幻想冒険譚:科学世界の魔法使い

猫フクロウ

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局と魔法と原石たち

模擬戦開始

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模擬戦当日。

会場は局が作った大きな会場だった。

戦場として中央に半径3kmの広さの岩場が用意され、機械式の壁に囲まれている。

壁にはかなり強力な強化魔法がかけられていてよっぽどの力でなければ壊せない。

そしてその壁は高さ300mほどあり、多少空を飛んでも問題ないようだ。

さらにその壁の上には見学用の大きな部屋が用意されていて、
部屋の一面は全面ガラス張りで戦場が見渡せるようになっている。

そこに見学者は集まり、直接または部屋に用意された複数のモニターから模擬戦の様子を伺うのだ。



見学会場の一室にポーラ、ファイゼン、ティア、そしてミナとルーがいた。

「あの子大丈夫かな?セレスだからもしもは無いと思うけど、うまくやれるかな?」

ポーラはガラスに顔を押し当て、真下にいるであろうトウヤの様子を見ていた。

「あんた随分と過保護になるんだね。まあ、気持ちはわからなくないけど」

ティアもポーラと同じ格好で様子を伺う。

「セレスも気合入ってんな」

ファイゼンは反対側にいる友人の様子を覗いていた。

「そうね。一応油断だけはしないように伝えたけど、能力は未知数だから気合入れないとね」

ティアはファイゼンに同意しながら視線を遠くの相棒に向ける。

「ばっかみたい」

少し離れたところで椅子に座るルーは、そんな三人の様子を見ながら呆れていた。

「ま、君は彼だけで十分だもんな」

とミナはルーの後ろで囁く。

その一言にルーは顔を赤くしながらも頬を膨らませ、ミナをポカポカ叩く。

そんな和気藹々わきあいあいとした部屋の扉が激しく開かれる。

「う・・・うにゃぁ・・・」

扉が開かれると同時に何かが溶けるように落ちると、それを掴んで小さな少女が部屋の中へ入ってきた。

「リーシャ、リンシェン、今までどこ行ってたの?」

いきなり現れた二人に驚きながらもポーラは問いかける。

「A地区で修行してきた」

ケロッとした態度でリーシャは答える。

「は?A地区?そんなとこ行ってきたの?」



A地区とは野生動物のみが存在する無人の国を指す。そこは独自の生態系があり、その国ならではの生物もいる。

A地区は一部を除き立ち入りを制限された自然保護区であるが、全体に凶暴な野生動物が蠢いている厳しい環境なので、
魔道士の中にはその場所を好んで修行の場としている者もいる。

