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気を失ったパルヴィをソファーに移動させ、ヴォルフラムは着衣を剥ぎ取った。
「水精の血を引いているのなら、体のどこかに水精の刻印があるはずなんだが」
ヴォルフラムは痩せすぎているパルヴィの体を調べるも、どこにも刻印は見つけられなかった。
「このまま返すか。それとも本城の魔女たちにみせるか」
ゲルティ王の葬儀が行われるヴェーラ本城には魔女が多数雇われている。
未来視や過去観などの力を持つ魔女たちは、水精などにも詳しいとされていた。
執事を呼び立て後のことを任せ、ヴォルフラムは自分にか立ち入ることのできない部屋へと入り、過去に狩り剥製にした水精の体を丹念に確認する。
「背骨のあたりにあるはずなんだがな」
◇◇◇◇◇
気付いたパルヴィの視界に飛び込んできたのは、イリアの泣き顔であった。
「どうしたの……」
「パルヴィさま!」
抱きついてきたイリアはしゃくり上げるばかりで、なぜ泣いているのかパルヴィには解らないまま、再びヴォルフラムに呼び出された。
付いていきたいと主張したイリアだが、あっさりと引き離され独りでヴォルフラムと対面することになった。
「お 前がこの国にきた理由の借金だが無理だ。新しい王はお前を買ってよろこぶような男じゃない。まともな判断力を持っているから担保もなしに金を貸すこともな い。さらに面白くないことに、愛妻家で妃一人で充分だと言い張っているから愛妾にもなれない。なによりヴェーラの王だ、水精混じと言われているお前を愛妾 にすることはない」
ヴェーラは「異形狩り」の一族。特別な力など持っていなかった彼らは特別な力を持つ異形たちを殺し領土を広げていった。
ヴェーラたちに狩られた異形たちは西へと逃れ、そこで彼らの国を作った。それがベステーリ。
現在ヴェーラは混血には寛容だが、ベステーリは容赦しない。
「それは困ります。もう他に道はないのですから」
俯いて言う姿が痛々しいパルヴィの細い首を眺めながらヴォルフラムは笑った。さきほどパルヴィが恐怖を感じたものと同じ笑いで。
「直訴するくらいの機会は与えてやろう」
ヴォルフラムの言葉の裏に気付かなかったパルヴィの表情に僅かながら生気が宿る。
「本当ですか! 公爵閣下」
―― わかりやすい性格だな
「そのくらいはしてやろう。何せ呼び寄せたのは前王ゲルディだから、その程度の責任は取る。それで、供の者は故郷に返したらどうだ?」
「えっ?」
「こ こからなら、報告しに戻るのも楽かと思ってな。お前の国にもゲルティ王が死んだ事は伝わっているだろう。お前の父親も気を揉んでいるだろうし、無駄な旅費 は避けたいんだろう? 供はここから国に戻って、報告の後この城に来たらいい。その際はこの城を宿代わりに使って構わない。お前の身の安全は保障する、道 中に限ってだがね」
「供の者達に話してみます」
「ま、どうしても付いて来るってなら止めはしない」
ヴォルフラムの前を辞したパルヴィは、あてがわれている城の一室へと戻った。城はパルヴィの住んでいた王城より広く豪奢であった。
パルヴィは先程の話の内容を告げる。
「どう思う?」
パルヴィはここまで一緒に来てくれた者たちの意見をきく。
供たちは顔を見合わせて、一人が口をひらいた。
「グリューネヴェラー公爵は、いまなお魔人《ヴェーラ》と呼ばれている人物です。王女も聞いたことはおありでしょう」
特別な力を持っていた者たちを狩り幾つもの種族を滅亡させた、力を持たなかった者たち。彼らは千の異形を狩った者の勇気と強さ、功績をたたえてその人物を魔人と呼ぶようになった。
いまは狩る異形が減少したので、魔人と呼ばれる者は数少ない。
「ああ……公爵がそうなのですか。もっと年を取った人物だと思っていたのですが……でも魔人と呼ばれる程の人でしたら、混じりは興味の範囲ではないでしょう」
供は三日ヴォルフラムの城に滞在し、イリアをのぞいて国へ戻っていった。
イリアだけは頑なにパルヴィのそばに残ると言い張った、理由を聞いても答えてくれないイリアに困り果てていたところ、返事を聞くために足を運んだヴォルフラム自身が答えを言ってしまった。
「俺がお前を裸にして刻印を捜したからだろう」
聞かされた言葉に驚き、自分の体を抱き締めながら床に膝から落ちたパルヴィに、ヴォルフラムは答えを求める。
引き返すわけにはいかないパルヴィは口を開けば、声を上げて泣いてしまいそうだったので、唇を噛み締めて大きく頷いた。
