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それは甘く蕩けて灰になる
緊急クエスト
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「頭を下げて!衝撃に備えてください!」
けたたましいサイレンが鳴り響く中、数人の女性が叫び続ける。
上空数千メートルの高さ。今も落ち続けている。
爆発による大きな揺れから数分は経ったが、機長との連絡はまだとれない。
後は救助が来ることを願いながら、乗客の安全を出来る限り確保すること。
それが客室乗務員の使命だと自分を強く奮い立たせた。
同僚たちと一緒に乗客のシートベルトと姿勢を確認し終えたあと、
シートに常備されている強化魔法を展開した。
後は自分たちだ。急いで所定の位置へ駈け出した。
その時、爆発で機体が大きく揺れ、倒れてしまった。
「大丈夫?早くこっちへ」
既に救助体制を終えた同僚が手を伸ばす。
もう少し進んだら魔道士が助けに来てくれることを待つだけだ。
そう思い立ち上がろうとした瞬間、天井が壊れた。
さっきの爆発で天井にヒビが入り内外の気圧差で大きく壊れたのだ。
「きゃー!」「わー!」
壊れたことで機内に暴風が吹き荒れる。
墜落中とはいえ高度数千mを時速数百kmで進む機体の外は極寒の冷風が吹き荒ぶ。
そして身体が浮かぶ感じがした。
「いやああああぁぁぁ!」
固定されていなかった乗務員の身体は、暴風により簡単に機外に吹き飛ばされた。
身体が回り、どこを向いてるかもわからない。かろうじて風を背中で受けることで姿勢が安定した。
そして背に向けて落ちていることは理解出来た。
薄ら目を開けると太陽が煌々とさしている。
「お父さん・・・お母さん・・・ありがとう・・・・ごめんなさい・・・」
死を覚悟した時に出た言葉は自分を育ててくれた両親への感謝と謝罪だった。
目から溢れ出る涙は冷気で氷となりキラキラと宙を舞う。
「・・・だれか・・・たす・・けて・・・」
言葉はもう誰にも届かない。彼女はゆっくりと目を閉じた。
「飛ばされた乗客確保!!」
ふと風が止むと、誰かに抱かれてる感覚がした。
「その・まき・いへ!!ガ・ット・相手・するな!!」
乱暴に繋がれた通信は途切れ途切れだが聞き取れた。
目を開けると少女に抱かれていた。
「あ・・・ああ・・・あああああ!」
救助に来た魔道士だとわかった瞬間、声を振り絞りながら泣いてしまった。
「泣くのはまだあと、ちゃんと地上に降りた時にな」
そう慰められると、力強く抱かれた。
「さあ、掴まって。飛行機に戻るよ」
そう促されて魔道士の彼女に掴まり、前を確認すると、小さな飛行物がこちら側に向いた。
「うじゃうじゃ、うじゃうじゃと、目障りだな」
そう言うと魔道士の彼女は構えると同時に、キーンという音と共に魔方陣が現れた。
「ばかやろー!行けぇ!!」
後ろから怒声が聞こえると、「はいはい」と言う声と共に景色が変わった。
いつの間にか小さな飛行物の後方に移動していたのだ。
飛行物を確認すると、方向を向き直し攻撃しようとしていた。
だが飛行物は後方から突っ込んできた赤髪の少女の拳で破壊された。
「小型ガジェットはリーシャとリンシェンで抑えて。私たちは機体の救助よ」
「了解」
通信に応えた魔道士は再び飛行機に向けて飛び出した。
「全員助けるから、もう少しだけ我慢してね」
魔道士の言葉は、不思議と安心できた。
トウヤは今なおも落ちている機体に到着すると、救助した人を機内に降ろした。
同僚と泣きながら抱きしめ合うのを確認すると、機上へ移動した。
到着と同時にポーラ、ファイゼンが到着する。
「ファイゼンは機内で乗客の保護と底の強化。不時着に備えて」
「了解、外は頼んだぞ」
そう言い機内へ入るファイゼンを見送るとコックピットから大型のロボットが這い出てきた。
「パイロットは絶望的ね。わかってると思うけど、時間はかけられないわ」
「ああ、瞬殺する」
そう言うと、ロボットから何かが放たれた。
風のような何かが通ると、すぐにその正体がわかった。
「AMSか。そういうロボットだもんね」
魔法の効果を一時的に打ち消す石、“魔封石”を内部に持ち、
一定範囲内の魔法を打ち消す科学システム“AntiMagicSystem”、
通称“AMS”を持つ魔法と化学兵器を使い分けるロボットは、魔道士にとって相手にしたくない相手だった。
機体の前方部では魔法が消される。魔法が使えなければ魔道士は一気に弱体化する。
普通は魔法に影響しない物を使うが、緊急だったため装備が乏しい。
さらに機体が落ちているという状況が思考を焦らせる。
「なあ、落ちてるから尾翼壊してもいいよな?」
ふと後ろからトウヤの声がした。
「え?何に・・・」
だが何をしたいかすぐに理解した。
「多少は平気よ」
そう答えるとトウヤは尾翼を折り、ロボットに投げつけた。
魔法で作られた物以外であれば“AMS”の影響は受けない。
ロボットは投げられた尾翼を受けるために“AMS”を解除。そして即座に魔法の盾で尾翼を受ける。
その瞬間、トウヤは瞬く間にロボットの前に移動する。
ジジジジッ!
