはミナも気づいているようで、ルーを見る目がジトッとしている。

真顔にその目は怖いぞ。と思っているとミナがルーに声をかけた。

「お前・・・トウヤに惚れたか?」

あまりにもどストレートな言い方に思わず吹き出してしまった。

「ば、ばばば、ばか、そんなわけないでしょ」

突然言われたことに大声で答えてしまったルーは周りから注目を浴びてしまう。

それに気づいたルーは一度冷静を装い着席するが、トウヤをチラッと見ると即座に顔が真っ赤になった。

どうやら図星のようだ。

「ま・・・マジか・・・・」

生憎、トウヤにはそう思われる理由が全く分からなかった。

「俺、ルーに何かしたか?」

「ほれ、お姉さんが聞いてやるから話しな」

いつの間にかゲスい顔になっていたミナがルーの肩を組み問いかける。

ルーは興味深いものを目の前にすると表情が豊かになるな。と余計なことを考えてしまった。

顔を隠しながら小声で「ごめんなさい。許してください」と連呼するルーに対して、
ミナは問いかけの手を緩めなかった。

少ししてルーが根負けしたのか、ポツリと言い始めた。



「・・・ミナと喧嘩したとき・・・中に入って・・・取り持ってくれたから・・・」



「「え!?ちょっろっ!!」」

トウヤとミナの思いは一致していた。

「「こいつちょろ過ぎやしないか!?」」

二人とも声こそ出なかったが、同じことを考えていた。

当事者なのであの時の状況は理解しているし、特におかしな行動はない。

トウヤが謝りに行くついでにルーも行きたいと言ったから連れてった。

現にミナは「仲裁してくれてありがとう」くらいにしか思っていなかった。

それなのにルーは好意を持つほど恩を感じていたのだ。

「君は私のとこに来るまでに何をした?」

ミナはルーに聞こえない程度の声でトウヤに確認する。

「何もしてない。一緒に歩いただけだ」

だよなという感じでミナは納得した。

「ルー、あれは普通に誰でもやるから。特に特別なことしてないよ」

「・・・で・・・でも・・・」



「・・・歩くとき・・・ずっと・・手を・・・握ってた・・・」



壊れたマリオネットのようにミナが首だけ振り向かせ睨み付けている。

何も言わなくてもわかる。「どういう事だ?」と聞いている。

ミナの圧に変な汗が噴き出る。

「そ、そういえば・・・半ば強引に連れてたかもしれない・・・」

トウヤも記憶が曖昧だ。

「ねぇミナ、あたしどうしたらいいの?」

急な問いかけにミナも慌てる。

「わわ、私が知るわけないだろ」

アドバイスを求められても、そう言った想いを持ったことのない”いない歴=年齢”の彼女も知るはずがない。

ましてやミナにとっては没落したとはいえ、あの超高慢で気品の高さを重んじるシフォン家のお嬢様が、
平民の中でも奇異な存在である彼に対して、そのような好意を持つこと自体が信じられなかった。

「と、とと、とりあえずトウヤの今の気持ちを教えてほしい」

ミナからトウヤにキラーパスが投げられる。ミナも何も考えられなくなっているようだ。

「えー!」と叫ぶ気持ちを心の中だけにして、トウヤは答える。

「え、えーと、とりあえず気持ちは嬉しいけど、
今はこの環境に慣れることでいっぱいいっぱいで、他が考えられないかな?」

無難な答えにミナは心の中でグッジョブとサインを送る。

ミナの様子を伺うと目を潤ませながら口を真一文字にしてプルプル震えていた。

「だったらさっさと慣れなさいよ!バカ!」

そう叫ぶとルーは逃げるように走り去っていった。

取り残されたトウヤとミナは呆気にとられたまま動けずにいた。



「大切な模擬戦前にすまなかったな」

食器を片づけながらミナは詫びる。

「あ、うん」

素っ気ないトウヤの答えにミナが不安を覚える。

「明日の模擬戦大丈夫か?」

「あ、いや、そこは大丈夫だと思う」

曖昧な答えだ。

「やっぱり気になるか?」

「そうだな。嫌われてると聞いてやって来たのにあれだもんな」

「いやいや、あれは例外だぞ?他はそんなにちょろくないぞ」

「そこはわかってるよ。でも、俺の周りはイメージで見る人が少ないよな」

「君の周りで一番嫌ってたのはリーシャだからな。それ以外はさほど嫌ってはいない。
というより会ったことも無いやつが多いから実感がわかないんだろうな」

イメージなんてのは先入観であるだけで、黙っていれば誰も気づかないし、
おこないが良ければ出身がどうあれ関係ない。みんなその人個人を見るのが当たり前らしい。

地球ではイメージを理由に人格まで否定し完膚なきまでに叩く。

肌の色、瞳の色、髪の色、信じる物、考え方の違いですら差別の対象にする。

地球も魔法世界みたいだったらなぁと、故郷の欠点を思い浮かべてしまっていた。

「とりあえず私からは明日頑張れと応援に行くぞと言っておこう」

「ああ、二人で来るのか?」

「もちろん」

その答えに安堵すると同時に気合を入れ直す。

部屋に帰ったらポーラから教わったセレスの情報を確認し直そう。

そして自分を良く想ってくれる人のために精一杯のことをしようと再度誓った。
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