「よし。召使いも付いてくるのかな?」
「水精の血を引いているのなら、体のどこかに水精の刻印があるはずなんだが」
ヴォルフラムは痩せすぎているパルヴィの体を調べるも、どこにも刻印は見つけられなかった。
「このまま返すか。それとも本城の魔女たちにみせるか」
ゲルティ王の葬儀が行われるヴェーラ本城には魔女が多数雇われている。
未来視や過去観などの力を持つ魔女たちは、水精などにも詳しいとされていた。
執事を呼び立て後のことを任せ、ヴォルフラムは自分にか立ち入ることのできない部屋へと入り、過去に狩り剥製にした水精の体を丹念に確認する。
「背骨のあたりにあるはずなんだがな」
◇◇◇◇◇
気付いたパルヴィの視界に飛び込んできたのは、イリアの泣き顔であった。
「どうしたの……」
「パルヴィさま!」
抱きついてきたイリアはしゃくり上げるばかりで、なぜ泣いているのかパルヴィには解らないまま、再びヴォルフラムに呼び出された。
付いていきたいと主張したイリアだが、あっさりと引き離され独りでヴォルフラムと対面することになった。
「お 前がこの国にきた理由の借金だが無理だ。新しい王はお前を買ってよろこぶような男じゃない。まともな判断力を持っているから担保もなしに金を貸すこともな い。さらに面白くないことに、愛妻家で妃一人で充分だと言い張っているから愛妾にもなれない。なによりヴェーラの王だ、水精混じと言われているお前を愛妾 にすることはない」
ヴェーラは「異形狩り」の一族。特別な力など持っていなかった彼らは特別な力を持つ異形たちを殺し領土を広げていった。
ヴェーラたちに狩られた異形たちは西へと逃れ、そこで彼らの国を作った。それがベステーリ。
現在ヴェーラは混血には寛容だが、ベステーリは容赦しない。
「それは困ります。もう他に道はないのですから」
俯いて言う姿が痛々しいパルヴィの細い首を眺めながらヴォルフラムは笑った。さきほどパルヴィが恐怖を感じたものと同じ笑いで。
「直訴するくらいの機会は与えてやろう」
ヴォルフラムの言葉の裏に気付かなかったパルヴィの表情に僅かながら生気が宿る。
「本当ですか! 公爵閣下」
―― わかりやすい性格だな
「そのくらいはしてやろう。何せ呼び寄せたのは前王ゲルディだから、その程度の責任は取る。それで、供の者は故郷に返したらどうだ?」
「えっ?」
「こ こからなら、報告しに戻るのも楽かと思ってな。お前の国にもゲルティ王が死んだ事は伝わっているだろう。お前の父親も気を揉んでいるだろうし、無駄な旅費 は避けたいんだろう? 供はここから国に戻って、報告の後この城に来たらいい。その際はこの城を宿代わりに使って構わない。お前の身の安全は保障する、道 中に限ってだがね」
「供の者達に話してみます」
「ま、どうしても付いて来るってなら止めはしない」
ヴォルフラムの前を辞したパルヴィは、あてがわれている城の一室へと戻った。城はパルヴィの住んでいた王城より広く豪奢であった。
パルヴィは先程の話の内容を告げる。
「どう思う?」
パルヴィはここまで一緒に来てくれた者たちの意見をきく。
供たちは顔を見合わせて、一人が口をひらいた。
「グリューネヴェラー公爵は、いまなお魔人《ヴェーラ》と呼ばれている人物です。王女も聞いたことはおありでしょう」
特別な力を持っていた者たちを狩り幾つもの種族を滅亡させた、力を持たなかった者たち。彼らは千の異形を狩った者の勇気と強さ、功績をたたえてその人物を魔人と呼ぶようになった。
いまは狩る異形が減少したので、魔人と呼ばれる者は数少ない。
「ああ……公爵がそうなのですか。もっと年を取った人物だと思っていたのですが……でも魔人と呼ばれる程の人でしたら、混じりは興味の範囲ではないでしょう」
供は三日ヴォルフラムの城に滞在し、イリアをのぞいて国へ戻っていった。
イリアだけは頑なにパルヴィのそばに残ると言い張った、理由を聞いても答えてくれないイリアに困り果てていたところ、返事を聞くために足を運んだヴォルフラム自身が答えを言ってしまった。
「俺がお前を裸にして刻印を捜したからだろう」
聞かされた言葉に驚き、自分の体を抱き締めながら床に膝から落ちたパルヴィに、ヴォルフラムは答えを求める。
引き返すわけにはいかないパルヴィは口を開けば、声を上げて泣いてしまいそうだったので、唇を噛み締めて大きく頷いた。
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