トウヤの拳とロボットの盾が衝突する。
力比べだとトウヤが不利だ。だがトウヤは握っていた拳を開いた。
そして即座に拳を握り直すと距離をとった。
ロボットは何かに吸い込まれるように潰れていく。
「なるほど、爆縮ならどんなに堅くても平気ね」
「そういうこと」
爆縮が消えると、コックピットを確認した。
血まみれでピクリとも動かない人が二人。案の定の結果だった。
「さあ、不時着させるわよ」
即座に頭を切り替え、今度は乗客の救助に移る。
「どう?飛ばせる?」
「もって数秒だな。あとその後動けなくなると思う」
トウヤの飛行魔法“駆”は触れていれば一緒に空間を切り取り、動かして飛ばすことができる。
しかし大きくなればなるほど魔力の消耗は激しい。一人なら未だしも、数百人相当となると長時間は動かせない。
となると着地の衝撃を和らげることに使う方が理想的だろう。
「緊急!緊急!」
突然通信から大声が聞こえた。
「このままでは山に衝突!急いで回避を、みんな逃げて!」
その連絡を受け前方を確認すると山が見えてきた。
「もうこんなに落ちていたのか!仕方ない、トウヤ!飛ばして!」
「いや、山の方にご退場を願いましょうか」
そうトウヤは言うと山を指差し構えた。
「何を!?」
「リーシャ!リンシェン!前には絶対来るなよ」
「え!?まさか!?」
「“出でよ、疾風の翼!天より降り注ぐ矢羽と成れ!”」
そう唱えると魔方陣が翼の様に広がっていく。
「ちょ!?待って!」
「“フレース・ヴェルグ”!!」
「おばかぁぁぁぁぁ!!」
ポーラの制止を無視してトウヤは砲撃を放つ。
鳥状のように放たれた砲撃は山に突き刺さり、奥へ進んで行く。
そして爆発と同時に山頂部分を吹き飛ばした。
これで衝突する部分は無くなった。
のだが。
山頂の大きな塊が機体の上に落ちてくる。
「くっ!」
一か八か自分の砲撃で破壊するか?と考えていると、トウヤは手をあげ拳を作る。
すると何かに吸い込まれるように、上空へ引き上げられた。
特大の爆縮だ。
トウヤは山頂を破壊し、その残骸を爆縮で始末すると同時に、
爆縮の吸引力で機体を無理矢理上に引きあげたのだ。
何と言う力技だ。助かった・・・・のだが。
「あ・ん・た・ねぇ!助かったからいいものの、地形をぶっ壊すなんてタブーなのよ!」
ポーラは力いっぱいにトウヤの頭を掴む。
「いでででで!じゃああのままみんなでお陀仏で良かったのかよ!」
「もっと他にやり方があったでしょって言ってるのよ!」
トウヤはポーラの手を叩きギプアップを示すが、ポーラは力を緩めない。
「まだ当たる!!」
そう叫ぶ通信が入ると即座に前を確認した。
爆縮で上がり切らず、下部が山に衝突する。
危ないからある程度離したことで、吸引が足りなかったのだ!
