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街に入り城の全容が見えなくなる程近付いたところで、ヴォルフラムはパルヴィを呼び寄せた。
「パルヴィ」
「はい、公爵閣下」
「ここに座れ」
「……はい」
拒否できる立場にないパルヴィは、言われた通りにベッドに腰を下ろす。
「そろそろ到着だ」
「はい」
「俺はお前を新王ジークベルトに会わせてやると約束したんだが、その約束を果たすためにこれから少しばかり……」
言いながらヴォルフラムはパルヴィの背中の止め紐を解く。
「公爵閣下?」
「変なことはするが、酷いことはしない。ちょっと噛みつくくらいだ」
上半身の着衣を乱してからヴォルフラムはパルヴィの脇腹に噛みついた。
◇◇◇◇◇
「姫さま! 姫さま!」
到着しても馬車から降りてこないパルヴィを心配して、イリアが馬車へと向かおうとするが、テレジアが兵士たちに止めるよう指示を出す。
「なにをしている」
兵士たちの手から逃れようとしていたイリアは、厳しそうな声に振り返る。そこに立っていたのは眉目秀麗な青年。
イリアは美しさ以上に、迫力に気圧されて棒立ちになった。そのイリアを見て、
「お前、どこの者だ?」
「あ、あのビヨルクから来ました。姫さまが出てこなっ……」
イリアが言い終えるのを待たずに青年は兵士のトマホークを奪い、馬車に叩き付ける。轟音と共にばっくりと割れた馬車の中には、洋服が乱れ鉱物の混じった涙を流しているパルヴィと、気にせずに話しかけるヴォルフラム。
「ゲルティが亡くなったこと、お悔やみ申し上げます。ジークベルト陛下」
「ヴォルフラム!」
パルヴィの裂けた洋服の隙間からのぞいている脇腹には噛まれた痕。
薬師のテレジアが壊れた馬車からカーテンを引きちぎりパルヴィに被せ、王城の内部を知っている彼女の案内で、パルヴィとイリアは部屋へと急いだ。
「案内します」
足音が遠ざかるのを待つことなく、ジークベルトは怒鳴りつける。
「ヴォルフラム!」
「あんまり怒りなさんな」
こめかみに青筋を浮かせて怒るジークベルトの頭を昔のように撫でる。
「誰が怒らせているんだ? 誰が」
ジークベルトはその手を払いのけた。
子どもの頃からジークベルトはヴォルフラムが嫌いだった。なにが嫌いという理由があるのではなく、生理的に嫌いなのだ。
「俺でしょうね。それであの娘がビヨルクから来た水精の落とし子と噂されている王女なんだが、会ってやってくれるよな。義理の父親の失態を詫びてくれ」
だがヴォルフラムの娘ハイデマリーに一目惚れして、三日ほど悩んで――君の父親がヴォルフラムなのは君の罪じゃない――そう告げて、プロポーズをした。
この時ジークベルト五歳、ハイデマリー四歳。
面白みのない男は、面白みを求めず誠実という名のしつこさで押し続け、ハイデマリーはうっとうしさに負け、十四歳の時にプロポーズを受け入れた。
ハイデマリーの五歳年上の兄、テオバルトの言葉も大きかった。
―― 親父がヴォルフラムって時点で、結婚相手はジークベルトしかいないも同然だ。他の男は御免被るだろうよ。親父だぞ? 親父。ついでに婆さんだって…… ――
ヴェーラでもっとも美しい少女だった、そして美しい女であり続けるハイデマリーだが、ジークベルト以外の男に言い寄られたことは一度もない。
その理由は兄の告げた二つの他にもう一つ。ハイデマリー自身が魔人であることが上げられる。「強すぎ美し過ぎたハイデマリー」それが彼女に付けられた呼び名でもある。
「……あなた、それが目的で」
彼女を愛したがゆえに、もっとも気性の合わない男を岳父と呼ぶ立場になったジークベルトは”また策に嵌った”とばかりに肩を落とす。
「大丈夫、なにもしてない。本人に言ってからやった。許可はもらってないが」
「許可がなかったら意味ないとおもうのです」
「見解の違いじゃないか。俺はちょっとばかり出かけてくるから、あとは任せた」
「どこに行くつもりですか! あなたも隣席し、あの娘に謝罪しなさい! ヴォルフラム」
「俺がいたら怖がると思うんだよね。だから席外させてもらうよ。ちなみに行き先はイズベルガ邸。お袋の手紙届けてくる。お前さんが国王になったことに関する祝辞……じゃないかね。じゃあな」