リーシャもそこを好む一人で、リンシェンを(無理やり)連れて行き、基礎修行と言う名の鬼のしごきをやってきたのだ。



「リンシェン、大丈夫か?」

ファイゼンが身を案じる。

「ダメにゃ!じにゅぅぅぅ!」

涙ながらに訴える姿はとても元気そうであった。

「あんなのまだ楽な方だ。トウヤの模擬戦があるから切り上げたが、後でまた行くぞ」

「ひぃぃぃぃぃぃ!」

地獄の宣告を聞いてリンシェンは「無理だ!」と必死に訴えるが、リーシャは無視して鼻歌交じりで見学の準備をしていた。

気の毒だが止められないことはわかっているので全員で無視することが暗黙の了解であった。






まもなく開始となる頃、意外な客人がポーラ達の元を訪れた。

「邪魔するぞ。すまないがここで見学させてくれ」

そう言うと客人はツカツカと中へ入ってきた。

その客人のやや浅黒い姿が確認出来るとリンシェンを除く全員が立ち上がり姿勢を正した。

「あらあら~、随分と不遜なお客さんねぇ」

客人の陰からもう一人、おっとりとした女性も中へ入ってきた。

「あんたも勝手に入ってるんだから変わんないでしょ」

とさらにもう一人小柄な女性も入ってきた。

「お、お疲れ様です、ステラさん、ティーナさん、ソニアさん。今日はなぜこのような所に?」

三人をよく知るミナが緊張しながらも声をかける。

ギルドマスター、ステラ・B・フレアノス。サブマスター、ティーナ・W・スプール。そしてソニア・ホロロギス。

魔道士ギルド、アルカナフォートのトップ3の三人が訪れたのだ。

三人はガラス張りの面に用意された椅子にドカっと座った。

「なに、噂の地球人とやらの模擬戦があり、その相手がアローニャの娘だと聞いたものでな」

「見学ついでに情報収集ってわけよ」

「珍しいでしょ~?」

アルカナフォートの上層部は自ギルドのメンバー以外には興味を持たない人間が多い。

そんな人達がわざわざ出向くこと自体が珍しいのである。

しかしこの模擬戦にはその珍しいことをやってもいいと思えるほどの魅力があるようだ。

「それにここに来ればポーラからあの地球人について聞くことも出来るだろ?」

ステラはニヤリと笑い、ポーラを見る。

「あ、いや・・・実は私もまだ詳しくは知れていないんです」

「あらあら、マスターさんでもわからないなんて大丈夫かしら?」

ティーナの毒気のある指摘がポーラにグサリと刺さるが、気を取り直し説明する。

「あの子は魔法で物やら能力やらを創って増やせるんです。なのでまだ底が知れないんですよ」

「ほう、なるほど」

ステラは感心すると口元を隠し考え込むようにして、モニターに映るトウヤを見た。

「あのババアみたいな能力ってこと?嫌な能力ね」

ソニアは毒突きながらも膝元で浮いているキーボードを起動し、何かを打ち込む。



ちょっとした沈黙が部屋を包むとカチャと言う音と共に柑橘系の爽やかな香りがした。

「本日のティーはアクアリモーネティーとグルトパウンドです。
ステラさんはクルマトーなし、ティーナさんは控えめでしたね?」

いつの間にかファイゼンが客人の美女達をもてなすためにお茶とお菓子を用意したようだ。

(こいつは相変わらず美女のことになると仕事が滅茶苦茶早いな)

彼をよく知るポーラ、リーシャ、ティアは心の中で呆れてしまった。

「うむ、君は相変わらず、もてなすのが上手いな」

「そうね~、たった数回で好みまで覚えてくれるなんて嬉しいわ~」

「いえいえ、お二人のようなお美しい方々に喜んで頂けることが俺の幸せですから」

ただの女好きがここまで来ると見事なものである。

「ふっ、だから君を特別に私の元へ置きたかったんだが、見事にフッてくれたね」

ステラはファイゼンに顔を近づけ囁くように言う。その妖艶な色香に男なら心を奪われそうなほどだ。

「い・・いやぁ、それはちゃんと説明した通りですよ、ははは」

明後日の方を見ながらファイゼンは苦笑し、話をそらす。

「ちょっと!」

突然の大声にステラはファイゼンに近づくことを止める。

どうやらその声の主は、小柄な女性からのようだ。

「あたしのとこに何も無いんだけど!どうなってるのよ!」

ソニアは頬を膨らませながら机をパンパン叩く。

同じ客人なのにソニアだげ何もないことを怒っているようだ。

「あ、お子様は対象外です」

「あたしはあんたより年上だ!」

ファイゼンの返答にソニアは怒り蹴ろうとするが、ヒョイと躱されてしまった。

ソニアの怒りは収まらず、さらに蹴ろうとするがヒョイ、ヒョイとまた躱されてしまった。

小柄なソニアからの蹴りの射程は長くない。少し身を引くだけで簡単に躱せてしまうのだった。

今度は殴る方に切り替えたが、ファイゼンに頭を押さえられ空振りに終わった。

身長が150cmに満たないソニアと180cmを超えるファイゼンとの差は歴然だった。






「ほ、報告は以上です」

「ええ、ありがとう。さがっていいわよ」

ただの業務報告。それをしただけなのに部屋の空気はピリピリしていた。

「は、はい、失礼します」

報告をしに来た魔道士はそそくさと退散した。

「アル。少しは控えてもらえるかしら?」

「何がだ?」

アルフォートは煙草を吹かしながら答える。

「その不機嫌な態度よ。報告に来た子が委縮しちゃってたわよ」

「ああ、そうかい、そりゃすいませんね」

口ではそう言っているが態度を改めようという気は無いようだ。

でもそれも仕方がない事だと理解も出来る。

自分の娘がこれから未知の化物と戦おうと言うのだから。

「映像は見たかしら?限定したポーラさんを打ち負かす程度だから上位魔道士程度。
そこから修行で能力を上げたとしてもセレスが優位なのは変わらないわ」

「俺が気にしているのはそこじゃねぇよ」

やはり気にしてるのは爆縮と言う魔法と人を殺しても何とも思わない性格だろう。



クエストの中には暗殺クエストという人を殺す仕事も存在する。

もちろんターゲットは犯罪者などの凶悪な人物のみだが、
魔道士の中にも人を殺すということを躊躇う人も多いので、
他よりも高額な報酬であっても進んでやろうという人はいない。

確認した映像からセレスの相手は人を殺しても何とも思わない人物であることが窺える。

さらに爆縮という魔法は人に向けて放てば確実に殺してしまう。

もちろん魔法自体が兵器なので人に向ければ簡単に殺せてしまうが、
殺傷力で考えれば爆縮はかなり危険な魔法であると言える。



「ポーラを信じるしかねぇか」

「いざとなれば中断させるわ。だから、私達が出来るのは信じる事と備えて観察する事よ」

「はぁ・・・。嫌な予感しかしねぇな」

アルフォートの予感は確かだ。過去に幾つもその予感に助けられたことがある。

その予感が当たらなければいい。そう願いつつ開始の時間を迎える。
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