ダメだ!間に合わない!
誰もがそう思った。
けたたましいサイレンが鳴り響く中、数人の女性が叫び続ける。
上空数千メートルの高さ。今も落ち続けている。
爆発による大きな揺れから数分は経ったが、機長との連絡はまだとれない。
後は救助が来ることを願いながら、乗客の安全を出来る限り確保すること。
それが客室乗務員の使命だと自分を強く奮い立たせた。
同僚たちと一緒に乗客のシートベルトと姿勢を確認し終えたあと、
シートに常備されている強化魔法を展開した。
後は自分たちだ。急いで所定の位置へ駈け出した。
その時、爆発で機体が大きく揺れ、倒れてしまった。
「大丈夫?早くこっちへ」
既に救助体制を終えた同僚が手を伸ばす。
もう少し進んだら魔道士が助けに来てくれることを待つだけだ。
そう思い立ち上がろうとした瞬間、天井が壊れた。
さっきの爆発で天井にヒビが入り内外の気圧差で大きく壊れたのだ。
「きゃー!」「わー!」
壊れたことで機内に暴風が吹き荒れる。
墜落中とはいえ高度数千mを時速数百kmで進む機体の外は極寒の冷風が吹き荒ぶ。
そして身体が浮かぶ感じがした。
「いやああああぁぁぁ!」
固定されていなかった乗務員の身体は、暴風により簡単に機外に吹き飛ばされた。
身体が回り、どこを向いてるかもわからない。かろうじて風を背中で受けることで姿勢が安定した。
そして背に向けて落ちていることは理解出来た。
薄ら目を開けると太陽が煌々とさしている。
「お父さん・・・お母さん・・・ありがとう・・・・ごめんなさい・・・」
死を覚悟した時に出た言葉は自分を育ててくれた両親への感謝と謝罪だった。
目から溢れ出る涙は冷気で氷となりキラキラと宙を舞う。
「・・・だれか・・・たす・・けて・・・」
言葉はもう誰にも届かない。彼女はゆっくりと目を閉じた。
「飛ばされた乗客確保!!」
ふと風が止むと、誰かに抱かれてる感覚がした。
「その・まき・いへ!!ガ・ット・相手・するな!!」
乱暴に繋がれた通信は途切れ途切れだが聞き取れた。
目を開けると少女に抱かれていた。
「あ・・・ああ・・・あああああ!」
救助に来た魔道士だとわかった瞬間、声を振り絞りながら泣いてしまった。
「泣くのはまだあと、ちゃんと地上に降りた時にな」
そう慰められると、力強く抱かれた。
「さあ、掴まって。飛行機に戻るよ」
そう促されて魔道士の彼女に掴まり、前を確認すると、小さな飛行物がこちら側に向いた。
「うじゃうじゃ、うじゃうじゃと、目障りだな」
そう言うと魔道士の彼女は構えると同時に、キーンという音と共に魔方陣が現れた。
「ばかやろー!行けぇ!!」
後ろから怒声が聞こえると、「はいはい」と言う声と共に景色が変わった。
いつの間にか小さな飛行物の後方に移動していたのだ。
飛行物を確認すると、方向を向き直し攻撃しようとしていた。
だが飛行物は後方から突っ込んできた赤髪の少女の拳で破壊された。
「小型ガジェットはリーシャとリンシェンで抑えて。私たちは機体の救助よ」
「了解」
通信に応えた魔道士は再び飛行機に向けて飛び出した。
「全員助けるから、もう少しだけ我慢してね」
魔道士の言葉は、不思議と安心できた。
トウヤは今なおも落ちている機体に到着すると、救助した人を機内に降ろした。
同僚と泣きながら抱きしめ合うのを確認すると、機上へ移動した。
到着と同時にポーラ、ファイゼンが到着する。
「ファイゼンは機内で乗客の保護と底の強化。不時着に備えて」
「了解、外は頼んだぞ」
そう言い機内へ入るファイゼンを見送るとコックピットから大型のロボットが這い出てきた。
「パイロットは絶望的ね。わかってると思うけど、時間はかけられないわ」
「ああ、瞬殺する」
そう言うと、ロボットから何かが放たれた。
風のような何かが通ると、すぐにその正体がわかった。
「AMSか。そういうロボットだもんね」
魔法の効果を一時的に打ち消す石、“魔封石”を内部に持ち、
一定範囲内の魔法を打ち消す科学システム“AntiMagicSystem”、
通称“AMS”を持つ魔法と化学兵器を使い分けるロボットは、魔道士にとって相手にしたくない相手だった。
機体の前方部では魔法が消される。魔法が使えなければ魔道士は一気に弱体化する。
普通は魔法に影響しない物を使うが、緊急だったため装備が乏しい。
さらに機体が落ちているという状況が思考を焦らせる。
「なあ、落ちてるから尾翼壊してもいいよな?」
ふと後ろからトウヤの声がした。
「え?何に・・・」
だが何をしたいかすぐに理解した。
「多少は平気よ」
そう答えるとトウヤは尾翼を折り、ロボットに投げつけた。
魔法で作られた物以外であれば“AMS”の影響は受けない。
ロボットは投げられた尾翼を受けるために“AMS”を解除。そして即座に魔法の盾で尾翼を受ける。
その瞬間、トウヤは瞬く間にロボットの前に移動する。
ジジジジッ!
