幻想冒険譚:科学世界の魔法使い

猫フクロウ

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風塵遮視-サンドアウト-

ストームギア:基本編

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ストームギアはエアーと呼ばれる風エネルギーを蓄え、走行している。

基本は魔道士の魔力を直接変換して走るが、それ以外の操作にはエアーを使っている。

「例えばバニッシュ、いわゆるジャンプ台ね。
ここでエアーを使って華麗なトリックを見せるためにも使われるわね」

ストームギアの基本知識が無いトウヤとリリスはギルド内でポーラに教わっていた。

「トリック?」

「そ、トリック。バニッシュで飛び出すと同時に体を回転させ回るのよ」

「何でそんなことを?」

「飛んだ飛距離に応じてエアーが溜まるのよ。飛距離と言ってもギアの動いた距離だけどね。
となると真っ直ぐ飛ぶより、回った方がギアの動線を稼げるでしょ?」

「あ・・・ああ」

やりたいことは理解した。しかしなぜそんなことを?と言う疑問がトウヤには残った。

それはリリスも同じようで、今度はリリスが問いかける。

「そもそも魔力で走るのに何でエアーが必要なの?」

「一時的な加速、バニッシュでの跳躍ちょうやく補助、妨害の突風など、使い道はギアによって変わるわ」

「そんなの送る魔力を増やせばいいだけじゃないの?」

「魔力を変換出来るからって多く送っても意味ないわ。変換出来る量は決まっているのよ」

ここでトウヤは理解した。

「ああ。だからと言って増やすとギアが大きくなりすぎるんだな。モービルタイプがいい例かな?」

大量に燃料があっても処理機が一度に処理出来るものは限られている。

モービルは物理的にそれを増やした形になるのだろう。

「その通りよ。それにスピードが上がり過ぎると曲がることが出来なくなるわ。
そのために一気に減速してまた加速してだと、それこそ魔力の無駄よ」

「でも曲がるために減速するのはどれも一緒じゃない?」

「そこで重要になってくるのがタービュランスよ」

出てくる用語が多すぎて面倒に思えてきた。

「タービュランスはギアをある程度の距離と速さで走らせれば自然と発生するもので、気流の槍とも言われてるわ。
そのタービュランスが発生すると壁に包まれたような空間が発生・・・まあギアの構造上、空間はU字なんだけどね。
そのタービュランスに乗ると減速を抑えながら曲がることが出来るようになるの。
壁面が道になって、坂道を登るようなイメージが最も近いと言われているわ」

一本のテープを道に沿って張ると内側がたるむが、壁ならたるまずに張れる。

それと同じで壁を道のように走ればスピードを落とさずに曲がれると言うことだ。

「もちろん、減速にはエアーを使うから気を付けてね」

「ん?モービルはタービュランスに乗れるの?」

「・・・あんなデカいもの乗れないわよ」

「ですよねぇ~」

「レース用モービルはそれ用のものを積んているわ。あっちは大型で輸送向きだからこその性能が備わっているわ」

それはそれで興味が湧いた。



リリスはあまり興味が無かった。

そもそも今までスポーツと言う運動をした経験が無い。また娯楽と言う物も知らない。

でも・・・

「ここまでで何か気になることはある?」

スッと控えめに手を挙げたのはリリスだった。

「わたしは・・・ちょっと難しいと思う」

「ええ、今は難しくていいわ。レースも強制はしないし。
でも扱いだけは覚えてもらうわよ?これが必要なクエストもあるんだから」

「・・・・ぜったい?」

リリスは少し不安そうな顔の上目づかいでポーラを見る。

「うっ・・・そんな目で見ないでよ。不安だったらモービルだけでもいいから」

同じ女性であるポーラも可愛いと思えるような仕草はどこで覚えたのやら。

いや、人によっては“あざとい”とか“ぶりっ子”とかで嫌悪する人もいる。気をつけさせねば。

「リリスはこういうの苦手か?」

「いや・・・苦手と言うか・・・怖いと思う」

「ああ。じゃあ、しゃーないって感じか。せっかく一緒に練習出来ると思ったんだけどな」

「練習くらいならいいよ。どっちにしてもクエストで必要になるみたいだし」

「お、ならさっそくやろうぜ」

「え!?・・うん」

嫌そうだったリリスがトウヤの一言で参加することになった。

「ちょっと!まだ講義終わってないんだけど?」

「習うより慣れろだよ。細かいことはある程度乗れたらにして」

確かに座学だけでは参ってしまう。

「しょうがないわね。ちょっとだけよ?」

ストームギアの講習は実技へと変わる。



「二人乗りもあるんだな」

「練習用限定だけどね。こうやってバランス感覚を身に着けるのよ」

「それは俺が乗る訳にはいかないわな」

「そうよ。練習者同士が乗っても怪我するだけよ」

練習はリリスが思ってたものとは違った。むしろ冷静に考えたら、これが最良だ。

リリスは触ったことも無いのだからポーラがマンツーマンで指導するのは当たり前で、
トウヤとリリスが手を取り合いながら練習するのはほぼ無い。

「リリスももっと慣れたら、俺と一緒に走れるな」

「こらこら、急かさないの」

「じゃ、俺少しだけ走ってくるよ」

「飛行魔法使うんじゃないわよ?」

「わかってるって」

トウヤは経験がある分、初心者コースは既に一人で周れるほどだった。

「元々バランス感覚がいいのね。もう初心者クリアと見ていいわね」

リリスにとって少しつまらない状況になってきた。

「リリスもバランス感覚はいい方よ。もう数回で一人で出来るかもしれないわね」

「うん・・・」

あまり嬉しくなさそうだ。

「・・・ちょっと酷いって思うようなこと言うわよ?」

「なに?」

「トウヤはあんまり興味ないと思うよ」

「は?」

「もっと一緒にいたいって思っているんでしょうけど、あの子は一人を好むタイプよ」

「・・・」

「今だって一人でどっか行っちゃうでしょ?」

「・・・・・」

「でも付いて来る人は拒まないわ。一緒にいたいなら一生懸命付いて行くことね」

「・・・あの人も乗れるのかな?」

「あの人?」

「金髪バカ」

「へ?誰のこと?」

「あの人よ。バカバカ言ってる人」

「・・・もしかしてルーのこと?」

「名前がわからない」

「・・・・ルーも魔道士だから乗れるわよ。ってか名前覚えてあげて」

「どうでもいい」

リリスは人を興味のある人ない人とわけ、興味のある人しか覚えていない。

そのためリリスはトウヤ、ポーラ、リーシャ、リンシェン、
そしてソニアの五人しか名前を覚えようとしていない。

「せっかく人のこと勉強したのに興味持とうよ」

「得になる人ならね」

「・・・・はぁ・・・・」

リリスは何だかんだあるが、やはり子供なのは間違いない。

「頼むから喧嘩だけはしないでよ」

「・・・がんばる」

興味のある人の言葉なら素直に従う。

やはり一癖もある性格なようだ。
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