幻想冒険譚:科学世界の魔法使い

猫フクロウ

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風塵遮視-サンドアウト-

顔合わせ

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「お、じゃま、しまーす」

ギルド内に初めてのお客さんが訪れた。

と言っても顔馴染みのティアとセレスである。

そして見知らぬ一人も一緒だった。

「アーニャ、毎度毎度ありがとう」

「いいわよ。あたしもこれ楽しみにしてるんだから」

どうやらポーラ達は顔馴染みのようだ。

「さ、いつも通り座って」

ポーラに促され三人は席に着く。

「ふーん、この子らが噂の新人たち?」

「そうよ、右からリンシェン、トウヤ、リリスよ」

「ふーん」

値踏みをするように三人をジロジロ見るアーニャ。その目はどこか冷たさがある。

「ま、変なのが出てないから大丈夫だと思うけど、足を引っ張らないでよね」

「うにゃ!どこにょ誰かもわからにゃいやつに言われたくにゃいにゃ!」

珍しくリンシェンが反論し、不快感を示した。もちろんトウヤもリリスも同じ気持ちである。

「お前よぉ、一応先輩なんだからかどが立つような言い方は止めろよ」

リーシャが軽く小突いてアーニャを注意したが、本人は無視していた。

「一応三人にも紹介しとくと、彼女はアーニャ・アインセルフ。
普段はまじない師としてクエストをこなしているパースレールの一員で、
このストームギアの大会の時期だけ私たちのチームを手伝ってもらっているのよ」

ポーラは軽くため息を吐きながら説明する。

まじない師?」

「そ、物に対する付加魔法の一種よ。作物の豊作を願ったり、旅路の安全を祈る魔法よ」

(うわ、詐欺じゃん)