トウヤの拳とロボットの盾が衝突する。
力比べだとトウヤが不利だ。だがトウヤは握っていた拳を開いた。
そして即座に拳を握り直すと距離をとった。
ロボットは何かに吸い込まれるように潰れていく。
「なるほど、爆縮ならどんなに堅くても平気ね」
「そういうこと」
爆縮が消えると、コックピットを確認した。
血まみれでピクリとも動かない人が二人。案の定の結果だった。
「さあ、不時着させるわよ」
即座に頭を切り替え、今度は乗客の救助に移る。
「どう?飛ばせる?」
「もって数秒だな。あとその後動けなくなると思う」
トウヤの飛行魔法“駆”は触れていれば一緒に空間を切り取り、動かして飛ばすことができる。
しかし大きくなればなるほど魔力の消耗は激しい。一人なら未だしも、数百人相当となると長時間は動かせない。
となると着地の衝撃を和らげることに使う方が理想的だろう。
「緊急!緊急!」
突然通信から大声が聞こえた。
「このままでは山に衝突!急いで回避を、みんな逃げて!」
その連絡を受け前方を確認すると山が見えてきた。
「もうこんなに落ちていたのか!仕方ない、トウヤ!飛ばして!」
「いや、山の方にご退場を願いましょうか」
そうトウヤは言うと山を指差し構えた。
「何を!?」
「リーシャ!リンシェン!前には絶対来るなよ」
「え!?まさか!?」
「“出でよ、疾風の翼!天より降り注ぐ矢羽と成れ!”」
そう唱えると魔方陣が翼の様に広がっていく。
「ちょ!?待って!」
「“フレース・ヴェルグ”!!」
「おばかぁぁぁぁぁ!!」
ポーラの制止を無視してトウヤは砲撃を放つ。
鳥状のように放たれた砲撃は山に突き刺さり、奥へ進んで行く。
そして爆発と同時に山頂部分を吹き飛ばした。
これで衝突する部分は無くなった。
のだが。
山頂の大きな塊が機体の上に落ちてくる。
「くっ!」
一か八か自分の砲撃で破壊するか?と考えていると、トウヤは手をあげ拳を作る。
すると何かに吸い込まれるように、上空へ引き上げられた。
特大の爆縮だ。
トウヤは山頂を破壊し、その残骸を爆縮で始末すると同時に、
爆縮の吸引力で機体を無理矢理上に引きあげたのだ。
何と言う力技だ。助かった・・・・のだが。
「あ・ん・た・ねぇ!助かったからいいものの、地形をぶっ壊すなんてタブーなのよ!」
ポーラは力いっぱいにトウヤの頭を掴む。
「いでででで!じゃああのままみんなでお陀仏で良かったのかよ!」
「もっと他にやり方があったでしょって言ってるのよ!」
トウヤはポーラの手を叩きギプアップを示すが、ポーラは力を緩めない。
「まだ当たる!!」
そう叫ぶ通信が入ると即座に前を確認した。
爆縮で上がり切らず、下部が山に衝突する。
危ないからある程度離したことで、吸引が足りなかったのだ!
ダメだ!間に合わない!
誰もがそう思った。
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