幻想冒険譚:科学世界の魔法使い

猫フクロウ

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風塵遮視-サンドアウト-

ワールドグランプリ開幕

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「さあ!今年も迎えたぞ、ストームギア・ワールドグランプリ!!
今年のステージは“サンドーラ”だ!!!」

街中の大型画面に一斉にお知らせの映像が流れだした。

けたたましい音だがアナウンサーの声は聞き取りやすい。

「サンドーラは暑い風と砂に囲まれた砂漠地域だが、
遠方から流れるメルン河の恵に富んだ熱のオアシス!
観光地としても有名でサンドーラの砂風呂を知ってる人は多いはず。
今回はその熱のオアシスでレースを行うことになった!!」

アナウンサーの声は熱が入ると同時に声も大きくなる。

「レースで使われるのはご存知、“ストームギア”!
魔力を風に変換し、空中を滑るように走る魔道士たちのデバイスの一つだ!
次はこのストームギアを紹介しよう!」

映像にはストームギアが映し出される。

「まずは基本、ボードタイプ。
板状のギアにライダーが立って乗るタイプで、最も多く普及しているものだ!
ダッシュ、スピード、コントロールとバラエティに富んだ性能があり、レースでも主役となるギアだ!
また立ち乗りなので他者への妨害がしやすいのも特徴。
ここから放たれる攻撃をうまく避け、逆に痛い一撃をお見舞いしてやれ!!」

どうやら妨害ありの物騒なレースのようだ。

「そして次にスケートタイプ。
身軽で両足に身に着けるのが特徴で操作性、加速性に富んだストームギアだ!
スケートタイプは何と言っても“魅せるレース”であること。
ボードタイプよりスピードが落ちるが、タービュランス、バニッシュで見せる華麗なトリック、
そしてその後の凄まじい加速性能で駆け抜ける姿は圧巻!
持ち前の操作性はボードタイプに無いカーブの鋭さを見せるぞ!!
こちらも立ち乗りなので妨害もしやすく避けやすいぞ!!!」

両足それぞれで動かせるお陰で操作性が上がっているようだった。

「そして最後に紹介するのはモービルタイプ。
大型でどっしりと座り操作するこのタイプは輸送に特化したストームギアだ!
選手の送迎、パーツ、タンクの輸送などのレースの陰の立役者であるこのタイプだが、
大型ギアでしか実現出来ない最高スピードと妨害をものともしない堅牢さが魅力。
中には砲撃を装備したギアも存在するほど自由度は高い!まさに動く要塞だ!!!」

こちらはいわゆるバイクや車みたいなもので、ある程度の重さに耐えられるようだ。

あ、あれもモービルタイプか?

少し離れたところで大型バスのようなものが空中を進んでいる。

「今年も例年のように優勝賞金は五百万ユピー!
参加方法も同じく協会に申請後に予選で勝ち上がり本レースへ進んでもらう!!」

ユピーは魔法世界で普及しているお金の単位。五百万は一般社会人が得られる年収より高いようだ。

「参加条件はライダーであること、ギアは自由!これだけだ!みんな奮って参加してくれ!!」

そうアナウンサーが言うとお知らせは終了した。

「ふーん、ストームギアか。・・・魔道士のデバイスなら使う機会あるかな?」

トウヤは独り言を言っている。わくわくするほど興味が湧いたのは事実だ。

「おまたせ」

建物から幾つかの紙袋を持ったポーラとティアが出てきた。

「いやー。さすが機械都市だよねぇ。奇怪な物が多いわ」

「もう終わったの?」

「まーだ」

そう言うと紙袋を転送した。

女子の買い物は魔法世界でも長いようだ。

「次はあそこね」

ポーラが指を指した先には“StormGear”と書かれた看板があった。

「ストームギア?もしかして今度大会やるっていう・・・」

「あれ?知ってるの?」

「あ・・・ああ。さっきお知らせが流れてたし」

「なら話が早いわね」

「ね。私たちも出るよ、あの大会に」

「まじ!?」

「さすがのトウヤ君も興味津々ね。かぁわい!」

「男に可愛いは止めなさい」

トウヤは頬を突くティアの指を掴んで止めた。

「トウヤは参加出来るかわからないわよ?」

「は!?何で!?」

「だって、乗れるかどうかわからないじゃん」

「あ・・・・」

「そうだね。普通の魔道士でも数ヶ月かかるのに、ひと月で乗るなんて難しいわよね」

「うそ・・・・」

あまりにも衝撃的な物言いに、両手を地に付けて落ち込んだ。

「た・・楽しみだったのね」

「よしよし、お姉さんが慰めてあげる」

そう言うとティアはトウヤを抱き寄せた。

「いらん!」

「ぶふぉあ!・・・・よ・・容赦ないわね」

なかば八つ当たりのようにティアへのボディブローが決まった。

力尽きるようにうずくまるティア。

「ティア?行くよ?」

もう当たり前になったこの光景にポーラのセリフは冷たかった。

「地球で似た乗り物に乗ったことがあるなら簡単かもしれないわね」

「似た乗り物?」

紹介されたギアはどれも冬のスポーツのものに近かった。

あいにくトウヤは都市部出身で雪が降ると困る地域で暮らしていた。

「チッ、雪国で遊んどくんだったな」

「まあ今回はファイゼンと一緒にモービルで支援ね」

「つ・・・つまらなさそう・・・」

「あ・・・あんたねぇ、支援も立派な仕事よ?」

「ゲームはプレイしてなんぼでしょ」

「ゲームって・・・あまく見てると痛い目見るわよ」

「そんなに危険なの?」

「スピードもあるし、妨害攻撃もあるからね。高速で動く戦場よ」

超火力を誇るトウヤにはもってこいの戦場のように聞こえる。

「・・・まぁ練習だけはしたいな」

「だから行くのよ?仕事でも使う機会が出るかもしれないし」

「そうなの?」

「クエストでは飛行禁止区域って言う飛行魔法が使えないとこに行く場合があるわ。
だからそこでの移動手段はストームギアを使って移動するのよ」

「飛行禁止なのに空飛ぶ板を使うんだな」

「ストームギアは宙を走るのよ」

「でも高さを選ばない辺りはトウヤ君の言う通りよね。やり方によっては空も飛べるし」

「まぁ・・・・空を飛ぶ魔法を道具に任せることで、魔法の自由度が上がったり、
他の空飛ぶ生物との衝突を避けたりと、いろいろ理由があるのよ。
あ、トウヤの風打ちで考えないでね。空を飛ぶ魔法は私達の言う風に乗る魔法のことよ」

あの風が吹けば飛ぶような魔法に頼るのであれば、乗り物に任せた方が安全と言うことだろう。

「それにあの飛行魔法って結構難しいから、新人魔道士でも空中戦をこなせるようにするためでもあるわね」

「ああ・・・」

トウヤにも練習した覚えがあった。確か強さを間違えると簡単に吹っ飛んでしまうんだよな。

「とりあえず、今日買うのは練習用ね。あと私達のカスタムパーツもいくつか欲しいわね」

「賛成!新しいデバイスに合わせてバランス系統上げたかったんだよね」

「私は加速だな。斬撃系のデバイスを貰ったし」

買い物の内容で話しが盛り上がるポーラとティア。

(・・・長くなりそう・・・ってか俺必要か?)

荷物は転送しているので無い。つまり荷物持ちで連れられているわけではない。

練習用も複数人で共有するから俺がいる必要はない。

(まあ・・・いいか)

この機械都市マギアアークに来れたこと、ストームギアと言う面白そうなものに出会えたことで良しとした。
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