トウヤは思わず声に出しそうになったが、何とか我慢できた。

「それだけじゃないぞ。災難から身を守る身代わり人形を作ったり近い未来の可能性を導くんだぜ?」

「それって未来予知みたいなもの?」

「そうね。起こり得る未来の一つを導き出す崇高な魔法よ」

自身の魔法を紹介され、アーニャは得意げに自慢していた。

「そんにゃの詐欺にゃ。誰でも起こるようなことを言ってるだけで、にゃんもにゃらにゃいにゃ」

黙っていればいいものを、リンシェンは言ってしまう。

まあ論理と証拠で考える科学人にとって、とても信じられない魔法であることはトウヤにも理解出来た。

「だから科学世界の人間は嫌いなのよ!何でも証拠だ何だ言って嘘呼ばわりして!」

「ほんとにょごにょご!?」

「はいストップ!話が進まないからあとでな」

リンシェンの口を無理矢理押えて止めたのはトウヤだった。

ポーラはトウヤに手で謝ると話を進めた。

「例年通りファイゼンとアーニャでモービルを担当して他はライダーとして走るわ。
そして今回はリンシェンがライダーに、トウヤとリリスがモービルに加わるわ」

「だとするとあたしは走らないかもしれないわね」

「ええ。リンシェンがいるからトウヤと一緒に補欠で済みそうね」

「トウヤも!?走れるのか?」

意外な人物が入っていることにファイゼンは驚く。

「・・・一応、普通に走るくらいは出来てるから、本当に最悪の場合ね」

「まあ飛行魔法が使えるし、私を苦しめたくらいだ。すぐにでもレースが出来るんじゃないかな?」

意外と高く評価していたのは、セレスだった。

「・・・あんたを苦しめたって本当なの?」

アーニャは戦闘にあまり関心が無いため、模擬戦の事を知らないようだ。

「私が舐めてたからというのもあるが、かなり苦しめられたのは本当だ」

「ふーん」

また値踏みするようなアーニャの目は正直言って不快だったが、セレスの言葉は嬉しかった。



「ところで、詳しいルールをまだ聞いていないんだけど」

トウヤは改めて詳細を聞いた。

「詳しいルールって言ってもそんなに無いわ。モービルを含めた最大三機までしか走れない事。
妨害はレースに使われる機械を通した魔法であることくらいかしら?」

「当然、怪我は自己責任だし、ギアもイレギュレーション通りなら何でもありだな」

「意外とザックリしたルールなんだな」

「そうだな。基本はレースなんだからそんなもんだし、テクニックは自分で調べろってのは普通だろ?」

「ああ。まあ、そうか」

「なんだか釈然としない感じね?」

「いや、今までこのメンバーでやってたのに俺たち必要かなって思って」

トウヤの指摘通り、今まで六人で十分運用出来ていた。そこに三人加わっても利点が無いように感じる。

「必要よ。いざという時の保険になるし、走れるメンバーが多いと作戦だって選べるわよ?」

「今回は初めてと言うことで大会の感じやレースについて知ってもらうのがメインだけど、
次は走ってっもらうつもりだ。その為に知っとくのも良いと思うぜ?」

「そ・れ・に、居てもらうだけでも十分役に立つわよ?レース中疲れを癒してもらうことも出来るし」

最後のティアの話だけすごく個人的な理由のように感じた。

「・・・ティア・・・良くない印がでてるから止めた方がいいわよ」

「え!?やめてよアーニャ。そんなの消して!」

「・・・むしろその子から出てるわ」

「ええ~!トウヤく~ん、仲良くしよ~よ」

「それをやめろ!」

抱き寄せようとするティアを必死で離すトウヤ。

(鉄壁のティアもショタの餌でイチコロなのね)

この二人のチームワークに不安が残った。



「うにゅ~、にゃんかイヤだにゃ~」

「あのアーニャってやつが?」

「うにゃ。にゃんかイヤにゃやつにゃ」

「そんなん胡散臭いだけだろ?」

「でもおいら達を見る目が不愉快にゃ」

「ああ、それは同感だな」

「そうにゃ!おいらあれと仲良く出来ないにゃ!」

人間関係に興味が無さそうなリンシェンが熱く語っていた。

「よくもまぁ初対面のやつにを嫌いになれるな」

「生理的に嫌にゃ!」

リンシェンに生理的とかあるんだな。

「ん!?んー・・・にゅっふっふっふっふっ!いいこと思いついたにゃ」

「なんかいい悪戯を思いついた顔だな」

「にゅっふっ!にゃあにゃあ、おいら達でチーム作らないか?」

「は!?リンシェンはともかく俺やリリスは初心者だぞ?」

「問題にゃい!おみゃ~仲良しにゃ二人がいるだろ?」

「・・・ミナとルーか?」

「うにゃ。そいつらを引き入れて、ついでに仲間を引き入れてもらうにゃ!」

「人任せかよ!」

「おいら達はまだ新人だから知り合いがいにゃいんだよ~。だから人頼みにゃ」

「だからって・・・」

この甘々な計画に乗る気にはなれなかった。

「わたしも・・・そっちがいい!」

ずっと黙って静観していたリリスが突如リンシェンの案に賛同した。

「は!?リリスまで何言ってんの?」

「わたしもあれと一緒にいたくない」

「にゃああ!リリスと初めて気が合ったにゃ!」

思いがけない賛同者に目を潤ませながら嬉しそうに手を握るリンシェン。

対するリリスは無関心のような顔をしながら、目線は完全にこちらを見ていた。

半分本心、半分打算の顔に見えた。

(さすがにリリスは考えが読めないな)

不快なのは本心だろう。でも立場的に関わる機会は少ないので毛嫌いする程でも無い。

(何を考えているやら)

面倒事にならなければいい。

「リンシェン、頼んでも俺たちが戦力にならないから、嫌がるかもしれないよ?」

「そこは報酬でなんとかするにゃ」

「報酬って・・・」

ルーはともかくミナが釣れるとは思えない。

さらに彼女たちの知り合いとなると貴族だろうから、半端な報酬で釣れるとも思えない。

ましてやこんな大会に参加したがるか?

と思いつつもリンシェンの案の方が面白そうに思えてる自分には困りものだ。

ダメ元で頼んでみるか。
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