ヴォルフラムの背中が見える間、意味不明な叫びを上げ続け咳き込んだジークベルト。咳が止んで何事もなかったかのように踵を返して仕事へと戻った。
「パルヴィ」
「はい、公爵閣下」
「ここに座れ」
「……はい」
拒否できる立場にないパルヴィは、言われた通りにベッドに腰を下ろす。
「そろそろ到着だ」
「はい」
「俺はお前を新王ジークベルトに会わせてやると約束したんだが、その約束を果たすためにこれから少しばかり……」
言いながらヴォルフラムはパルヴィの背中の止め紐を解く。
「公爵閣下?」
「変なことはするが、酷いことはしない。ちょっと噛みつくくらいだ」
上半身の着衣を乱してからヴォルフラムはパルヴィの脇腹に噛みついた。
◇◇◇◇◇
「姫さま! 姫さま!」
到着しても馬車から降りてこないパルヴィを心配して、イリアが馬車へと向かおうとするが、テレジアが兵士たちに止めるよう指示を出す。
「なにをしている」
兵士たちの手から逃れようとしていたイリアは、厳しそうな声に振り返る。そこに立っていたのは眉目秀麗な青年。
イリアは美しさ以上に、迫力に気圧されて棒立ちになった。そのイリアを見て、
「お前、どこの者だ?」
「あ、あのビヨルクから来ました。姫さまが出てこなっ……」
イリアが言い終えるのを待たずに青年は兵士のトマホークを奪い、馬車に叩き付ける。轟音と共にばっくりと割れた馬車の中には、洋服が乱れ鉱物の混じった涙を流しているパルヴィと、気にせずに話しかけるヴォルフラム。
「ゲルティが亡くなったこと、お悔やみ申し上げます。ジークベルト陛下」
「ヴォルフラム!」
パルヴィの裂けた洋服の隙間からのぞいている脇腹には噛まれた痕。
薬師のテレジアが壊れた馬車からカーテンを引きちぎりパルヴィに被せ、王城の内部を知っている彼女の案内で、パルヴィとイリアは部屋へと急いだ。
「案内します」
足音が遠ざかるのを待つことなく、ジークベルトは怒鳴りつける。
「ヴォルフラム!」
「あんまり怒りなさんな」
こめかみに青筋を浮かせて怒るジークベルトの頭を昔のように撫でる。
「誰が怒らせているんだ? 誰が」
ジークベルトはその手を払いのけた。
子どもの頃からジークベルトはヴォルフラムが嫌いだった。なにが嫌いという理由があるのではなく、生理的に嫌いなのだ。
「俺でしょうね。それであの娘がビヨルクから来た水精の落とし子と噂されている王女なんだが、会ってやってくれるよな。義理の父親の失態を詫びてくれ」
だがヴォルフラムの娘ハイデマリーに一目惚れして、三日ほど悩んで――君の父親がヴォルフラムなのは君の罪じゃない――そう告げて、プロポーズをした。
この時ジークベルト五歳、ハイデマリー四歳。
面白みのない男は、面白みを求めず誠実という名のしつこさで押し続け、ハイデマリーはうっとうしさに負け、十四歳の時にプロポーズを受け入れた。
ハイデマリーの五歳年上の兄、テオバルトの言葉も大きかった。
―― 親父がヴォルフラムって時点で、結婚相手はジークベルトしかいないも同然だ。他の男は御免被るだろうよ。親父だぞ? 親父。ついでに婆さんだって…… ――
ヴェーラでもっとも美しい少女だった、そして美しい女であり続けるハイデマリーだが、ジークベルト以外の男に言い寄られたことは一度もない。
その理由は兄の告げた二つの他にもう一つ。ハイデマリー自身が魔人であることが上げられる。「強すぎ美し過ぎたハイデマリー」それが彼女に付けられた呼び名でもある。
「……あなた、それが目的で」
彼女を愛したがゆえに、もっとも気性の合わない男を岳父と呼ぶ立場になったジークベルトは”また策に嵌った”とばかりに肩を落とす。
「大丈夫、なにもしてない。本人に言ってからやった。許可はもらってないが」
「許可がなかったら意味ないとおもうのです」
「見解の違いじゃないか。俺はちょっとばかり出かけてくるから、あとは任せた」
「どこに行くつもりですか! あなたも隣席し、あの娘に謝罪しなさい! ヴォルフラム」
「俺がいたら怖がると思うんだよね。だから席外させてもらうよ。ちなみに行き先はイズベルガ邸。お袋の手紙届けてくる。お前さんが国王になったことに関する祝辞……じゃないかね。じゃあな」
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