幻想冒険譚:科学世界の魔法使い

猫フクロウ

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それは甘く蕩けて灰になる

緊急クエスト2

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「うおおおお!」

一人の少女が叫ぶ声と同時に機体が山に衝突した。

「でりゃあああ!」

そう聞こえると機体は弾むように跳ね、山を越えた。

「「リーシャ!?」」

声の主を理解すると同時に、彼女がクッション代わりとなって衝撃を吸収し、投げたことがわかった。

「大丈夫か!?」

いくら強化系という高レベルの頑丈さをもつ魔道士でも、
140cm前半の小柄な彼女が、数百トンという機体に衝突されて無事なはずが・・・。

「いって~!さすがにキツイな」

「いや、痛いで済むのかよ!」

あまりのことに冷静にツッコんでしまった。

「リーシャの身体は特別なのよ」

いつか本気でプチッと潰れてしまうのではと心配になったが、
聞いていた通りの頑丈で屈強な身体に驚かされた。

「さあ、このまま地面を滑り降りるわよ」

終わったことはさておき、これからこの機体を無事に止めて乗客を助けることに切り替えた。



機体を破壊する可能性のある岩を破壊し、木々を薙ぎ払い、なんとか滑り降りる。

「あった、これだ!」

コックピット内のスイッチを押すと何とか起動してくれた。

「トウヤ!燃料は止めたから翼をストッパーにするよ!」

翼のエンジンに補給される燃料が漏れて発火する恐れがあったが、運よく動いてくれたようだ。

「ならスポイラーと逆噴射だ!少しでも早く止めるようにしろ!」

ふと視界が開ける。いや、斜面が消えたのだ。

「崖だ!!」

滑り落ちていた斜面が消え、一気に落下する。

落ちる先は・・・・河だ!しかも流れが速い!

(ここで使うしかないか!)

着地のタイミングで全魔力を使って機体を操作して衝撃を吸収するしかない。



「グラビティィィィ!インパクトォォ!!」

身体がフワッと浮く感覚があると、機体は河の流れに合わせて飛んで行った。

「おっまたせにゃ」

この機体を襲撃した飛行物を掃討したリンシェンが現れた。

「おい、止めようって言うのに飛ばしてどうするんだよ」

「あのまま落ちるよりマシにゃ」

「ああ、そうかい」

今までの苦労が水に流された気分だ。

「それに、あれがあるから飛んで正解にゃ」

指を指された方向を確認すると、また道が消えていた。

いや、滝だ!

「は!?ええ!?」

何も出来ずに滝から飛び出る。

「あそこにゃ!あそこで止めるにゃ!」

リンシェンが指す方向には大きな湖が見える。

水上着陸。危険な着陸だが滑り降りるよりはマシだ。

「ポーラ!湖に着陸する。エンジンを止めてグライダーの要領で行くぞ!」

「わかった!」

リンシェンの風で機体を押し出し、ポーラとトウヤで機体を支えながら湖へ向かう。

そして機体は無事に湖に着水したのだった。






「ばかものっ!!」

人助けをしたのに怒られてしまった。

「助けるためとはいえ山を破壊するなど言語道断!」

「地球人ごときがやってくれたな」

「野蛮民族が!」

罵詈雑言が通信から飛ぶ。ポーラがすみませんと謝ってばかりで話にならない。

報告のためにどこかにアクセスしているが、相手がそれなりの高齢の男女の声だけでどんな人かもわからない。

(模擬戦が決まった時に抗議した人たちに声が似ている気がする)

つまりマスターよりも上の存在、局のお偉いさんだろう。言いたいこと言っていて話が進まない。

魔法世界でも面倒な人間がいて、そいつらはここでも面倒なのは変わりないのにはうんざりした。

「ギャーギャー騒ぐな猿どもが」

トウヤの一言に全員が固まる。

「こっちはわめくだけの猿を相手してるほど暇じゃねぇんだ!用がねぇなら消えろ!」

宙に浮かぶ画面を叩き通信を強制終了させる。

「ちょ!?何してんの!!」

「あんなゴミ猿どもの相手してないでさっさと手伝ってくれよ」

「ゴミって・・・一応偉い人達なんだよ?」

「偉かろうが今この場には邪魔なゴミだよ」

「あのねぇ・・・」

大きくため息を吐きながら、ポーラはまた怒られることに胃を痛めるのだった。



救助者は全員局が作ったゲートをくぐり、近くの町に移動する。

死者2名、重傷者なし、救助者205名は墜落事故の救助としては優秀な方だろう。

「じゃあ、またね。何かあったら連絡してくれれば、駆け付けちゃうよ」

満面の笑顔が輝いている。

ファイゼンの笑顔に乗務員、乗客の女性たちは目をハート型にしてるのがよくわかった。

「・・・相変わらずだな」

リーシャがジトッとした目で見ている。

「まぁ、あれだけの惨状で乗客がパニックを起こさなかったのはファイゼンのお陰なんだし。
それよりもリーシャは身体大丈夫なのか?」

「ん?ああ、特に問題ねぇよ。言ったろ?うちの身体は頑丈だって」

「頑丈ってレベルじゃねぇだろ」

トウヤはリーシャの身体を隅々まで見るが、特に怪我らしい怪我はなかった。

どんな身体してんだか。

「あ・・・あの・・」

ふと声をかけられた。

「あんた、確か飛ばされた乗務員さん」

「はい・・・あの、助けていただき、ありがとうございました」

思わぬことを言われた。

「あ・・・いや、そういう仕事で来たんだから気にしなくていいですよ」

「それでも、ありがとうございました」

乗務員は深々と頭を下げると、ゲートをくぐって行った。

「照れてんじゃねぇよ」

「照れてねぇし」

今まで他人を人助けなんてしたことはなかった。

自分のため、自分の大切な人達のためにしか動かなかったトウヤには不思議な気分だった。



プルル、プルル。

メンバー全員に連絡が来る。

「また緊急クエストか。人使い荒いな」

トウヤはうんざりしながら確認する。

「いや、今回は討伐依頼だな」

リーシャが訂正する。

「討伐依頼ってご指名ってことか?」

「ああ、局や個人から名指し、またはチームを指定する場合があるんだ。
ん?ギルド当てなのか?」

「たぶん新設ギルドだからポイントを稼ぐ機会を貰ってるのね。
宰相のエルランさまが、ある程度の融通を利かしてくれているのよ。感謝しないとね」

ポーラも話に加わる。マスターなだけに、そのあたりの裏事情は詳しい。

「場所は・・・うげっ!」

リーシャが顔を引きつらせながら固まった。

「うわ・・・マジか~」

ポーラもどういう場所かわかったようだ。

「なに?二人とも説明してくれる?」

「ああ、トウヤは解らないわね。魔法世界にもいろいろな場所があってね。
このクエストの行先が私たちにとって居づらい環境なのよ」

「地球みたいな感じ?」

「いや、地球の真逆よ」

「真逆?俺がメリオルに行くようなものだろ?何ともなかったが・・・」

「あれこれ言うより、行ってみた方がいいわね」

そうして一行は“ボロニア”に行くことになった。
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